長月灯篭祭
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バイトの話をするために美月は、未来を連れて外へ。
秋人はこれ以上ここにいる必要もないので帰宅。だが、彼は思いつめている表情を浮かべていて志帆にとってはそれが気がかりだった。
「...志帆」
「何??」
よって必然的に残されたのは博臣と志帆。3人を見送った彼らは当然のように自然と博臣の部屋へ入る。
いつからかわからない。だが、必然的に付いていた習慣的なもの。
でも、それは志帆にとっては。有難かった。従事者など第三者の目が光る中だと、どうしても志帆は身構えてしまう。側近として気軽に名瀬の者に接していたら、他の者に示しがつかないからだ。
そんな志帆の心中を察してなのかは、定かではないが博臣のさり気ない心遣いは有難かった。
「今年はどうするんだ?」
「別にこれといった仕事は入ってないからなぁ...」
志帆はソファーに身を預けるように深く座ると天井を仰いで思考を巡らした。
この時期、この一帯で行われるお祭りが存在する。
"長月灯篭祭"
側近になって一度も予定が噛み合う事がなかったため祭りに行ってないのだ。だが、今年は珍しく空いている。いや、実際は栗山未来の監視と手助けが仕事としてあるのだが、まぁ現実的に今は長期休暇みたいなものを貰っているものとして志帆自身が勝手に認識している。
「予定無いなら一緒に行くか?」
「??何処に?」
「決まってるだろ?お祭りだよ」
「皆で??」
珍しく、少し距離を開けて座った博臣がポツリと漏らした一言に志帆は呆気に取られて間の抜けた表情を浮かべることに。
対して、いつになく勇気を振り絞って誘った博臣としては本意が伝わらなかったことに眉を顰めた。
「二人でだ!!」
「………?!?!」
少し赤らめた顔で博臣は志帆の方を向くと声を張り上げる。
いつものようにおちゃらけているわけでなく真剣な眼差しの博臣に、志帆の心臓はドクンと高鳴った。
率直に言って嬉しい
そう思ったのだが、残念ながら素直になれないのが志帆。
「本気で言ってる??」
「あぁ…本気だ」
「あの祭りの風潮を知ってて言う??」
長月灯篭祭は、いつからか巷ではカップル御用達になっているのだ。別に友達とだって、家族とだって、一人でだってどうやって誰と行こうと決まりはない。
だが、どう考えても学校の知り合いに見つかったら噂くらいは流れ兼ねない。
「あぁ…」
「……美月と行けばいいじゃない」
「確かに、兄妹睦ましげに祭りに行くのも悪くない
だが、俺は志帆と一緒に行きたいんだ」
直球の博臣の言葉に必死さが伝わり、思わず志帆は視線を目に落とし忙しなく右往左往させる。サッと無意識で片耳に髪をかける志帆。そんな志帆の耳はほんのりと赤く染まっていた。
誘いを受けるべきか、それともやんわりと断りを入れるべきかと志帆は迷う中、なかなか返事をもらえない博臣は肩をガクリと落とした。
「…………嫌か?」
弱弱しい博臣の小さな声に志帆はハッと顔を上げた。
「い…嫌じゃない」
「じゃあ、なんでためらうんだ?」
「だ……だって…」
「だって??」
俯き言葉を濁しながら目線を泳がし懸命に志帆は言葉を探した。そんな彼女の心情を察してか博臣は優しく声を掛けながら志帆の言葉を待った。
「変な噂流したくない」
「志帆となら大歓迎だが?」
「博臣がよくても私は嫌だ」
名家の長男、加えて美貌の持ち主。よって彼の性癖を知らない女性からは黄色い声援を浴びるくらいモテるのだ。
そんな彼とほぼ学校に登校していない見ず知らずの女が祭りの日に隣で歩いていたら確実に反感しか買わないに決まっている。
そんなちっぽけな話で博臣に迷惑をかけたくないのだ。それだけで収まればいいが、泉達の耳に入ったら溜まったものじゃない。
絶対そんな不祥事を起こしたくないと志帆は駄々をこねるよ子供のように首を横に大きく振った。
そんな彼女に博臣は困った表情を浮かべた。
「志帆の本心は嫌じゃないんだよな?」
「.........うん」
「志帆がホントに嫌だったら俺はもうこれ以上誘わない。
だが、そうじゃないなら素直に引き下がれないな」
博臣はそう言うと志帆との距離を狭めた。対して、真っ直ぐな博臣の目を志帆は見れずバツが悪そうに俯いた。
「もう一度聞くが、志帆は俺と二人で祭りに行きたくないのか?」
「............行きたくない」
「嘘だろ?
