WC予選
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「あの時と同じ天気だね」
どんよりとした曇天空。その空に広がる黒い雲は、地上に激しく冷たい雨を降らせていた。
あの時とは、IH予選で誠凛に負けた日。まるで今日の運命の試合の日にあわせるように、雨が降ったように美桜は思えたのだ。
季節はあっという間に過ぎ去り秋から冬に移り変わった。木々は葉を落とし、地面は枯葉で埋め尽くす11月半ば。
WC出場権を得るためにIHに出場できなかった誠凛高校・秀徳高校は予選会に参加していた。そして両校は順当に勝ち上がり、決勝トーナメントに駒を進めていた。
決勝トーナメントに進めるのは4校。そのうち、代表権を勝ち取れるのは2校。誠凛と秀徳はそれぞれ1勝ずつで因縁の対決を迎えようとしていた。
この対決を制したものが出場権を得るのに一歩大きくリードできる、両校にとって大事な一戦だ。
「あぁ…」
高尾と美桜は二人静かな廊下を歩く。大事な一戦を前に、いつもは軽快なやり取りをする二人の言葉数は少なかった。
「…かず」
美桜は並んで歩く彼の名を小さく呼んだ。
私は選手じゃないから、コートの外から見守ることしかできない。プレーで彼らを支えることはできないけど…
「見てるから、コートの外で。
信じてる、秀徳が勝つのを」
顔を上げ、まっすぐ高尾を見上げた。
向けられるエメラルドグリーンの瞳。真っ直ぐで凛としたその瞳の奥ではメラメラと燃える静かな緋色の炎がチラついているように思えた。力強い彼女の言葉に、高尾は緊張の糸が切れたように弾ける笑顔を浮かべた。
「はは!ホント、俺らのマネージャーかっこいいな」
そう言うと高尾は、クシャっと優しい手つきで彼女の頭をひと撫でした。
「信じて見てて。俺ら、勝つから」
もう彼女のお陰で緊張はなくなった。あるのは、因縁の対決に対する高揚感だ。傍でいつも支えてくれている彼女が信じてくれている。それだけで自信がみなぎってくる。
「できれば俺のプレーだけ見ててほしいんだけど」
「それはできないよ」
「だよなぁ…」
いつもの調子を取り戻した高尾は軽口を叩きながら歩き出す。その彼のお願いに苦笑いを浮かべながら、美桜は彼に倣って歩き出す。そして、二人はお目当ての人物がいる控室の扉をゆっくりと開けるのだった。
「そういや、前も雨が降っていたな」
電気もつけずに暗い控室の真ん中で1人静かに目を閉じている者…緑間に向かって高尾は声を掛けた。
彼の声に、緑間はゆっくりと目を開けると横目でドアの方に目をやる。すると、ドアに左肘をつき、こちらを覗き込む高尾と、その隣に立つ美桜がいた。
「もうすぐ試合始まるよ」
「行こうぜ」
「…あぁ」
二人に対して返事をし、緑間は立ち上がる。その手にはしっかりと今日のラッキーアイテムである地球儀が握られていた。
「それが今日の?」
「あぁ。今日は地球儀なのだよ」
「前回の木彫りの熊よりは…いいか?」
決勝リーグに向けての予選で緑間が持ってきた木彫りの熊と比べて首を捻る。
「何言っている。木彫りの熊も地球儀も同じラッキーアイテムなのだよ。」
「へーへ、そうですね」
「馬鹿なこと言ってないで早く行くのだよ」
「俺ら呼びに来た側なんだけど」
げんなりする高尾を置き去りにして、緑間は先陣を切って歩き出す。いつも通りのやり取り。だが、どこか緑間は楽しそうに口角を上げているように、美桜からしたら見えたのだった。
*****
「ウォー、出てきたぞ!
