ストバス大会
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ストバス大会決勝戦…
予想通り、誠凛チームと氷室がいるチームという高校生対決に決まった。
試合が始まろうとしたその時…それを静止する人物が現れた。ジャンプボールにうまい棒が乗せられたのだ。
「ごめーん。ちょっと待ってくんない?」
ボールを抱え込んだ人物を見て、黒子は目を見開く。
「お久しぶりです。紫原君」
「あら?黒ちんじゃん!なんで?
っか…相変わらず真面目な顔だね?真面目すぎて、ひねりつぶしたくなる」
ボールをもっていない左手を黒子の頭上に上げる紫原。何をする気だ?と周囲が固唾を飲んで見守る中…
「なーんて…うそうそ」
周囲の予想に反して、紫原は自身の体をしゃがませ黒子の頭をわしゃわしゃと撫で回すのだった。
「ん…やめてください」
黒子はイラっとして紫原の手を払う。
「あれ?怒った??ごめんてば」
そして、ゆっくりと周囲を見渡す。紫原の目に映ったのは先程会った人物だった。
「あれれ??みおちんの彼氏じゃん」
「名前覚えてよ!高尾だって!紫原君!」
「あ...そっか...じゃあ高ちんね。
っていうか、みおちんは?」
「美桜は…帰ったらしー…」
「えっ高ちん、みおちんのこと怒らせちゃったの?」
「怒らせてねーよ!」
「じゃあなんで彼氏なのに置いてけぼりくらってるの?」
「こっちが知りたいわ!!」
思わぬ二人のやり取りに黒子を始めとして目を見開いた。一体いつ二人は会ったのだろうか?と
そんな周囲の様子に気を止めることなく乱入してきた紫原は氷室に向き直る。
「あ…忘れてた…室ちん、うち確か草試合禁止。だから止めにきたんだ。」
「そうなのか…困ったな…」
まさかの紫原の言葉に氷室は考え込んでしまう。そんな氷室を促しこの場を離れようとする紫原。だが、それを制止する者がいた。
「ちょっと待てよ!いきなり乱入してきてそれはちょっとないだろ?ちょっと混じってけよ」
紫原の肩をつかんだのは火神。そして好戦的にギラギラと目を光らせる。それもそのはず、今火神の目の前にいるのは、キセキの世代の一人。そんな人物と戦えるこの瞬間を野放しにしたくないのだ。それに加え、50勝目をかけた氷室との一戦に茶々を入れられたのだ。火神にとって黙っていられるはずがない。
そんなことを知らない紫原は興味を示したものに手をのばす…。手を伸ばした先は火神の顔。
「その眉毛…どうなってるの??なんで2本?」」
「いってぇ!!この!!人の話聞いてたのかよ!」
紫原は不思議そうにちぎりとった火神の眉毛を眺める。思わず、そんな紫原を見て火神は怒鳴る。それを見た高尾は笑いが止まらず腹を抱え目に涙を浮かべる。一方で降旗達は戸惑いを見せる。なぜならあまりにも外見とイメージと違いすぎると思ったからだ。そんな彼らに黒子は紫原のことを説明する。
「彼は基本ネジがゆるいです。スポーツ選手でたまに見かけるタイプですけど…ある分野で圧倒的な才能を持ちながら逆にそれ以外はなにもできない。ですが、バスケでスイッチが入ったときは無敵です。」
「もー…室ちんいこ」
紫原は火神との言い合いに飽きて、氷室の背を押して去ろうと歩き出す。
なんなんだこいつ…ガキだな…
紫原の様子に唇を噛み締める火神だったがとあることに気づく。
ガキ!?!?