ちゃんと目を合わせて言え」
気不味い空気の中、志帆は数秒の沈黙後に声を絞り出すように呟く。が、自分を見ないで言った志帆の言葉が本心で無いと博臣は見抜き、彼女の顎に手を当て自分の方に無理やり向かせた。
「......!!」
急に来た博臣の手、ヒンヤリとした彼の手は火照った頬を戻すのに十分だったのだが、強制的に博臣の方に顔を向けられたことで志帆の心臓はドクリと跳ねた。
不敵に口角を上げて笑う博臣。艷やかな柳緑色の瞳に射すくめられた志帆は、背筋がゾクリと震えた。
こんな表情を浮かべている時の博臣が取る行動に対して、志帆はいい記憶がないからだ。
「なぁ?志帆」
耳元で囁かれる甘く蕩けた声に志帆の背筋はビリビリと電気信号が走る。
対して硬直した志帆を楽しげに博臣は喉を鳴らす。
「このままキスされるのと、
素直になって俺と祭りに行くのどっちがいい??」
細長い指を志帆の赤い唇をなぞるように宙で動かす。
いつになく色っぽい行為を意図的にやる博臣は、格好良く様になっていて志帆は頬を紅潮させる。
「……ず…ズルい!!」
「素直にならない志帆が悪いんだぞ?」
ゆっくりと顔を近づける博臣。志帆は沸騰しそうな勢い真っ赤になりながら口を開いた。
「い……行きます!!」
「何処に行くんだ??」
「だからお祭り!!」
「誰と??」
「……ッ!!ひ…博臣と!!」
「よく出来ました」
ニコリと笑うと博臣は志帆の頬に口づけ、頭をポンポンと撫でた。
「もう…子ども扱いしないで!!」
「さっさと本音を吐かないのが悪い」
不服そうに口を尖らせる志帆に、博臣は毒を吐く。そんな彼は完全にしてやったりの満足げな笑みを浮かべていた。またもや彼の手のひらで転がらされてしまったと悔しげに志帆は睨む。
「……煽っているようにしか見えないぞ」
「うっ…うるさい!!!」
神経を逆なでする博臣の言葉に志帆は頬を膨らますと立ち上がった。そんな彼女の反応に博臣は嬉しそうに喉を鳴らす。
「約束忘れんなよ」
扉の取っ手に手をかけた志帆の背に博臣は声をかける。
「わかってるよ……」
その言葉に志帆は振り向くことなく返答すると部屋から出ていくのだった。
秋人はこれ以上ここにいる必要もないので帰宅。だが、彼は思いつめている表情を浮かべていて志帆にとってはそれが気がかりだった。
「...志帆」
「何??」
よって必然的に残されたのは博臣と志帆。3人を見送った彼らは当然のように自然と博臣の部屋へ入る。
いつからかわからない。だが、必然的に付いていた習慣的なもの。
でも、それは志帆にとっては。有難かった。従事者など第三者の目が光る中だと、どうしても志帆は身構えてしまう。側近として気軽に名瀬の者に接していたら、他の者に示しがつかないからだ。
そんな志帆の心中を察してなのかは、定かではないが博臣のさり気ない心遣いは有難かった。
「今年はどうするんだ?」
「別にこれといった仕事は入ってないからなぁ...」
志帆はソファーに身を預けるように深く座ると天井を仰いで思考を巡らした。
この時期、この一帯で行われるお祭りが存在する。
"長月灯篭祭"
側近になって一度も予定が噛み合う事がなかったため祭りに行ってないのだ。だが、今年は珍しく空いている。いや、実際は栗山未来の監視と手助けが仕事としてあるのだが、まぁ現実的に今は長期休暇みたいなものを貰っているものとして志帆自身が勝手に認識している。
「予定無いなら一緒に行くか?」
「??何処に?」
「決まってるだろ?お祭りだよ」
「皆で??」
珍しく、少し距離を開けて座った博臣がポツリと漏らした一言に志帆は呆気に取られて間の抜けた表情を浮かべることに。
対して、いつになく勇気を振り絞って誘った博臣としては本意が伝わらなかったことに眉を顰めた。
「二人でだ!!」
「………?!?!」
少し赤らめた顔で博臣は志帆の方を向くと声を張り上げる。
いつものようにおちゃらけているわけでなく真剣な眼差しの博臣に、志帆の心臓はドクンと高鳴った。
率直に言って嬉しい
そう思ったのだが、残念ながら素直になれないのが志帆。
「本気で言ってる??」
「あぁ…本気だ」
「あの祭りの風潮を知ってて言う??」
長月灯篭祭は、いつからか巷ではカップル御用達になっているのだ。別に友達とだって、家族とだって、一人でだってどうやって誰と行こうと決まりはない。
