WC(誠凛対桐皇)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「話が早くて助かるぜ。テツ。つくづくバスケだと気が合うな」
「僕もそう思います」
第2クォータ開始早々、黒子と青峰は対峙した。
前に立ちふさがる青峰を回避することなく黒子はバニシングドライブを繰り出した。
しかし、青峰は黒子が見えてるかのように動き出した。
一帯どうして動きを読めたのだろうか?不思議に思った美桜は彼を観察する。すると、青峰は目を閉じていた。
確かに火神を視界に入れなければ反応が遅れることがない。でも、こんな芸当は普通は出来ない。
なるほど...目で追わず感覚でいったのか。
合点がいった美桜が思い出すのはかつて、青峰が口にした言葉だった。
「ホントなんでだろうな…
テツとは他のことは何も合わないのに
バスケだけはかみ合うんだよな」
昔の光である青峰はできてしまうのだ。ずっと一緒にいたからこそ、黒子の呼吸が読み取れてしまう。
「残念だったな...テツ」
青峰はボールを弾き奪い取るとそのままシュートを決めるのだった。
「勘違いすんなよ、テツ。影っていうのは光あってこそだろうが。いくら足掻こうがその逆はねぇんだよ。影じゃ光を倒せねぇ」
黒子に言い残し青峰は彼に背を向ける。青峰の言葉を聞き、黒子の表情が強張ってゆく。黒子の雰囲気が変わってゆくのが感じ取れた美桜の頭の中では警鈴が響いた。
やな予感がする…
美桜のその予感はあっていた。なぜなら、黒子は周りがマークが外れてない中、無我夢中で先程青峰の手を弾いたイグナイトパス廻の体勢に入ったのだから。
周りが見えていない。このままだとまずい。
美桜の目に映ったのは黒子の放ったボールが青峰の方へ一直線に飛ぶ光景。「ばかが」と青峰は左手でそのボールを難なく止めた。
「同じ技が2度通用すると思ったかよ?あんまり失望させんなよ、テツ。こんなもんが俺を倒すために出した答えならこの際はっきり言ってやる」
言葉を区切り、黒子を真っ直ぐ見据えた青峰は、現実を突きつけるかのように、吐き捨てた。
「それ無駄な努力だ」
そう言うと青峰は落ちたボールを拾い上げ次々と誠凛の選手をかわしフォームレスシュートを放った。
そのシュートを皮切りに桐皇が点を追加させていく。その光景はまるで悪夢のよう。ベンチにいる相田は、時計が早く止まれと祈ることしかできなかった。
*****
「ひとまず黒子君は交代よ…」
黒子は相田に交代を突き付けられた。確かに今の自分はコートに立つわけにもいかないとはわかってはいるものの、それ以上に勝るのは悔しいという感情だった。ぎゅとズボンにしわができるくらい握りしめる黒子の空色の瞳からは涙がぽたぽたと零れ落ちる。
先ほどの青峰の言葉を一つ一つ思い起こしていく黒子の悔し涙は止まることがなかった。ただ、黒子は勝つために死に物狂いで努力した。そしてやっとのことで技を身につけた。だがそんな技もあっさりと防がせてしまった。全ての努力が青峰により全否定されたのだ。加えて黒子が今回この試合にかけている思いは誰よりも強い。勝ちたい…それだけでない。黒子は未来を掴みたいのだ。すれ違ってしまった群青と橙の光が再び隣に並んで輝く姿を黒子は見たいのだ。
タオルを頭から被り涙を流す黒子の頭に火神は手を乗っけた。無駄な努力があるわけがないと黒子を火神は励ますのだった。
「みんな信じてるぜ、お前は必ず戻ってくるってな」
ブザーが鳴り火神達はコートへ。黒子はタオルを被って俯いたまま。黒子がこのまま戻ってこなかったら正直この試合はキツイ。そして火神はベンチにいる黒子を見て、何度も何度もこの小さい背中に助けられてきたのかと改めて実感する。
信じろ…でも期待はするな…
黒子が帰ってきたときに点差が巻き返せないほど開いていたら話にならない。そうならないためにも、火神は決意するのだった。今度は俺が黒子を助ける番だと…
「...テッちゃん」
「大丈夫、こんなところでテツヤは折れないよ」
泣き崩れる光景を目の当たりにした高尾は彼を案じるようにそっと彼の名を呟く。彼と同じように美桜も黒子のことが心配でたまらない。でも彼を信じると決めた。そして今までの彼は挫けることなく乗り切ってきた。今回もきっと大丈夫。
美桜はぎゅっと拳を握りしめるとタオルを被り蹲る黒子からコートへと目を移した。
「それに…テツヤは1人じゃない」
決意を持った火神の眼差しを見た美桜は、嬉しそうに口元を緩めた。先程と打って変わって雰囲気が変わっているように美桜は思えたのだ。そんな彼は開始早々、青峰と対峙する。
ダン..ダン......ダン...
