WC予選
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帰り支度を済ませ試合会場の外にある自販機にお金を入れる緑間。もちろん好物のお汁粉を買うために。だが、緑間がそのボタンを押す前に誰かがわかっているかのようにそれが違う人物により押された。美桜は高尾と一緒のはず…では一体誰がとその方向に体を向ける。
「これでしょ?久しぶりだねみどりん!」
お汁粉缶を持ち、ニコリと笑う桃井がそこにはいた。思考回路が追い付かないまま緑間は桃井からそのお汁粉を受け取った。
「まぁ悪くない試合だったんじゃないスか?」
近づく靴音と聞きなれた声に、緑間は小さくため息をつくとゆっくりと振り返った。
「次の試合、勝てばWC…間違ってもボケちゃダメっすよ」
「ありえないのだよ。くだらないことを言うな、バカめ」
「バカとはなんすか!」
案の定そこには黄瀬がいた。ギャアギャアと耳元で騒ぎ始める黄瀬にウンザリしながらも緑間の脳裏に浮かぶのは昨日の光景だ。
主力選手をだれ一人出さず、自らは観客席で高みの見物。思い起こすのですら虫唾が走ると緑間は顔を歪めた。
「そんな心配をするなら言う相手が違うだろう?
次の誠凛の相手は、霧崎第一…花宮真だ。この決勝リーグ、奴が誠凛戦に標準を合わせているのは明らか。勝つために何かしてくるはずなのだよ」
「無冠の5将の1人。また、厄介な奴が相手っすね」
「もう俺は行く」
ここでの用は用済みだと、緑間は難しい顔を浮かべ始めた黄瀬らを素通りして、足を速めた。そんな素っ気ない緑間に対し、せっかく久しぶりに会ったのに!頬を膨らませ桃井は後を追う。その後ろから慌てて黄瀬も付いてくる。そんな二人の視界に予想だにしないものが飛び込んできた。
「うわっ!なんすかこれ」
そこにあるのは自転車。だが、ただの自転車ではなくその後ろには荷台が付いているのだ。思わず黄瀬は驚きの声をあげる。
「見ての通りなのだよ。高尾に引かせて…」
見てわからないのか?と思いつつ緑間は説明しようとするが…
ワンッ!
緑間の言葉を遮るかのように聞こえていたのは犬の鳴き声。しかもかなり近場から。まさかと、緑間はすぐさま荷台をのぞき込むのだが、思わぬものが視界に入り固まってしまう。
彼の様子を見かねた桃井と黄瀬は、一体荷台に何があるのかと隣から覗き込んだ。するとそこにいたのは尻尾をブンブンと振る一匹の犬だった。
あれ?こいつ…
ユニホーム着てる!可愛い!!
どこかで見覚えがあるときょとんとする黄瀬。対して、桃井は目をキラキラと輝かせた。好印象な二人に対して、緑間はこの犬を見てこみ上げてくる感情に眉を顰めていた。
なぜだ?見ていると無性に腹がたつのだよ
「こんなところでどうしたのかな?」
「はしゃぎすぎっすよ…桃っち」
荷台からその犬を引き上げ抱きかかえじっと見つめる桃井。それを傍らで黄瀬はニコニコと見つめる。そんな中、一人蒼褪めた表情の緑間は、再びのぞき込んだ場所をよく見ると粗相をされたことに気づく。たまらず雄叫びをあげた緑間は、おもむろに桃井達に近づき手を伸ばした。
「寄越すのだよ、桃井」
「何で?」
「撃つ…」
「ダメ!ダメよ、みどりん!」
一匹の犬を巡り桃井と緑間が争奪戦を始める。その最中、渦中にいる犬は一行に近づいてくる人物に気づくと鳴き声をあげた。そして、桃井の腕の中から抜け出すとその人物に向かって駆けていった。
「すみません。その犬うちのです」
それと同時に聞こえてきた声に彼らは振り向く。そこにいたのは試合を終えた黒子だった。飛び込んできた犬を、屈んだ黒子は抱きかかえる。
「テツ君そっくりの犬が、テツ君に…かわいすぎ…」
「桃っち!」
黒子の腕の中に、可愛い子犬が収まっている。マジマジと見てしまった桃井はこの2ショットが強烈過ぎて倒れこんでしまう。
「あっ!ここにいた!」
収拾不能になり始めたこの現場。頭を抱え込みたくなりかけた緑間が待ち望んでいた人物たちがようやく姿を現す。ホッと何故か安堵を覚えながら緑間は声のする方に顔を上げた。
「遅いのだよ」
「ごめんごめん、お待たせ」
「真ちゃん、待った?ってあれ?」
荷支度を済ませた美桜と高尾は、一足先に出て行った緑間を探していたのだ。ようやく見つけた二人だが、緑間以外にも馴染みのある人物たちがいることに気づくと驚きの声を上げた。
