夏祭り
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ヒューーーー
ドン!!!!
バン!!
バババン!!!
花火が夜空に打ち上げられる中…
「あーー!はじまっちゃった!始まる前に戻るつもりだったのに」
屋台エリアで、やってしまったと空を見上げる黄瀬と笠松と森山の姿があった。
「黄瀬がかき氷に並んだりするからだろ」
黄瀬を責める笠松であったが…
「笠松だって…アユの塩焼き買うのに並んだじゃないか」
黄瀬と同様に笠松も屋台に並んでいただろ?と森山が言う。
「ん、ん…。仕方ないだろ。珍しかったんだから」
「はぁ…とりあえず戻ろ。買出しに行ったのに遅れたんじゃ誠凛の人たちに悪いからな」
そうっすねと黄瀬が走り出そうとする。が、
「「だめだ!!」」
そんな黄瀬を笠松と森山は静止する。突然先輩たちに止められて驚く黄瀬。
急いで戻ろうと言っているのに走るのはダメなんて矛盾しているじゃないすか。
「お前の足!負担かかったら困るだろ?」
「お前は隠しているかもしれないが、その足バレバレなんだよ」
笠松と森山は黄瀬の痛めた膝を気にしていたのだ。IH以上に練習がオフの日も走れこむ黄瀬に気づいていた彼らは、黄瀬を休ませ走らせないためにも今日の花火大会に誘ったのだ。
「じゃあ…女の子は?」
「も…もちろん、それが一番の目的だ。お前は…おまけな?」
ひっで!と森山の発言に苦笑いする黄瀬。
「とにかく黄瀬は走るな!これはキャプテン命令な」
笠松と森山の真の思いを聞いてしまった黄瀬は立ち止まってしまった。こんなに自分のことを二人が思ってくれているなんて思わなかったからだ。しみじみと黄瀬の心に彼らの声が染みわたってい行くのだった。
前を歩いていた笠松と森山は黄瀬が付いてきていないことに驚き、どうしたと振り向く。
「イヒヒ…俺って大事にされているっすね!なんかうれしい…
あだーーーーー!!!」
噛みしめて素直に喜ぶ黄瀬。そんな黄瀬にずんずん笠松は近寄るといい気になっている黄瀬を蹴り飛ばすのだった。
「おまえがいい気になるから言いたくなかったんだよ!!」
更に蹴りを入れこむのだった。花火の音とともに黄瀬の悲鳴が鳴り響くのだった。
一方で違う場所の屋台エリアでは…
「ピヨピヨ…ピヨピヨピヨピヨ…」
心地よい音が辺りに響いていた。
「室ちんうるさい」
「ごめんごめん。懐かしくってつい止まらなくなっちゃった」
音を出していたのは黒髪の美青年。彼はアメリカでとある友達が日本から持ってきたピヨピヨ笛(水笛)のことを先ほど思い出し売っている屋台で購入すると歩きながらずっと笛を吹いていたのだ。隣にいる紫色髪の青年はしびれを切らすのだが、謝っておきながらも笛を吹き続ける。それを見た彼は思わずため息を吐くのだった。
「室ちんってわかんない」
またまた別の場所では…
「アウォーン……アンアン!!アン!!アンアン!!」
黒子の足元で花火に合わせて遠吠えをあげるテツヤ2号がいた。テツヤ2号は青峰に保護された後、桃井伝いで黒子達の手元に戻ってきていたのだ。はしゃぐテツヤ2号を見て火神は心の声が漏れだす。
「たく!!お前を探していたせいで全然屋台を楽しめなかったんだぞ!!」
「クォーン…」
火神の怒声にしょげるテツヤ2号。その様子を見かねて黒子もテツヤ2号と同じ表情を浮かべる。もともと似ている二人(うち1匹)を見て火神をは頭をガシガシとかくのだった。
「あーーーもう!同じ顔で同じ表情するな!!」
そんな彼らのもとに続々と先ほど会った知人から見つかったことに安堵するメールが送られてくるのだった。
またまたまたある射的ができる屋台では、一人の人物が狙いを定めていた。
「もちろん、狙うは特賞…カエルの着ぐるみパジャマなのだよ」
掛けている眼鏡を押し上げ目を光らせる緑間がいた。花火の音が響く中、置いてきたあいつらは果たしてしっかり楽しんでいるだろうか?と心の中で思うのだった。
「すげーーな…絶好の穴場だな」
「でっしょ!!」
人の姿がないとある川沿いには、花火の光に照らされて浮かび上がる二つの影があった。その二人を照らすように真正面に間髪入れずに花火が大輪の花を咲かせていく。その光景に感嘆の声を上げる高尾に嬉しそうに美桜は笑みを浮かべた。
去年のこの時期に自宅から小さく見えた花火はモノクロに見えた。殻に閉じこもっていた当時はこのような形で花火を見上げることになるとは思っていなかった。ずっとずっと暗闇の中で日々の味気ない生活を過ごすだけだと思っていた。
だけどいまは…
すっと盗み見るように隣を見上げる。いつも自分を見つけてくれるダークブルーの瞳は空に向けられている。その瞳に打ちあがった花火の鮮やかな光が反射して暗闇の中で輝く。
綺麗…
思わず伸びそうになる手をグッと堪える。その瞳をじっと見ていたい。でもやっぱりその瞳に自分を映してほしい。花火もいいけどコッチも見てほしい。思わず美桜は彼の名を読んでいた。
「…かず」
「ん?」
名を呼ばれた高尾は空に向けていた目線を隣にいる美桜に移す。白い肌をほんわかと朱色に染めた美桜がそこにはいた。髪を結いているためいつもは見えることがないうなじ、加えて浴衣を着ているためか大人の女性らしい色気が漂っていた。そんな彼女のエメラルド色の瞳は熱を持っていた。なにか期待するような、待っているような瞳が上目遣いに自分を見上げる。その瞳に魅了された高尾はたまらず彼女の頬に手を伸ばしていた。その手に美桜は嬉しそうに頬ずりする。そんな彼女を目の前に、理性を保っていられるわけがない。紅色に染められた魅惑的な唇に噛み付いた。
「んっ」
「煽った美桜が悪いんだからな」
花火をバックに意地悪く笑う高尾は、逃がさないとばかりに彼女の腰に手を回すと、己の唇を重ね合わせる。そんな高尾に答えるかのように小さな手は彼の背に回されていたのだった。