思い立った火神は背を向ける紫原にこう言うのだった。
「なんだ…がっかりだ!まったく。そんなビビリとは知らなかったぜ。逃げるとか…だっせぇ!」
「イヤイヤ!火神!そんな挑発...紫原君が乗るわけないじゃん」
なぁ?と高尾が紫原の方を見る。だが、え?マジで?と紫原の異様な雰囲気にギョッとする高尾。それもそのはず、紫原は顔を強ばらせ怖い表情を浮かべていたのだから。
「はぁ!?!?逃げてねぇし」
「おいおい無理すんなよ!ビビってたじゃん」
「無理じゃねぇーし!っていうかビビってねぇーし」
火神の子供じみた挑発にまんまとのる紫原。そして、紫原と氷室は結局試合に出ることに。このまさかまさかの展開に周囲は呆然としてしまうのだった。
「バーカバーカ」
「馬鹿じゃねーし!」
小学生じみた低レベルの言い合いを続ける火神と紫原。マッチアップするために木吉が制止する。そして木吉は笑顔を浮かべ紫原に向き直った。
「久しぶり…中学以来だな」
「だれ??」
「あ…まいったな…覚えてないか」
「中学時代やったっけ?忘れちゃった。弱い人わざわざ覚えたりしないし」
まさかの返答に木吉は苦笑いを浮かべる。そして傍らで見ていた黒子はふつふつとこみ上げるものがあった。紫原のこの発言にさすがの黒子もカチンと頭に来たのだ。
「黒子...」
呼ばれてハッと黒子は顔を上げる。すると目に映ったのはただならぬ雰囲気を出す高尾の姿。
「俺もさ...中学時代に真ちゃんと対戦したことあったんだけど本人覚えてなかったんだよね。だから、木吉さんの今の気持ちなんとなくわかるわ」
肩をすくめた後、紫原の方に鋭い眼差しを高尾は向ける。高尾も中学時代に帝光と対戦して負けた身だ。そして同じように高尾は覚えられていなかった。弱いからとは言われてないがもし言われていたら確実に切れていたに違いない。
まさかの高尾からの暴露話に黒子は目を見開く。そんな彼に高尾は不敵な笑みをみせる。
「ここは一発、やってやろーぜ」
ダークブルーの瞳を鋭く尖らせた高尾の頼もしい一言に黒子は大きく頷くと前を見据えるのだった。
*****
ジャンプボール…。紫原対木吉。一斉に飛び上がる両者。紫原がボールを弾こうとするが、その前に木吉が弾く。このプレーに紫原はハッとする。どこかで味わったような感覚だと。
高尾→降旗へボールが回り、降旗から黒子へパスが回される。黒子は体をしゃがませると来たボールを弾いた。
「木吉先輩にイグナイトパスだ!」
受け取った木吉の手はボールを勢いで痺れが走る。思わずこの衝撃に木吉は顔をしかめる。
すごいな…このパス。俺そう何度も取れん!
目に涙を浮かべながらも木吉はそのままの勢いでボールを叩き込んだ。
「まぁ…忘れちまったものはしょうがない。バスケで思い出してもらうしかないな」
「いや…もういいよ。思い出したし。木吉鉄平」
そのシュートを見ていた紫原の頭の奥深くの記憶が叩き起こされたのだった。
それは2年前…全国大会準決勝。照栄と帝光の試合。彼ら二人は対決していたのだ。どんなに点差が離れようと決して諦める様子が無い木吉に試合中にも関わらず思わず紫原は疑問を口に出したのだ。
「ね?そんなに楽しい?バスケ?」
「こんなボロカスにされて楽しいわけないだろう。笑ってるように見えるか?」
「ねーー、じゃあもっとボロカスにするけど。いい?」
思わず、紫原の言葉に顔をしかめる木吉。一方で真剣な眼差しをする木吉を見ていて紫原がイライラしていくのだった。負けが確定しているのに一生懸命食らいつこうとする姿が紫原にとって暑苦しくてうざく感じてしまうのだ。そんな紫原に青峰からボールが送られる。それを受け取った紫原は冷酷な瞳で木吉を睨めつけるのだった。
「おかげでやる気がでちゃったな…忘れたままのほうが良かったかもよ」
先程と表情が一変し眼光を鋭くする紫原がそこにはいた。そんな両者の間を風が吹き抜ける。そして彼らの頭上の空は、不吉な予感を感じさせるように徐々に雲域が怪しくなっていくのだった。
やる気を出した紫原を見て氷室は制止する。今回は即席チームだからと氷室は自分がオフェンス・紫原はディフェンスと役割をつける。それを聞いた紫原は異を唱えることなく手を軽く振りゴール前に突っ立つ。それを見たチームメイトからどよめきが走るが、氷室は大丈夫だと声をかける。
「あれがアツシのスタイルだから。…それに、俺一人で充分だ」
ボールを手に氷室は走り出す。行かせまいと火神が身構えるが、氷室はドリブルから飛び上がるとシュート体制に入る。そしてボールを放つ。そのボールは綺麗な弧を描きゴールのネットを揺らすのだった。
なんだよ!あのシュートは!?
