桐皇学園対海常(IH準々決勝)
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先輩達に断りを入れ、外に出た黄瀬は手すりに体を預け、遠くを見つめ外の風にあたっていたのだが、視線を感じ背後を振り向く。するとそこには信じられない光景が広がっていた。なぜなら犬を頭に乗せた黒子が目の前にいたからだ。黒子と視線が交わった黄瀬の頭の中は混乱状態に陥っていた。
なぜ彼がここに居るのか?
そしてなぜ犬を連れているのか?
思わず数回瞬きをし、幻なのではないかと己の目を疑うのだが、黒子の姿がしっかり見えた。これは現実だと再度確認を終えた黄瀬は驚きの声をあげるのだった。
「黒子っちー!?ってかなんすかこれ?」
「鞄に入れて観戦してたんで、休憩の間に外の空気を吸わせてあげようと思って」
黄瀬は視線を黒子の持っている犬へ移す。
黒子っちが手に抱いてる犬...
目が黒子っちにそっくりで憎めないんすけど...
「なんつーか、ツッコミどころ満載っすね。んで、黒子っちはなんでここに?」
犬と黒子を代わる代わる見比べた後、黄瀬は疑問をぶつけた。
「昨日まで近くで合宿だったので。皆でインターハイを見に行こうってなったんです」
「応援しに来てくれたんじゃないんすね」
「はい」
「ヒド!」
ここはウソでも応援に来たって言ってほしかったっすよ。
合宿を終えた誠凛一同はIHの試合を観に来ていたのだ。黒子の率直な答えに黄瀬は残念がり大きく肩を落とした。
そんな項垂れている黄瀬の耳に今度は複数の足音が近づいてくる音が入ってくる。誰かと訝し気に黄瀬は顔を上げ視線を動かす。すると、視界の端に捉えたのは綺麗なマリーゴールドの髪。特徴的な髪色から誰であるかは明白。黄瀬は嬉しそうに黄金の瞳を瞬かせた。
「え....みおっちじゃないすか!」
思わぬ人物の登場でしょげていた黄瀬は一気にテンションが上がった。
一方で、たまたま外へ出てきた美桜と高尾は視界に入ってきた人物に思わず立ちすくんでしまった。誰もない所で少し息抜きをと思いやってきたのに、なぜよりによって知り合いの二人がここに居るのか?と。
「呼んでんぞ。行ってこいよ」
先に、思考回路が戻ったのは高尾だった。ほんとは隣りにいる彼女を今か今かと待っている黄瀬に対し一言二言言いたい。が、一応美桜の友達である。ここはグッとこらえて美桜に行けと背中を押し出すのであった。
「え...あ...うん...そうだね」
高尾の言葉に押し出され、戸惑いながらも美桜は黄瀬のところへ向かった。
「みおっちも来てたんすね?」
先程コートにいた人物なのか?と思うほどの弾けるような笑顔で黄瀬は美桜を見た。
「昨日までテツヤと同じとこで合宿だったんだよ」
「えー!!黒子っちと同じとこ!!
羨ましいっす」
そこなんだ...
相変わらずの黄瀬に、ほっと胸を撫で下ろした美桜は彼を真っ直ぐ見据えた。
「涼太...覚悟決めたんだね?」
第2クォーター、タイムアウト明けに見せた彼の姿。必死に青峰のプレーを追う黄瀬を見て、美桜は気づいたのだ。黄瀬がやろうとしている事に。
「みおっち...俺やるっすよ。青峰っちのコピー。そのために憧れは捨てるっす」
先程振りまいていた笑顔が一気に引っ込め、試合中のような真剣な表情を浮かべる黄瀬。そんな彼を見て、美桜の頭では昔のとあるフレーズがよぎった。
黄瀬と知り合って暫くして美桜はとある疑問に陥った。それは、なぜ彼がバスケ部に入ったのかだ。あんなに楽しげにバスケをするんだったら、もっと早く部活来ればよかったのにと思ってしまったからだ。だが、黄瀬から返ってきた理由は彼女の想定を遥かに超えていたのだった。
『今までどんなスポーツも見ただけですぐ出来たからつまんなかったんすよ。でも、たまたま転がったボールを拾いに来た青峰っちを追いかける形で体育館へ行ったら、驚いたっすよ!あんなプレーを見たことがなかったすから。それを見て、この人とバスケがしたい!って思って、部活に入ったんすよ!』
青峰のプレーは人の心を動かす力を秘めている。
黄瀬もまた彼のプレーに魅了された1人だったのだ。自分と同じように。
黄瀬は興奮気味にその時の話を目を輝かせながら熱く語る。だがいつまでも負けっぱなしのわけにはいかない。今はまだ無理でも、絶対いつの日か。
黄瀬は一呼吸置くと、その思いを口にした。そのいつの日かを一番に見てほしい彼女に向けて。
『でも、いつか青峰っちに勝つっすよ!!
