桐皇学園対海常(IH準々決勝)
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ジャンプボールは海常がものに。すぐに笠松から黄瀬にパスが回る。彼の前には青峰。早速エースの1on1対決だ。黄瀬が青峰の横を突き抜けようとする。だが、すかさず青峰が後ろからスティール。ボールは桐皇へ渡る。
「相変わらずあめーなツメが...そんなんで抜けたと思っちまったのかよ?」
そして、桐皇のカウンターは桜井のクイックリリースのスリーが決まり、先制点は桐皇に。
やはり実力は青峰が上。彼がいる限り、黄瀬の攻撃は取られてしまう。でも、海常のエースは黄瀬だ。黄瀬が青峰を攻略しない限り海常の勝ち目はないだろう。
再びボールを受け取る黄瀬。今度は、先程見た桜井のクイックシュートを。そのシュートは桜井のものよりも数段キレがあるものだった。
「人真似は相変わらずうめーな…が、それじゃ勝てねぇーよ!」
青峰が黄瀬の放ったボールに対して素早く飛び上がる。そして彼は黄瀬の手から離れた後に飛んだにもかかわらずそのボールに触れたのだ。その影響によりボールの軌道はズレてリングへ。リングに当たったボールは、今吉の手に。
これでまたカウンターもらったら桐皇の流れになってしまう...
観ている人達、誰もが思ったに違いない。美桜自身もそう思った。しかしそうはならなかった。
「そんな簡単に流れをやるほどお人好しじゃねぇーよ!」
笠松が今吉から素早くボールを奪いスリーを決めたのだ。
「よし!ディフェンス!!一本止めるぞ!」
これで同点...。
立て直してきっちり攻めていい場面ですかさず返し、桐皇の流れを切ったのだ。
「笠松さんやっぱりすげーな」
「フォローくらいいくらでもしてやる!ガンガン行け!
けど...ガンガンやられていいとは言ってねぇー!」
「すんませーん」
笠松と同じポジションである高尾の目はキラキラと輝く。対して美桜はコートで繰り広げられていた光景にクスッと笑っていた。なぜなら、笠松に足蹴りを食らっている黄瀬がいたからだ。
「...何笑ってんの?」
「...涼太がいいチームに恵まれたなって思ってさ」
その姿に不思議そうな表情を浮かべ高尾は彼女を見る。その彼の言葉に対し、美桜は柔らかい表情を浮かべて答えるのだった。
「なるほど...頼りになる先輩だな?一人じゃだめでも、皆でなら戦えるっすか?テツみてぇーなことを考えるようになったな?負けて心変わりでもしたか?
眠たくなるぜ」
青峰の目の前にいる黄瀬の目は誰かを彷彿されるような力強い目。青峰にとってそれは黒子や美桜に重なって見えた。
どいつもこいつも...
しかし青峰の考えとは裏腹に微笑を浮かべる黄瀬がいた。
「はぁ?そんなこと一言も言ってないっすよ。まぁ...確かに黒子っちの考え方も認めるようになったっす。
海常を勝たせたい気持ちなんてのも出てきた。
けど、何が正論かなんて今はどうでもいいんすよ。俺はあんたを倒したいんすよ。
理屈で本能抑えられるほど…大人じゃねぇーよ!」
黄瀬の中では、確かにチームを勝たせたいという気持ちが出てきた。でも今、目の前にいるのは一度も勝ったこともない青峰だ。そんな彼と戦うことを楽しみにしてた黄瀬は闘争心を隠せられずにはいられないのだ。
「じゃあ…やってみな!黄瀬!!」
ギラギラと光る黄金の瞳はまっすぐに己を見据える。その期待通りの彼を見て青峰は愉しげに口角を上げるのだった。
青峰はパスフェイクからの見事なスピードの切り替えす。それに対し黄瀬は騙されることなくしっかりとついていく。止められた青峰はすかさず後ろに下がると右手でボールを放り投げた...フォームレスシュートだ。誰もが入ったと思った。しかし、『ウオーーー』と勢いよく黄瀬は飛び上がり、そのボールを止めたのだった。
「まさかまじで止めるとはよ?」
止められたことに流石に驚く青峰。そんな彼を黄瀬は立ち止まり指さした。
「青峰っちと毎日1on1やって毎日負けたのは誰だと思ってるんすか?あんたのことは俺がみおっちの次に良く知ってる。」
黄瀬の脳裏に浮かぶのは昔の記憶。
毎日毎日凝りもせず1on1を挑み、その度に負けた黄瀬は、美桜が居るときは毎回泣きついた。泣きつく度に彼女は彼にでもわかるようなアドバイスをしてくれたのだ。
『早く強くなって、大輝をもっと楽しませてあげて』
そしてある日、美桜は淋し気に本音を溢した。そんな彼女を当時黄瀬はキョトンと不思議そうに見た。
『どうしてっすか?