誠凛と秀徳!決勝リーグ、最注目カードだ」
観覧席から歓声が響き渡る中、両チームの選手が入場する。
「えっ」
選手一人ひとりの表情を見ていた、美桜は緑間の表情を見て思わず声を上げてしまう。なぜかというと、こんな緑間を今まで見たことがなかったからだ。そして今なんかはベンチでグッと拳を力強く握りしめていた。
「あっれ~真ちゃんどったの?まさかびびって」
いつものように高尾は話しかける。が、うるさいといつもは返してくるはずなのに今回は押し黙ったまま。不思議に思い、緑間の顔をのぞき込んだ高尾はギョッと目を見開いた。
「話しかけるな…
今、気がたっている。冗談に付き合う余裕はないのだよ」
飢えた獣は危ないとかいうけど…
あはは…ちょっとわかるわ
今、目の前にいるのはまさしく猛獣のよう。緑間の体から滲み出ている殺気だったオーラに高尾は思わず後ずさりしてしまった。この状の緑間を目の当たりにして居てもたってもいられず。思わず忙しなく動いている美桜を呼び止めた。
「ねぇ…あんな緑間見たことある?」
「…少なくとも私は見たことがないかな」
敗北を知った緑間は勝利に渇望している。ここまで飢えるとは…とビックリした。それでも昔より人間味がある彼を見ることができて美桜は、内心嬉しく思うのだった。
「奴らに勝つ。今の俺にはそれしか考えられん」
「あぁ…俺もだ」
勝ちたいと考えるのは緑間だけでない。高尾をはじめとして大坪・宮地・木村そして美桜も同じ気持ちだ。それはもちろん誠凛側も同じ。
「こっぴどく負けたことがあるのは向こうだけじゃないだろ?」
日吉の言葉に答えるかのように他のメンバーも立ち上がる。
「あぁ、そうだな」
「負けるのなんざ…一度で沢山だ。腹ペコなのは…」
「こっちも一緒です」
木吉、火神、黒子が日吉の言葉でさらにモチベーションを上げていく。
整列のコールがかけられ両チームの選手は向かい合う。その中で、火神と緑間の間では常人では計り知れないような火花をまち散らす。
「それではこれよりWC予選決勝リーグ第2試合誠凛高校対秀徳高校の試合を始めます」
戦いの火ぶたが切って落とされた。
どんよりとした曇天空。その空に広がる黒い雲は、地上に激しく冷たい雨を降らせていた。
あの時とは、IH予選で誠凛に負けた日。まるで今日の運命の試合の日にあわせるように、雨が降ったように美桜は思えたのだ。
季節はあっという間に過ぎ去り秋から冬に移り変わった。木々は葉を落とし、地面は枯葉で埋め尽くす11月半ば。
WC出場権を得るためにIHに出場できなかった誠凛高校・秀徳高校は予選会に参加していた。そして両校は順当に勝ち上がり、決勝トーナメントに駒を進めていた。
決勝トーナメントに進めるのは4校。そのうち、代表権を勝ち取れるのは2校。誠凛と秀徳はそれぞれ1勝ずつで因縁の対決を迎えようとしていた。
この対決を制したものが出場権を得るのに一歩大きくリードできる、両校にとって大事な一戦だ。
「あぁ…」
高尾と美桜は二人静かな廊下を歩く。大事な一戦を前に、いつもは軽快なやり取りをする二人の言葉数は少なかった。
「…かず」
美桜は並んで歩く彼の名を小さく呼んだ。
私は選手じゃないから、コートの外から見守ることしかできない。プレーで彼らを支えることはできないけど…
「見てるから、コートの外で。
信じてる、秀徳が勝つのを」
顔を上げ、まっすぐ高尾を見上げた。
向けられるエメラルドグリーンの瞳。真っ直ぐで凛としたその瞳の奥ではメラメラと燃える静かな緋色の炎がチラついているように思えた。力強い彼女の言葉に、高尾は緊張の糸が切れたように弾ける笑顔を浮かべた。
「はは!ホント、俺らのマネージャーかっこいいな」
そう言うと高尾は、クシャっと優しい手つきで彼女の頭をひと撫でした。
「信じて見てて。俺ら、勝つから」
