長月灯篭祭
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ピンポーン
何処にも行くことなく家のベッドに寝っ転がっていた秋人はインターホン音で上体を起こす。
暫く独りになりたかったため、学校を仮病で休んだ。自分が何をしたか妖夢化した時の記憶は抜け落ちてる。でも、意識を取り戻した後の惨状を目の当たりにしたら胸が締め付けられた。
これは僕がやったことなのだと
目の前の光景が突きつけているように秋人は見えた。軽く笑い飛ばせたらどれだけいいことか。そんなの秋人は出来なかった。
今でも記憶が犯した罪を認識させてくる
血で染まった真っ赤な己の手
目の前にうつ伏せで倒れている博臣の背に大きく出来たえぐられた傷
彼の周囲に広がる血の海
彼を見て泣き崩れる志帆の姿
この惨劇を生み出したのは紛れもなく自分自身だということを。
ピンポーン
思考を巡らす秋人の耳に入ってくるのはしつこすぎるインターホン音。
「たく…誰だよ」
我慢の限界に達した秋人は立ち上がると玄関のドアを開ける。が、視界に入った二人の姿に慌てて閉めようとするのだが、当然のように二人は秋人の取る行動を阻止する。
「何の用だよ」
「用がないと来ちゃだめなのか??」
「そうそう!!
全然秋人が姿見せないから心配してきたのにこの仕打ちは酷いよね」
げんなりとする秋人に対して、絶対に裏があると丸わかりの作りめいた笑みを浮かべる博臣と志帆。秋人は直感的にヤバいと感じるがなすすべがなかった。
「「おじゃまします」」
家主の許可を取ることなく二人は家に上がる。そんな彼らを睨みつけながら秋人はドアを閉めると彼らの後を追って部屋へ。
「おい!!僕は許可した覚えは…」
「はい!!着替えて!!」
秋人の主張など聞く時間がもったいないと志帆は秋人に持ってきた紙袋を押し付ける。秋人は恐る恐るそれを覗き込む。それを見て秋人は眼を見開いた。だって、紙袋に入っていたのは甚平だったから。
「な…なんで!?」
「さっさと着替えろ
アッキーのせいで計画が台無しだ」
「……僕のせいって言いたいのか??」
「そんなことは言ってないぞ」
今にも一触触発の空気。飄々と秋人の言葉を返していく博臣に秋人がただ苛立っているだけなのだが。そんな秋人にニコニコと笑うのは志帆だった。
「秋人……
さっさと着替えようか??」
完全に怒っている!!
秋人は笑っていない志帆の目に背筋が凍った。
「わ…わかった、着替えてくる」
慌てて秋人は紙袋から甚平を取り出すのだった。
*****
「うわー、美月先輩!見てください!すごいですねー。」
一方で、店をクローズにした美月と未来は互いに浴衣に着替え会場に来ていた。灯篭で赤く灯されている会場。そこには通路を作るように沢山の灯篭が置かれていた。
無邪気にクルクルと嬉しそうに子供のようにはしゃぐ未来に、美月は少し呆れた眼を向ける。
「何、はしゃいでるのよ。」
「良いじゃないですか!祭りなんですから!」
そう言いしゃがみ込む未来に続いて美月を座る。
そして二人揃って目の前の灯篭を見つめた。
「綺麗ですね。」
ゆっくりと微笑む未来は隣にいる美月を見る。美月は目の前に広がる光景を眺めていた。そんな彼女の表情が少し和らいだ気がして未来は小さく笑った。
「意地はらずに来て良かったですね。」
「あんたね!」
「今、あんたって言いました。」
「えっ?」
未来の指摘に美月は視線を泳がせた。
「やめろー!!」
聞き覚えのある大きな声が聞こえ、二人は立ち上がり窺う。
するとそこにいたのは見慣れた3人だった。
「どうして僕がこんな格好までしてここに来なきゃ行けないんだ!」
嫌がる秋人。その背後には彼の脇に両手を入れて歩く博臣。そんな二人を微笑ましげに見ながら隣を歩く志帆がいたのだ。
「先輩??」
「栗山さん、美月どうして?」
未来の声に気づき秋人は前に顔を向けるとそこにいたのは二人に彼は驚きの声を上げる。
「どうして?
