ストバス大会
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あれ?
参加の受付をしようと、エントリーシートを受け取っていた美桜達は隣で同様に受付をしていた一行に見覚えがあった。まさかと思いながら美桜達は隣を見る。それは相手側も同じだった。
「誠凛と秀徳!?」
「正邦!?」
互いに気づき一瞬見合わせた両者は周囲に驚きの声を響き渡らせるのであった。
「いやー奇遇だね?なんでこんなとこいんの?というかなんで秀徳も?」
偶然出くわした彼らは近くにあった芝生で円になり座ると各々持ってきたものを食べる。その中で、正邦の春日が口火を切りだす。自分たちはともかくなんでこいつらがいるのかと…
「今日は練習がないので」
「俺らのとこも休みで、たまたま来たら誠凛さんに会って誘われたもんで」
その疑問に対して黒子と高尾がそれぞれ答える。あーなるほどねと春日も納得した様子だった。そんな中、全く事情を知らない火神はフランクフルトを頬張りながら不思議そうに聞き返す。
「あんたらこそいいのかよ?練習」
「嫌味か?おい!」
「何言ってんだよ火神。正邦はWC出れないから、3年は引退だぜ」
「え?そうなのか?」
火神の隣にいた津川が噛みつくように声を荒げる。なにか気に障ることでも言っただろうかと首を捻る火神に美桜の隣りに座っていた高尾は唖然とした様子で声を上げた。
「高尾の言うとおりだ。津川はともかく俺達3年は引退だ」
キョトンとする火神を置き去りに、暫く木吉としゃべっていた岩村が肯定ともいえる発言をする。
「WC予選に出れるのはIH予選上位8校だけ。各ブロック上位2校しか出れないんだよ」
「つまり、俺達のブロックで出れるのは秀徳と誠凛。正邦さんは出れないんだよ」
ホントに知らなかったのか…と驚きながらも美桜と高尾が火神にわかるようにWCの仕組みを説明するのだった。
「ツーワケで誠凛に負けて自動的に俺達は引退。今日は受験勉強の合間の息抜きってとこだ。つーか人間そう簡単に忘れることできんし...まだくすぶりが残ってたときにこの偶然はありがたい。」
「もしあたったら、リベンジさせてもらって心置きなく受験勉強させてもらうよ」
春日・岩村はそう言うと、火神に突っかかる津川を引きづる形で行ってしまった。続くように高尾と美桜は腰を上げた。
「じゃあ、俺達は時間になるまで二人で回ってるんで」
高尾が誠凛側に言い残し二人でその場を離れ時間になるまで屋台を見て回りはじめる。
一度別行動をとった両サイド。各々その時間中、思いもよらない人物と再会を果たすとはその頃は誰も思っていなかった。
*****
「や…やべぇーよ!遅くなった!!火神がまた腹減ったって言うから!」
「もう正邦勝っちゃってんじゃないの?」
試合が行われているであろうストバスコートに慌てて走る誠凛勢。降旗・福田がそれぞれ原因である火神に小言を言う。が、当の本人はフランクフルトを口に頬張りながら走るのだった。そして人ざかりができているコートにつくのだが、目の前で起こっている出来事に対して彼らに衝撃が走る。なぜなら、スコア表に表示されているのは51対32。予想に反して正邦が負けたからだ。
「そんな…正邦があんなあっさり…」
思わず口に漏らす降旗の横にいた火神は違うことで頭が一杯であった。なぜなら、目の前にいる人物に見覚えがあったからだ。だが、ここは日本…アメリカにいるはずの彼がいったいなんで…
「なんで…なんでここにいやがる…氷室辰也!」
その言葉にコート上にいた一人の人物が振り向く。
「大我…」
向こうも驚いた様子で火神を見つめるのだった。黒子はじめとして一体この二人がどういう関係かわからないため状況が掴めず困惑。
そんな彼らを差し置いて英語で会話を始める両者。
「It is…HIMURO? KAGAMI is friend?」
木吉が片言の英語で話しに割って入る。
「あー…日本語で大丈夫。向こうが長くてまだ慣れてないだけだから…」
「よかった。それは助かるわ」