その時はしっかり見てて、みおっち。』
その時の涼太の眼差しは見たことないくらい真剣で、ホントにいつか来るといいなと美桜は思っていた。
「そのいつかが今なんだね?涼太?」
「そうっすよ。みおっち」
自分を見る黄瀬の黄金の瞳はあの頃以上に輝いていて力強く美桜は思えた。
ずっとずっと青峰の背中を見ていた黄瀬は今追い抜こうと必死にもがいている。黄瀬のこの姿を見て、美桜は嬉しく思った。こんなに真剣な表情を浮かべる黄瀬を再び見る事ができたから。
対して、渋々と美桜を送った高尾の内心は凄く複雑だった。久しぶりに会ったのだから時間の許す限り話して欲しい....だが、黄瀬と楽しげに話す彼女を見ていると胸の奥に黒い感情が渦巻いていった。
「高尾君、不機嫌そうですね」
「うぉー!!黒子!いつ来たんだよ!」
そんな彼の背に黒子が声を掛ける。すると、気配に気づかなかった高尾は素っ頓狂な声を上げた。普段からその反応に慣れている黒子。だが、高尾の隣に並んだ黒子はその反応に驚いた。黒子を見失う事がないはずなのに彼は話しかえるまで気づかなかったからだ。
「高尾君、そんなに集中して美桜さん達の方を見てたんですね。僕の存在を忘れるくらい。」
不服だと言わんばかりに黒子は肩を落とす。それを見て高尾は慌てふためいた。
「いやいや!そんなんじゃないって!」
「ほんとは??」
「血眼になって見てました。」
追求の手をやめない黒子に白旗を上げた高尾はガクッと肩をおろした。
「…そりゃあ不機嫌になりたくなるわ」
黒子の前で思わず本音を高尾は漏らした。
本来はここで二人っきりで時間を過ごそうと思ったのに。何という誤算。やっと想いが通じ合ったと思えばこれだ。黄瀬なんか、モデルやってるからやはりイケメンだし加えてバスケもめちゃ上手い。彼と張り合ったら確実に負けるからこそ、彼女を取られそうで不安でいっぱいだった。
だが、そんな彼の複雑な想いと裏腹に黒子は微笑まし気に彼を眺めていた。
「高尾君、おめでとうございます」
「え?何が?」
唐突に祝福の言葉をかけてきた黒子に高尾はすぐさま聞き返した。黒子が何を言っているのかさっぱり理解できなかったからである。
「え...美桜さんと付き合ったんじゃないんですか?」
「なんで知ってんだよ?」
驚きの声をあげる高尾に対して畳み掛けるように黒子は答えた。
「纏ってる雰囲気でわかりますよ...」
「え...マジで!?」
「はい」
黒子の思わぬ言葉で高尾は一気に顔が熱くなった。
*****
黄瀬は背中を手すりに預け、隣りにいる美桜を横目で見た。
「ちなみに...青峰っちと俺、勝つとしたらどっちだと思いますか?」
その問いに美桜は、んーと暫く考え込んだ。
「わかんない。ふたりとも諦めることはないと思うから…だから、どっちが勝ってもおかしくないと思うな。でもね…私は涼太のこと応援しているよ。」
美桜の輝く太陽のような笑顔を見て、黄瀬の抱えていたわだかまりは解けた。それだけ彼女の笑顔は魅力的だった。それもあるのだが…黄瀬の頭の中では、さっきの言葉が木霊した。今の言葉が夢ではないかと疑ってしまったくらいだ。
「え…?ホントっすか!」
キラキラと目を輝かせる黄瀬。そんな黄瀬に、う…うんと気迫に押されながらも美桜は頷いた。
「嬉しいっす!みおっち、俺頑張るっすよ!!
