長月灯篭祭
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「栗山さんて博臣たちの家に来るの初めてだったよね、名瀬家はここら辺じゃ知らない人はいない昔からの大地主で同時にこの一体の異界士も束ねているんだ。」
部活後、未来を連れて彼らが来たのは博臣と美月の家。つまり、名瀬家の目の前に来ていたのだ。
「まぁ逆らわない方が無難だよ」
ヒソヒソと未来の耳に秋人が吹き込む。だが、その内容は筒抜け。
「聞こえているわよ」
「秋人……当人達目の前にしてよく言えるね」
「…だって事実だろ?」
顔を顰めて秋人を一瞬見た美月と志帆が言い捨てる。それに秋人は言い返すように呟くのだった。
そんな中、家の玄関から出てきた男性が彼らを見て大きく眼を見開き近づいてきた。
「あ、丁度よかった!
名瀬博臣さんと美月さん
そして、瀬那志帆さんですよね?」
「あなたは?」
訝しげに彼を見て博臣が尋ねるとその人物はニコやかに笑い3人に握手を交わしながら挨拶をするのだった。
「異界士協会の藤真弥勒です、はじめまして」
「何故?私の事も知っていらっしゃるのですか?」
志帆は、目の前の彼を警戒する。
そんな彼女を気にすることなく藤真は爽やかな笑顔を浮かべた。
「もちろん知ってますよ
名瀬家の当主の側近として代々仕えてきた瀬那家の長女さん
不慮の事故でご両親が亡くなった事はホントに残念でしたね」
「しょうがありません
それが私達瀬那一族の使命ですから」
志帆は一切嘆く素振りを見せることは無かった。側近として傍にいる以上、覚悟はできている。名瀬のためなら命を投げ出す覚悟を。
真っ直ぐに、藤真を見る決意の籠もった青色の瞳に、藤真はうっとりとし目を細めた。
「いい目をしてますね。
それに肝が座ってますし、聞いてた話以上に別嬪さんだ。
今度お茶でもどうです?」
「一体どういう...」
褒められた?と思いきや、下心見え見えの軽々しいナンパみたいなお誘い。でも、志帆が引っかかったのは彼が一体誰から自分の事を聞いたか。
テンポよく展開が変わる会話に思考が追いつかず困惑する志帆。そんな彼女の前にサッと博臣は守るように警戒心むき出しで躍り出た。
「すみませんが、そのようなお誘いはしないでくれませんか」
「おっと、コレは失礼
志帆さんには随分とガードが硬いナイト様が付いていらっしゃるようですね
まぁいいでしょう
僕が話さなくてもいつか貴女が知る時が来ますよ」
「…それはどういう…」
「さて、泉さんに挨拶していきたかったのですがちょっと時間がなくてね
よろしく伝えといてください」
そう言うと藤真は、秋人が端に逸れることで作られた道を潜ろうとする。その時、藤真は秋人を一睨みすると、動揺する志帆にグッと近づき耳に小さく囁いくのだった。
「今度、誰も邪魔され無いところでゆっくりと話しましょ志帆さん」
*****
「何なのあの人...」
乗ってきた黒い車に乗る、藤真の後ろ姿に志帆はボソッと独り言を漏らした。そんな彼女に博臣はため息をしながら釘をさす。
「志帆...アイツと二人きりで会うんじゃないぞ」
「…………わかってるわよ」
「何だその間は」
「協会の人って始めて見ました
噂くらいしか聞いたことなかったので」
そんな二人のやり取りは未来の独り言で中断させられた。
「噂??」
「組織の内部を暴こうとすると……殺されるとか」
そんな未来の言葉に、美月は呆れ返り腕を組んでため息を吐いた。
「都市伝説よ
実際は異界士証の発行をメインに公には一切残らない異界士の情報収集と管理を一手に引き受けている異界士会におけるお役所みたいなものよ」
「そうなんですか??」
驚きの声をあげる未来に、何度めかわからない美月のため息が吐かれた。
