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「おいおい。まさか…緑間とやる気かよ?」

黒子は、火神の協力を得て高尾のマークを外す。一体何処へと、視線をやった高尾は、向かった先を確認し驚きの声を上げた。対して、誠凛サイドは待っていたとばかりに黒子へとボールを送った。

馬鹿な?

目の前の光景に緑間は大きく目を見開いた。何故なら、いつもはボールを決して持たずパスを回す黒子がボールを手に取ったからだ。

ボールを持った状態でミスディレクションは使えないはず

衝撃的な出来事に流石の緑間も驚きを隠せなかった。一体何をするつもりだ…と目を凝らし黒子を見る緑間。だが、注意を凝らしていた緑間の目の前から黒子が消えたのだ。緑間が振り返った先には、ドリブルをする黒子の姿。秀徳は呆気にとられ動けない。黒子はパスを走りこんでした木吉に。そして木吉はボールを叩き込んだ。

「黒子っち…」

「完成してる。テツ君のドライブが」

呆然と眼を見張る黄瀬と桃井。桃井の脳裏に蘇ったのは夏休み中の出来事。美桜と向き合った黒子が一瞬にして彼女をかわした光景だった。

動揺したまま秀徳は攻撃に入る。だが、焦った状態で入るはずがなく木村のシュートはゴールに弾かれる。咄嗟に大坪が手を伸ばすが届かず、代わりにそれをものにしたのは伊月だった。すかさず伊月は黒子へパスを回す。

「させるか!」

これが美桜の言ってたドライブか。
確かにからくりはわかんねーが抜かせるかよ

高尾の頭の中で蘇るのは、美桜がおもむろに発した言葉。

『さっきね、テツヤとマッチアップしたんだけどね...彼を止められなかったんだ。
消えたんだテツヤが...ボールを持ったまま。
もしあのドライブが完成したら誰にも止められない。まさしく消えるドライブだよ』

黒子から連絡を受け、迎えに行った美桜が帰路に発した言葉だ。その言葉にただ驚くことしかできなかった事は高尾はよく覚えていた。まさか〜?とあのときは茶化したが、今現実にも緑間が止められなかった事に焦りつつ黒子の前に高尾は飛び出す。が、彼の目線からも黒子の姿は消えた。

信じらんね…ホントに目の前から消えやがった

高尾は啞然としたまま秀徳のベンチに目を向けると美桜の緋色の瞳が不安気に揺れ動いていた。美桜の不安は的中してしまった。

負けるかよ!

さっき約束した。絶対に黒子を止めると。
このまま思い通りにさせてたまるかと、高尾は後を追う。
対して、高尾を抜いた黒子は日向へボールを送る。そして日向はしっかりとシュートを決める。
その後、誠凛の連続得点の流れを秀徳は断ち切れず。黒子導入で、リードしていた点差はイーブンに戻されてしまう。

「振り出しですね」

「面白い…」

誠凛の輪にいた黒子はふと振り返る。振り返った先に居たのは緑間だ。予想だにしなかった展開に緑間も笑みを浮かべられずにはいられなかった。

*****

「おーいいね!やっぱ熱いぜアイツ」

バチバチと闘志をぶつけ合い、にらみ合う火神と緑間。その光景を横目に、高尾は黒子に近づいた。泣いても笑っても最後の10分。黒子の消えるドライブを破る方法はまだ見いだせていない。それでも、黒子のマークができるのは自分しかいない。高尾は、ダークブルーの瞳を静かに向ける。

「こりゃこっちも負けてらんないわ。しがみついてでも止めてやる。」

「…そう簡単に破られては困ります」

高尾に向けられた黒子はそれをまっすぐ見つめ返した。
互いに闘志をぶつけ合う中、最終クォーターが始まった。誠凛は初っ端からラン&ガンを仕掛ける。

確かにはえーけど、もうわかってるんだよ。
このパターン…5番→4番→7番と外から中へ食い込むはず

宮地はそう睨むとパスカットしにかかる。だが、宮地の目の前で日向へのパスを黒子が方向を変えたのだ。その方向には火神。火神はボールを叩き込みにかかる。だが、目の前に立ちふさがるのは木村と大坪の2枚ブロック。だが、そんなのお構いなしに火神はボールを入れるのだった。

しまった…油断した。
そもそもパスが黒子の真骨頂だろうが!

