新たな脅威
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”境界の彼方”が、秋人の体内に戻り数ヶ月が過ぎた。
新しい年度を迎え、皆それぞれ一学年進級した。
文芸部は相変わらず、進まない芝姫の選考を進め
秋人に美月は日頃の鬱憤を晴らそうと毒舌を吐きっまくっていた。
高校を卒業した博臣は、消息不明の泉に代わり当主になり名瀬家を取り仕切り、志帆はそのまま当主の側近として務めを果たしていた。
無事に問題は解決したと思われた。
だが、唯一戻ってきた未来の記憶は綺麗サッパリと消えていたのだった。
自分が呪われた一族であることも
”境界の彼方”と戦ったことも
焚き付けられた秋人はその場で泣き崩れてしまった。
”境界の彼方”の最後の抵抗か、それとも未来が命を繋ぐために失った犠牲なのかはわからない。
それでも秋人はその現実を受け入れられなかった。
*****
カツカツカツ...
靴音を鳴らし、結いだ銀色の髪を揺らしながら歩く志帆。腕に抱え込むように紙を握りしめて歩く彼女の表情は険しかった。
そして志帆は、ある扉の前で止まると息を整え姿勢を正すと、3回ノックする。
トントントン
「入れ」
扉の奥から聞こえた返事を聞くと、志帆は扉を押し開ける。
「失礼します」
部屋に入った志帆は、後ろ手で扉を閉めると彼の座る場所の前へ。
「どうした?志帆」
いつになく険しい表情を浮かべる志帆に、博臣はただ事でないと視線を鋭くさせる。
「実は、博臣様の耳に入れなくてはいけない案件ができまして...」
「志帆...
毎度言ってるが、二人きりのときくらい...」
溜息混じりに紡がれる言葉。
だが、志帆はその言葉に対し額に青筋を立てるとピシャリと跳ね除けた。
「なりません!!
それでは、他の者に示しが付きません!」
「...わかった。それで?」
不本意だが、志帆のご尤もな言葉に言い返す気力を失った博臣は深く息を吐いて座り直すと、本題に入れと志帆を促す。
「何者かに異界士が襲撃されました」
そう言いながら志帆は持ってきた紙を広げる。
「場所は?」
「ここです」
志帆はある一点を指差す。
「その異界士は?」
博臣の言葉に、志帆は顔を歪ませ力なくゆっくりと首を振った。
「....そうか」
志帆の様子に、博臣は事情を察し悲痛な表情を浮かべ俯いた。
だが、嘆く暇は無いと表情を戻すと志帆に目を向ける。
「何か他に情報はあるか?」
「襲って来たものは、フードを被った人物。顔は識別出来なかったそうです。その者は、黒い物体を使役して攻撃してきたそうです...」
「一体何が目的なんだ...」
「不明です...
すみません、これといった情報はまだ掴めていないです」
志帆は己の力不足に嘆き、頭を下げる。
「気にするな...
引き続き続けてくれ」
「承知しました」
博臣の言葉に再び志帆は頭を下げると、この部屋を後にするのだった。
*****
「志帆!!!」
今日も、徹夜かと思いながら一旦家に戻ろうと外を歩いていた志帆を後方から呼び止める声が聞こえ、彼女は足を止め振り返った。
「美月...」
駆け寄ってくる美月の姿に、志帆は思わず頬を緩めた。
「今日は仕事終わり??」
「いぃーや、まだまだこれから
取り敢えず一旦家に戻ろうと思ってね」
そう嘆く志帆の疲れ切った様子に美月は気づくと心配そうな表情を浮かべた。
「兄貴が迷惑かけてない?」
「そんなことないよ
突然当主になったのに良くやってると思うよ」
「じゃあどうして...」
「厄介な案件が来てね」
アハハと顔を引きつらせる志帆の言葉に美月は意味を知るために切り込もうとする。
「なにがあったの?」
「それは秘密」
「また、ワタシだけ除け者??」
拗ねたように美月は頬を膨らませる。そんな彼女に志帆は呆気からんと笑うのだった。
「大丈夫!
大事には絶対させないから
それより秋人はどう?相変わらず??」
「そうね...」
「はぁぁ、そっか...」
今度は逆に志帆が心配そうに美月に尋ねる。だが、案の定の返答に志帆は大きく項垂れた。
記憶を失った未来に対して秋人はあからさまに避けるようになったのだ。彼女の記憶が蘇らないようにと。
「不器用だね
彼女を想う余りに自分から遠ざけようとするなんて」
「…ホントね」
志帆の言葉に美月は小さく頷く。が、それは彼女にも言えると美月は志帆にジト目を向けた。
「でも、志帆も人のこと言えないわよね?」
「え??」
顔を引き攣られる志帆に、グッと美月は顔を近づけた。
「志帆は誰にも頼ろうとしないで1人でいつも抱え込むじゃない」
「…そっ…それは…」
「志帆の立場はわかっているつもりよ
でも、少なくとも兄貴には頼って良いんじゃないの??」
少し寂しそうにポツリと嘆く美月に、志帆は後ろめたそうに眉尻を下げた。
「無理だよ
側近は、統括の手足であると共に守る盾でもあるんだから。
その側近あろうものが統括を頼ったら示しがつかないしね…」
ボヤくように呟くと志帆は自分の気持ちと反して晴れやかな青空を見上げるのだった。
新しい年度を迎え、皆それぞれ一学年進級した。
文芸部は相変わらず、進まない芝姫の選考を進め
秋人に美月は日頃の鬱憤を晴らそうと毒舌を吐きっまくっていた。
高校を卒業した博臣は、消息不明の泉に代わり当主になり名瀬家を取り仕切り、志帆はそのまま当主の側近として務めを果たしていた。
無事に問題は解決したと思われた。
だが、唯一戻ってきた未来の記憶は綺麗サッパリと消えていたのだった。
自分が呪われた一族であることも
”境界の彼方”と戦ったことも
焚き付けられた秋人はその場で泣き崩れてしまった。
”境界の彼方”の最後の抵抗か、それとも未来が命を繋ぐために失った犠牲なのかはわからない。
それでも秋人はその現実を受け入れられなかった。
*****
カツカツカツ...