でもその前に充電させて」
「いいよ...おいで」
腕を広げる美桜の胸に黄瀬は躊躇なく飛び込んだ。顔をうずくめ力いっぱい抱きしめてくる黄瀬の頭を美桜は撫でるのだった。
「大丈夫大丈夫、涼太ならできるよ」
黄瀬だけに聞こえるように美桜は呟いた。少しでも自分の声が力になればと。
「もう大丈夫っすよ。ありがとう、みおっち」
黄瀬はゆっくりと美桜の体から離れた。しかし、そのまま美桜の顔を見つめたまま動かない黄瀬。どうしたのだろうか?と不思議に思った美桜は彼が言うタイミングを待った。
「ねぇ?みおっち?」
「どうしたの?涼太??」
「なんでだろう…?
俺...勝てるかどうかわからない今の方が気持ちいいんすよ」
この気持ちに戸惑いながらも黄瀬は口にする。手すりに凭れる彼の黄色い髪が心地よい風で靡く。その風に乗せられて届いた彼の言葉に、美桜は驚きをみせた。少し昔の彼なら絶対言わないだろう言葉を口にしたからだ。
「そうなんだ...
私は嬉しいよ…そんなふうに涼太がおもうようになって…」
嬉しそうに微笑んだ美桜は、彼を鼓舞するように力強い声を発した。
「頑張れ、涼太!」
「いってくるっす!」
昔以上の輝きを取り戻した黄瀬を美桜は送り出す。それに黄瀬は満面の笑みを浮かべると黄瀬は駆け足で戻るのだった。
あっ私も戻らないと
感傷に浸りそうになりかけるが、美桜は慌てて待たせている彼らのもとに戻ろうと振り向く。すると、高尾と黒子が仲良く話をしていた。同族嫌悪って嫌ってたくせにと内心笑いつつ美桜は彼らの元へ歩を進めた。
「おまたせ!二人で何を話してたの?」
「お!美桜!おかえり!」
「そうですね.....
高尾君にもっと自分に自信もて!
という話です」
「ちょ!!わかったから!
もうその話いいから黒子!」
黒子の発言に高尾は慌てふためく。
「え?なにそれ?すごく気になるんだけど!」
その二人につられるように美桜は笑うのであった。
なぜ彼がここに居るのか?
そしてなぜ犬を連れているのか?
思わず数回瞬きをし、幻なのではないかと己の目を疑うのだが、黒子の姿がしっかり見えた。これは現実だと再度確認を終えた黄瀬は驚きの声をあげるのだった。
「黒子っちー!?ってかなんすかこれ?」
「鞄に入れて観戦してたんで、休憩の間に外の空気を吸わせてあげようと思って」
黄瀬は視線を黒子の持っている犬へ移す。
黒子っちが手に抱いてる犬...
目が黒子っちにそっくりで憎めないんすけど...
「なんつーか、ツッコミどころ満載っすね。んで、黒子っちはなんでここに?」
犬と黒子を代わる代わる見比べた後、黄瀬は疑問をぶつけた。
「昨日まで近くで合宿だったので。皆でインターハイを見に行こうってなったんです」
「応援しに来てくれたんじゃないんすね」
「はい」
「ヒド!」
ここはウソでも応援に来たって言ってほしかったっすよ。
合宿を終えた誠凛一同はIHの試合を観に来ていたのだ。黒子の率直な答えに黄瀬は残念がり大きく肩を落とした。
そんな項垂れている黄瀬の耳に今度は複数の足音が近づいてくる音が入ってくる。誰かと訝し気に黄瀬は顔を上げ視線を動かす。すると、視界の端に捉えたのは綺麗なマリーゴールドの髪。特徴的な髪色から誰であるかは明白。黄瀬は嬉しそうに黄金の瞳を瞬かせた。
「え....みおっちじゃないすか!」
思わぬ人物の登場でしょげていた黄瀬は一気にテンションが上がった。
一方で、たまたま外へ出てきた美桜と高尾は視界に入ってきた人物に思わず立ちすくんでしまった。誰もない所で少し息抜きをと思いやってきたのに、なぜよりによって知り合いの二人がここに居るのか?と。
「呼んでんぞ。行ってこいよ」
先に、思考回路が戻ったのは高尾だった。ほんとは隣りにいる彼女を今か今かと待っている黄瀬に対し一言二言言いたい。が、一応美桜の友達である。ここはグッとこらえて美桜に行けと背中を押し出すのであった。
「え...あ...うん...そうだね」
高尾の言葉に押し出され、戸惑いながらも美桜は黄瀬のところへ向かった。
「みおっちも来てたんすね?」
先程コートにいた人物なのか?と思うほどの弾けるような笑顔で黄瀬は美桜を見た。
「昨日までテツヤと同じとこで合宿だったんだよ」
「えー!!黒子っちと同じとこ!!