便所飯でお馴染みの秋人を慰めるために決まってるでしょ?」
「だから僕は何度も言うが誰も世話にもなら」
博臣の両手から抜け出した秋人はありがた迷惑だと声を張りあげる。
だが、秋人の声と重ねるように未来は彼の名を呼んだ。
「先輩…
皆独りだからです。
皆独りだから…」
そんな中、夜空に色鮮やかな花火が沢山打ち上がった。
美月は初めて近くで見る花火に純粋に感動した。
「ねぇ、兄貴。」
美月は、視線を空に向けたまま隣にいる博臣を呼んだ。
「ん?」
「りんご飴食べたい。」
珍しく素直に自分の気持ちを述べる美月に博臣は驚き鼻の下をこれでもかと伸ばす。
「はぁー!」
そんな彼らを微笑ましげに見ていた志帆。だが、人知れずその場を離れ、秋人の隣にいる未来に近づき袖を弱く引っ張った。
それに気づいた未来の腕を取り、花火に夢中な秋人を放り志帆は人気がない場所に連れて行くのだった。
*****
「志帆先輩っ!どこにっ...」
「泉様がこんなとこに足を運ぶなんて珍しいこともあるんですね」
人気がある場所から少し離れた場所につれてこられた未来は己の腕を引っ張る志帆に声をあげる。が、すぐにその口を閉じた。未来の視界の先、そこには待っていたかのように泉の姿があったからだ。
「そうね...
こんな間近で花火を見る日が来るとは思わなかったわ」
連れてきた未来の腕から手を離した志帆の開口一番のセリフに泉は感慨深いと言わんばかりに目を細めて打ち上がる花火を見上げた。
時が流れるにつれて薄れていく色鮮やかな思い出。まだ、当主では無かった頃の泉は引っ張られるようにお節介で面倒見の良い幼馴染により良くこの花火を見に来ていた。年の離れた兄妹を守るためにどうすればもっと強くなれるのか、責任感が人一倍強い泉を見かねた彼が、たまにはいいだろ?気分転換しねぇーと身体がもたねーぇぞ!と気分が乗らない泉を呆れたように見ていた彼の声も笑顔も段々と泉の中では薄れてきてしまっていた。
「栗山さん」
懐かしい思い出を振り切るように、泉は空から視界を外すと緊張した面持ちの栗山を見据えた。
「...は、はい」
「心は決まったかしら??」
泉の言葉に未来は顔を俯かせ、ぐっと唇を噛んで拳を作った手に力を込めた。そんな彼女を志帆は心配そうに見つめた。
「あれから考えたんです
迷っててもしょうがないって
自分が先輩を…境界の彼方を討伐するしかないんだって
でも…
私…
先輩を殺したくありません
殺したくないんです」
唇を震わせて未来は絞った声で自分の心の内を漏らす。もう、最初の頃と未来が抱く秋人に対する気持ちは変化してしまったのだ。そこに居たのは紛れもなく自分の心と葛藤する女の子だった。
もっと自分に力があれば...
