長月灯篭祭
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翌日以降、秋人は学校を風邪と言って休みだした。でも、そんなのは仮病だってことは誰にだって明らかだった。
どうせ虚ろの影の件について引きずっているのだろう
でも、そんな事を誰かに見せることはしない。独りで抱え込むより誰かに曝け出したほうがスッキリすることもあるし、解決策が見つかることもある。だけど、人は決して弱みを見せず、独りよがりで強がる。
結局、皆一人なのだ。
普段、集団の輪の中心にいる人だって、誰かとつるんでいる人だって、いつも一人ぼっちの人だって...
「まぁ...私も人の事言えないか」
今こうして、誰かを待っている志帆だって、人には言えない物を抱え込んでいる自覚はあるのだから。
「何の話ですか??」
「いえ...タダの独り言です
気にしないで下さい」
壁に凭れ掛かり待っていた志帆に影がかかる。それに気づいた志帆が顔を上げると、初対面のときと同じようにバナナカフェオレを片手に持つ藤真がいた。
「随分と待たせてしまいましたか?」
「そんな事は有りませんよ」
互いに当たり障りのない会話をしながら二人は喫茶店に入る。
「折角なんで、僕が奢りますよ」
「お気遣いありがとうございます
では、遠慮なく」
メニューを広げていた志帆は藤真の一言に口角を上げると店員さんを呼ぶ。
「容赦ないですね〜」
「ご厚意は有り難く頂かないと」
注文の品が届き、美味しそうなパンケーキに志帆はナイフを入れる。
志帆が注文したのは、この喫茶店で一番値段が高いもの。遠慮なく藤真の財布を使わせて頂くことにしたのだ。
「いやぁ、真逆志帆さんから連絡して頂けると思っていなかったのでビックリですよ」
「コッソリと私の懐に連絡先が書かれた紙を忍ばせたのは貴方でしょ」
実は、あの時藤真は誰にも気づかれること無く自身の携帯番号を書いたものを渡していたのだ。実際、志帆自身が気づいたのは家に帰ってからだ。
「で?何を知りたいですか?
答えられる範囲でなら教えて差し上げますよ」
「では...
誰から私のことについて聞いたんですか?」
確かに公の場に、泉と共に出向いたことは何度かはある。だが、あくまで社交辞令。そこまで自分の事を認識してくれるまでの接点はない。
志帆は、持っていたナイフを置き眼光を鋭くし藤真を見据えた。
「聞いたって言いましたっけ?」
さらりと真の抜けた表情でとぼける藤真に、志帆は騙されるものかと口調を強める。
「言ってましたよ
はぐらかさないで下さい」
「参りましたね...
ホントはお教えしてあげたいのは山々なのですが、口止めされてるんですよね...」
やれやれと肩を竦め、申し訳無さそうに藤真は笑う。
「............」
「そんな睨まないでくださいよ」
ジッと視線を逸らさない志帆に、藤真はニコヤカに笑うと机に肘をつけぐっと身を乗り出した。
「情報元は、貴女にとって身近な人です。
僕が言えるのはコレだけです」
「では、私が今後知ることになることって...」
「もし越えられない壁に直面した時、志帆さんはどうしますか?
運命を呪い嘆きますか?
それとも変えるために抗いますか?」
志帆の問いに答えることなく謎かけのように藤真は投げかえした。
その言葉に現実味がなく、志帆は淡々と答えた。
「...現段階で何ともお応えかねません
そのような2択を迫られる事態に直面したことがないので」
そんな彼女に藤真は耳打ちするように囁くのだった。
「では予言してあげましょう
近い将来、必ず選択を迫られるときが来ますよ」
その時貴女はどっちをとるんですかね〜?
