新たな脅威
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「わからず屋...
なんで独りになろうとすんの」
志帆は残された場所に座り込みウジウジとしていた。志帆の脳裏で反芻されるのは先程の博臣とのやり取り。結局、側近である自分は命令には逆らえないのだ。同じ立場じゃないことに悔しいと志帆は実感した。最初は、隣に入れるだけでいいと思っていた。だが、それではダメなことに志帆は仕事をこなす内に気づいてしまったのだ。
「どうすれば…」
重たい重責を担う彼の心の支えになれるのだろう…
志帆は重たい息を吐き出した。が、その時志帆の周囲を流れる空気が張りつめた。それに気づいた志帆は立ち上がると辺りをキョロキョロ警戒し始めた。
「誰?出てきなさい」
鉄扇を取り出し志帆は、一点を見つめ瞳を鋭く細める。
「出てこないなら...ハッ!?」
実力行使で引きずり出してやると志帆が構えた途端、フードを被った人物が姿を現す。
「泉様...じゃないわね?誰...あんた」
「嫌だなぁ...忘れちゃいましたか?」
独特の抑揚を付けた喋り方。背筋の凍るような声に、志帆は目を見開く。
そんな一瞬の硬直を見逃すまいと、その人物から触手が現れ刃のように襲いかかってきた。
「......!?!?」
慌てて志帆は、宙に飛び上がりかわすと鉄扇を広げ一振り。
「チッ!!」
だが、すぐ様再生する触手を見て無駄かと舌打ちをした。
さて、どうすればいいか?
次の策を練りながら地面に降り立った志帆は目の前に鎖の壁を作りそこから鎖をさらに伸ばして触手を締め付け消滅させる。
淡い橙色の光が散り散りと宙に舞う中、対峙している相手を志帆は睨めつける。
「流石ですねぇ〜
でも、足元がガラ空きですよ?」
ニタリと不敵に笑う彼の言葉にハッとした志帆だが、次の瞬間彼女は逆さに釣り上げられる。
「クソッ!!」
気づかないうちに触手は志帆の足首を絡みついていたのだ。
そして軽々しく浮いた志帆の身体は勢いよく地面にたたきつけられる。
「...カハァ!!」
衝撃でうめき声を上げた志帆は、痛みに歯を食いしばりながら耐える。そして拳を握り立ち上がろうとするのだが、それを拒むように触手が絡みついてきた。
起き上がらせないように触手が地面に這いつくばる形で志帆の身体に絡みつき強く締め上げる。
「グッ...」
身動きの取れない彼女にゆっくりとした足取りで彼は近づいてきて、彼女の前で屈み込んだ。
「お前!?何が目的だ...」
「...貴女の心の闇を見せてもらおうと思いましてね」
眼帯をしていない左眼に覗き込まれる志帆は一気に襲いかかる恐怖を感じた。
不気味な触手と同じ色の瞳。その奥にはゆらゆらと揺れる黒状のもの。
そこに意識を吸い取られ持っていかれる感覚を感じた志帆の瞳はゆっくりと光を失いかけ始める。
「…ッ…志帆!!!!」
闇に蝕まれ始める彼女の耳に聞こえたのは懐かしい声。
ずっとずっと探し求めていた主の声。その声が、彼女の心に光を灯したのか彼女の瞳は揺れ動いた。
と、同時に光り輝く橙色の鎖があたり一面を埋め尽くした。
「たく...どんなからくりをしてんだ?」
掻っ攫うように抱き寄せた志帆をギュと握りしめるのは悠。
目の前の黒い物体から目をそらすことなく宙に浮いた悠は、地面に衝撃で後ろに下りながらも着地する。
「悠兄さん??」
焦点が定まらない瞳で、朧気ながら見える悠の姿に志帆は己の目を疑った。
「おう!俺だぜ、志帆」
不安げに瞳を揺らす志帆に悠はニカリと笑いかけた。
「悠兄さん!!」
志帆は、思い切り悠の首に腕を回すと離さまいと力を込める。
「会いたかった...」
「いきなり一人ぼっちにさせて悪かったな」
子供のように感極まって泣きじゃくる志帆を悠は申し訳無さそうな表情を浮かべながら彼女の頭に手を乗せた。
「さて、折角の兄妹の再会を邪魔するものはご退場願おうか」
鋭く藍色の瞳を光らせた悠はサッと手を翳す。すると、一気に鎖は生き物のように動き始め黒い物体へ一直線。
一瞬のうちに綺麗サッパリになった地面にフワッと志帆を悠は下ろした。
「悠兄さん、藤真は?」
険しい表情で詰め寄る志帆に、悠は剽軽な表情に。
「藤真!?アイツはいなかったぞ?」
「え?嘘?」
信じられないと声を漏らす志帆に、悠は頭をフル回転させる。
「この物体のせいだろうな、恐らく志帆は幻を見てたんだろうな」
真剣な表情になり、悠は目を険しくした。そして、志帆を抱き寄せた。
「どうしたの?悠兄さん」
珍しく自分に甘い彼に志帆は戸惑いの声を上げ、上目使いで彼を見る。
「志帆が無事で良かった」
ホントはまだ姿を現すつもりのなかった悠は、志帆の危機を感じ一目散に飛び込んだのだ。
自分のとった行動は間違ってなかったと同時に悠は、博臣のシスコンぶりを笑えないと自嘲するのだった。
そして二人は久々の再会を分かち合おうとするのだが、この状況下それは許されなかった。
ズドーーン!!!
突如地響きが起こった事で志帆と悠は、互いに顔を見合わせ緊張感を漂わせた。
「悠兄さん!!あれ!」
「なんだ?あれは?」
二人の視界に映ったのは、空へ突き上げるように上がった禍々しく黒い雷を伴った柱状のもの。
一瞬で、それは消えるが志帆は新たな別の違和感を覚えて、咄嗟に悠の名を叫んだ。
「秋人が危ない!!悠兄さん!!」
「わかった!!
ったく、お前ら二人揃って人使い荒いぞ」
志帆の頼みを察した悠は舌打ちを打ち悪態をつきながら彼女の手を引いて走り出す。その悠の言葉を焦っていた志帆はすっかりと聞き零していた。そんな志帆は一台の漆黒の車の前に誘われた。
悠は慌てながらも落ち着いた様子でサッと己の車のドアを開けた。その車内に志帆はすかさず乗り込んだ。悠は助手席のドアをすぐさま締めると自身は運転席に急いで乗り込んだ。
「どっちだ?志帆」
悠はシートベルトを急いで締めながら志帆に尋ねる。その問いに対して志帆は能力を展開させながらアッチと指差す。その方向へ悠は急ぐように車を走らせ始めるのだった。