未来の姿を見て、志帆は一人静かに悔しげに拳を握りしめた。未来は確実に秋人に恋心を抱いている。それなのに、何故未来がそんな彼を殺さないといけない宿命なのだろうか。こんな想いを未来にさせたくない。それでも、境界の彼方を確実に消せるのは呪われた血の一族の未来しかいなかった。いや、もう一つ方法はある。だが今の志帆はその力を扱えない。自らのあまりの無力さに志帆は嘆いた。
その中でも、夜空には無情にも色鮮やかな花火が咲き誇り続けるのだった。
何処にも行くことなく家のベッドに寝っ転がっていた秋人はインターホン音で上体を起こす。
暫く独りになりたかったため、学校を仮病で休んだ。自分が何をしたか妖夢化した時の記憶は抜け落ちてる。でも、意識を取り戻した後の惨状を目の当たりにしたら胸が締め付けられた。
これは僕がやったことなのだと
目の前の光景が突きつけているように秋人は見えた。軽く笑い飛ばせたらどれだけいいことか。そんなの秋人は出来なかった。
今でも記憶が犯した罪を認識させてくる
血で染まった真っ赤な己の手
目の前にうつ伏せで倒れている博臣の背に大きく出来たえぐられた傷
彼の周囲に広がる血の海
彼を見て泣き崩れる志帆の姿
この惨劇を生み出したのは紛れもなく自分自身だということを。
ピンポーン
思考を巡らす秋人の耳に入ってくるのはしつこすぎるインターホン音。
「たく…誰だよ」
我慢の限界に達した秋人は立ち上がると玄関のドアを開ける。が、視界に入った二人の姿に慌てて閉めようとするのだが、当然のように二人は秋人の取る行動を阻止する。
「何の用だよ」
「用がないと来ちゃだめなのか??」
「そうそう!!
全然秋人が姿見せないから心配してきたのにこの仕打ちは酷いよね」
げんなりとする秋人に対して、絶対に裏があると丸わかりの作りめいた笑みを浮かべる博臣と志帆。秋人は直感的にヤバいと感じるがなすすべがなかった。
「「おじゃまします」」
家主の許可を取ることなく二人は家に上がる。そんな彼らを睨みつけながら秋人はドアを閉めると彼らの後を追って部屋へ。
「おい!!僕は許可した覚えは…」
「はい!!着替えて!!」
秋人の主張など聞く時間がもったいないと志帆は秋人に持ってきた紙袋を押し付ける。秋人は恐る恐るそれを覗き込む。それを見て秋人は眼を見開いた。だって、紙袋に入っていたのは甚平だったから。
「な…なんで!?」
「さっさと着替えろ
アッキーのせいで計画が台無しだ」
「……僕のせいって言いたいのか??」
「そんなことは言ってないぞ」
今にも一触触発の空気。飄々と秋人の言葉を返していく博臣に秋人がただ苛立っているだけなのだが。そんな秋人にニコニコと笑うのは志帆だった。
「秋人……
さっさと着替えようか??」
完全に怒っている!!
秋人は笑っていない志帆の目に背筋が凍った。
「わ…わかった、着替えてくる」
慌てて秋人は紙袋から甚平を取り出すのだった。
*****
「うわー、美月先輩!見てください!すごいですねー。」
一方で、店をクローズにした美月と未来は互いに浴衣に着替え会場に来ていた。灯篭で赤く灯されている会場。そこには通路を作るように沢山の灯篭が置かれていた。
無邪気にクルクルと嬉しそうに子供のようにはしゃぐ未来に、美月は少し呆れた眼を向ける。
「何、はしゃいでるのよ。」
「良いじゃないですか!祭りなんですから!」
そう言いしゃがみ込む未来に続いて美月を座る。
そして二人揃って目の前の灯篭を見つめた。
「綺麗ですね。」
ゆっくりと微笑む未来は隣にいる美月を見る。美月は目の前に広がる光景を眺めていた。そんな彼女の表情が少し和らいだ気がして未来は小さく笑った。
「意地はらずに来て良かったですね。」
「あんたね!」
「今、あんたって言いました。」
「えっ?」
未来の指摘に美月は視線を泳がせた。
「やめろー!!」
聞き覚えのある大きな声が聞こえ、二人は立ち上がり窺う。
するとそこにいたのは見慣れた3人だった。
「どうして僕がこんな格好までしてここに来なきゃ行けないんだ!」
嫌がる秋人。その背後には彼の脇に両手を入れて歩く博臣。そんな二人を微笑ましげに見ながら隣を歩く志帆がいたのだ。
「先輩??」
「栗山さん、美月どうして?」
未来の声に気づき秋人は前に顔を向けるとそこにいたのは二人に彼は驚きの声を上げる。
「どうして?