みおっちが十分楽しませてあげてるじゃないすか』
『でもそれも近いうちにできなくなう。
私じゃもう相手にならなくなっちゃう。
だって、体格の差は流石に埋められないからね』
1人ボールを弄ぶ青峰を見ているはずのエメラルドグリーンの瞳は遠い遠い未来を予期していた。その彼女の言葉を真に受けなかった黄瀬は、後々に後悔した。だからこそ…
そんな彼女のためにも…そして自分自身のためにも…
黄瀬は全神経を集中させる。
すべては青峰に勝つために…
*****
桐皇に勝つためには青峰を止めることは必須条件だ。
だが…桐皇の強さは彼だけではない。
マネージャーである桃井の集めた情報からの先を読むディフェンス力。
そちらも止めない限り点を取ることは難しいだろう…
ボールを持つ笠松に対するのは今吉。叩き込まれた情報で、ことごとく笠松の動きを読んでいく今吉。
パス、ドライブ、ターンアラウンドからのフェイダウェイジャンパー...
ことごとく止められていく笠松だったが、今吉の予測を上回る速さで笠松はシュートを放った。
「あたり…けど関係ないな!!」
しかし、ボールに触れられてたらしくゴールに入ることはなくリングに当たる。そのリバウンドをものにしたのは海常。すかさずボールはスリポイントラインにいた森山へ。そして放たれたスリーはゴールへ。
笛が鳴り、第一クォーター終了。
この時点で18対11...海常が7点リード。
「流れは海常だな...でもすげーな、黄瀬負けてねぇーぞ」
「そうだね...でも、大輝は尻上がりに調子上げていくからどうなるか?」
高尾の意見に賛同するも美桜はこのまま試合が進むとは思わなかった。そしてその考えはベンチにいる黄瀬も同じだった。
「このままいけたら苦労はないっす」
ドリンクを飲みつつ彼は横目で青峰がいるベンチを見つめるのだった。
第2クォーター...青峰の集中力・圧力がビシビシと伝わってくるのを美桜は感じ取った。
黄瀬はフェイクを織り交ぜ抜こうと試みる。が、青峰によりボールは弾かれた。青峰は黄瀬の動きを読みとり、ギアを一段上げてきたのだ。すかさずボールを取り戻すため青峰の動きを読みとろうとする黄瀬。
左…から右へのクロスオーバー
青峰の進路に立ちふさがることに成功する黄瀬。しかし、青峰は彼の読みあいを上回りさらに逆へ切り替えしを加え、彼をかわした。
「俺のことをよく知っているって言ったか??
逆は考えなかったのか?」
毎日すかさずやっていた1on1...黄瀬が青峰の事を知ってるように、彼も黄瀬の事を理解しているのだ。
青峰はそのまま小堀のファウルを誘い、バスケットカウント1スローを決めた。これで同点…桐皇は巻き返してきた。
青峰のプレーはその後どんどんとキレを増していくばかり…彼の動きを止められなくなってきた。それでも海常はあくまでも黄瀬にボールを回す。
「わからん人やな…おたくの黄瀬君、人真似は上手いみたいやけどそんだけや。黄瀬君が勝てない最大の理由…彼だけの武器がない。ただのバスケで青峰に勝つのは不可能や」
何度も黄瀬に回す笠松にマークにつく今吉はそう言った。だが、笠松はそうは思わなかった。
「わかってねぇのはあんたの方だよ。技術をまねて身に着けるってことは学ぶってこと…つまり成長するってことだよ」
青峰の絶対的な強さを信じている今吉に対して、笠松は海常のエースである黄瀬を信じているのだ。
一方で、青峰と対峙する黄瀬は笠松のもつ技術のターンアラウンドを仕掛ける。笠松の動きと見抜いた青峰は即座に反応し跳びあがった。
「残念だったな、お前のマークはこの俺だぜ」
黄瀬の攻撃は青峰により防がれてしまった。そして、18対18で海常はタイムアウトをとる。
黄瀬は、ベンチに腰掛けると、タオルを頭にかぶせ天井を仰いだ。
思ったとおり...青峰っちはスゲー...こりゃいよいよ覚悟決めなきゃまずいっすね...