僕のこの言葉、頭の片隅にでも入れといてください
ボンヤリと脳裏に残る藤真の言葉の真意を考えながら志帆は喫茶店出る。
日が傾き始め、少し冷たくなった風が志帆の髪を靡かせ頭を冷静に冷やしてくれる。
考えても仕方ないか
あんな予言当たるわけがない
志帆は思い当たる節をかき消し、足を踏み出す。だが、突然死角から伸びてきた腕に掴まれる。思わず声を出そうとするが、慣れ親しんだ気配に気づきフッと志帆は力を抜くのだった。
「ウッ...」
路地裏に連れ込まれた志帆は、肩を掴まれ思いきり壁に押し付けられた。
叩きつけられた背に痛みが走り、志帆は呻き声を上げる。ゆっくりと目を開けると、そこにいた彼は鬼のような形相をしていて志帆は初めて恐怖を感じた。
「何してたんだ?」
怒りに満ちた博臣のドスの利いた低い声に、志帆は後ろめたく目を合わせられなかった。
「言ったはずだ
藤真と二人きりで会うなと」
「......うん」
「それで志帆はなんて答えた」
「...わかってるって言った」
「じゃあ何故、アイツと会った」
博臣の追及に誤魔化しはきかないとわかっている志帆はポツポツと目線を合わすことなく本当のことを話した。
「もしかしたら...
兄さんの事がわかるかもしれないって思ったら居ても立っても居られなくて...」
「気持ちはわかるが、リスクが大きすぎる。
何かあってからじゃ遅いんだぞ」
押し付ける力を弱め、博臣は志帆を覗き込む。諭すような優しい声、自分を見る優しい眼差しに志帆は猛反省した。
余計な心配をかけてしまったと。
「...ゴメン
早とちりし過ぎた」
素直に目の前の彼に志帆は謝ると、途端に志帆は博臣の腕の中に閉じ込められた。
「俺も手伝うから
だから一人で危ない橋を渡らないでくれ」
志帆を抱きしめる力を強め、絞り出すような小さな声で博臣は懇願した。
「.....ありがとう」
無理に引き剥がそうとしたが、志帆はやめた。
今だけ少しだけ
この腕の中に閉じ込められていいかな...
志帆はそっと目を閉じて彼に身を預けたのだった。
どうせ虚ろの影の件について引きずっているのだろう
でも、そんな事を誰かに見せることはしない。独りで抱え込むより誰かに曝け出したほうがスッキリすることもあるし、解決策が見つかることもある。だけど、人は決して弱みを見せず、独りよがりで強がる。
結局、皆一人なのだ。
普段、集団の輪の中心にいる人だって、誰かとつるんでいる人だって、いつも一人ぼっちの人だって...
「まぁ...私も人の事言えないか」
今こうして、誰かを待っている志帆だって、人には言えない物を抱え込んでいる自覚はあるのだから。
「何の話ですか??」
「いえ...タダの独り言です
気にしないで下さい」
壁に凭れ掛かり待っていた志帆に影がかかる。それに気づいた志帆が顔を上げると、初対面のときと同じようにバナナカフェオレを片手に持つ藤真がいた。
「随分と待たせてしまいましたか?」
「そんな事は有りませんよ」
互いに当たり障りのない会話をしながら二人は喫茶店に入る。
「折角なんで、僕が奢りますよ」
「お気遣いありがとうございます
では、遠慮なく」
メニューを広げていた志帆は藤真の一言に口角を上げると店員さんを呼ぶ。
「容赦ないですね〜」
「ご厚意は有り難く頂かないと」
注文の品が届き、美味しそうなパンケーキに志帆はナイフを入れる。
志帆が注文したのは、この喫茶店で一番値段が高いもの。遠慮なく藤真の財布を使わせて頂くことにしたのだ。
「いやぁ、真逆志帆さんから連絡して頂けると思っていなかったのでビックリですよ」
「コッソリと私の懐に連絡先が書かれた紙を忍ばせたのは貴方でしょ」
実は、あの時藤真は誰にも気づかれること無く自身の携帯番号を書いたものを渡していたのだ。実際、志帆自身が気づいたのは家に帰ってからだ。
「で?何を知りたいですか?