羨ましいっす」
そこなんだ...
相変わらずの黄瀬に、ほっと胸を撫で下ろした美桜は彼を真っ直ぐ見据えた。
「涼太...覚悟決めたんだね?」
第2クォーター、タイムアウト明けに見せた彼の姿。必死に青峰のプレーを追う黄瀬を見て、美桜は気づいたのだ。黄瀬がやろうとしている事に。
「みおっち...俺やるっすよ。青峰っちのコピー。そのために憧れは捨てるっす」
先程振りまいていた笑顔が一気に引っ込め、試合中のような真剣な表情を浮かべる黄瀬。そんな彼を見て、美桜の頭では昔のとあるフレーズがよぎった。
黄瀬と知り合って暫くして美桜はとある疑問に陥った。それは、なぜ彼がバスケ部に入ったのかだ。あんなに楽しげにバスケをするんだったら、もっと早く部活来ればよかったのにと思ってしまったからだ。だが、黄瀬から返ってきた理由は彼女の想定を遥かに超えていたのだった。
『今までどんなスポーツも見ただけですぐ出来たからつまんなかったんすよ。でも、たまたま転がったボールを拾いに来た青峰っちを追いかける形で体育館へ行ったら、驚いたっすよ!あんなプレーを見たことがなかったすから。それを見て、この人とバスケがしたい!って思って、部活に入ったんすよ!』
青峰のプレーは人の心を動かす力を秘めている。
黄瀬もまた彼のプレーに魅了された1人だったのだ。自分と同じように。
黄瀬は興奮気味にその時の話を目を輝かせながら熱く語る。だがいつまでも負けっぱなしのわけにはいかない。今はまだ無理でも、絶対いつの日か。
黄瀬は一呼吸置くと、その思いを口にした。そのいつの日かを一番に見てほしい彼女に向けて。
『でも、いつか青峰っちに勝つっすよ!!
その時はしっかり見てて、みおっち。』
その時の涼太の眼差しは見たことないくらい真剣で、ホントにいつか来るといいなと美桜は思っていた。
「そのいつかが今なんだね?涼太?」
「そうっすよ。みおっち」
自分を見る黄瀬の黄金の瞳はあの頃以上に輝いていて力強く美桜は思えた。
ずっとずっと青峰の背中を見ていた黄瀬は今追い抜こうと必死にもがいている。黄瀬のこの姿を見て、美桜は嬉しく思った。こんなに真剣な表情を浮かべる黄瀬を再び見る事ができたから。
対して、渋々と美桜を送った高尾の内心は凄く複雑だった。久しぶりに会ったのだから時間の許す限り話して欲しい....だが、黄瀬と楽しげに話す彼女を見ていると胸の奥に黒い感情が渦巻いていった。
「高尾君、不機嫌そうですね」
「うぉー!!黒子!いつ来たんだよ!」
そんな彼の背に黒子が声を掛ける。すると、気配に気づかなかった高尾は素っ頓狂な声を上げた。普段からその反応に慣れている黒子。だが、高尾の隣に並んだ黒子はその反応に驚いた。黒子を見失う事がないはずなのに彼は話しかえるまで気づかなかったからだ。
「高尾君、そんなに集中して美桜さん達の方を見てたんですね。僕の存在を忘れるくらい。」
不服だと言わんばかりに黒子は肩を落とす。それを見て高尾は慌てふためいた。
「いやいや!そんなんじゃないって!」
「ほんとは??」
「血眼になって見てました。」
追求の手をやめない黒子に白旗を上げた高尾はガクッと肩をおろした。
「…そりゃあ不機嫌になりたくなるわ」
黒子の前で思わず本音を高尾は漏らした。
本来はここで二人っきりで時間を過ごそうと思ったのに。何という誤算。やっと想いが通じ合ったと思えばこれだ。黄瀬なんか、モデルやってるからやはりイケメンだし加えてバスケもめちゃ上手い。彼と張り合ったら確実に負けるからこそ、彼女を取られそうで不安でいっぱいだった。