「監督...試合前に言ってたあれ...やっぱりやらせてほしいっす」
監督の話をぶった斬ってまで頼みこむ黄瀬はある覚悟を決めていた。
できるかはわからない...でも今ここでやらなきゃ一生後悔する。
やるんだ...青峰っちのスタイルのコピーを!!
プレーを改めて間近で見て、肌で感じた。
あー...くそ。やっぱめちゃくちゃかっけぇーな...
人には真似できない唯一絶対のスタイル。この人に憧れて自分はバスケを始めた。普通のプレーは見れば直ぐできるのに、この人のは何度やっても出来なかった。けど、わかってたんだホントは、何故できないか...。
憧れてしまえば...超えられない
勝ちたいと願いつつ、心の底では負けてほしくないと思うから。
だから憧れるのはもうやめる…
黄瀬は心の中でひそかに思いを固めるのだった。
*****
タイムアウト明け、出てきた海常の選手を見て美桜は思わず目を見張ってしまった。なぜなら、雰囲気が先ほどと違うからだ。特に黄瀬の目が変わっていた。何か...吹っ切れたような強い目に。
「海常、なんか仕掛けるのかと思ったらしてこないんだな?」
雰囲気が異様なのだが、海常は何か仕掛ける素振りはなく、静かな立ち上がり。思わず、高尾は独り言のように呟いた。それは美桜も同じ考えだ。でも、確実にタイムアウト中に何かが変わったはずだ。でも、それが何なのか検討がつかず美桜はコートを心配そうに見つめるのだった。
ボールをもらう黄瀬。だが、今回は目の前の青峰に挑むことなくパスを送るのだった。
「おいおい…どうした?もうお手上げか??」
パスを回した黄瀬に驚く青峰。攻撃の選択肢は確かに1on1以外にもある。しかし、今の黄瀬は攻める気がなさすぎるように感じ取れた。
攻守交替して青峰にボールが回り再び対峙する両者。攻める気がないにも関わらず負ける気もサラサラない黄瀬の強い目。黄瀬の矛盾した行動に青峰の頭は引っかかった。だが、青峰はすぐさま切り替える。
青峰にとって黄瀬が何をしてこようと関係ないのだ。
「どっちにしろ結果は変わんねぇ!」
あっさりと黄瀬を抜きダンクを決める。が、青峰は目の前で起こっていることに目を見張ってしまった。
「チャージング!黒5番!」
ダンクをするため飛びあがる青峰に対し、笠松はファールを取りに行くためにあたりに行ったのだ。
誰もがその光景に驚いた。
青峰と笠松は体格の差がかなりある。にもかかわらず、笠松は引くどころかファールをもらいにぶつかりに行ったのだがら。そんな笠松に海常のメンバーが集まる。
「けどひやひやもんだ…できるのか?」
不安そうな森山。それに対して、笠松は一喝した。
「できるかできないかじゃね!やるんだよ!うちのエースを信じろ!!」
その後、青峰の勢いは留まることを知らず、黄瀬のマークをことごこくかわして次々とゴールを決めていく。
ふとボールを持っていた今吉はタイムボードをチラ見した。
残り5秒…
「あーあ…しゃあない!」
残り時間に気づいた今吉は、ゴールまでまだ距離があるにも関わらず、ボールを宙へ放ったのだ。
放っただけだ入るはずがない…
マークにつく笠松はそう思った。いや…観ていた人たち誰もがこう考えたに違いない。が予想と裏腹にそのボールはゴールへ吸い込まれた。
「あはは…いやー、ついとる。入ってもうたわ…」
ブザービーターを決めた今吉は不敵な笑みを浮かべるのだった。
第2クォーター終了、34対43で桐皇が9点リードで両チームは折り返しを迎えるのだった。
「相変わらずあめーなツメが...そんなんで抜けたと思っちまったのかよ?」
そして、桐皇のカウンターは桜井のクイックリリースのスリーが決まり、先制点は桐皇に。
やはり実力は青峰が上。彼がいる限り、黄瀬の攻撃は取られてしまう。でも、海常のエースは黄瀬だ。黄瀬が青峰を攻略しない限り海常の勝ち目はないだろう。
再びボールを受け取る黄瀬。今度は、先程見た桜井のクイックシュートを。そのシュートは桜井のものよりも数段キレがあるものだった。
「人真似は相変わらずうめーな…が、それじゃ勝てねぇーよ!」
青峰が黄瀬の放ったボールに対して素早く飛び上がる。そして彼は黄瀬の手から離れた後に飛んだにもかかわらずそのボールに触れたのだ。その影響によりボールの軌道はズレてリングへ。リングに当たったボールは、今吉の手に。
これでまたカウンターもらったら桐皇の流れになってしまう...