氷室は英語をやめ日本語で話し返した。日本語を話せるとわかって木吉はホット胸をなでおろすのだった。そして木吉の疑問に対して氷室はこう答えるのだった…
「友達とは違うよ…しいて言えば…
兄貴かな」
と。
彼らが出会ったのはアメリカのジュニアスクール時代。氷室と出会い、彼に誘われる形でバスケを始める火神。いつしかこの二人には友達以上の関係となり、兄弟のような関係となる。そして、兄弟の証として氷室は近くの店でお揃いのリングを買い火神にそれを渡すのだった。しかし、とあるストバスの試合で負傷した氷室を気遣い火神が手を抜いてしまったために両者の関係は崩れてしまったのだった。氷室はそんな火神に激怒し次の試合でリングをかけて勝負しろというのだったが、火神が帰国したことでこの試合は実現することはなかったのだ。
「あの時は残念だったが、俺も今年から日本に帰ってきて今は陽泉高校に通っている。いつかきっとと思っていたが…今日こそあの時の約束を果たそう」
「辰也…俺は…もう…お前とは…」
火神に背を向ける氷室。火神は肩をわなわなと震わせ歯を食いしばり、喉に詰まっていた言葉を吐き出そうとする。火神は、このリングをかけて氷室とは勝負したくないのだ。
この火神の様子に対してある人物が動き出す。カバンからテツヤ2号を取り出した黒子が火神の頬に向かって突き出したのだ。テツヤ2号もタイミングよく右手を突き出したためその手が火神の頬に当たるのだった。
テツヤ2号による犬パンチ。氷室はこれを見てどういうことだ?と目が点に。一方された張本人はというと…
「いっって!て…2号!?連れてきていたのか?」
目の前に突如登場したテツヤ2号に驚きを隠せなつつも、なにすんだよ!と黒子を怒鳴りつける。
「火神君にうじうじされると鬱陶しいです。」
「はぁ!?!?」
「話はだいたいわかりました。とりあえず…最後に手を抜いた火神君が悪いと思います。氷室さんを兄とは呼べなくなるし、そもそも本調子でないときに勝つのは不本意だったかもしれません。
けど、大好きなバスケで手を抜かれて嬉しい人はいないと思います。
それに兄弟分じゃなくなったとしても二人が別人に変わってしまうわけじゃないでしょ?」
火神から目を離すことなく真剣な眼差しをする黒子。
「そうだな…そもそも俺がバスケを好きな理由は強いやつと戦うのが楽しいからだ。それはやっぱり辰也が相手でも一緒だ。だからサンキュー黒子…」
火神はそう言って自身の胸元にぶら下がっているリングを強く握り締めた。そして氷室に向き直る。
「腹は決めた。もし戦うことになったら何があっても全力でやるよ!辰也!」
「あぁ…今日当たるの楽しみにしているよ…ところで君」
氷室は火神の隣にいる黒子に目線を向ける。
「ごめん…誰?…だっけ?」
「黒子テツヤです。はじめまして」
「そうか!君が!面白い相棒を見つけたな、大我」
「ちょ!辰也!黒子のこと知っているのか?」
「あぁ…ちょっとね。実は俺のいるチームにも面白いやつがいるんだ」
黒子の自己紹介を聞くと氷室は目を見開いた。そうか…この子が噂の黒子君かと。その様子に火神は不思議に思うのだった。なんで、黒子のことを知っているかのような反応を示すのかと。そんな火神達に氷室は意味深なセリフを残してその場を立ち去るのだった。
*****
「あらら?もう少しパンチが欲しい味だわ」
あれ?聞いたことがある声だと、色々と屋台を回っていた美桜は、思わずその方向を向く。彼女の視界に映ったのは大きいビニール袋を手に持ちポッキーを食べる人の姿。その人物の髪は特徴的な紫色。足を止めた美桜のことを不思議に思った高尾も吊られる形でその方向へ目をやる。
「あれって...キセキの世代の一人の...」
「紫原敦。彼は確か陽泉に通ってるはずなんだけど」
「陽泉って秋田じゃなかったっけ?なんでここに?」
「さぁなんでだろうね?」
色々と考えるのをやめた美桜は紫原に近づこうとする。高尾は思わずその彼女の腕を掴んでいた。
「かず?」
「あっ…あのさ、もう平気なの?」
無意識で彼女を止めてしまった高尾は、困惑気味に尋ねる。
なにに?