もう彼女のお陰で緊張はなくなった。あるのは、因縁の対決に対する高揚感だ。傍でいつも支えてくれている彼女が信じてくれている。それだけで自信がみなぎってくる。
「できれば俺のプレーだけ見ててほしいんだけど」
「それはできないよ」
「だよなぁ…」
いつもの調子を取り戻した高尾は軽口を叩きながら歩き出す。その彼のお願いに苦笑いを浮かべながら、美桜は彼に倣って歩き出す。そして、二人はお目当ての人物がいる控室の扉をゆっくりと開けるのだった。
「そういや、前も雨が降っていたな」
電気もつけずに暗い控室の真ん中で1人静かに目を閉じている者…緑間に向かって高尾は声を掛けた。
彼の声に、緑間はゆっくりと目を開けると横目でドアの方に目をやる。すると、ドアに左肘をつき、こちらを覗き込む高尾と、その隣に立つ美桜がいた。
「もうすぐ試合始まるよ」
「行こうぜ」
「…あぁ」
二人に対して返事をし、緑間は立ち上がる。その手にはしっかりと今日のラッキーアイテムである地球儀が握られていた。
「それが今日の?」
「あぁ。今日は地球儀なのだよ」
「前回の木彫りの熊よりは…いいか?」
決勝リーグに向けての予選で緑間が持ってきた木彫りの熊と比べて首を捻る。
「何言っている。木彫りの熊も地球儀も同じラッキーアイテムなのだよ。」
「へーへ、そうですね」
「馬鹿なこと言ってないで早く行くのだよ」
「俺ら呼びに来た側なんだけど」
げんなりする高尾を置き去りにして、緑間は先陣を切って歩き出す。いつも通りのやり取り。だが、どこか緑間は楽しそうに口角を上げているように、美桜からしたら見えたのだった。
*****
「ウォー、出てきたぞ!
誠凛と秀徳!決勝リーグ、最注目カードだ」
観覧席から歓声が響き渡る中、両チームの選手が入場する。
「えっ」
選手一人ひとりの表情を見ていた、美桜は緑間の表情を見て思わず声を上げてしまう。なぜかというと、こんな緑間を今まで見たことがなかったからだ。そして今なんかはベンチでグッと拳を力強く握りしめていた。
「あっれ~真ちゃんどったの?まさかびびって」
いつものように高尾は話しかける。が、うるさいといつもは返してくるはずなのに今回は押し黙ったまま。不思議に思い、緑間の顔をのぞき込んだ高尾はギョッと目を見開いた。
「話しかけるな…
今、気がたっている。冗談に付き合う余裕はないのだよ」
飢えた獣は危ないとかいうけど…
あはは…ちょっとわかるわ
今、目の前にいるのはまさしく猛獣のよう。緑間の体から滲み出ている殺気だったオーラに高尾は思わず後ずさりしてしまった。この状の緑間を目の当たりにして居てもたってもいられず。思わず忙しなく動いている美桜を呼び止めた。
「ねぇ…あんな緑間見たことある?」
「…少なくとも私は見たことがないかな」
敗北を知った緑間は勝利に渇望している。ここまで飢えるとは…とビックリした。それでも昔より人間味がある彼を見ることができて美桜は、内心嬉しく思うのだった。
「奴らに勝つ。今の俺にはそれしか考えられん」
「あぁ…俺もだ」
勝ちたいと考えるのは緑間だけでない。高尾をはじめとして大坪・宮地・木村そして美桜も同じ気持ちだ。それはもちろん誠凛側も同じ。
「こっぴどく負けたことがあるのは向こうだけじゃないだろ?」
日吉の言葉に答えるかのように他のメンバーも立ち上がる。
「あぁ、そうだな」
「負けるのなんざ…一度で沢山だ。腹ペコなのは…」
「こっちも一緒です」
木吉、火神、黒子が日吉の言葉でさらにモチベーションを上げていく。
整列のコールがかけられ両チームの選手は向かい合う。その中で、火神と緑間の間では常人では計り知れないような火花をまち散らす。
「それではこれよりWC予選決勝リーグ第2試合誠凛高校対秀徳高校の試合を始めます」
戦いの火ぶたが切って落とされた。