黒子のドライブに気を取られすぎて、一瞬の隙を与えてしまった事に高尾は唇をぎゅっと噛みしめた。

黒子が加わったことにより、リズムが変わる変幻自在の高速ラン&ガンスタイルに

これが…誠凛の完成形のバスケスタイルなのか。

美桜も思わず目を見張る。

だけど、こっちだってやられっぱなしのわけにはいかない。
だよね、真太郎。

美桜の目線の先のコートでは高尾→宮地→緑間とパスが繋がった。

「調子に乗るなよ」

もう何本目かわからない緑間のシュート。綺麗な弾道でボールはゴールネットに吸い込まれた。

「すげーな真ちゃん、大丈夫かよ?
もうそろそろ限界なんじゃねーの」

「バカめ。俺が自分の打てる本数を把握してないはずがないだろ?
限界など、とうの昔に超えている」

火神の体力を削るために多く飛んだ緑間。いくら基礎練をして体力をあげた緑間にも限界はある。思わず高尾は声をかける。が、当の本人は口元に笑みを浮かべていた。予想以上の返答が返ってきて、高尾は一瞬呆気にとられる。が、すぐに表情を崩すと弾ける笑みを零す。

「あはは…なんだよそれ。男だね!」

火神というライバル相手に緑間も限界はとっくの昔に越えていたのだ。そういうことか、と火神始め誠凛勢もこのセリフに納得した。そして美桜はこんな緑間を見れたことに内心驚きながらも、嬉しそうに目尻を下げていた。

「そんなこったろーと思ったぜ。けどなぁ…負けられるか!ボケが!」

3Pシュートを放つ日向。

「そりゃ…こっちのセリフだよ!!」

自身で前に切り込みレイアップを決める高尾。

誠凛も秀徳も決められたら決め返す。両校一歩も譲ることがない試合展開に。

観覧席からも誠凛コール・秀徳コールが鳴り響き会場のムードも最高潮に達していっていた。

そして観覧席いる桃井・黄瀬の耳にもその大歓声が耳に入る。

「凄い声援…」

あまりの声援に思わず驚く桃井。黄瀬はというとじっとコートを見つめていた。

けど…一番楽しんでるのは中の選手なんすよね。実は…。
集中力が極限まで高まって、ハイになってるっーか…

「あーもう!バスケしたくなってきたっす!!」

楽しそうにプレーする姿を見ていた黄瀬は思わず頭を抱えこみ叫んだ。そう思わせるくらいこの試合は惹きつける魅力があるのだ。

間近でじっとその光景を見続ける美桜自身も場を纏う高揚感に身体がウズウズしていた。

神田〜、良かったのか?」

何か感じ取ったのか顎に手を当てていた監督がおもむろに彼女の背中に声をかける。え?と呼ばれたことに驚きつつ美桜は振り返った。

「お前さんほどの実力なら、選手として活躍できただろ?」

監督からの思わぬ言葉にハッとする美桜。監督の真意を汲み取り、一瞬考える素振りを見せるが、その後見せた彼女の表情は柔らかかった。

「確かにそういう道もありかもしれないです。でも、私それ以上に...秀徳の皆さんのバスケを見るの好きなんですよ」

この中に混じれたらどれ程楽しいだろうか?と美桜は思う。だが、現実的にそれは不可能だ。だけど、美桜自身またバスケを好きになれたのは高尾を含めた秀徳の皆のバスケに惹かれたからだ。でも、もしかしたらそういう道をありなのかもしれない...と監督の言葉を聞き思うのだった。そうか...と美桜の言葉を聞き反応を見て満足気に監督はただ頷くだけだった。

残り時間30秒切ったところで大坪が点を入れた。このプレーにより103対104と秀徳が逆転した。

「時間がないぞ、攻めろ!」

誠凛ベンチから掛けられた声で伊月は動きを加速させようとする。が、無残にも木村によりボールを弾き返されてしまった。

最悪、このままだと向こうのボールだ…

行方を追う伊月の目に映ったのは高く打ち上げられたボール。このままコート外に出たら、秀徳ボールになってしまう。が、コートに出る前に走りこんできた黒子により誠凛にとって最悪の展開は防がれた。

「行かせねぇ!」

「なら力ずくで通ります」

必死に高尾は止めようとする。が、高尾の目の前で再び黒子は消える。

「バニシングドライブ!」

誠凛ベンチで歓声が響く。止められなかった事に、拳を力一杯握りしめ悔しそうに高尾は黒子を見やる。そんな高尾をかわした黒子はパスを繰り出す。

この方向は…まさか?

ハッとし美桜はその位置を確認する。

「ナイスパスだ、黒子!」

「木吉!!」

行けーーー!!誠凛ベンチからの声援を背に受け木吉はシュートをしようとする。が、木吉の動きは一瞬止まる。思わず木吉は顔を歪める。古傷の膝に限界がきたのだ。だが、気力を振り絞り木吉は飛び上がる。

「させるか、鉄心!」

凄い形相で緑間は阻止しにかかる。このままでは止められる。そう睨んだ木吉は緑間のファールを誘うために動き出す。手のひらを返しボールを放つタイミングを遅らせ、体がぶつかった瞬間ボールを放った。そのボールは皮肉にもゴールの端に当たりコートにバウンドするのだった。

「ディフェンス、プッシング。
秀徳6番。フリーショット2ショット」

残り2秒…103対104

この試合の勝負の行方はフリーショット2本に託された。
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