観ている人達、誰もが思ったに違いない。美桜自身もそう思った。しかしそうはならなかった。
「そんな簡単に流れをやるほどお人好しじゃねぇーよ!」
笠松が今吉から素早くボールを奪いスリーを決めたのだ。
「よし!ディフェンス!!一本止めるぞ!」
これで同点...。
立て直してきっちり攻めていい場面ですかさず返し、桐皇の流れを切ったのだ。
「笠松さんやっぱりすげーな」
「フォローくらいいくらでもしてやる!ガンガン行け!
けど...ガンガンやられていいとは言ってねぇー!」
「すんませーん」
笠松と同じポジションである高尾の目はキラキラと輝く。対して美桜はコートで繰り広げられていた光景にクスッと笑っていた。なぜなら、笠松に足蹴りを食らっている黄瀬がいたからだ。
「...何笑ってんの?」
「...涼太がいいチームに恵まれたなって思ってさ」
その姿に不思議そうな表情を浮かべ高尾は彼女を見る。その彼の言葉に対し、美桜は柔らかい表情を浮かべて答えるのだった。
「なるほど...頼りになる先輩だな?一人じゃだめでも、皆でなら戦えるっすか?テツみてぇーなことを考えるようになったな?負けて心変わりでもしたか?
眠たくなるぜ」
青峰の目の前にいる黄瀬の目は誰かを彷彿されるような力強い目。青峰にとってそれは黒子や美桜に重なって見えた。
どいつもこいつも...
しかし青峰の考えとは裏腹に微笑を浮かべる黄瀬がいた。
「はぁ?そんなこと一言も言ってないっすよ。まぁ...確かに黒子っちの考え方も認めるようになったっす。
海常を勝たせたい気持ちなんてのも出てきた。
けど、何が正論かなんて今はどうでもいいんすよ。俺はあんたを倒したいんすよ。
理屈で本能抑えられるほど…大人じゃねぇーよ!」
黄瀬の中では、確かにチームを勝たせたいという気持ちが出てきた。でも今、目の前にいるのは一度も勝ったこともない青峰だ。そんな彼と戦うことを楽しみにしてた黄瀬は闘争心を隠せられずにはいられないのだ。
「じゃあ…やってみな!黄瀬!!」
ギラギラと光る黄金の瞳はまっすぐに己を見据える。その期待通りの彼を見て青峰は愉しげに口角を上げるのだった。
青峰はパスフェイクからの見事なスピードの切り替えす。それに対し黄瀬は騙されることなくしっかりとついていく。止められた青峰はすかさず後ろに下がると右手でボールを放り投げた...フォームレスシュートだ。誰もが入ったと思った。しかし、『ウオーーー』と勢いよく黄瀬は飛び上がり、そのボールを止めたのだった。
「まさかまじで止めるとはよ?」
止められたことに流石に驚く青峰。そんな彼を黄瀬は立ち止まり指さした。
「青峰っちと毎日1on1やって毎日負けたのは誰だと思ってるんすか?あんたのことは俺がみおっちの次に良く知ってる。」
黄瀬の脳裏に浮かぶのは昔の記憶。
毎日毎日凝りもせず1on1を挑み、その度に負けた黄瀬は、美桜が居るときは毎回泣きついた。泣きつく度に彼女は彼にでもわかるようなアドバイスをしてくれたのだ。
『早く強くなって、大輝をもっと楽しませてあげて』
そしてある日、美桜は淋し気に本音を溢した。そんな彼女を当時黄瀬はキョトンと不思議そうに見た。
『どうしてっすか?