その二人のやり取りを黙って聞いていた志帆からすれば未来の言った噂話も美月の話もどちらも当たってるようなものだろうか。表向きでは確かにお役所のようだが、影では外では言えないような事もしてるのは事実だ。
まぁ、コッチも人のこと言えないか
大人の事情ってものはホントに面倒くさい。が、それに逆らえるほどの力を持ってないため従えざる負えない。この状況に志帆は自嘲気味に笑みをこぼした。
「......どうした?志帆」
「ううん、なんでもない
行こっか」
志帆の僅かな変化を察した博臣は眉を顰めた。そんな心配そうに自分を覗く博臣に志帆は小さく首を横に振るのだった。
屋敷に入り、一直線で泉が居る部屋へ。志帆が扉をノックし、一行は部屋に入った。
泉から告げられた話…それは虚ろの影に接近したことについて。
決まりを破った未来は異界士としての活動を1ヶ月間停止処分を喰らい、異界士証もお預かりに。
秋人も虚ろの影に近づいたことをお咎めを喰らった。
「栗山さん、今後の話があるから少し残って」
そう泉に言われた未来と側近の志帆を残し、秋人達は退室した。3人になったのを確認すると泉は早速話を切り出すのだった。
「…殺せなかった?」
泉の冷たく凍るような言葉に未来は頷くしかなかった。
「言ったはずよ
秋人くんとは距離をとれと
境界の彼方は虚ろの影が憑依したことで明らかに弱っていた
貴女は境界の彼方を倒すチャンスをみすみす逃したの」
縮こまり蹲る未来。
そんな彼女を不憫に思い志帆が助け舟を出す。
「僭越ながら口を挟ませてもらいますが、あの状況では無理でした。
弱っていたにも関わらず以前よりも強大な力。
あの状態の境界の彼方を倒すのは厳しかったと思います」
「そう...
志帆がそこまで言うなら
でも、境界の彼方を放っておいたらその強大な力で世界を滅ぼす
そうなってからでは遅いのよ」
志帆の言葉に泉は一先ず今回は引き下がる。深く身体をソファーに沈ませ直すと、現実を見定めている泉は未来にキツい言葉を浴びせた。それにただ未来は頷くしかなかった。
「はい…」
「もう下がって良いわ」
「失礼します」
ゆっくりと未来が出る。それに続くように志帆が出て、部屋の中にいる泉に頭を下げ静かにドアを閉めた。
そんな彼女に未来はおどおどしながら口を開いた。
「志帆先輩」
「どうしたの?」
「庇ってくれてありがとうございます」
「別に
ただ単に私は思ったことを言っただけよ」
ぶっきらぼうに志帆は未来を見ることなく言うとスタスタと待っている彼らのもとへ。遅れるように未来も続いた。
「気にすることないよ、その気になれば泉さんは栗山さんを追放することも出来たんだから。しないってことはそういうことだよ、なぁ?博臣・志帆そうだろ」
肩を落とす未来を励ますように秋人は声を掛け、博臣と彼の隣に立つ志帆に同意を求める。未来はそれを聞きながらドスンとソファーに座る秋人の隣に腰掛ける。
「まぁ、そうとは限らないけどな」
「……泉様の考えなんて誰にもわからないよ」
「お前ら…いいから話合わせろよ!」
げんなりしながら突っ込む秋人。
対して、美月だけ違う方向を見ていた。一人突っ立っている美月にふと気づいた志帆が美月の視線の先を追う。
あ…もうそんな時期なのか…
志帆は美月の視線の先にあったものに気づき、悲しげに眉を顰めた。志帆の視界に映ったのはせわしなく2階の廊下を歩く従事者。その手には筒状のものが大切そうに包まれていた。
志帆は2階から視線を戻すと、ニヤリと笑い未来を見る。
「栗山さん…いいバイト知ってるよ」
「ほ…ホントですか?!?!」
驚く未来に対し、志帆の言いたいことを察した博臣は、未だに上の空の美月の名を呼んだ。
「美月」
博臣の声で美月はハッとして慌てて、彼らの方へ身体を向けた。
「バイト今年もやるんだろ?」
「え?ああ、まだ決めてないんだけど・・・」
「栗山さんにも紹介してくれないか?