「テッちゃんに…涼ちゃんもいるじゃん!」
「どうもっす!みおっちに高尾っち」
「久しぶり!ってか、さつきなんで倒れ込んでるの?」
「黒子っちとテツヤ2号の組み合わせを見てぶっ倒れちゃって…」
「あ…」
倒れてしまった桃井を抱え、両者を見上げた黄瀬は苦笑いを浮かべる。その彼の言葉で、事情が読めてしまった美桜は思わず頭を抱え込んだ。対して、話が見えない高尾は不思議そうに首を傾げた。
「…テッちゃん、これどういう状況?」
「僕にもわかりません」
「なんだよそれ!」
当事者ならば知っているだろうと、密かに高尾は黒子を引き寄せ耳打ちして尋ねる。が、桃井が倒れた理由がわからない黒子は首を捻るだけ。
「行くぞ、お前ら」
くだらないと、この茶番に呆れながら緑間は、高尾の横を通り一行に背を向ける。
「えぇ…もう行くの?」
「俺は早く帰りたいのだよ」
「真ちゃん、つれねーの」
「うるさい、俺は散々お前らに待たされているのだよ」
会ったばかりなのにと、不満げな美桜と高尾を一睨みすると緑間は今度こそ止まることなく歩き始める。今回ばかりは、待たせた身であるため、言い返す言葉が見当たらず。仕方ないと、顔を見合わせた美桜と高尾は肩を竦めた。
「テッちゃん。次の試合、絶対負けんじゃねーぞ」
隣にいた黒子に一声、高尾は掛ける。WCでちゃんと決着をつけたい気持ちもある。だが、それ以上にあのチームに負けて欲しく無いという気持ちの方が強かった。
「ハイ。WCでまたやりましょう。高尾君」
真剣な声色の彼の言葉に、彼自身の想いが伝わってくる。自分を容易く見つけてくるダークブルーの瞳に黒子は向き直る。ライバルであると共に、いつの間にか友にもなった高尾に黒子は小さく頷いた。その返答に高尾は満足げに口角を上げた。
そして迎えた決勝リーグ最終日。
秀徳は相手は西の王者である泉真館に対して112対81で勝利。
誠凛は、76対71で霧崎第一に勝利。両校は互いにWC出場権を手に入れたのだった。
「やっと、舞台が整ったね」
帰路につく中、唐突に美桜が呟いた。一足先に試合を終え、隣コートで行われている試合の決着を見届けた美桜は未だに胸の高鳴りを抑えきれていなかった。
何故なら、東京都の代表校の枠が2枠の中で、幻のシックスマン黒子を含めてキセキの世代が全員、WCの舞台に集結するからだ。秀徳が出場権を獲得できたことが一番嬉しい。が、この事実に美桜は運命を感じられずにはいられなかった。
「そうだな」
そんな美桜の目はどこか遠くを見つめながらも穏やかな笑みを浮かべていた。その彼女の横顔を見る緑間も感情が高ぶっているのか仏頂面な顔に僅かだが笑みが零れていた。そんな二人を乗せて、チャリアカーを懸命に漕ぐ高尾も高鳴る鼓動を隠せられずにはいられなかった。
「美桜、俺たちが目指すのはその中の頂点なのだよ」
「わかってるよ」
瞳を光らせる緑間に、クスクスと美桜は表情を崩す。
試合は終わったばかり。だが、1か月後にはWC本選が始まる。出場を決めたことに対していつまでも感傷に浸っている場合ではないのだ。
「期待してるよ、エース様」
「まかせるのだよ」
「ちょ!二人だけで話すなよ?俺も混ぜて!」
「高尾、速度が落ちている。しっかり漕げ」
「…へいへい」
仰せのままに、と小さく呟くと高尾は勢いよくペダルを踏み込む。試合終わりで身体は疲れているはずなのに、何故か不思議とペダルが軽く感じた。
「これでしょ?久しぶりだねみどりん!」
お汁粉缶を持ち、ニコリと笑う桃井がそこにはいた。思考回路が追い付かないまま緑間は桃井からそのお汁粉を受け取った。
「まぁ悪くない試合だったんじゃないスか?」
近づく靴音と聞きなれた声に、緑間は小さくため息をつくとゆっくりと振り返った。
「次の試合、勝てばWC…間違ってもボケちゃダメっすよ」
「ありえないのだよ。くだらないことを言うな、バカめ」
「バカとはなんすか!」
案の定そこには黄瀬がいた。ギャアギャアと耳元で騒ぎ始める黄瀬にウンザリしながらも緑間の脳裏に浮かぶのは昨日の光景だ。
主力選手をだれ一人出さず、自らは観客席で高みの見物。思い起こすのですら虫唾が走ると緑間は顔を歪めた。
「そんな心配をするなら言う相手が違うだろう?