だが、そんな彼の複雑な想いと裏腹に黒子は微笑まし気に彼を眺めていた。
「高尾君、おめでとうございます」
「え?何が?」
唐突に祝福の言葉をかけてきた黒子に高尾はすぐさま聞き返した。黒子が何を言っているのかさっぱり理解できなかったからである。
「え...美桜さんと付き合ったんじゃないんですか?」
「なんで知ってんだよ?」
驚きの声をあげる高尾に対して畳み掛けるように黒子は答えた。
「纏ってる雰囲気でわかりますよ...」
「え...マジで!?」
「はい」
黒子の思わぬ言葉で高尾は一気に顔が熱くなった。
*****
黄瀬は背中を手すりに預け、隣りにいる美桜を横目で見た。
「ちなみに...青峰っちと俺、勝つとしたらどっちだと思いますか?」
その問いに美桜は、んーと暫く考え込んだ。
「わかんない。ふたりとも諦めることはないと思うから…だから、どっちが勝ってもおかしくないと思うな。でもね…私は涼太のこと応援しているよ。」
美桜の輝く太陽のような笑顔を見て、黄瀬の抱えていたわだかまりは解けた。それだけ彼女の笑顔は魅力的だった。それもあるのだが…黄瀬の頭の中では、さっきの言葉が木霊した。今の言葉が夢ではないかと疑ってしまったくらいだ。
「え…?ホントっすか!」
キラキラと目を輝かせる黄瀬。そんな黄瀬に、う…うんと気迫に押されながらも美桜は頷いた。
「嬉しいっす!みおっち、俺頑張るっすよ!!
でもその前に充電させて」
「いいよ...おいで」
腕を広げる美桜の胸に黄瀬は躊躇なく飛び込んだ。顔をうずくめ力いっぱい抱きしめてくる黄瀬の頭を美桜は撫でるのだった。
「大丈夫大丈夫、涼太ならできるよ」
黄瀬だけに聞こえるように美桜は呟いた。少しでも自分の声が力になればと。
「もう大丈夫っすよ。ありがとう、みおっち」
黄瀬はゆっくりと美桜の体から離れた。しかし、そのまま美桜の顔を見つめたまま動かない黄瀬。どうしたのだろうか?と不思議に思った美桜は彼が言うタイミングを待った。
「ねぇ?みおっち?」
「どうしたの?涼太??」
「なんでだろう…?
俺...勝てるかどうかわからない今の方が気持ちいいんすよ」
この気持ちに戸惑いながらも黄瀬は口にする。手すりに凭れる彼の黄色い髪が心地よい風で靡く。その風に乗せられて届いた彼の言葉に、美桜は驚きをみせた。少し昔の彼なら絶対言わないだろう言葉を口にしたからだ。
「そうなんだ...
私は嬉しいよ…そんなふうに涼太がおもうようになって…」
嬉しそうに微笑んだ美桜は、彼を鼓舞するように力強い声を発した。
「頑張れ、涼太!」
「いってくるっす!」
昔以上の輝きを取り戻した黄瀬を美桜は送り出す。それに黄瀬は満面の笑みを浮かべると黄瀬は駆け足で戻るのだった。
あっ私も戻らないと
感傷に浸りそうになりかけるが、美桜は慌てて待たせている彼らのもとに戻ろうと振り向く。すると、高尾と黒子が仲良く話をしていた。同族嫌悪って嫌ってたくせにと内心笑いつつ美桜は彼らの元へ歩を進めた。
「おまたせ!二人で何を話してたの?」
「お!美桜!おかえり!」
「そうですね.....
高尾君にもっと自分に自信もて!
という話です」
「ちょ!!わかったから!
もうその話いいから黒子!」
黒子の発言に高尾は慌てふためく。
「え?なにそれ?すごく気になるんだけど!」
その二人につられるように美桜は笑うのであった。