黒子の特訓
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「美桜、最近つれねー」
「…えっ?」
順調に試合に勝っていく中、高尾が帰り際にふと口を尖らした。その言葉に美桜は目を丸くしてその足を止めた。
黒子の特訓にここのところ毎日付き合っている美桜は、1人で帰っていたのだ。いつもなら、一緒に帰っているのに。一体、彼女は何をしているのだろうか?
「最近1人で何してるの?」
「…えへへ」
もう我慢の限界だと疑問をぶつける高尾に、美桜は後ろめたそうに愛想笑いを浮かべた。
またまた自分は敵に塩を振っている。
そのことを知ったら彼はなんて思うのだろうか?
「美桜…またなんかやってるな?」
美桜のその笑みに何かを感じ取った高尾は、目つきを変える。
「まぁ…色々?」
彼のダークブルーの瞳を直視できず、美桜は視線を泳がせる。が、それで引き下がるような高尾ではなかった。
「色々ってなんだよ」
「……んー、特訓?」
「…誰の?」
「えー…っと…」
なんとかこの状況を打破できないだろうかと言葉を選ぶ美桜。そんな片言な彼女に高尾は追求の手を止めることをしなかった。が、だんまりしてしまった美桜の様子に高尾はガクッと肩を竦めた。
「また火神?」
美桜が特訓に付き合う。今までの出来事を考えたら、黒子から連絡が来て美桜が火神の練習に付き合っているのではないか?と考えた高尾。だが、美桜は小さく首を横に振った。
「えっ?違うの?」
「今回は……テツヤ…だよ?」
「…はぁ?」
驚く高尾に畳みかけるように美桜は、彼が聞きたかった問いの答えを口にする。彼女の口から出てきた驚きの名前に高尾はさらに目を丸くした。
「あっ!わかった!」
ポンッと掌に拳を当て、いい音を鳴らした美桜はいい案を思いついたと目を輝かす。
「かずも一緒に行かない?テツヤの特訓に」
「えっ!行っていいの?
ってか、テッちゃん、今度は何の練習してるわけ?」
「それは…行ってからの、お楽しみ」
思わぬ展開に高尾は口早に。たまらず前のめりになる高尾に、美桜は微笑を浮かべた。
*****
「なんで、高尾君もいるんですか?」
「よぉ!」
驚く黒子に高尾は片手を上げる。そして、彼に近づくと彼の肩に腕を回した。
「で、なにやってるの?テッちゃん?
つれないねぇ…俺も誘ってよ」
「…高尾くん」
「テッちゃんには世話になってるからさ…
手伝えることがあるなら、俺も力になりたいわけよ」
「そんな…僕は」
高尾の口から出た言葉に、黒子は思わず彼の顔を仰ぎ見る。すると軽薄そうないつもの彼とは一変、遠い目をして空を見上げていた。見たことがない彼の表情に、たまらず黒子は身を縮こませる。彼に感謝されるようなことをした覚えがなかったからだ。
「謙遜すんなって」
黒子に視線を戻した高尾は、いつも通りの笑みを溢す。
緑間が独りよがりのバスケをしなくなったのは少なからず黒子の影響が大きい。何より、美桜とこうして一緒に傍にいれることができているのは黒子のお陰ではないだろうかと、高尾は胸の中に抱いていたのだ。だからこそ、少しでもその恩を返せるのなら力になりたいと思っていた。
「…ありがとうございます。高尾くん」
普段の彼の笑みに、黒子はふっと表情を崩す。その表情を見れて、満足したのか高尾は彼から離れる。そして、もう1人顔見知りの人物に軽く手を上げ、近づいた。
「…桃井さん、久しぶりー」
「ホント、久しぶりだねー」
人懐っこい笑みを向けられた桃井は、彼に習って挨拶を交わす。美桜が高尾を連れてきたのに対して、青峰は桃井を連れてきていたのだ。
「たくっ…なに連れてきてるんだよ」
