新たな脅威
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「…志帆!?
名瀬に報告しろって言っただろ?」
なんで追いかけてきたと怒声を飛ばす博臣に追いついた志帆は臆することなく口を開く。
「得体のしれないものを統括1人で追いかけさせるような無下なことはいたしません」
志帆を突き動かすのはあくまでも側近としての使命感。確かに統括の命令は絶対だ。でも、その命令以上に重視しないといけないのは統括の命だ。決して博臣が弱いとは思っていない。だが、今回の相手に対して情報が少ない今、用心に越したことはないと志帆は判断したのだ。
その確固たる決意を耳にした博臣は、隣を走る志帆の横顔を一瞥すると小さく息をついた。彼女の凛々しい顔つきに説得は無理だと折れたのだった。
「はぁ…くれぐれも俺の傍を離れるなよ」
「それはコッチのセリフです」
互いに口角上げて一瞥すると二人は町中を走り抜けるのだった。
*****
「部活、どうするつもり?」
「いや、やっぱりバイトとかもしなくちゃいけませんし。」
学校帰り、未来と桜は二人並んで帰っていた。
「わたしが何とかする。小さい頃からの親友だから。」
未来の言葉に桜はふと足を止め未来を見据える。
「小さい頃…」
呟きながら、未来は後ろめたさげに目を反らした。彼女を見てもずっと一緒にいても全く見覚えがない。それでも記憶がない自分と傍にいてくれる桜には感謝しか無かった。表情を曇らせた未来は顔を桜に向けると頭を下げた。
「すみません。親友なのに、私…本当に全然覚えてなくて。」
「気にしないで。これからなっていけばいい…親友に。」
そんな彼女の両手を桜はそっと包み込むと柔らかく笑いかけた。
「はい」
その桜の言葉に未来は頬を緩ませ頷いた。そして二人は歩こうとするのだが、そんな二人の頭上を突如、黒状の物体が横切った。それに気づいた桜はハッとして警戒心を強めると、未来を守ろうと両手を広げた。
「い、伊波さん?どうしたんですか?」
突然の桜の行動に、未来は不思議そうに尋ねる。
そんな二人の前に、空から落ちてきた黒色の物体が人間の姿に変貌を遂げる。それに驚いた未来は上ずった声を上げた。
「な、何ですか?これ…CG?」
「違う。こっち!」
未来に対して冷静に状況を分析した桜は未来の手を掴み、逃げるように走り出した。
「伊波さん、どこへ!?」
「黙って、はやく!」
今は答えてる場合ではないと未来を急かし、桜は彼女を引っ張る。だが、二人の動きは角を曲がろうとした途端に阻まれてしまう。
「アッ!?」
桜は驚きながらも、目の前のフードを被った人物を射抜くように睨めつけ、ドスを利かせた声を発した。
「誰だ、お前!」
「…」
だが、目の前のフードを被った人物は桜の問に答えることはなかった。そんな無言を貫く人物から未来は警戒心を緩めることなく視線を逸らさぬまま背後にいる未来に声をかける。
「未来は逃げて」
「でも、伊波さん!」
「はやく!」
切羽詰まった必死な桜に、未来は気を押される。1人だけ逃げることを最初は渋っていた未来だが、桜の声に押され踵を返し走り出した。だが、その背に対して低い機械じみた声が掛けられた。その声はフードで顔が隠れている人が発した声だった。
「孤独な者よ…」
「ッ…!?」
「知りたくはないか?お前が何者か。」
「私が?」
その声に顔を強張らせた未来は足を止めた。そんな彼女にさっきいた、黒色の人間の形をしたものが襲いかかってくる。思わず、目を瞑る未来だが、一向に痛みや衝撃が来なく、感じるのは浮遊感だった。恐る恐る未来は瞑っていた目を開ける。すると衝撃的な光景が広がっていた。
「…!?」
広がっていたのは上から見下ろす住宅街。なぜか未来は空高く跳び上がっていたのだ。それに驚きのあまり未来は言葉を失う。が、彼女の身体は重力に従うように徐々に落ち始めるのだった。その事実に未来は悲鳴を上げた。そんな彼女を助けようとある人物が駆け寄ってきていた。黄色の髪を揺らし必死に彼は彼女の名を叫んだ。
「栗山さん!」
秋人は未来の身体が落下しそうな地点に飛び出し両手を広げた。すると見事に落ちてきた未来をキャッチすることに成功した。しかし、彼女を受け止めた衝撃で秋人の股は180℃に広がってしまうのだった。その痛みに秋人は思わず表情を歪め声を上げる。
「せ、先輩!あ、あ、ありがとうございます…」
ギュッと瞑った目を開ける未来は礼を述べた。だが目の前の秋人に抱えられていることに気づき、未来は慌てて恥ずかしそうにスカートの裾を伸ばした。対して、秋人は未来に目を向けずそっぽ向いたまま。そんな彼の頬はほんのり赤く染まっていた。そんな彼の両手から未来は転がって離れるのだった。そんな彼らの背後から二人分の足音が駆け寄ってきた。
「こっちが本陣か」
「大丈夫?二人共??」
「アッ、伊波さん!」
秋人たちの背後で足を止めたのは、追いかけてきた博臣と志帆だった。志帆が心配そうに声をかける中、顔を上げた未来の瞳に映るのは、力を失うように目を瞑ったまま博臣に抱えられている桜だった。
「心配するな、気を失っているだけだ。」
博臣は心配で瞳を揺らす未来に優音で声をかけると、肩に掛けていた桜の左腕を下ろしそっと地面に寝かせた。そして立ち上がり、志帆の隣に並んだ。
「……名瀬か」
フードを被った人物が角影からが姿を現し、小さな低い声を発した。彼を一瞥した途端、博臣と志帆は能力を展開させた。橙色と青色をそれぞれ手に纏わせた二人は目の前の不審人物にぶつける。だが四肢を鎖で拘束され且つ檻で囲われた人物は微動だにすることすらなかった。
「「グッ!!!」」
目の前の彼から発せられる威圧感に、気を抜けないと眉間にシワを寄せ、力を込める二人。だが、そんな二人の努力虚しく橙色の鎖はいとも簡単に破られてしまう。
「…嘘!?」
壊されたことで衝撃が己の手に跳ね返ってきて志帆は、伸ばしていた手を顔を歪めて引っ込めた。
対して散り散りになった鎖から溢れる淡い橙色の光に包まれたフードの人物は檻に指を当てて、線を横に書き始める。それは一筋の光になり檻を破壊するのだった。
バンッ!
「あっ!」
途端に博臣の手から青色の光が無くなる。衝撃で博臣が声を漏らす中、フードの人物は淡い橙色と青色の星屑の光に包まれながら指をパチンッと鳴らす。その指からは何故か博臣と同じ光が漏れ出ていて、志帆は思わず目を見開いた。その志帆の視界の先では、黒い物体が丸い物体に。フードの人物は丸くなった黒い物体とともに光に包まれ消え去ってしまうのだった。