みおっちが十分楽しませてあげてるじゃないすか』
『でもそれも近いうちにできなくなう。
私じゃもう相手にならなくなっちゃう。
だって、体格の差は流石に埋められないからね』
1人ボールを弄ぶ青峰を見ているはずのエメラルドグリーンの瞳は遠い遠い未来を予期していた。その彼女の言葉を真に受けなかった黄瀬は、後々に後悔した。だからこそ…
そんな彼女のためにも…そして自分自身のためにも…
黄瀬は全神経を集中させる。
すべては青峰に勝つために…
*****
桐皇に勝つためには青峰を止めることは必須条件だ。
だが…桐皇の強さは彼だけではない。
マネージャーである桃井の集めた情報からの先を読むディフェンス力。
そちらも止めない限り点を取ることは難しいだろう…
ボールを持つ笠松に対するのは今吉。叩き込まれた情報で、ことごとく笠松の動きを読んでいく今吉。
パス、ドライブ、ターンアラウンドからのフェイダウェイジャンパー...
ことごとく止められていく笠松だったが、今吉の予測を上回る速さで笠松はシュートを放った。
「あたり…けど関係ないな!!」
しかし、ボールに触れられてたらしくゴールに入ることはなくリングに当たる。そのリバウンドをものにしたのは海常。すかさずボールはスリポイントラインにいた森山へ。そして放たれたスリーはゴールへ。
笛が鳴り、第一クォーター終了。
この時点で18対11...海常が7点リード。
「流れは海常だな...でもすげーな、黄瀬負けてねぇーぞ」
「そうだね...でも、大輝は尻上がりに調子上げていくからどうなるか?」
高尾の意見に賛同するも美桜はこのまま試合が進むとは思わなかった。そしてその考えはベンチにいる黄瀬も同じだった。
「このままいけたら苦労はないっす」
ドリンクを飲みつつ彼は横目で青峰がいるベンチを見つめるのだった。
第2クォーター...青峰の集中力・圧力がビシビシと伝わってくるのを美桜は感じ取った。
黄瀬はフェイクを織り交ぜ抜こうと試みる。が、青峰によりボールは弾かれた。青峰は黄瀬の動きを読みとり、ギアを一段上げてきたのだ。すかさずボールを取り戻すため青峰の動きを読みとろうとする黄瀬。
左…から右へのクロスオーバー
青峰の進路に立ちふさがることに成功する黄瀬。しかし、青峰は彼の読みあいを上回りさらに逆へ切り替えしを加え、彼をかわした。
「俺のことをよく知っているって言ったか??
逆は考えなかったのか?」
毎日すかさずやっていた1on1...黄瀬が青峰の事を知ってるように、彼も黄瀬の事を理解しているのだ。
青峰はそのまま小堀のファウルを誘い、バスケットカウント1スローを決めた。これで同点…桐皇は巻き返してきた。
青峰のプレーはその後どんどんとキレを増していくばかり…彼の動きを止められなくなってきた。それでも海常はあくまでも黄瀬にボールを回す。
「わからん人やな…おたくの黄瀬君、人真似は上手いみたいやけどそんだけや。黄瀬君が勝てない最大の理由…彼だけの武器がない。ただのバスケで青峰に勝つのは不可能や」
何度も黄瀬に回す笠松にマークにつく今吉はそう言った。だが、笠松はそうは思わなかった。
「わかってねぇのはあんたの方だよ。技術をまねて身に着けるってことは学ぶってこと…つまり成長するってことだよ」
青峰の絶対的な強さを信じている今吉に対して、笠松は海常のエースである黄瀬を信じているのだ。
一方で、青峰と対峙する黄瀬は笠松のもつ技術のターンアラウンドを仕掛ける。笠松の動きと見抜いた青峰は即座に反応し跳びあがった。
「残念だったな、お前のマークはこの俺だぜ」
黄瀬の攻撃は青峰により防がれてしまった。そして、18対18で海常はタイムアウトをとる。
黄瀬は、ベンチに腰掛けると、タオルを頭にかぶせ天井を仰いだ。
思ったとおり...青峰っちはスゲー...こりゃいよいよ覚悟決めなきゃまずいっすね...
