新たな脅威
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「未来…」
意識を取り戻した桜が上体を起こしながら未来を見る。
対して、起き上がった秋人は博臣の隣に並んだ。
「檻を簡単に…」
信じられないとポツリと声に漏らす博臣。そんな彼の身につけていた服装に秋人は眉を顰める。
「それより、その格好はなんだ?」
「気に入ってくれたか?
アッキーのセンスに合わせて誂えたんだぞ」
秋人の訝しげな眼差しを博臣は気にすることなく、得意げに秋人にスーツを見せつける。そんな相変わらずの彼に秋人は深い溜息をついた。
「…僕はどんなセンスしているんだよ」
「そう?違和感ないけど??」
「遂に、志帆の目もおかしくなったか?」
「それよりも、あの男でしょ?」
博臣の服装についてあーだこーだ言ってる3人の後方から棘のある言葉がかけられる。一同が振り返るとそこには呆れて顔の美月がいた。が、博臣は気にすることなく目を輝かして美月に一歩一歩近づこうとする。
「アッ…美月!
なんという可愛さだ。
高校3年になって、また1段と妹として磨きがかかってきたな。」
「お前、毎日会ってるんだろ」
博臣の改まった言葉に、秋一は呆れ返った顔をする。
「いや、目にするのはおよそ2週間ぶりだ。
家が広いとそんな問題も起きるんだな。」
感動し感嘆の声を漏らす博臣を差し置いて、彼らの脇を抜ける美月。そんな彼女を横目で追いながら、秋一と志帆はげんなりとした表情を浮かべるのだった。
「どう考えても意図的に避けられてるだけだと思うが?」
「そうそう…私は毎日会ってますし」
一方で博臣の脇を通り抜けた美月は、座り込んだままの未来の隣にしゃがみこんだ。
「栗山さん」
「は…はい。」
「さっきの男、何か言ってた?」
美月の言葉に一瞬未来は後ろにいる秋人に眼を向ける。その視線に気づき秋人は一瞬だけ未来を見るがすぐ視線を反らす。そんな彼から悲しげに未来は視線を戻し下を向くとポツリポツリと話し出した。
「聞かれました。
自分は何者か、知りたくはないのかと…」
未来はギュッと拳を握りしめると意を決して立ち上がった。
「あの…教えてくれませんか?」
「何を…」
「私のことです。
し、知ってるんですよね。」
拳を握りしめながら未来は震える声で周りを見渡した。
「皆さん、私が何者で何をしてきたか…」
そして未来は秋人に詰め寄るように徐々に声を高ぶらせながら言葉を投げかけた。
「先輩は誰なんですか?
私が何者か知ってて、私と関わりがあって、それで!」
「栗山さん」
未来の声に重ねるように秋人は彼女に背を向けたまま彼女の名前を呼ぶ。
「何度も言ったろ。僕は君が意識を取り戻した時にたまたま居合わせただけなんだ。」
「だったら!」
未来は俯きながら声を上げる。
脳裏に浮かぶのは最初に出会った屋上の光景。
自分を見て、悲しげな表情を浮かべる秋人。
「だったら!だったら、なんで先輩はあの時あんなに悲しそうだったんですか?どうして、私を見て涙を流したんですか?」
瞳に涙を浮かべながらしきりに訴えかける未来の言葉。
秋人は未来の言葉にビクリと肩を震わせた。
「先輩!」
眉間にシワを寄せて、未来に眼を向けずに秋人は耐えた。
真実を喋れたらどれだけ楽になるだろうか?
それでも秋人は未来に真実を話したくなかった。そのために、周囲に口止めをさせ、前と同じ環境に置くことを拒んだ。
それが彼女のためだと信じて。
ギュッと苦しそうに眼を瞑る秋人。
そんな彼の様子を見て、仕方がないと博臣は秋人の前にサッと出ると未来に対して口を開いた。
「分かった。真実を教えよう。
アッキーは極度のメガネフェチ。可愛い女の子とあれば、誰それ構わず襲いかかりメガネをかけさせるという…
事件一歩手前の男なんだ。」
芝居かかった博臣のセリフ。それに便乗する形で美月と志帆も話し出す。
「そんな男がたまたま、出くわした貴女にメガネをかけてくれと言い寄った」
「だけど貴女に断られてしまった…
そのことに秋人はあまりのショックで泣き崩れてしまった…
っていう結末よ」
黙って3人の言葉を聞いていた未来はゆっくりと顔を上げると、秋人に苦しそうに尋ねた。
「本当ですか?
本当にそれが真実なんですか?」
秋人の声を求める未来に、秋人は辛そうに顔を歪ませるとゆっくりと口を開いた。
「あー…」
その言葉に、涙が溢れそうになる未来は悲痛な表情を浮かべ必死に俯き涙が出ないように堪える。
「………分かりました。」
ギュッと拳を握りしめ悲しそうに俯く未来に、美月は良心が傷まれる想いを感じながら未来に語りかける。
「たまたま最初に会ったのが秋人だったから、何か運命を感じるのかもしれないけど…」
「すみません。ありがとうございました。」
未来は小さく頭を下げると、この場から逃げるようにカバンを拾い走り出した。
胸が張り裂けるように苦しかった。
彼らの話しが嘘だと言うことが嫌でも未来にはわかったのだ。
どうしてここまでして先輩は自分を避けるんですか??
未来の瞳から自然に涙が溢れ頬に伝った。
そんな彼女を追うように、桜も慌てて走り出すのだった。