答えられる範囲でなら教えて差し上げますよ」
「では...
誰から私のことについて聞いたんですか?」
確かに公の場に、泉と共に出向いたことは何度かはある。だが、あくまで社交辞令。そこまで自分の事を認識してくれるまでの接点はない。
志帆は、持っていたナイフを置き眼光を鋭くし藤真を見据えた。
「聞いたって言いましたっけ?」
さらりと真の抜けた表情でとぼける藤真に、志帆は騙されるものかと口調を強める。
「言ってましたよ
はぐらかさないで下さい」
「参りましたね...
ホントはお教えしてあげたいのは山々なのですが、口止めされてるんですよね...」
やれやれと肩を竦め、申し訳無さそうに藤真は笑う。
「............」
「そんな睨まないでくださいよ」
ジッと視線を逸らさない志帆に、藤真はニコヤカに笑うと机に肘をつけぐっと身を乗り出した。
「情報元は、貴女にとって身近な人です。
僕が言えるのはコレだけです」
「では、私が今後知ることになることって...」
「もし越えられない壁に直面した時、志帆さんはどうしますか?
運命を呪い嘆きますか?
それとも変えるために抗いますか?」
志帆の問いに答えることなく謎かけのように藤真は投げかえした。
その言葉に現実味がなく、志帆は淡々と答えた。
「...現段階で何ともお応えかねません
そのような2択を迫られる事態に直面したことがないので」
そんな彼女に藤真は耳打ちするように囁くのだった。
「では予言してあげましょう
近い将来、必ず選択を迫られるときが来ますよ」
その時貴女はどっちをとるんですかね〜?
僕のこの言葉、頭の片隅にでも入れといてください
ボンヤリと脳裏に残る藤真の言葉の真意を考えながら志帆は喫茶店出る。
日が傾き始め、少し冷たくなった風が志帆の髪を靡かせ頭を冷静に冷やしてくれる。
考えても仕方ないか
あんな予言当たるわけがない
志帆は思い当たる節をかき消し、足を踏み出す。だが、突然死角から伸びてきた腕に掴まれる。思わず声を出そうとするが、慣れ親しんだ気配に気づきフッと志帆は力を抜くのだった。
「ウッ...」
路地裏に連れ込まれた志帆は、肩を掴まれ思いきり壁に押し付けられた。
叩きつけられた背に痛みが走り、志帆は呻き声を上げる。ゆっくりと目を開けると、そこにいた彼は鬼のような形相をしていて志帆は初めて恐怖を感じた。
「何してたんだ?」
怒りに満ちた博臣のドスの利いた低い声に、志帆は後ろめたく目を合わせられなかった。
「言ったはずだ
藤真と二人きりで会うなと」
「......うん」
「それで志帆はなんて答えた」
「...わかってるって言った」
「じゃあ何故、アイツと会った」
博臣の追及に誤魔化しはきかないとわかっている志帆はポツポツと目線を合わすことなく本当のことを話した。
「もしかしたら...
兄さんの事がわかるかもしれないって思ったら居ても立っても居られなくて...」
「気持ちはわかるが、リスクが大きすぎる。
何かあってからじゃ遅いんだぞ」
押し付ける力を弱め、博臣は志帆を覗き込む。諭すような優しい声、自分を見る優しい眼差しに志帆は猛反省した。
余計な心配をかけてしまったと。
「...ゴメン
早とちりし過ぎた」
素直に目の前の彼に志帆は謝ると、途端に志帆は博臣の腕の中に閉じ込められた。
「俺も手伝うから
だから一人で危ない橋を渡らないでくれ」
志帆を抱きしめる力を強め、絞り出すような小さな声で博臣は懇願した。
「.....ありがとう」
無理に引き剥がそうとしたが、志帆はやめた。
今だけ少しだけ
この腕の中に閉じ込められていいかな...
志帆はそっと目を閉じて彼に身を預けたのだった。