WC(誠凛対桐皇)
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「そんな焦らんでくれや。まだ始まったばっかやで」
今吉はそう言うと左の方へ軌道を高めにパスを出す。慌てて黒子がとろうとするが、黒子の手にボールは掠ることはなかった。
リバウンドを若松がとり、スリーを桜井が決める。黒子のパスに動じることなく、何か仕掛けることもなく、黙々と桐皇は自分達のバスケをする。
隙のない桐皇学園
誠凛と桐皇の間に出ているのは格の違いだった。
そんな中、誠凛が動く。
「おいおい、ええんか?
確かに開ければでかいが...おすすめせんで?
そこは...鬼門や」
誠凛は火神にボールを託したのだ。彼の眼の前に立ちふさがるのは青峰大輝。
エース同士の1on1。もし、火神が負けたら流れが持ってかれる、いや、下手したらこれで勝負が決まってしまうかもしれない。
コート上では、彼らは互いに何かを探るかのように睨みあう。その探り合いの結果、火神は青峰に挑むことなく伊月へボールを送る選択をとった。
「ダーメだ。ムカつくけど勝てねぇーわ。今はまだ」
青峰との1on1を回避する選択をした火神。だが、そのプレイにワクワクしていた観客は落胆してしまう。
「なんだよ、せっかくエース対決を見られると思ったのに」
「結局、火神が逃げて終わりかよ…ショッボ…」
「いやー...言いたい放題言われてますな」
その声は秀徳がいる席にも届いていた。そんな感想を抱く彼らを見渡した後、高尾は隣りに座る美桜と緑間に目をやった。その視線に気づいた緑間は、高尾も火神の取った行動の意図を理解したかと口元を緩めた。
「お前にはわかったようだな」
「あー、なんとなくだけどな」
「素人目には、火神が勝負から逃げたようにしか映らないだろうが、二人のあいだで行われていたのは高次元の駆け引き。それは細かいフェイクからお互いの手を読みあった限りなくリアルなシュミレーション。お互いが相手の力量を正確に捉えられる実力があってこそ出来ることだ。」
「試合中の1on1は実力以上にシチュエーションにも左右される。大我は大輝に勝てないと冷静な判断をして、ターンオーバーで失点をする事を防いだ。いい判断だったと思うよ」
高尾の言葉に緑間、続けて美桜が反応を示す。
そして話を締めた美桜は、どこか遠くを見つめるかのように目を細めた。
初めて美桜が火神大我を見たのは、黒子に会いに黄瀬と誠凛高校に行ったとき。その時、彼はキセキの世代の1人黄瀬涼太を挑発し、1on1を挑んでいた。その後の試合も彼は常に感情の方が上回っていた。
「昔は後先構わず感情にまかせていたのに...成長したね。」
美桜はそっと小さく誰にも聞こえないほどの声で呟くのだった。
*****
「いいのか?そんなに遠くて」
タイムアウトを終えた最初の誠凛の攻撃。マークにつく桜井に日向はニヤリと笑うと重心を後ろにそらし始めた。そして一歩後ろに下がった彼はそこからシュート。不可侵のシュート(バリアジャンパー)。日向は景虎からこの技を伝授していたのだ。その後彼は次々とシュートを決めていく。負け時と桜井もスリーを放っていく。どちらも一本も外さないスリー合戦。
「第1クォーターは桐皇リードで終わりかね?」
「待って、誠凛が仕掛けそう」
終了間際、誠凛が動く。それに気づいた美桜は勢いよく駆け出す黒子を指さした。走り出した黒子はボールを受取り、バニシングドライブで諏訪をかわす。次に若松が立ち塞がるが、黒子は後ろへパスを送った。送られた相手は日向。彼から放たれたボールはブザーと同時にゴールを鳴らすのだった。
「すごいぞ、誠凛!ブザービーターで同点に追いついた!」
テンポよく点を決めた誠凛のプレーに観覧席から歓声が沸いた。
ブザービーターで22対22。誠凛が同点に追いつき、第1クォーターを終わらせるのであった。
「そういえば、バニシングドライブのカラクリわかったの?」
ふと先ほどの黒子のバニシングドライブを見て美桜は疑問を口にしていた。前回、秀徳は彼の新技バニシングドライブに苦い思いをしていたのだ。その問いに高尾は自嘲気味に答えた。
「わかったぜ。散々あん時抜かされまくったからな...俺ら」
ゲラゲラと笑い、アイコンタクトを緑間に送る。”俺ら”と一括りにされた緑間は「黙れ高尾」と切れ気味になっていた。
「条件があんだよ」
「条件?」
笑みを引き真剣味な面持ちを浮かべた高尾はスッと目を細める。その条件とはなんだと、美桜だけでなく宮地達も前のめりになる。
「条件っていうか...そもそも黒子一人じゃできないんだよ、あの技。まず...動きは斜めに動くダックイン。人間の目は縦横は追えても、斜めの動きには弱い。しかも黒子は人の視線を読みとることが長けているから特別追いづらい角度で沈んでくる。これだけでも、他の選手じゃそうそう止められない。けど、それは精精消えたように見えるドライブ。だけど、ある条件を満たすとそれは完成するんだ」
その言葉で美桜はハッと口元を手で押さえる。
そこまで聞けば、美桜もからくりの正体に気づく。その反応に緑間は小さく頷く。
「その条件って...まさか」
「そのまさかなのだよ。火神だ。あいつのコートでの存在感は群を抜いている。本来最も存在感のあるのはボールだ。だから、黒子はボールを持った状態ではミスディレクションは発動出来なかった。だが、火神に対しては一瞬だけ視線を誘導することができるのだよ」
「つまり、黒子が抜こうとする相手の視界に火神がいねぇーと使えねぇんだよ」
黒子のバニシングドライブは火神との連携によって生み出される技だったのだ。そのことに試合中、誰も気づくことができなかった。
「あーぁ…これに気づけば対策しようがあったのによ」
「気づけたとしても今の火神を抑えられるかは別問題なのだよ」
彼ら、高尾・緑間自身も何度も見直したことでようやくからくりに気づくことができた。だが、仮に気づけたとしてもその技を破ることができるかは別問題。緑間の指摘に、だよなぁーと高尾はため息を吐き出しながら脱力するのだった。