そう問わなくても彼が何を不安視しているのかわかった美桜はゆっくりと振り返った。そして、掴む彼の手を解き、自分の手で包んだ。
「平気だよ!だって…そばにかずがいてくれるから」
前を向けるのも、こうして中学時代の仲間に出くわしても狼狽えずになったのも全て彼のお陰。
太陽を背にはにかむ彼女の笑みに高尾は、心配損だったなと今度は彼女の手を握り直すのだった。
「ヤッホー!あっ君...久しぶりだね?」
懐かしき呼び名、聞こえてきた心地よく懐かしい声におもむろに顔をあげる。そして目線を下にやると予想通りの人物がいて紫原は頬を緩めるのだった。
「あっれーー?みおちんじゃん。久しぶり」
「なんで東京にいるの?」
「ん〜....日本に帰って来たばかりの室ちんが東京見学したいって言ってそれでこっちに戻ってたんだ」
美桜と会話している間も持っているお菓子を口に放り込んでいた紫原はふとその手を止める。
「あ...みおちん、これあげる」
ビニール袋をゴソゴソと紫原は漁ると、一袋のお菓子を美桜に差し出す。
「え...いいの?」
「みおちんだからあげるんだからね」
「ありがとう」
美桜は顔を緩ませながらその袋を受け取り、その姿を見た紫原も嬉しそうに目を細めるのだった。そして、紫原は美桜の隣りにいる人物に目を移す。
一体誰なのだろうか?
見覚えのない人物に首を傾げる紫原はそのまま疑問を口に出していた。
「みおちん...隣りにいる人だーれ??」
「え...えーーっと...」
紫原の問いかけに一瞬で真っ白い肌が朱に染まる美桜。顎に手をかけ目線をそらしあたふたする美桜の姿を始めて目にした紫原は目を見開くのだった。
こんなみおちん...俺知らねぇー...
「あ..あのね...かずはね...私の彼氏だよ」
「どーも...はじめまして。高尾和成です!」
隣で照れくさそうに笑う美桜の様子に嬉しく思いながらも高尾は普段通りに紫原に挨拶をする。へぇーと思いながらも紫原が気になるのはやはりいつもと違う美桜だった。
「みおちんってそんな表情もできるんだね。知らなかったよ。」
「え?どういうこと?」
「というかみねちんじゃないんだね...相手。ビックリだよ。あんなにずっと一緒にいたのに」
美桜の反応に対して何も返すことなく自分の気になることをズバズバと紫原は口に出していく。こんな反応を受けるのが久しぶりすぎてどう返していたのだろうと呆気に取られる美桜。対して、その様子を傍らで見ていた高尾はキセキの世代ってやはり難癖もある奴らの集まりなんだと思うのだった。だが、それよりも気になったのは、彼が口に溢した名前だった。
「みねちん...って青峰のこと?」
「そうだよ〜」
「え?じゃあ、そんなに青峰と美桜って一緒にいたのか?」
「そうだよ〜。なんだかんだ赤ちんに注意受けてたしね」
「その話もっと詳しく!」
「えっとね...」
「ちょっと!あっくんは話さないの!
で...かずは面白そうに聞かないの!」
美桜の焦った甲高い声が響くのだった。