虚ろの影
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「博臣と志帆は!?」
ハッと思い出したように秋人は立ち上がる。つられるように未来も立ち上がる。
周りをキョロキョロ見渡すと倒れ込む雫と彩華が見え、別の場所に博臣と志帆が倒れているのが見えた。
雫と彩華は意識を取り戻したのかふらつきながら立ち上がっていたが、博臣と志帆は一向に立ち上がる気配が無かった。
秋人と未来は二人に駆け寄る。
だが、二人の様子を視界に入れた秋人は拍子抜けしてしまう。後ろからついてきた未来は彼らの様子に顔をほんのりと赤く染める。
「…何してんだコイツら」
「コレは随分と微笑ましい光景やな」
遅れて覗き込んだ彩華も思わず心の声を漏らすほどだった。
仲良く並んで、スヤスヤと眠る博臣と志帆。二人の右手と左手は決して手を離さないと言わんばかりに固く絡みつくように握られていたのだ。
心配した俺の気持ちを返せと言わんばかりに秋人は気持ちよさげに寝る二人を盛大に睨めつける。
その殺気を感じ取ったのか、たまたまタイミングが良かったのか、うめき声を上げながらゆっくりと博臣が重たげに瞼を開ける。
柳緑色の瞳の焦点がようやくあった博臣は、秋人がいることに気づき内心ホッと胸をなでおろす。
「あ…アッキー?」
「気づいたか?博臣?」
「あぁ…」
博臣は左手を額に乗せながらゆっくりと上体を起こす。すると、博臣の背中にある傷が見えた秋人は表情を歪ませる。
そんな彼の心情に博臣は眉を顰めるが、それは一瞬だった。
「アッキー、俺に何か言うことがあるんじゃないか?」
秋人に目を合わすことなく紡がれた博臣の言葉に秋人はバツが悪そうに瞳を揺らした。
「………迷惑かけてすまなかった」
「謝ってほしいわけではないんだが?」
「…ありがとう。
博臣も志帆も彩華さんもニコさんもそして栗山さんも、僕を止めてくれて」
秋人はひとりひとりの顔を見渡し、頭を下げる。
そして未来に柔らかく微笑んだ。
「博臣…一つ聞いていいか?」
「なんだ??」
「その右手はなんだ?」
「あぁ……これか?」
さも当然のように繋がっている手を見つめる博臣。
距離があまりにもおかしすぎると秋人が訝しげに見る。
「見てわからないのか?アッキー?
志帆と手をつないでるんだ」
「それはわかるのだが…」
「なんだ?羨ましいか?」
「......そういうわけじゃない!」
「じゃあいいだろ?」
早々に話を切り上げた博臣は、志帆に視線を戻す。
秋人は、思わず言葉を失った。
なぜかってそれは、こんなに志帆に対して向ける博臣の表情は柔らかく慈愛が籠もっていたからだ。
「ほな邪魔者は、退散しましょうか?」
彩華が柔らかく微笑む。
ちなみに、その隣にはメラメラと瞳を燃やす雫がいて、それを見た秋人は苦笑いを浮かべていた。
「そうですね...
栗山さん行こうか」
「は... はい!!」
げんなりとしたまま秋人は彩華の言葉に頷くと、隣りにいる未来に話しかける。
そんな未来はほんのりと頬を赤く染めていた。
彼ら4人がこの場から居なくなると、一気に辺りが静まり返った。
まだ肌寒い夜風が二人に吹き付けていく。
誰にも邪魔されることが無い二人だけの空間。博臣は未だに目を醒まさない志帆から目を離すことは無かった。
う...ッ...
時々身じろぎながら声を漏らす志帆。そして離さまいとギュと握る力を込める彼女が、博臣はとても愛おしかった。
博臣は、そっと志帆の額にかかる前髪をかき分けると額に唇を落とす。
「早く、目を覚ませよ志帆」
あどけない表情でスヤスヤと眠る志帆に、博臣は不敵な笑みを見せるのだった。
目を醒ました後の志帆の行動は手に取るように博臣にはわかった。
その反応が見たいがために待っているのもあるのだが...