次の誠凛の相手は、霧崎第一…花宮真だ。この決勝リーグ、奴が誠凛戦に標準を合わせているのは明らか。勝つために何かしてくるはずなのだよ」
「無冠の5将の1人。また、厄介な奴が相手っすね」
「もう俺は行く」
ここでの用は用済みだと、緑間は難しい顔を浮かべ始めた黄瀬らを素通りして、足を速めた。そんな素っ気ない緑間に対し、せっかく久しぶりに会ったのに!頬を膨らませ桃井は後を追う。その後ろから慌てて黄瀬も付いてくる。そんな二人の視界に予想だにしないものが飛び込んできた。
「うわっ!なんすかこれ」
そこにあるのは自転車。だが、ただの自転車ではなくその後ろには荷台が付いているのだ。思わず黄瀬は驚きの声をあげる。
「見ての通りなのだよ。高尾に引かせて…」
見てわからないのか?と思いつつ緑間は説明しようとするが…
ワンッ!
緑間の言葉を遮るかのように聞こえていたのは犬の鳴き声。しかもかなり近場から。まさかと、緑間はすぐさま荷台をのぞき込むのだが、思わぬものが視界に入り固まってしまう。
彼の様子を見かねた桃井と黄瀬は、一体荷台に何があるのかと隣から覗き込んだ。するとそこにいたのは尻尾をブンブンと振る一匹の犬だった。
あれ?こいつ…
ユニホーム着てる!可愛い!!
どこかで見覚えがあるときょとんとする黄瀬。対して、桃井は目をキラキラと輝かせた。好印象な二人に対して、緑間はこの犬を見てこみ上げてくる感情に眉を顰めていた。
なぜだ?見ていると無性に腹がたつのだよ
「こんなところでどうしたのかな?」
「はしゃぎすぎっすよ…桃っち」
荷台からその犬を引き上げ抱きかかえじっと見つめる桃井。それを傍らで黄瀬はニコニコと見つめる。そんな中、一人蒼褪めた表情の緑間は、再びのぞき込んだ場所をよく見ると粗相をされたことに気づく。たまらず雄叫びをあげた緑間は、おもむろに桃井達に近づき手を伸ばした。
「寄越すのだよ、桃井」
「何で?」
「撃つ…」
「ダメ!ダメよ、みどりん!」
一匹の犬を巡り桃井と緑間が争奪戦を始める。その最中、渦中にいる犬は一行に近づいてくる人物に気づくと鳴き声をあげた。そして、桃井の腕の中から抜け出すとその人物に向かって駆けていった。
「すみません。その犬うちのです」
それと同時に聞こえてきた声に彼らは振り向く。そこにいたのは試合を終えた黒子だった。飛び込んできた犬を、屈んだ黒子は抱きかかえる。
「テツ君そっくりの犬が、テツ君に…かわいすぎ…」
「桃っち!」
黒子の腕の中に、可愛い子犬が収まっている。マジマジと見てしまった桃井はこの2ショットが強烈過ぎて倒れこんでしまう。
「あっ!ここにいた!」
収拾不能になり始めたこの現場。頭を抱え込みたくなりかけた緑間が待ち望んでいた人物たちがようやく姿を現す。ホッと何故か安堵を覚えながら緑間は声のする方に顔を上げた。
「遅いのだよ」
「ごめんごめん、お待たせ」
「真ちゃん、待った?ってあれ?」
荷支度を済ませた美桜と高尾は、一足先に出て行った緑間を探していたのだ。ようやく見つけた二人だが、緑間以外にも馴染みのある人物たちがいることに気づくと驚きの声を上げた。
「テッちゃんに…涼ちゃんもいるじゃん!」
「どうもっす!みおっちに高尾っち」
「久しぶり!ってか、さつきなんで倒れ込んでるの?」