青峰はボールを突くリズムに緩急をつけ始める。彼の得意技の1つ、チェンジオブペース。仮にタイミングを見破ったとしても止めるのは至難な業。その青峰に対し、火神は感情高ぶることなく脱力しきった状態で構えていた。
来る!
青峰の目の色が変わる。そのことに気づいた美桜と同じタイミングで火神も動き出す。
ボールに手を伸ばす火神。それを瞬時に悟った青峰は手を返してボールを後ろに下げ、再びドリブルをし方向転換。そのまま彼を抜き、シュートする。そのボールは放たれゴールを鳴らすもんだと誰もが思っただろう。しかし、次の瞬間聞こえたのは弾く音と地面に跳ねるボールの音だった。
「野生…身につけたんだね、大我」
その1プレイを目の当たりにした美桜は楽しげに口角を上げていた。火神の脱力した構えは、美桜からすると青峰に酷似して見えた。その時、もしかしてと思ったことが目の前で起こったのだ。そのきっかけを作ったのは美桜自身。でも、彼が本番までに会得できるかは、正直言うと難しいかもしれないと思っていた。それでも、彼は美桜の予想をいい意味で裏切ってくれた。
「いいぜお前...やっとテンション上がってきたわ。正直、お前にはあまり期待してなかったが前より随分ましになったぜ。...今回はもう少し本気でやれそうだ…」
火神に止められた青峰は最初状況が掴めず唖然としていた。だが、それは一瞬。目つきを鋭くさせ、口角を上げる。
「せいぜい楽しませてくれよ...火神!」
飛び出した青峰は先程よりもギアを上げてくる。それに必死に食らいつく火神だったが、青峰は勢いよくボールを地面に叩きつけた。そのボールは大きな弧を描きゴール方面へ。そこにいたのは若松。
「よっしゃー、任せろ〜!」
「何を早とちりしてるんだよ。んなわけねぇーだろうが」
勢いよく飛び上がる若松だったが、青峰はそのままゴールへ駆け寄り、若松が取ろうとしたボールを。弾き取りそのまま後ろへ投げ込んだ。
その後、青峰と火神の1on1が幾度もなく繰り返される。その最中、遂に火神は青峰のシュートを止めたのだった。
「別に構わねぇーぜ。楽しませてやっても...そんなゆとりがあるならな」
口角を上げた火神は青峰の動きを読んでるかの様に次々とボールを止めていく。
「火神、すごいな…」
「凄いね...大輝についていってるよ」
思わず心の声を零す高尾に美桜は小さく頷いた。確かに信じてはいたが、ここまでやるとは思わなかったのだ。
きっと、嬉しくて嬉しくて仕方ないのだろうな…
なぜだかわからないが、美桜は何となく今の青峰の気持ちがわかる気がした。今まで青峰は渇望していた。全力を出せる相手をずっと求めていた。そしてやっと現れたのだ。コート中央で生き生きと動く青峰の様子に美桜は目を細めた。
「ざけんな!100年はぇーんだよ!」
終了間際..点差が2点の場面でボールを受け取った火神は飛び上がった。その体勢は青峰が得意とするフォームレスシュート。それを見た青峰は形相な表情を浮かべて飛び上がった。だが、青峰の手はボールに届かなかった。
ガラガラガラガラ...ドン!
追加点と思いきや、勢いがありあまったボールはリングを激しく回り飛び出してしまった。ホイッスルが鳴り、第2クォータの終わりが告げられる。46対48。誠凛は追いつけず、桐皇が2点リードのまま折り返し地点を迎えるのだった。