わかるだろ?餓死してしまう」
言いよどむ美月に、秋人が必死に美月に頼み込んだ。
「......まあ別にいいけど」
「良かったね、栗山さん」
「はい!!」
相変わらず素直じゃない美月に、志帆は苦笑するとポンポンと未来の肩を叩いた。
このままでは家賃も疎か食費も危うい状況の未来に一筋の光が射し込んだ瞬間であり、未来は一気に目を輝かすと嬉しそうに頷くのだった。
部活後、未来を連れて彼らが来たのは博臣と美月の家。つまり、名瀬家の目の前に来ていたのだ。
「まぁ逆らわない方が無難だよ」
ヒソヒソと未来の耳に秋人が吹き込む。だが、その内容は筒抜け。
「聞こえているわよ」
「秋人……当人達目の前にしてよく言えるね」
「…だって事実だろ?」
顔を顰めて秋人を一瞬見た美月と志帆が言い捨てる。それに秋人は言い返すように呟くのだった。
そんな中、家の玄関から出てきた男性が彼らを見て大きく眼を見開き近づいてきた。
「あ、丁度よかった!
名瀬博臣さんと美月さん
そして、瀬那志帆さんですよね?」
「あなたは?」
訝しげに彼を見て博臣が尋ねるとその人物はニコやかに笑い3人に握手を交わしながら挨拶をするのだった。
「異界士協会の藤真弥勒です、はじめまして」
「何故?私の事も知っていらっしゃるのですか?」
志帆は、目の前の彼を警戒する。
そんな彼女を気にすることなく藤真は爽やかな笑顔を浮かべた。
「もちろん知ってますよ
名瀬家の当主の側近として代々仕えてきた瀬那家の長女さん
不慮の事故でご両親が亡くなった事はホントに残念でしたね」
「しょうがありません
それが私達瀬那一族の使命ですから」
志帆は一切嘆く素振りを見せることは無かった。側近として傍にいる以上、覚悟はできている。名瀬のためなら命を投げ出す覚悟を。
真っ直ぐに、藤真を見る決意の籠もった青色の瞳に、藤真はうっとりとし目を細めた。
「いい目をしてますね。
それに肝が座ってますし、聞いてた話以上に別嬪さんだ。
今度お茶でもどうです?」
「一体どういう...」
褒められた?と思いきや、下心見え見えの軽々しいナンパみたいなお誘い。でも、志帆が引っかかったのは彼が一体誰から自分の事を聞いたか。
テンポよく展開が変わる会話に思考が追いつかず困惑する志帆。そんな彼女の前にサッと博臣は守るように警戒心むき出しで躍り出た。
「すみませんが、そのようなお誘いはしないでくれませんか」
「おっと、コレは失礼
志帆さんには随分とガードが硬いナイト様が付いていらっしゃるようですね
まぁいいでしょう
僕が話さなくてもいつか貴女が知る時が来ますよ」
「…それはどういう…」
「さて、泉さんに挨拶していきたかったのですがちょっと時間がなくてね
よろしく伝えといてください」
そう言うと藤真は、秋人が端に逸れることで作られた道を潜ろうとする。その時、藤真は秋人を一睨みすると、動揺する志帆にグッと近づき耳に小さく囁いくのだった。
「今度、誰も邪魔され無いところでゆっくりと話しましょ志帆さん」
*****
「何なのあの人...」
乗ってきた黒い車に乗る、藤真の後ろ姿に志帆はボソッと独り言を漏らした。そんな彼女に博臣はため息をしながら釘をさす。
「志帆...アイツと二人きりで会うんじゃないぞ」
「…………わかってるわよ」
「何だその間は」
「協会の人って始めて見ました
噂くらいしか聞いたことなかったので」
そんな二人のやり取りは未来の独り言で中断させられた。
「噂??」
「組織の内部を暴こうとすると……殺されるとか」
そんな未来の言葉に、美月は呆れ返り腕を組んでため息を吐いた。
「都市伝説よ
実際は異界士証の発行をメインに公には一切残らない異界士の情報収集と管理を一手に引き受けている異界士会におけるお役所みたいなものよ」
「そうなんですか??」
驚きの声をあげる未来に、何度めかわからない美月のため息が吐かれた。
その二人のやり取りを黙って聞いていた志帆からすれば未来の言った噂話も美月の話もどちらも当たってるようなものだろうか。表向きでは確かにお役所のようだが、影では外では言えないような事もしてるのは事実だ。
