WC(誠凛対桐皇)
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凄い...あのブザービーターを食らっても勢いがとどまってない
黒子の秘策で追い上げを見せた誠凛。その追い上げムードを断ち切るように今吉がブザービータを決めた。だが、誠凛は引きずることなく点を入れた。誠凛のメンタルの強さに感服する桃井。だが、彼女の視線は青峰を追っていた。
先ほどインターバルの時、青峰の名を呼んでも上の空。開始のブザーが鳴っても座り込んだままの青峰。必死に名前を呼んでやっと反応した彼に指示聞いてた?と桃井が尋ねると呆気にとられてしまう言葉が返ってきた。
「わりぃ…聞いてなかった…」
その言葉で唐突に桃井は中学時代に戻った心地に陥った。青峰は集中しすぎると周りの声をシャットダウンしてしまうのだ。でもその時の青峰ほど調子が凄くノッているのだ。相手が強ければ強いほど青峰は燃え上がる。
少しだけど…昔の青峰に戻っていると実感した桃井はふと観覧席を見上げるのだった。この場所のどこかで見ているであろう彼女の目には果たして見えているだろうか…。
美桜…青峰君が笑ってるよ…
桃井は青峰のバスケが好きだった。だが、それ以上に青峰と美桜があーでもないこーでもないと我武者羅にバスケをする姿を見るのが好きだった。その場は桃井にとってキラキラ輝いて見えていたから。
戦況はすぐさま青峰にボールが回り桐皇が返し点差を戻す。
シーソーゲームな展開に、火神は焦る素振りを見せる。そんな彼の肩にキャプテンの日向が落ち着けと手を置いた。
「止められないのは相手も同じだ。じゃあこっちは3点ずつ行くぞ」
火神だからこそ青峰をここまで抑えることができているのだと、彼に言い聞かせた日向がスリーを放つ。
凄いこんな遠くから外すことを恐れてない…
同じポジションである桜井は立て続けに入れていく日向を驚きの表情で見る。それを見て日向は口角を上げる。
「あー...信じてるぜ。仲間をな!
外さないから打てるんじゃない...外しても大丈夫そうだから打てるんだ!」
放たれたスリーは見事に決まる。すぐさま点を返そうとする桜井。だが、焦った桜井はリズムが乱れて体勢を崩してしまう。そんな彼に走り込んできた青峰が声を上げる。
「たく...ちょっと詰め寄られたくらいでおとおとしやがって...よこせ!」
桜井からボールを受け取った青峰は火神を抜かしシュート体勢に。すかさずゴール前にいる木吉が止めようと飛び上がる。が、当の本人は飛んでいなかった。フェイクだ。彼は遅れるように飛び上がり、体に当たりながらシュートを放った。
木吉のプッシングを誘った青峰は1スローを決める。
点差が縮まることなく時間だけが刻々と過ぎていった。そんな中、誠凛が動く。青峰に対し、木吉・火神・黒子のトリプルチームをつけたのだ。
「青峰の怖さはスピードやスキルだけではない。ホントに厄介なのはそこからのどんな体勢からも決めてくる圧倒的なシュート力」
「いくら野生を身に着けた大我でも止めるのは難しいだろうね。
でもあいつを止めないと誠凛に勝ち目はない」
美桜達が固唾を呑んで見守る中、青峰が動く。
あっさり火神をかわし、飛びあがった木吉に対し横へ飛ぶ。そこに、かわしたはずの火神がそこに立ち塞がる。死角からのブロックだったが、青峰は気にせず、彼をかわしボールを放った。
だが、シュートはゴールネットを揺らすことなかった。長年ずっと青峰のバスケを見ていた美桜は目を疑った。美桜にとって、あの距離から青峰が外すことなんて有り得ないのだ。
もしかして…
ある1つの可能性に気づき美桜は、息を呑んだ。
これをやったのは恐らく黒子だ。
