虚ろの影
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あたりはすでに真っ暗な夜。
志帆と博臣は、街のとある丘の上に来ていた。
空に浮かぶ月は、虚ろの影が来ていることを象徴するように紫色に輝いていた。
ちなみにこのように見えるのは異界士だけ。写真で撮ろうとしてもこの色で写ることはない。
「...始めるぞ」
「りょーかい」
博臣の掛け声に志帆は頷く。
そして両者は両手を広げ前にかざす。博臣の手からは青黒色の光が、志帆の手からは淡い橙色の光が溢れ出す。
と、同時に上空まで続く結界が張られた。
彼らが結界を張った同時刻に、彩華も含め結界を作れる者達が続々と結界を張り出す。
この結界を使い、虚ろの影をいち早く街の外へ誘導するのだ。
虚ろの影は実体は無いものの黒い霧のように見える。それは、中心にいる本体の力が強すぎて空間が歪むために見える現象だった。
サッサと出ていって貰うために結界を張るのに集中したい二人。だが、背後に突如沢山の殺気を出す妖夢が現れる。
「......私がやる」
志帆は一言言うと、直ぐに結界を解除して博臣の背後に立つ。
そして己の指から指輪を取り出すと、その指輪は綺麗な銀色の鉄扇に変わる。
ガシッと鉄扇を志帆は構え、広範囲にいる妖夢に向け、鉄扇を思い切り振る。
と、同時に鉄扇が振られた場所から鋭い風が波状に広がり妖夢に襲いかかる。
鋭い風に切り刻まれ、妖夢は一瞬で妖夢石に変わっていく。
鮮やかに妖夢を鉄扇を振って退治していく様はまさに踊り子。
タップを踏みながら軽快に鉄扇を振っていく志帆を後ろ目で見ている博臣の口角は無意識に上がる。
だが、うつつを抜かしている訳ではなく、志帆が逃した妖夢を着実に己のマフラーを使い博臣は退治していく。
協力して沸いて出てくる妖夢を妖夢石に変えていく二人。
だが、志帆が少し博臣から離れてしまったタイミングで妖夢に向けてマフラーを放つ博臣の背後に一匹の妖夢が飛びかかってくる。
「...っ!!博臣!!」
慌てて志帆が中途半端のタップを無理やり止めて、博臣に叫ぶ。
「...!?」
博臣も背後にいる妖夢に気づくが間に合わない。元々、博臣は右手で檻を張りっぱなしの状態であるため、妖夢の攻撃をかわすことが出来ない。切羽つまりながら志帆は、鉄扇を振る。が、間に合わず博臣の背に妖夢が襲いかかる。
衝撃で思わず膝を折り曲げた博臣の制服は割け、そこから博臣の背にある大きく斜めに引き裂かれた古傷が現れる。
と同時に妖夢は志帆の鉄扇から放たれた風で妖夢石へ。
「博臣!!」
血相を変えて志帆は博臣に駆け寄る。
「大丈夫??」
背中にある痛々しい傷。久しぶりに見た志帆は大きく息を呑む。
「そんな顔すんな、それより来るぞ」
悲しげな表情を浮かべる志帆に博臣は真剣な表情のまま前を見据える。その言葉に志帆は小さく頷くと構える。
「妖夢が殺気だっている。」
顔を歪めた博臣は、ブレザーを脱ぎワイシャツ一枚に。
その後も間髪入れることなく襲いかかってくる妖夢に、博臣も檻を解除して二人で総力戦に。
ようやく最後の1体が消え、辺りに感じる殺気が無くなったのを確認した両者は大きく息をついて体の力を一気に抜くと背中を合わせあってヘナヘナと座り込んだ。
そんな二人の周りには大量の妖夢石が散らばっていたが、もはや回収する気力すら起こらなかった。
“お兄ちゃん、大好き...お兄ちゃん、大好き“
突如聴こえる美月の声。
思わず、それを耳にした志帆は顔を歪めた。
何度聞いても悪寒が走るそれは、博臣の携帯の着信音。
博臣は、隣に座り込む彼女の表情など気にする素振りもなくズボンのポケットから携帯を取り出し着信に出る。
「もしもし」
応答に出た博臣。
直ぐ様、美月の嫌悪感丸出しの声が返ってくる。
『その呼び出し音すぐ変えて』
「ナゼわかる?」
『兄貴の考えそうなことでしょ?」
相手が美月だとわかった途端に、一緒に聞こうと耳を近づけていた志帆は鋭い美月に感服する。
「用件は?」
『秋人が何処にいるかわかる?』
不安そうに尋ねる美月の声。
知ってるか?と博臣が目で尋ねてくるが、ずっと彼といた志帆が知るわけがなく小さく首を振る。それを確認すると博臣は電話口の美月に言葉を投げかける。
「いや?
