凪
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
…チッ!!ぬかった!!
警戒心を怠っているつもりはなかった。だが、実際は注意散漫だったのだろう。
”凪”
”栗山未来”
”境界の彼方”
そして全部1人で抱え込んでいる志帆
一体何が起こっているのか?
泉が何を企てているのか?
1人になった博臣は歩きながら考え込んでいた。だから、全く気づかなかった。後を密かに付けている1人の人物に。博臣が気づいたときには不運にも背中に鋭い痛みが走ったとき。その痛みと共に地面に倒れ込んだ博臣は不甲斐ない自分自身に対して舌打ちをするとカツカツと近づいてくる足音の主を睨み上げた。
その主は、眼鏡のレンズ奥の瞳を細めてニヤリと不敵な笑みを浮かべていたのだった。
「無様ですね〜」
クククッと喉を鳴らし藤真は地面にひれ伏せている博臣を見下す。そして彼の様子を愉快そうに笑みを浮かべながら藤真は、薄紫色に光る触手を出現させる。それは、博臣の体に絡みついていき、強制的に両手を真横に広げられ膝立ちの状態まで持ち上げていった。
「...ッ!!は...離せ!!」
せめてもの抵抗にと博臣は眼光を光らせ睨めつける。
「離すわけないじゃないですか?
折角捕まえた獲物を」
不気味に笑いながら藤真は歩み寄ると博臣の顎に手をかけグイッと自分の顔を近づける。
「さて、大人しくついてきていただきましょうか?」
「...断る」
「こんな状況で強がりますねえ〜
指先が一歩も動かないでしょうに...
まぁ、威勢が良いのは嫌いじゃないですよ?」
ニヤリと笑う藤真の瞳に映るのは、強い意思が現れた柳緑色の瞳だった。
ギリッと歯を食いしばりながら睨む彼に藤真はゆっくりと彼の顎から手を離す。
「仕方ないですね
泉さんの弟さんに手荒な真似はしたくないのですが」
ため息混じりに藤真が言うと、博臣に絡みついている触手な力が強くなり博臣の身体が締め付けられていく。
「...グァッ!!!」
骨がミシミシと軋み、痛みに悶絶する博臣を横目に、藤真は辺りに視線をキョロキョロ向ける。
「そういえば、今日は一緒じゃないんですね?瀬那 志帆さんと?」
ニタリと笑いメガネの奥の瞳を光らせる藤真。そんな彼を見て、博臣の脳裏で警鈴が激しくなる。
痛みに耐えながらも、博臣は力を振り絞りガンを飛ばす。
「...ッ!?志帆に少しでも手を出してみろ?
そしたら俺は貴様をぶっ殺す」
ハァハァと荒い息を懸命にしながら先程以上の鋭い瞳になり、ドスをきかせた低く重たい声を発する博臣。
そんな彼の反応に面白いものを見たように藤真は目を丸くした。
「へぇ?そんな表情もできるんですねぇ?
今にも噛みつかれそうで怖い怖い」
芝居腐った演技で藤真は怖がるふりをする。それとは対照的に触手が博臣を縛る力がますます強くなっていく。
「...グァァァァ!!!」
「まぁ…ご心配しなくても彼女に手を出すつもりはありませんよ
借りに出したら僕が痛い目にあいますからね」
激痛で声を上げる博臣。だが、瞳は死んでおらず流石に藤真は目を丸くする。
「強情ですね!?
まぁこれ位にしときましょうか?」
触手から一気に解放された博臣は、フッと緊張の糸が解けたようにそのまま地面に倒れ込む。
だがチャンスだと、僅かながらの力を振り絞り、博臣は右手から淡い青い光を放とうとする。しかし、先を見通していた藤真はそれよりも先に彼の手首を掴み背中に押さえ込むように捻り上げると懐に忍ばせていたものをすかさず彼の片方の手首にかけるのだった。
「...クッ」
「残念でした。バレバレですよ」
金属音とともに感じたのはヒンヤリとした冷たい感触だった。手首に嵌まる銀色に光る輪から力が奪われていった。異能力無効化の手錠を嵌められたことを悟った博臣は悔しげに顔を歪めた。そんな彼に馬乗りになっている藤真はニタニタを笑いながらもう片方の銀色の輪を嵌めようと動き出す。その動きに対して鉛のように重い身体を博臣は必死に身じろがせ抵抗した。完全に両手を拘束されて不自由な状態にされるわけにはいかないと。が、藤真は意図も簡単に博臣を抑え込むのだった。
ガシャン
碌な抵抗も出来ず後ろ手で拘束されてしまった博臣は、全く動かない手に無駄だと思いながら意識を集中させる。が、案の定普段なら出るはずの淡い青い光は出てくることは無く、小さく舌打ちした。
「あぁ...無駄ですよ
その手錠は異能力を封じますから」
端正な表情を歪ませ地面にグッタリと力なく倒れている博臣を藤真は不気味な笑みで見下ろす。
クソ!!力が全く入らない
悔しそうに博臣は、唯一動く目で盛大に睨むが藤真からしたら痛くも痒くもない。
サラリと眼光を受け流すと藤真はゆっくりと彼の近くにかがみ、博臣を抱き上げ立ち上がる。そのまま満身創痍の博臣を停めてある黒い車の助手席に押し込んだ。
「...どこに連れて行く気だ!?」
「さぁどこでしょうか?
着いてからのお楽しみということで」
隣の座席からの殺気だつ鋭い瞳を藤真はおどけながら軽く受け流す。そして鼻歌をしながら軽快に車を発進させるのだった。