虚ろの影
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「いただきます!!!」
未来は秋人のおごりで目の前の料理にかぶりつくようにパクパクと口に箸を運ぶ。
急ぎながら食べる未来を秋人は呆れながら見る。
「…ゆっくり食べたら?」
「血が完全に足りてない感じなんです!!鉄分補給なんです!!」
掴みかかる勢いで未来は口を開く。
そして、未来は訝しげに机に置いてある妖夢石を見る。その妖夢石は、虚ろの影が消えた場所から出てきたものだった。
「それに…これが虚ろの影じゃないなんて…
しかもたった200円とかありえないです!!
苛立ちを露わにする未来。
そんな彼女を横目に秋人は頬杖しながら呟いた。
「彩華さんは嘘をつかないと思うけど……」
「じゃあこれはなんなんですか!!」
噛みつくような勢いの未来に秋人は目を向けることなく言葉を吐き捨てた。
「……僕が知るわけがないだろ?」
その言葉に未来は押し黙ってしまう。
どうしようと会話の糸口を探す未来の目に留まったのは秋人の目の前に置かれている料理だった。
「……先輩は食べないんですか?」
「うん」
小さく頷いた秋人はゆっくりと席を立った。
「何処行くんです?」
「ちょっとトイレ…」
そう言い、その場を離れた秋人。だが、その足取りを止めると未来に気になっていたことを尋ねる。
「あのさ…
僕は普通の人間に見える?」
その言葉の真意を少し考えると未来はふわりと笑いこう返したのだった。
「そうですね…ただの性格の悪いメガネ好きな先輩に見えます」
未来の言葉に、秋人は思わず眉を顰めた。
「……なんだそれ?」
一方………
ある一室では、
泉の少し後ろを歩く志帆がいた。
その手には赤い布。その上から大事そうに紫色に光る大きな石を持っていた。
「それか…」
椅子に座る者…泉にとって祖父にあたる者が、ゆっくりと確かめるように志帆が持つ石を指差す。
その言葉に泉が返事をする。
「はい。虚ろの影を回収しました。
これで暫くは異界士協会の動きを止められます」
その言葉に彼は満足げに頷く。
「…よくやった。君は下がって良い」
「...失礼します。」
君という言葉は、志帆に向けられたもの。
すぐ様察した志帆は小さく頭を下げると部屋を出る。
泉と祖父だけになった一室は、志帆がドアを閉める音が響き渡る。
「...アヤツの耳に入ってないだろうな」
志帆が退出した途端に祖父は口火を切り出す。
「入ってないと思います」
「それならいいんだ。
折角の優秀な人材だ。できれば失いたくないものだ」
「...そうですね。
悠にまだ及びませんが凄く志帆は優秀です」
珍しく間を開けた泉に祖父は違和感を感じ取る。
「...どうした?悠を気にしてるのか?」
「い...いえ」
言葉を濁しながら答える泉の瞳は、若干揺れていて祖父は泉の複雑な感情を感じ取った。
「無理もないか」
泉の様子に祖父は息をつく。
が、鋭い眼光を宿した瞳を細める。
「だが、アイツは反逆の意思が見られる」
「あくまで噂です」
「異界士協会に入り浸っているという噂が流れる時点で、既に黒だ」
祖父の言い分に言い返す事が出来ず、泉は押し黙る。
「もし、アヤツが志帆に近づいて裏切りを助長させたら...殺れ」
躊躇の全く無い祖父の冷酷な言葉に泉は思わず声を上げる。
「ですが!!
博臣と美月は志帆の事も悠の事も大事に思ってます。」
「だからこそ、お前に言ってるんだ。
博臣は個人的な情に左右されやすい。
特にあの子に関してはな」
「……わかりました」
唇を噛み締めながら、泉は頷くのだった。
「いつもより長かったですね?」
部屋から出てきた泉に、外で待っていた志帆が声をかける。
「そうね」
そう言いながら、その一室を能力で鍵を閉める泉。だが、先程と比べ泉の様子がおかしいと志帆は感じ取り心配そうにに顔を見る。
「顔色悪そうですけど…大丈夫ですか?」
「えぇ…
それより、虚ろの影の管理厳重にお願いね」
「.......わかりました」
絶対に何かがあった
志帆はそう思った。だが、本人が言ってくれないとこれ以上突っ込むのは野暮だと思い、志帆は身を引いた。
側近という立場の歯がゆさを感じた。どうすれば当主の心の支えになれるのだろうか?
兄さん...貴方にはまだまだ敵いません
志帆は、泉に頭を下げ後ろに下がるとある一角にある台座に虚ろの影を置く。そして両手から淡い橙色の光を放つと瞬く間に鎖が虚ろの影に絡みつき中に消えていった。
さらにその上から何重にも鎖を張り巡らせたのだった。