「監督...試合前に言ってたあれ...やっぱりやらせてほしいっす」
監督の話をぶった斬ってまで頼みこむ黄瀬はある覚悟を決めていた。
できるかはわからない...でも今ここでやらなきゃ一生後悔する。
やるんだ...青峰っちのスタイルのコピーを!!
プレーを改めて間近で見て、肌で感じた。
あー...くそ。やっぱめちゃくちゃかっけぇーな...
人には真似できない唯一絶対のスタイル。この人に憧れて自分はバスケを始めた。普通のプレーは見れば直ぐできるのに、この人のは何度やっても出来なかった。けど、わかってたんだホントは、何故できないか...。
憧れてしまえば...超えられない
勝ちたいと願いつつ、心の底では負けてほしくないと思うから。
だから憧れるのはもうやめる…
黄瀬は心の中でひそかに思いを固めるのだった。
*****
タイムアウト明け、出てきた海常の選手を見て美桜は思わず目を見張ってしまった。なぜなら、雰囲気が先ほどと違うからだ。特に黄瀬の目が変わっていた。何か...吹っ切れたような強い目に。
「海常、なんか仕掛けるのかと思ったらしてこないんだな?」
雰囲気が異様なのだが、海常は何か仕掛ける素振りはなく、静かな立ち上がり。思わず、高尾は独り言のように呟いた。それは美桜も同じ考えだ。でも、確実にタイムアウト中に何かが変わったはずだ。でも、それが何なのか検討がつかず美桜はコートを心配そうに見つめるのだった。
ボールをもらう黄瀬。だが、今回は目の前の青峰に挑むことなくパスを送るのだった。
「おいおい…どうした?もうお手上げか??」
パスを回した黄瀬に驚く青峰。攻撃の選択肢は確かに1on1以外にもある。しかし、今の黄瀬は攻める気がなさすぎるように感じ取れた。
攻守交替して青峰にボールが回り再び対峙する両者。攻める気がないにも関わらず負ける気もサラサラない黄瀬の強い目。黄瀬の矛盾した行動に青峰の頭は引っかかった。だが、青峰はすぐさま切り替える。
青峰にとって黄瀬が何をしてこようと関係ないのだ。
「どっちにしろ結果は変わんねぇ!」
あっさりと黄瀬を抜きダンクを決める。が、青峰は目の前で起こっていることに目を見張ってしまった。
「チャージング!黒5番!」
ダンクをするため飛びあがる青峰に対し、笠松はファールを取りに行くためにあたりに行ったのだ。
誰もがその光景に驚いた。
青峰と笠松は体格の差がかなりある。にもかかわらず、笠松は引くどころかファールをもらいにぶつかりに行ったのだがら。そんな笠松に海常のメンバーが集まる。
「けどひやひやもんだ…できるのか?」
不安そうな森山。それに対して、笠松は一喝した。
「できるかできないかじゃね!やるんだよ!うちのエースを信じろ!!」
その後、青峰の勢いは留まることを知らず、黄瀬のマークをことごこくかわして次々とゴールを決めていく。
ふとボールを持っていた今吉はタイムボードをチラ見した。
残り5秒…
「あーあ…しゃあない!」
残り時間に気づいた今吉は、ゴールまでまだ距離があるにも関わらず、ボールを宙へ放ったのだ。
放っただけだ入るはずがない…
マークにつく笠松はそう思った。いや…観ていた人たち誰もがこう考えたに違いない。が予想と裏腹にそのボールはゴールへ吸い込まれた。
「あはは…いやー、ついとる。入ってもうたわ…」
ブザービーターを決めた今吉は不敵な笑みを浮かべるのだった。
第2クォーター終了、34対43で桐皇が9点リードで両チームは折り返しを迎えるのだった。