まぁ、コッチも人のこと言えないか
大人の事情ってものはホントに面倒くさい。が、それに逆らえるほどの力を持ってないため従えざる負えない。この状況に志帆は自嘲気味に笑みをこぼした。
「......どうした?志帆」
「ううん、なんでもない
行こっか」
志帆の僅かな変化を察した博臣は眉を顰めた。そんな心配そうに自分を覗く博臣に志帆は小さく首を横に振るのだった。
屋敷に入り、一直線で泉が居る部屋へ。志帆が扉をノックし、一行は部屋に入った。
泉から告げられた話…それは虚ろの影に接近したことについて。
決まりを破った未来は異界士としての活動を1ヶ月間停止処分を喰らい、異界士証もお預かりに。
秋人も虚ろの影に近づいたことをお咎めを喰らった。
「栗山さん、今後の話があるから少し残って」
そう泉に言われた未来と側近の志帆を残し、秋人達は退室した。3人になったのを確認すると泉は早速話を切り出すのだった。
「…殺せなかった?」
泉の冷たく凍るような言葉に未来は頷くしかなかった。
「言ったはずよ
秋人くんとは距離をとれと
境界の彼方は虚ろの影が憑依したことで明らかに弱っていた
貴女は境界の彼方を倒すチャンスをみすみす逃したの」
縮こまり蹲る未来。
そんな彼女を不憫に思い志帆が助け舟を出す。
「僭越ながら口を挟ませてもらいますが、あの状況では無理でした。
弱っていたにも関わらず以前よりも強大な力。
あの状態の境界の彼方を倒すのは厳しかったと思います」
「そう...
志帆がそこまで言うなら
でも、境界の彼方を放っておいたらその強大な力で世界を滅ぼす
そうなってからでは遅いのよ」
志帆の言葉に泉は一先ず今回は引き下がる。深く身体をソファーに沈ませ直すと、現実を見定めている泉は未来にキツい言葉を浴びせた。それにただ未来は頷くしかなかった。
「はい…」
「もう下がって良いわ」
「失礼します」
ゆっくりと未来が出る。それに続くように志帆が出て、部屋の中にいる泉に頭を下げ静かにドアを閉めた。
そんな彼女に未来はおどおどしながら口を開いた。
「志帆先輩」
「どうしたの?」
「庇ってくれてありがとうございます」
「別に
ただ単に私は思ったことを言っただけよ」
ぶっきらぼうに志帆は未来を見ることなく言うとスタスタと待っている彼らのもとへ。遅れるように未来も続いた。
「気にすることないよ、その気になれば泉さんは栗山さんを追放することも出来たんだから。しないってことはそういうことだよ、なぁ?博臣・志帆そうだろ」
肩を落とす未来を励ますように秋人は声を掛け、博臣と彼の隣に立つ志帆に同意を求める。未来はそれを聞きながらドスンとソファーに座る秋人の隣に腰掛ける。
「まぁ、そうとは限らないけどな」
「……泉様の考えなんて誰にもわからないよ」
「お前ら…いいから話合わせろよ!」
げんなりしながら突っ込む秋人。
対して、美月だけ違う方向を見ていた。一人突っ立っている美月にふと気づいた志帆が美月の視線の先を追う。
あ…もうそんな時期なのか…
志帆は美月の視線の先にあったものに気づき、悲しげに眉を顰めた。志帆の視界に映ったのはせわしなく2階の廊下を歩く従事者。その手には筒状のものが大切そうに包まれていた。
志帆は2階から視線を戻すと、ニヤリと笑い未来を見る。
「栗山さん…いいバイト知ってるよ」
「ほ…ホントですか?!?!」
驚く未来に対し、志帆の言いたいことを察した博臣は、未だに上の空の美月の名を呼んだ。
「美月」
博臣の声で美月はハッとして慌てて、彼らの方へ身体を向けた。
「バイト今年もやるんだろ?」
「え?ああ、まだ決めてないんだけど・・・」
「栗山さんにも紹介してくれないか?
わかるだろ?餓死してしまう」
言いよどむ美月に、秋人が必死に美月に頼み込んだ。
「......まあ別にいいけど」
「良かったね、栗山さん」
「はい!!」
相変わらず素直じゃない美月に、志帆は苦笑するとポンポンと未来の肩を叩いた。
このままでは家賃も疎か食費も危うい状況の未来に一筋の光が射し込んだ瞬間であり、未来は一気に目を輝かすと嬉しそうに頷くのだった。