「そっちこそ、さつきを連れてきてるじゃない」
「さつきは勝手についてきたんだよ」
高尾にジト目を向けた青峰は大きく息を吐き出す。呆れた口調の彼に、負けじと美桜は言い返す。その返しに対して、青峰は困ったように肩を竦めた。
「…時間が惜しい、やるぞテツ」
連れてきてしまったのは仕方がない。青峰は頭を切り替えると、黒子に視線を向けた。小さく黒子は頷くと、ボールを構える。桃井と高尾が固唾を呑んで見守る中、黒子はゴールへボールを放った。
「10本中7本か...」
「このぐらいの確率なら、実践でも使えるかな」
「スゴーイ!テツ君!!」
「邪魔しにきたんなら帰れよおい!」
黒子のシュートを見守っていた青峰と美桜はホッと息を吐き出す。少し前と比べたら、シュート率は上がった方。これくらいできれば、試合でも使ってもいいだろうと及第点を出した二人の反応に、黒子自身もホッと緊張を解くように息を吐き出す。そんな彼に、桃井は勢いよく駆け寄り抱き着いた。
「でもよ...あんな壊滅的だったシュートを短時間でどう修正したんだ?」
桃井の姿に額に青筋を立て怒鳴りつける青峰。その傍らでは、だんまりと口を閉ざし考え込む高尾がいた。結局、考えても答えには辿り着けず、高尾は不思議そうに疑問を口に溢す。
「テツヤのシュート確率の悪さは、パスに特化したスタイルの副作用的なものだったんだよ」
「だからその副作用を無くしたんだ。
まあもとからセンスはねぇーけどな…」
パスに特化している黒子のバスケスタイル。それは黒子のシュートスタイルに影響を及ぼしていたのだ。その癖を無くすことで、ようやく黒子は人並みにシュートができるようになったのだ。
「…そういえばお前、誰だ?」
「どーも、高尾和成です!」
「ふーん...」
美桜が連れてきた男。黒子のシュートにひと段落したところで、青峰の興味が彼へと移る。軽快に挨拶をする高尾の姿を、青峰は品定めするかのように眺める。
ジッと眺めていた青峰だが、何か思い立ったのか抱えていたボールを彼に向って放り投げた。
「えっ…」
「どんくらいできるか見てやるよ」
美桜が信頼を寄せる男。一体どんなバスケをするのか、興味を抱いた青峰は、高尾の返事を聞く前に彼に背を向ける。
「俺、なんかした?」
その背をキョトンとした目で追っていた高尾だが、徐々に表情が蒼褪めていく。もしかして、この短時間のうちに彼の気に障ることでもしたのではないかと。
「ただ、かずがどんな奴か気になっているだけだよ」
コロコロと変わる表情に、面白そうに笑い声を溢しながら美桜は彼の耳元にそっと囁く。その言葉に高尾は目を白黒させる。
「…へぇー、なるほどね」
ようやく呑み込んだ高尾は、好戦的に目を細め、口元に弧を描いた。
「…よし!」
気合を入れた高尾は、青峰がいるコート上に歩き出す。それを見送った美桜は、桃井に抱き着かれたままの黒子に視線を戻す。
「さて、続きやろうか」
「…はい、お願いします」
「ってことで、さつき離れて」
「えぇー」
「テツの練習の邪魔」
「わかったって」
未だに黒子に引っ付いたままの桃井を美桜は引き剝がしにかかる。その行動に仕方ないと名残惜しそうに桃井は離れる。
「練習の邪魔しないから、ここで見てていい?」
「もちろんです」
「一々、テツヤに抱き着かないって約束できるならいいよ」
素直に頷く黒子に反して、美桜は白い目を桃井に向ける。その視線に桃井はヘラっと笑みを浮かべる。
「…だっ、大丈夫だと思う」
「それならいいんだけど…」
「早くテツ君のシュート見たいなぁー」
「もう…上手くはぐらかして…」
打って変わって、楽しみだとニコニコと笑みを浮かべる桃井の姿に、美桜は困ったように表情を崩すのだった。