黒子はオーバーフローを使いリングから視線を自分へ誘導したのだろう。通常のシュートならほとんど効果はない。だが、高速で動きながらリングを狙うとき一瞬の視線のズレが速ければ速いほど幅が大きくなる。黒子は其処を突き高速シュートのシュート率を下げたのだ。
「僕には青峰君を止めることはできません。けど誠凛は負けない!」
「やってくれるじゃないか...テツ!」
「引くな!当たるぞ!」
点差を縮めた誠凛は、日向の一声でゾーンプレスに陣形を変える。しかも1‐2‐1‐1だ。ボールは奪いやすいが突破されると脆い上級陣形。このスタイルで黒子がスティールをし、ボールは日向へ。彼のシュートを止めようとする桜井。だが勢いよく彼に当たってしまう。
3ポイントシュート時のディフェンスファールはフリースロー3本与えられる。これを全部決めれば3点差。誠凛にとってチャンスが舞い込んできた。
*****
いつからだろう...試合の日の朝、アクビしながら家を出るようになったのは
いつからだろう...勝っても何も感じなくなったのは
いつからだろう...美桜とバスケをしなくなったのは
脳裏に浮かぶのは美桜の悲しそうな顔。
彼女は切なげに笑みを浮かべるとゆっくりと背を向け、遠ざかっていく。その彼女に伸ばした手は、彼女に届かず空を切る。
いつからだろう...あいつがこんな表情をするようになったのは
ただ俺は全てをぶつけさせてくれる相手が欲しかった。
「感謝するぜ...テツ」
ずっと望んでいた。勝つか負けるかわからないクロスゲームを。
すっかりと忘れていた感情がふつふつと湧いてくる。この感情に身を任せられる。それが嬉しすぎて青峰は、ニヤケが止まらなかった。
そんな彼の変化に、美桜は気づき目を丸くする。彼の纏う雰囲気が以前、対峙したときに似ていたからだ。
「あの時と同じだ…」
「あの時って?」
「以前私が大輝と1on1をした時」
あの時と同じように青色の閃光がコートを駆け抜ける。
「ゾーンに入った彼はもう止められない…」
本来どんなに一流の選手が集中しても実力の80%しか試合で発揮できない。だが、ゾーンは実力を100%に引き上げることが可能なのだ。加えて、青峰の100%…完全に未知の領域。
ゾーンに入った青峰の手によりどんどん点差が広がっていく。それでも誠凛は諦めることは無かった。
「いいねぇ...そうこなくっちゃよ!」
次々とシュートを決めていく青峰。その彼の顔には笑みが零れていた。
大輝がなんか楽しそう.
楽しそうな表情が見えた途端、目頭が熱くなった。込み上げてくる感情をグッと美桜は抑える。ここで泣くわけにはいかない。最後まで試合を見届けると美桜は決めていたからだ。
その彼女の眼の前では両校のエース同士の対決が始まろうとしていた。
「火神と青峰の1on1」
「正気の沙汰でないな…」
まさかの光景に高尾と緑間が驚きの声を上げる。
三人がかりで止められない中、火神は青峰とさしでやりたいと頼み込んでいたのだ。勝算はない…今更仲間を頼らないという選択はない。だが、火神は直感的に一人でやらないといけないと感じたのだ。だが、今の彼を止められることはできず簡単に抜かされてしまう。
「言ったろ、お前の光じゃ淡すぎだってよ!!」
誠凛は負けじと取り返しに行こうとする。今度は伊月とのオーバーフロー...でも、それは今吉に憚れた。遂にオーバーフローの効果も切れてきたのだ。弾かれたボールはそのままコート外の方向へ。
「まだだ!」
そのボールに黒子が飛び込む。コート外へギリギリ出ることなく繋がったボールは、誠凛の追加点になった。
「ここで離される訳には行きません。みんなの思いを背負ったエースは絶対に負けない。信じてますから...火神君を」
誠凛のエースは火神だ。黒子を含め誠凛の皆は信じて思いを託すのだ。
火神なら絶対にやってくれると。
その思いに応えようと火神は青峰に何度も挑む。だが、どんなに足掻いても彼を止めることができなかった。