早く声を聞きたい
ガラス玉の様に輝く青色の瞳を見たい
出来ればその声を聞くのも、その瞳に映されるのも自分だけであって欲しい...
いつの間にか、博臣の志帆に対する感情は幼馴染の域を越えていたのだ。
博臣は眠り姫の様に一向に醒ます気配のない志帆の頬に手を添えると、ゆっくりと顔を近づけるのだった。
「う...うっ...」
瞼を微かに動かした志帆は、ゆっくりと重たい瞼を開ける。
定まらない焦点で志帆が見たのはかなりドアップの博臣。
エッ!?!?
意識が一気に戻った志帆は慌てて飛び起きる。
「おっと...」
ぶつからないように博臣は、近づけていた頭を避難させると爽やかな笑顔を浮かべるのだった。
「おはよう志帆
なかなか意識が戻ってこないから心配したぞ」
「博臣!!
今何をしようと...って、なにコレ!?!!」
顔を真っ赤にしながら抗議しようとした志帆。だが、ふと目線を落とした事で志帆は絶句してしまう。
金魚の口のようにパクパクと動かす志帆の様子に、博臣は楽しげにクスクスと笑う。
「どうしたんだ?志帆」
「ど...どうしたんだ?って
この状況は何!?なんで手を繋いでるの!!」
「志帆がやってきた事だろ?」
「いや...私は博臣の手に手を伸ばしただけで...って
ハッ!!」
「なんだ?てっきり俺は志帆が繋ぎたいのかと思ってしたのだが...」
「ち...ちがくないです」
今にも消えそうな小さな声で呟いた志帆の顔は茹でダコの様に真っ赤に。
何処かに穴があったら入りたい
何してるんだ...少し前の私!!
志帆は激しく後悔した。
「可愛いなぁ志帆は」
恥ずかしさで縮こまり、必死に顔を隠そうと手で覆う志帆を覗き込もうと博臣は距離を縮めようとする。
「...からかわないでよ」
毎度の様に今回だって反応をからかって楽しんでるんだと、ツンとくる鼻の痛みを感じながら志帆は博臣から距離を取ろうとする。だが、繋がっている手を急に引っ張られてしまう。
「からかってるように見えるか?」
志帆の視界に飛び込んできたのは、いつにも増して真剣な表情を浮かべる博臣だった。
いや…見えない…
薄々だが志帆は、気づいていた。時折、博臣が熱の孕んだ眼差しで己を見ている事に。そして、聡明な博臣自身も恐らく自分が抱く想いに気づいているだろうと志帆は踏んでいた。
でもその事実を認めてしまったら後戻りできなくなる。あくまで私達二人は、当主と側近の関係なのだから。
だからこそ、志帆は今回も博臣の本音を耳にする前に演技をして誤魔化す。
志帆がジッーと博臣を見つめる事、数秒。志帆は切り抜ける手段をひらめく。
「................................見える」
「なぁ!?!?」
「遂に、振り向いてくれない美月に対して過度のシスコンぶりがエスカレートして私にやるせない気持ちを?!」
残念なことに博臣の日頃の行いが仇となってしまった。
徐々に嫌悪感露わにして顔を引きつらせる志帆に、博臣は何とか志帆の被害妄想を正そうとするのだが...
「そういうわけじゃ...」
「絶対そうでしょ!!
あぁ!!もう!!私を巻き込まないで!!」
そしていい加減手を離して!!」
「だからコレは志帆が...」
「いや!よく考えたら私は握るような真似はしてない!!」
これでイイ
このままの関係で私は満足だから...
ズキッと痛む胸の痛みを感じながらも志帆は普段と同じようににこやかに笑った。
この二人による押し問答は、暫く続き、ギャアギャアと騒ぐ二人の声は止むことは無かった...