だが、どう考えても学校の知り合いに見つかったら噂くらいは流れ兼ねない。
「あぁ…」
「……美月と行けばいいじゃない」
「確かに、兄妹睦ましげに祭りに行くのも悪くない
だが、俺は志帆と一緒に行きたいんだ」
直球の博臣の言葉に必死さが伝わり、思わず志帆は視線を目に落とし忙しなく右往左往させる。サッと無意識で片耳に髪をかける志帆。そんな志帆の耳はほんのりと赤く染まっていた。
誘いを受けるべきか、それともやんわりと断りを入れるべきかと志帆は迷う中、なかなか返事をもらえない博臣は肩をガクリと落とした。
「…………嫌か?」
弱弱しい博臣の小さな声に志帆はハッと顔を上げた。
「い…嫌じゃない」
「じゃあ、なんでためらうんだ?」
「だ……だって…」
「だって??」
俯き言葉を濁しながら目線を泳がし懸命に志帆は言葉を探した。そんな彼女の心情を察してか博臣は優しく声を掛けながら志帆の言葉を待った。
「変な噂流したくない」
「志帆となら大歓迎だが?」
「博臣がよくても私は嫌だ」
名家の長男、加えて美貌の持ち主。よって彼の性癖を知らない女性からは黄色い声援を浴びるくらいモテるのだ。
そんな彼とほぼ学校に登校していない見ず知らずの女が祭りの日に隣で歩いていたら確実に反感しか買わないに決まっている。
そんなちっぽけな話で博臣に迷惑をかけたくないのだ。それだけで収まればいいが、泉達の耳に入ったら溜まったものじゃない。
絶対そんな不祥事を起こしたくないと志帆は駄々をこねるよ子供のように首を横に大きく振った。
そんな彼女に博臣は困った表情を浮かべた。
「志帆の本心は嫌じゃないんだよな?」
「.........うん」
「志帆がホントに嫌だったら俺はもうこれ以上誘わない。
だが、そうじゃないなら素直に引き下がれないな」
博臣はそう言うと志帆との距離を狭めた。対して、真っ直ぐな博臣の目を志帆は見れずバツが悪そうに俯いた。
「もう一度聞くが、志帆は俺と二人で祭りに行きたくないのか?」
「............行きたくない」
「嘘だろ?
ちゃんと目を合わせて言え」
気不味い空気の中、志帆は数秒の沈黙後に声を絞り出すように呟く。が、自分を見ないで言った志帆の言葉が本心で無いと博臣は見抜き、彼女の顎に手を当て自分の方に無理やり向かせた。
「......!!」
急に来た博臣の手、ヒンヤリとした彼の手は火照った頬を戻すのに十分だったのだが、強制的に博臣の方に顔を向けられたことで志帆の心臓はドクリと跳ねた。
不敵に口角を上げて笑う博臣。艷やかな柳緑色の瞳に射すくめられた志帆は、背筋がゾクリと震えた。
こんな表情を浮かべている時の博臣が取る行動に対して、志帆はいい記憶がないからだ。
「なぁ?志帆」
耳元で囁かれる甘く蕩けた声に志帆の背筋はビリビリと電気信号が走る。
対して硬直した志帆を楽しげに博臣は喉を鳴らす。
「このままキスされるのと、
素直になって俺と祭りに行くのどっちがいい??」
細長い指を志帆の赤い唇をなぞるように宙で動かす。
いつになく色っぽい行為を意図的にやる博臣は、格好良く様になっていて志帆は頬を紅潮させる。
「……ず…ズルい!!」
「素直にならない志帆が悪いんだぞ?」
ゆっくりと顔を近づける博臣。志帆は沸騰しそうな勢い真っ赤になりながら口を開いた。
「い……行きます!!」
「何処に行くんだ??」
「だからお祭り!!」
「誰と??」
「……ッ!!ひ…博臣と!!」
「よく出来ました」
ニコリと笑うと博臣は志帆の頬に口づけ、頭をポンポンと撫でた。
「もう…子ども扱いしないで!!」
「さっさと本音を吐かないのが悪い」
不服そうに口を尖らせる志帆に、博臣は毒を吐く。そんな彼は完全にしてやったりの満足げな笑みを浮かべていた。またもや彼の手のひらで転がらされてしまったと悔しげに志帆は睨む。
「……煽っているようにしか見えないぞ」
「うっ…うるさい!!!」
神経を逆なでする博臣の言葉に志帆は頬を膨らますと立ち上がった。そんな彼女の反応に博臣は嬉しそうに喉を鳴らす。
「約束忘れんなよ」
扉の取っ手に手をかけた志帆の背に博臣は声をかける。
「わかってるよ……」
その言葉に志帆は振り向くことなく返答すると部屋から出ていくのだった。