アッキーに何か話したのか?」
『...少し』
「俺に黙ってか?」
返ってこない返事に、博臣はそれを肯定とみなし言葉を続ける。
「じゃ、ただって訳にはいかないな」
『わかったわよ』
美月はそう言うと小さく息を吸う。
その頃には、志帆はもう聞く意味が無いと立てていた耳を離し、ボォーと空を見上げ通話が終わるのを待っていた。
『お願い!お兄ちゃん』
何時もの毒舌美月から発せられたとは思えない可愛らしい声。
その声を博臣は満足げに堪能する。
「.......了解」
嬉しさを滲ませた博臣の声で通話は終わるのだった。
通話を終え博臣が立ち上がるのと同時に志帆も立ち上がる。
「……博臣」
「どうした?」
「……やな予感がする」
「それに関しては激しく同意だ」
険しい表情のまま二人は空を見上げる。
「泉ねぇさんに知らせておいたほうがいいな」
「既に連絡はしといたよ。
博臣がふざけている間にね?」
「俺がいつふざけた?いつだって俺は真剣だが?」
無自覚な博臣の過度のシスコンに盛大に志帆は呆れながらも、もうこれ以上は時間の無駄だと早々に話を切り上げる。
「さて、秋人はどこにいるのか?」
ため息混じりに志帆は能力を展開させていく。
「いつの間に、アッキーに鎖を仕掛けたんだ?」
「秋人は監視対象だからね…」
不思議そうに尋ねる博臣に志帆は淡々と答える。
「確かにそうだな」
「よし!見つけた!行くよ」
志帆は博臣にそう言うと駆け出す。それに習うように博臣も駆け出すのだった。
志帆と博臣は、街のとある丘の上に来ていた。
空に浮かぶ月は、虚ろの影が来ていることを象徴するように紫色に輝いていた。
ちなみにこのように見えるのは異界士だけ。写真で撮ろうとしてもこの色で写ることはない。
「...始めるぞ」
「りょーかい」
博臣の掛け声に志帆は頷く。
そして両者は両手を広げ前にかざす。博臣の手からは青黒色の光が、志帆の手からは淡い橙色の光が溢れ出す。
と、同時に上空まで続く結界が張られた。
彼らが結界を張った同時刻に、彩華も含め結界を作れる者達が続々と結界を張り出す。
この結界を使い、虚ろの影をいち早く街の外へ誘導するのだ。
虚ろの影は実体は無いものの黒い霧のように見える。それは、中心にいる本体の力が強すぎて空間が歪むために見える現象だった。
サッサと出ていって貰うために結界を張るのに集中したい二人。だが、背後に突如沢山の殺気を出す妖夢が現れる。
「......私がやる」
志帆は一言言うと、直ぐに結界を解除して博臣の背後に立つ。
そして己の指から指輪を取り出すと、その指輪は綺麗な銀色の鉄扇に変わる。
ガシッと鉄扇を志帆は構え、広範囲にいる妖夢に向け、鉄扇を思い切り振る。
と、同時に鉄扇が振られた場所から鋭い風が波状に広がり妖夢に襲いかかる。
鋭い風に切り刻まれ、妖夢は一瞬で妖夢石に変わっていく。
鮮やかに妖夢を鉄扇を振って退治していく様はまさに踊り子。
タップを踏みながら軽快に鉄扇を振っていく志帆を後ろ目で見ている博臣の口角は無意識に上がる。
だが、うつつを抜かしている訳ではなく、志帆が逃した妖夢を着実に己のマフラーを使い博臣は退治していく。
協力して沸いて出てくる妖夢を妖夢石に変えていく二人。
だが、志帆が少し博臣から離れてしまったタイミングで妖夢に向けてマフラーを放つ博臣の背後に一匹の妖夢が飛びかかってくる。
「...っ!!博臣!!」
慌てて志帆が中途半端のタップを無理やり止めて、博臣に叫ぶ。
「...!?」