「黒子っちとテツヤ2号の組み合わせを見てぶっ倒れちゃって…」
「あ…」
倒れてしまった桃井を抱え、両者を見上げた黄瀬は苦笑いを浮かべる。その彼の言葉で、事情が読めてしまった美桜は思わず頭を抱え込んだ。対して、話が見えない高尾は不思議そうに首を傾げた。
「…テッちゃん、これどういう状況?」
「僕にもわかりません」
「なんだよそれ!」
当事者ならば知っているだろうと、密かに高尾は黒子を引き寄せ耳打ちして尋ねる。が、桃井が倒れた理由がわからない黒子は首を捻るだけ。
「行くぞ、お前ら」
くだらないと、この茶番に呆れながら緑間は、高尾の横を通り一行に背を向ける。
「えぇ…もう行くの?」
「俺は早く帰りたいのだよ」
「真ちゃん、つれねーの」
「うるさい、俺は散々お前らに待たされているのだよ」
会ったばかりなのにと、不満げな美桜と高尾を一睨みすると緑間は今度こそ止まることなく歩き始める。今回ばかりは、待たせた身であるため、言い返す言葉が見当たらず。仕方ないと、顔を見合わせた美桜と高尾は肩を竦めた。
「テッちゃん。次の試合、絶対負けんじゃねーぞ」
隣にいた黒子に一声、高尾は掛ける。WCでちゃんと決着をつけたい気持ちもある。だが、それ以上にあのチームに負けて欲しく無いという気持ちの方が強かった。
「ハイ。WCでまたやりましょう。高尾君」
真剣な声色の彼の言葉に、彼自身の想いが伝わってくる。自分を容易く見つけてくるダークブルーの瞳に黒子は向き直る。ライバルであると共に、いつの間にか友にもなった高尾に黒子は小さく頷いた。その返答に高尾は満足げに口角を上げた。
そして迎えた決勝リーグ最終日。
秀徳は相手は西の王者である泉真館に対して112対81で勝利。
誠凛は、76対71で霧崎第一に勝利。両校は互いにWC出場権を手に入れたのだった。
「やっと、舞台が整ったね」
帰路につく中、唐突に美桜が呟いた。一足先に試合を終え、隣コートで行われている試合の決着を見届けた美桜は未だに胸の高鳴りを抑えきれていなかった。
何故なら、東京都の代表校の枠が2枠の中で、幻のシックスマン黒子を含めてキセキの世代が全員、WCの舞台に集結するからだ。秀徳が出場権を獲得できたことが一番嬉しい。が、この事実に美桜は運命を感じられずにはいられなかった。
「そうだな」
そんな美桜の目はどこか遠くを見つめながらも穏やかな笑みを浮かべていた。その彼女の横顔を見る緑間も感情が高ぶっているのか仏頂面な顔に僅かだが笑みが零れていた。そんな二人を乗せて、チャリアカーを懸命に漕ぐ高尾も高鳴る鼓動を隠せられずにはいられなかった。
「美桜、俺たちが目指すのはその中の頂点なのだよ」
「わかってるよ」
瞳を光らせる緑間に、クスクスと美桜は表情を崩す。
試合は終わったばかり。だが、1か月後にはWC本選が始まる。出場を決めたことに対していつまでも感傷に浸っている場合ではないのだ。
「期待してるよ、エース様」
「まかせるのだよ」
「ちょ!二人だけで話すなよ?俺も混ぜて!」
「高尾、速度が落ちている。しっかり漕げ」
「…へいへい」
仰せのままに、と小さく呟くと高尾は勢いよくペダルを踏み込む。試合終わりで身体は疲れているはずなのに、何故か不思議とペダルが軽く感じた。