ハッと思い出したように秋人は立ち上がる。つられるように未来も立ち上がる。
周りをキョロキョロ見渡すと倒れ込む雫と彩華が見え、別の場所に博臣と志帆が倒れているのが見えた。
雫と彩華は意識を取り戻したのかふらつきながら立ち上がっていたが、博臣と志帆は一向に立ち上がる気配が無かった。
秋人と未来は二人に駆け寄る。
だが、二人の様子を視界に入れた秋人は拍子抜けしてしまう。後ろからついてきた未来は彼らの様子に顔をほんのりと赤く染める。
「…何してんだコイツら」
「コレは随分と微笑ましい光景やな」
遅れて覗き込んだ彩華も思わず心の声を漏らすほどだった。
仲良く並んで、スヤスヤと眠る博臣と志帆。二人の右手と左手は決して手を離さないと言わんばかりに固く絡みつくように握られていたのだ。
心配した俺の気持ちを返せと言わんばかりに秋人は気持ちよさげに寝る二人を盛大に睨めつける。
その殺気を感じ取ったのか、たまたまタイミングが良かったのか、うめき声を上げながらゆっくりと博臣が重たげに瞼を開ける。
柳緑色の瞳の焦点がようやくあった博臣は、秋人がいることに気づき内心ホッと胸をなでおろす。
「あ…アッキー?」
「気づいたか?博臣?」
「あぁ…」
博臣は左手を額に乗せながらゆっくりと上体を起こす。すると、博臣の背中にある傷が見えた秋人は表情を歪ませる。
そんな彼の心情に博臣は眉を顰めるが、それは一瞬だった。
「アッキー、俺に何か言うことがあるんじゃないか?」
秋人に目を合わすことなく紡がれた博臣の言葉に秋人はバツが悪そうに瞳を揺らした。
「………迷惑かけてすまなかった」
「謝ってほしいわけではないんだが?」
「…ありがとう。
博臣も志帆も彩華さんもニコさんもそして栗山さんも、僕を止めてくれて」
秋人はひとりひとりの顔を見渡し、頭を下げる。
そして未来に柔らかく微笑んだ。
「博臣…一つ聞いていいか?」
「なんだ??」
「その右手はなんだ?」
「あぁ……これか?」
さも当然のように繋がっている手を見つめる博臣。
距離があまりにもおかしすぎると秋人が訝しげに見る。
「見てわからないのか?アッキー?
志帆と手をつないでるんだ」
「それはわかるのだが…」
「なんだ?羨ましいか?」
「......そういうわけじゃない!」
「じゃあいいだろ?」
早々に話を切り上げた博臣は、志帆に視線を戻す。
秋人は、思わず言葉を失った。
なぜかってそれは、こんなに志帆に対して向ける博臣の表情は柔らかく慈愛が籠もっていたからだ。
「ほな邪魔者は、退散しましょうか?」
彩華が柔らかく微笑む。
ちなみに、その隣にはメラメラと瞳を燃やす雫がいて、それを見た秋人は苦笑いを浮かべていた。
「そうですね...
栗山さん行こうか」
「は... はい!!」
げんなりとしたまま秋人は彩華の言葉に頷くと、隣りにいる未来に話しかける。
そんな未来はほんのりと頬を赤く染めていた。
彼ら4人がこの場から居なくなると、一気に辺りが静まり返った。
まだ肌寒い夜風が二人に吹き付けていく。
誰にも邪魔されることが無い二人だけの空間。博臣は未だに目を醒まさない志帆から目を離すことは無かった。
う...ッ...
時々身じろぎながら声を漏らす志帆。そして離さまいとギュと握る力を込める彼女が、博臣はとても愛おしかった。
博臣は、そっと志帆の額にかかる前髪をかき分けると額に唇を落とす。
「早く、目を覚ませよ志帆」
あどけない表情でスヤスヤと眠る志帆に、博臣は不敵な笑みを見せるのだった。
目を醒ました後の志帆の行動は手に取るように博臣にはわかった。
その反応が見たいがために待っているのもあるのだが...