博臣も背後にいる妖夢に気づくが間に合わない。元々、博臣は右手で檻を張りっぱなしの状態であるため、妖夢の攻撃をかわすことが出来ない。切羽つまりながら志帆は、鉄扇を振る。が、間に合わず博臣の背に妖夢が襲いかかる。
衝撃で思わず膝を折り曲げた博臣の制服は割け、そこから博臣の背にある大きく斜めに引き裂かれた古傷が現れる。
と同時に妖夢は志帆の鉄扇から放たれた風で妖夢石へ。
「博臣!!」
血相を変えて志帆は博臣に駆け寄る。
「大丈夫??」
背中にある痛々しい傷。久しぶりに見た志帆は大きく息を呑む。
「そんな顔すんな、それより来るぞ」
悲しげな表情を浮かべる志帆に博臣は真剣な表情のまま前を見据える。その言葉に志帆は小さく頷くと構える。
「妖夢が殺気だっている。」
顔を歪めた博臣は、ブレザーを脱ぎワイシャツ一枚に。
その後も間髪入れることなく襲いかかってくる妖夢に、博臣も檻を解除して二人で総力戦に。
ようやく最後の1体が消え、辺りに感じる殺気が無くなったのを確認した両者は大きく息をついて体の力を一気に抜くと背中を合わせあってヘナヘナと座り込んだ。
そんな二人の周りには大量の妖夢石が散らばっていたが、もはや回収する気力すら起こらなかった。
“お兄ちゃん、大好き...お兄ちゃん、大好き“
突如聴こえる美月の声。
思わず、それを耳にした志帆は顔を歪めた。
何度聞いても悪寒が走るそれは、博臣の携帯の着信音。
博臣は、隣に座り込む彼女の表情など気にする素振りもなくズボンのポケットから携帯を取り出し着信に出る。
「もしもし」
応答に出た博臣。
直ぐ様、美月の嫌悪感丸出しの声が返ってくる。
『その呼び出し音すぐ変えて』
「ナゼわかる?」
『兄貴の考えそうなことでしょ?」
相手が美月だとわかった途端に、一緒に聞こうと耳を近づけていた志帆は鋭い美月に感服する。
「用件は?」
『秋人が何処にいるかわかる?』
不安そうに尋ねる美月の声。
知ってるか?と博臣が目で尋ねてくるが、ずっと彼といた志帆が知るわけがなく小さく首を振る。それを確認すると博臣は電話口の美月に言葉を投げかける。
「いや?
アッキーに何か話したのか?」
『...少し』
「俺に黙ってか?」
返ってこない返事に、博臣はそれを肯定とみなし言葉を続ける。
「じゃ、ただって訳にはいかないな」
『わかったわよ』
美月はそう言うと小さく息を吸う。
その頃には、志帆はもう聞く意味が無いと立てていた耳を離し、ボォーと空を見上げ通話が終わるのを待っていた。
『お願い!お兄ちゃん』
何時もの毒舌美月から発せられたとは思えない可愛らしい声。
その声を博臣は満足げに堪能する。
「.......了解」
嬉しさを滲ませた博臣の声で通話は終わるのだった。
通話を終え博臣が立ち上がるのと同時に志帆も立ち上がる。
「……博臣」
「どうした?」
「……やな予感がする」
「それに関しては激しく同意だ」
険しい表情のまま二人は空を見上げる。
「泉ねぇさんに知らせておいたほうがいいな」
「既に連絡はしといたよ。
博臣がふざけている間にね?」
「俺がいつふざけた?いつだって俺は真剣だが?」
無自覚な博臣の過度のシスコンに盛大に志帆は呆れながらも、もうこれ以上は時間の無駄だと早々に話を切り上げる。
「さて、秋人はどこにいるのか?」
ため息混じりに志帆は能力を展開させていく。
「いつの間に、アッキーに鎖を仕掛けたんだ?」
「秋人は監視対象だからね…」
不思議そうに尋ねる博臣に志帆は淡々と答える。
「確かにそうだな」
「よし!見つけた!行くよ」
志帆は博臣にそう言うと駆け出す。それに習うように博臣も駆け出すのだった。