一つ一つの動きに無駄がなく滑らか。加えて、手先から放たれたボールの動きがスローモーションのように見えたのだ。緑間のシュートを毎日見ている高尾ですらその洗練されたシュートに呆気に取られる。
「降旗、ボーッとするな!リスタート!!」
木吉の一声により時が動き始めたかのように降旗を始め周りは動き出す。降旗から高尾がボールを貰い走り出す。それと同時にポツリポツリと雨が降り出すのだった。
「高尾君!ボールください」
横目で見ると黒子が隣を走っていることに気づいた高尾は口角を上げる。瞬間的に黒子が何をしようとしているのかわかった高尾は、お望み通りにとボールを回す。
「行くぜ〜!黒子!」
高尾から来たボールを迷わず前方へ黒子は勢いよく弾く。弾かれたボールを取ったのは火神。火神は眼光を鋭くして真正面を向く。
「勝負だ、紫原!!」
そんな火神を目の前にしても気怠げな様子の紫原。ちなみに両手をポッケに突っ込んだままだ。だが、火神の様なタイプは紫原をイライラさせるのだった。
「暑っ苦しいなぁもー。そんなウキウキ熱血しないでよ....
ヒネリつぶしたくなる」
紫原の醸します異様なオーラに火神は思わず足を止める。火神の本能が知らせたのだ。こいつは危険だと。火神の背筋がゾッとして動くことができなくなったまさにその時、降り出した雨がさらに勢いを増し、バケツをひっくり返したかのように雨粒が地面を叩きつけるのだった。あまりの雨の酷さに試合が中断された。
「参ったな…。残念だけど勝負はお預けだな」
「待てよ、タツヤ!」
「俺も続けたいのは山々だが、この雨だと直に中止のアナウンスが出るだろう」
先程からずっと続く激しい雨。その雨を降らすのは分厚い黒い雲。空模様を見て氷室はしばらくは止むことはないと判断したのだ。
「とはいえせっかくの再会だ。これで終わりじゃ味気ないな」
火神が放り投げたボールを構え直す氷室。そして、火神に好きに守っていいぞと言うとシュート体制に入る。ただのシュートではないのか?と火神はボールを止めようと飛び上がる。だか、氷室が放ったボールは火神の手をすり抜けゴールへ吸い込まれたのだ。
消えた!?だと...
一体どうしてだ?と火神は驚きを隠せないまま氷室を見つめる。その氷室は火神に背を向ける。
「じゃあな。次会うとしたら....... 」
「冬だな...次は互いにユニフォームを着てやろうぜ」
「……懲りないなー。前あんだけやったのに」
氷室の言葉に答える木吉は、紫原をじっと見つめる。その強い眼差しを見た紫原は鬱陶しそうに流す。視線をそらした先に見えたのは黒子と高尾。
「じゃーねー、黒ちん、高ちん。
高ちんはみおちんと早く仲直りするんだよ」
「やめてください」
「おー、じゃなくて!そもそも俺たちは喧嘩してねぇーっーの!」
黒子の頭をワシャワシャと撫で回す紫原。その手を払いのける黒子。その隣では高尾が、未だに誤解されていることに不満げに口を尖らせていた。
「紫原くん…今でも、やっぱりバスケはつまらないですか?」
真剣な眼差しでその言葉を口にする黒子。彼のその言葉は紫原に昔の記憶を呼び起こさせるのだった。以前にも同じ言葉を投げかけられたことがあったのだ。
「ねぇねぇ?あっくんバスケ楽しくないの?」
紫原の顔を不思議に覗き込むのは美桜。彼女の事は友達・チームメイトとして好きなのだが、バスケ関連の話はどうしても噛み合わなかったのだ。
「バスケ疲れるからキラーイ。でもさ、負けるのはもっと嫌いだからやってるだけ。楽しいとか楽しくないとか...よくわかんないや」
その時どうしてこんな事を美桜が聞いたのか紫原はわからなかった。だが、紫原にとってこれ以上この記憶は思い出しくない。
「その話、それ以上するならヒネリつぶすよ。黒ちんでも…ま、反論あるなら聞くよ。ウインターカップで」
あの時の悲しげにうつむく美桜の表情を頭からかき消すためにと黒子に紫原は背を向けるのであった。