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「火神君...僕に付き合ってください」
「こんな時間にか?」
黒子は火神にそう一言告げた。その言葉に火神は一体これから何をするのだろうと思いながら、外に出る。二人がやってきたのは温泉地近くにあるストバスコートだった。そしてその公園にはすでにふたりの姿があった。
「テツヤ/テッちゃん!」
「はぁ?なんでお前らがいるんだよ」
見覚えのある姿に火神は目を丸くした。
ジャージ姿の美桜と高尾がそこにはいたのだ。
「すみません、急に呼び出してしまって」
「ホントよ!全く...」
申し訳なさそうに頭を下げる黒子の言葉に美桜は困ったように息を吐き出すと、眉を下げた。
「でも、テツヤの頼みだからね」
他のメンバーからの頼みだったら頷かなかった。黒子からのお願いだから。彼らに期待してるから。少しでも力になりたかったのだ。
「ありがとうございます」
「で?美桜はわかるとしてなんで高尾がいるんた?」
「僕は呼んでません」
「かずは勝手に付いてきただけ」
頭を下げる黒子の隣で火神が疑問を口にする。その直球な投げかけに美桜は肩を竦めた。1人で来る予定だった美桜は高尾の体調だけが心配だった。だが彼女の隣にいる高尾にはその思いは伝わらず。不思議そうに辺りを見回した。
「っか...なんでここなんだ?
誠凛からちょっと遠くないか?」
「あー...温泉施設に俺ら今いるからな」
「はぁっ!?
なんだよそれ羨ましいんだけど!」
火神の言葉に高尾は目を丸くする。そして悔しそうに地団駄を踏んだ。
「美桜!俺らも...」
「却下、そんな時間どこにあるの」
温泉行きたいって言いかける高尾の言葉を遮り、美桜はピシャリとその案を跳ね除けた。言わせてもくれないとガクッと肩を落とす高尾は放っておき美桜は黒子を見据えた。その視線に気づいた黒子は本題を切り出した。
「美桜さん、実は僕たちの初戦の相手...」
「桐皇学園でしょ?」
「知ってたんですか?」
「朝、さつきからメール貰って。
テツヤはどうやって?」
「さっき青峰くんと遭遇して...」
黒子の言葉と重ねるように美桜が相手名を口にした。
黒子と火神がいる誠凛と、青峰がいる桐皇学園。初戦で両校が当たるなんて、まるで神様のいたずらのように思えて仕方なかった。
どこか物悲しげに微笑を浮かべた美桜は、逆にと黒子に聞き返した。その問いに黒子はついさっき彼と会ったことを話すのだった。
「はぁ?桐皇も温泉かよ!ずりぃ!」
「かずは黙ってて」
「ねぇ?俺の扱いひどくね?」
たまたま訪れた温泉施設。そこには練習試合を終えた桐皇も訪れていたのだ。そこで彼らは初戦の相手が桐皇学園だということを知ったのだ。
「青峰くんからそのことを聞いたとき、やったって思ったんです」
前回負けた雪辱を晴らす絶好の機会。ウインターカップの初戦でその借りを返せる。黒子を含め、誠凛一同は闘争心に火をつけられたのだ。
「でも、今の僕らでは彼らには勝てない」
足りねえな、もっとだ。
どうやら扉を開けたのはホントらしいが…入り口に立っただけだ。
お前は俺たちキセキの世代には遠く及ばねーよ。
その程度じゃまだ楽しめねーな
青峰に言われた言葉に現実を突きつけられたように黒子は思えてしまった。だからこそ、黒子は美桜に連絡を入れたのだった。
キセキの世代と同等の力を有し、青峰のことをよく知る彼女であれば足りないものがわかるのではないかと。
ギャアギャアと騒ぐ高尾を気に留めず、美桜と黒子は静かに向き合った。淡い空色の瞳とエメラルドグリーンの瞳がかち合う。
「改めてお願いします。
火神くんに足りないものを教えてください」
真剣な空色の瞳をジッと見ていた美桜は、ふぅっと小さく息を吐き出すと視線を外した。ボールを持ち、彼に背を向けると美桜はコート内に足を踏み入れた。
「ほら...大我やるよ」
そう言った彼女の瞳は既に緋色に変わっていた。臨戦状態の美桜を見て、火神は口角を上げた。前回彼女と1on1やったのは夏休み中の合宿の時。その時から4ヶ月は経っている。
あの頃と比べてどのくらいできるようになっただろうか?
高揚感を抱き、火神はコート内へと足を踏み出す。好戦的になった火神と対峙し、美桜自身は不敵な笑みを浮かべ構えた。
「ん...じゃあ...やろうか」
そう言い、ボールを突いた瞬間、彼女の身体から発せられるのは圧倒的な威圧感。そのプレッシャーに思わず火神は仰け反ってしまう。
キセキの世代の奴とやってるのかと勘違いするくらいすげぇープレッシャーだ
だが、こんなのに怖気づいてちゃいられねぇー
「よし!いつでも来やがれ!」
火神は意を決し、構え直すのだった。