新たな脅威
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彼らにはいつもと変わらぬ日常が戻った。
相変わらず未来の記憶は戻らない。
でも、ぎこちない笑みを浮かべたり悩んだりすることは無くなっていた。
それは秋人と同じ。
二人は互いに手を取り合い前に歩き始めたのだ。
平穏が戻った文芸部。
そんな部室には、ひょっこりと博臣が顔を出すことが増えた。
部室に入り浸るようになった博臣に頭を悩ますのは志帆だ。
「やっぱり、ここにいましたか!!」
ドカドカと慌ただしく部室のドアを思い切り開けて入ってくる志帆は、そのまま秋人や未来・美月に目をくれることなく真っ先に彼が座る椅子の前で仁王立ちになる。
「...仕事か?」
そんな彼女の様子など気にする素振りを見せず、本をパタンと博臣は閉じる。
「そうです!ほら、行きますよ」
溜息混じりに肩をすくめながら博臣を促す志帆。そんな彼女を哀れみの目で見るのは、文芸部メンバーだ。
「志帆先輩...大変そうですね」
「バカ兄貴、志帆に迷惑かけないでよね」
「連絡ぐらいしてやれよな」
「そう思ってくれるなら、こうなる前になんとかしてほしいんだけど...」
「いやぁ、芝姫の選考でどうしても人手が欲しくて」
「あ...あぁ、あれまだ終わってないんだ」
「勝手に終わらせんな!!
志帆にも手伝ってほしいくらいだ!!」
「そうしたいのは山々なんだけどね...
ってヒャア!!」
「アッキーと仲包ましげに喋ってないで、俺にも構ってほしいのだが」
後ろからサッと抱きついてきた博臣。途端に志帆の背筋が凍りつく。
だが、博臣の後頭部にペットボトルがクリーンヒットして志帆から手が離れ倒れる。
「変態兄貴...サッサと志帆から離れて!!
キモい」
嫌悪感顕わにした美月が吐き出すように言う。
「美月、ナイス!」
身体をブルっと震わせた志帆は、早急に博臣から距離を取る。
そんな日常が、彼らにとって最高の日々だった。
ただ唯一変わったことと言えば、志帆が考え込むことが増えたことだ。
名瀬家の当主の側近としてお仕えする
その仕事に疑問を覚えたことはない。
むしろ誇りに思っている。
「...志帆??」
「あ、すみません」
「どうした?最近、様子おかしいぞ」
「そ...そうですかね?
疲れてるのかな」
なのに、悠が放った一声が脳裏から離れないのだ。
未だに自室の机の引き出しの中にはあの時貰った紙切れが入れられたままだ。
捨てきれず、連絡も入れられず役目を果たさない紙切れを志帆は茫然と見つめる時間が段々と増えていっていたのだった。
「博臣様...」
「だから二人きりのときは...ッ...!?」
溜息混じりに博臣は、指摘しようとするのだがふと胸元に唐突に飛び込んできた志帆に驚き言葉を失ってしまう。
「何も聞かないで...
少しだけ...少しだけ...ッ...こうさせて」
もう何が正解なのかわからない。
1人悩み悩む日々を続けていた志帆は、ある時耐え切れず博臣の胸元に飛び込むのだった。
嗚咽を堪えて震える声を上げて己の胸元で泣きじゃくる志帆。珍しい彼女の弱弱しい様子に、博臣は何も問いただすことなくそっと彼女の背に手を回すのだった。