便所飯でお馴染みの秋人を慰めるために決まってるでしょ?」
「だから僕は何度も言うが誰も世話にもなら」
博臣の両手から抜け出した秋人はありがた迷惑だと声を張りあげる。
だが、秋人の声と重ねるように未来は彼の名を呼んだ。
「先輩…
皆独りだからです。
皆独りだから…」
そんな中、夜空に色鮮やかな花火が沢山打ち上がった。
美月は初めて近くで見る花火に純粋に感動した。
「ねぇ、兄貴。」
美月は、視線を空に向けたまま隣にいる博臣を呼んだ。
「ん?」
「りんご飴食べたい。」
珍しく素直に自分の気持ちを述べる美月に博臣は驚き鼻の下をこれでもかと伸ばす。
「はぁー!」
そんな彼らを微笑ましげに見ていた志帆。だが、人知れずその場を離れ、秋人の隣にいる未来に近づき袖を弱く引っ張った。
それに気づいた未来の腕を取り、花火に夢中な秋人を放り志帆は人気がない場所に連れて行くのだった。
*****
「志帆先輩っ!どこにっ...」
「泉様がこんなとこに足を運ぶなんて珍しいこともあるんですね」
人気がある場所から少し離れた場所につれてこられた未来は己の腕を引っ張る志帆に声をあげる。が、すぐにその口を閉じた。未来の視界の先、そこには待っていたかのように泉の姿があったからだ。
「そうね...
こんな間近で花火を見る日が来るとは思わなかったわ」
連れてきた未来の腕から手を離した志帆の開口一番のセリフに泉は感慨深いと言わんばかりに目を細めて打ち上がる花火を見上げた。
時が流れるにつれて薄れていく色鮮やかな思い出。まだ、当主では無かった頃の泉は引っ張られるようにお節介で面倒見の良い幼馴染により良くこの花火を見に来ていた。年の離れた兄妹を守るためにどうすればもっと強くなれるのか、責任感が人一倍強い泉を見かねた彼が、たまにはいいだろ?気分転換しねぇーと身体がもたねーぇぞ!と気分が乗らない泉を呆れたように見ていた彼の声も笑顔も段々と泉の中では薄れてきてしまっていた。
「栗山さん」
懐かしい思い出を振り切るように、泉は空から視界を外すと緊張した面持ちの栗山を見据えた。
「...は、はい」
「心は決まったかしら??」
泉の言葉に未来は顔を俯かせ、ぐっと唇を噛んで拳を作った手に力を込めた。そんな彼女を志帆は心配そうに見つめた。
「あれから考えたんです
迷っててもしょうがないって
自分が先輩を…境界の彼方を討伐するしかないんだって
でも…
私…
先輩を殺したくありません
殺したくないんです」
唇を震わせて未来は絞った声で自分の心の内を漏らす。もう、最初の頃と未来が抱く秋人に対する気持ちは変化してしまったのだ。そこに居たのは紛れもなく自分の心と葛藤する女の子だった。
もっと自分に力があれば...
未来の姿を見て、志帆は一人静かに悔しげに拳を握りしめた。未来は確実に秋人に恋心を抱いている。それなのに、何故未来がそんな彼を殺さないといけない宿命なのだろうか。こんな想いを未来にさせたくない。それでも、境界の彼方を確実に消せるのは呪われた血の一族の未来しかいなかった。いや、もう一つ方法はある。だが今の志帆はその力を扱えない。自らのあまりの無力さに志帆は嘆いた。
その中でも、夜空には無情にも色鮮やかな花火が咲き誇り続けるのだった。