早く声を聞きたい
ガラス玉の様に輝く青色の瞳を見たい
出来ればその声を聞くのも、その瞳に映されるのも自分だけであって欲しい...
いつの間にか、博臣の志帆に対する感情は幼馴染の域を越えていたのだ。
博臣は眠り姫の様に一向に醒ます気配のない志帆の頬に手を添えると、ゆっくりと顔を近づけるのだった。
「う...うっ...」
瞼を微かに動かした志帆は、ゆっくりと重たい瞼を開ける。
定まらない焦点で志帆が見たのはかなりドアップの博臣。
エッ!?!?
意識が一気に戻った志帆は慌てて飛び起きる。
「おっと...」
ぶつからないように博臣は、近づけていた頭を避難させると爽やかな笑顔を浮かべるのだった。
「おはよう志帆
なかなか意識が戻ってこないから心配したぞ」
「博臣!!
今何をしようと...って、なにコレ!?!!」
顔を真っ赤にしながら抗議しようとした志帆。だが、ふと目線を落とした事で志帆は絶句してしまう。
金魚の口のようにパクパクと動かす志帆の様子に、博臣は楽しげにクスクスと笑う。
「どうしたんだ?志帆」
「ど...どうしたんだ?って
この状況は何!?なんで手を繋いでるの!!」
「志帆がやってきた事だろ?」
「いや...私は博臣の手に手を伸ばしただけで...って
ハッ!!」
「なんだ?てっきり俺は志帆が繋ぎたいのかと思ってしたのだが...」
「ち...ちがくないです」
今にも消えそうな小さな声で呟いた志帆の顔は茹でダコの様に真っ赤に。
何処かに穴があったら入りたい
何してるんだ...少し前の私!!
志帆は激しく後悔した。
「可愛いなぁ志帆は」
恥ずかしさで縮こまり、必死に顔を隠そうと手で覆う志帆を覗き込もうと博臣は距離を縮めようとする。
「...からかわないでよ」
毎度の様に今回だって反応をからかって楽しんでるんだと、ツンとくる鼻の痛みを感じながら志帆は博臣から距離を取ろうとする。だが、繋がっている手を急に引っ張られてしまう。
「からかってるように見えるか?」
志帆の視界に飛び込んできたのは、いつにも増して真剣な表情を浮かべる博臣だった。
いや…見えない…
薄々だが志帆は、気づいていた。時折、博臣が熱の孕んだ眼差しで己を見ている事に。そして、聡明な博臣自身も恐らく自分が抱く想いに気づいているだろうと志帆は踏んでいた。
でもその事実を認めてしまったら後戻りできなくなる。あくまで私達二人は、当主と側近の関係なのだから。
だからこそ、志帆は今回も博臣の本音を耳にする前に演技をして誤魔化す。
志帆がジッーと博臣を見つめる事、数秒。志帆は切り抜ける手段をひらめく。
「................................見える」
「なぁ!?!?」
「遂に、振り向いてくれない美月に対して過度のシスコンぶりがエスカレートして私にやるせない気持ちを?!」
残念なことに博臣の日頃の行いが仇となってしまった。
徐々に嫌悪感露わにして顔を引きつらせる志帆に、博臣は何とか志帆の被害妄想を正そうとするのだが...
「そういうわけじゃ...」
「絶対そうでしょ!!
あぁ!!もう!!私を巻き込まないで!!」
そしていい加減手を離して!!」
「だからコレは志帆が...」
「いや!よく考えたら私は握るような真似はしてない!!」
これでイイ
このままの関係で私は満足だから...
ズキッと痛む胸の痛みを感じながらも志帆は普段と同じようににこやかに笑った。
この二人による押し問答は、暫く続き、ギャアギャアと騒ぐ二人の声は止むことは無かった...