靴音を鳴らし、結いだ銀色の髪を揺らしながら歩く志帆。腕に抱え込むように紙を握りしめて歩く彼女の表情は険しかった。
そして志帆は、ある扉の前で止まると息を整え姿勢を正すと、3回ノックする。
トントントン
「入れ」
扉の奥から聞こえた返事を聞くと、志帆は扉を押し開ける。
「失礼します」
部屋に入った志帆は、後ろ手で扉を閉めると彼の座る場所の前へ。
「どうした?志帆」
いつになく険しい表情を浮かべる志帆に、博臣はただ事でないと視線を鋭くさせる。
「実は、博臣様の耳に入れなくてはいけない案件ができまして...」
「志帆...
毎度言ってるが、二人きりのときくらい...」
溜息混じりに紡がれる言葉。
だが、志帆はその言葉に対し額に青筋を立てるとピシャリと跳ね除けた。
「なりません!!
それでは、他の者に示しが付きません!」
「...わかった。それで?」
不本意だが、志帆のご尤もな言葉に言い返す気力を失った博臣は深く息を吐いて座り直すと、本題に入れと志帆を促す。
「何者かに異界士が襲撃されました」
そう言いながら志帆は持ってきた紙を広げる。
「場所は?」
「ここです」
志帆はある一点を指差す。
「その異界士は?」
博臣の言葉に、志帆は顔を歪ませ力なくゆっくりと首を振った。
「....そうか」
志帆の様子に、博臣は事情を察し悲痛な表情を浮かべ俯いた。
だが、嘆く暇は無いと表情を戻すと志帆に目を向ける。
「何か他に情報はあるか?」
「襲って来たものは、フードを被った人物。顔は識別出来なかったそうです。その者は、黒い物体を使役して攻撃してきたそうです...」
「一体何が目的なんだ...」
「不明です...
すみません、これといった情報はまだ掴めていないです」
志帆は己の力不足に嘆き、頭を下げる。
「気にするな...
引き続き続けてくれ」
「承知しました」
博臣の言葉に再び志帆は頭を下げると、この部屋を後にするのだった。
*****
「志帆!!!」
今日も、徹夜かと思いながら一旦家に戻ろうと外を歩いていた志帆を後方から呼び止める声が聞こえ、彼女は足を止め振り返った。
「美月...」
駆け寄ってくる美月の姿に、志帆は思わず頬を緩めた。
「今日は仕事終わり??」
「いぃーや、まだまだこれから
取り敢えず一旦家に戻ろうと思ってね」
そう嘆く志帆の疲れ切った様子に美月は気づくと心配そうな表情を浮かべた。
「兄貴が迷惑かけてない?」
「そんなことないよ
突然当主になったのに良くやってると思うよ」
「じゃあどうして...」
「厄介な案件が来てね」
アハハと顔を引きつらせる志帆の言葉に美月は意味を知るために切り込もうとする。
「なにがあったの?」
「それは秘密」
「また、ワタシだけ除け者??」
拗ねたように美月は頬を膨らませる。そんな彼女に志帆は呆気からんと笑うのだった。
「大丈夫!
大事には絶対させないから
それより秋人はどう?相変わらず??」
「そうね...」
「はぁぁ、そっか...」
今度は逆に志帆が心配そうに美月に尋ねる。だが、案の定の返答に志帆は大きく項垂れた。
記憶を失った未来に対して秋人はあからさまに避けるようになったのだ。彼女の記憶が蘇らないようにと。
「不器用だね
彼女を想う余りに自分から遠ざけようとするなんて」
「…ホントね」
志帆の言葉に美月は小さく頷く。が、それは彼女にも言えると美月は志帆にジト目を向けた。
「でも、志帆も人のこと言えないわよね?」
「え??」
顔を引き攣られる志帆に、グッと美月は顔を近づけた。
「志帆は誰にも頼ろうとしないで1人でいつも抱え込むじゃない」
「…そっ…それは…」
「志帆の立場はわかっているつもりよ
でも、少なくとも兄貴には頼って良いんじゃないの??」
少し寂しそうにポツリと嘆く美月に、志帆は後ろめたそうに眉尻を下げた。
「無理だよ
側近は、統括の手足であると共に守る盾でもあるんだから。
その側近あろうものが統括を頼ったら示しがつかないしね…」
ボヤくように呟くと志帆は自分の気持ちと反して晴れやかな青空を見上げるのだった。