秘めた想い
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「おい、美桜!!最近体育館にお化けが出るらしいぞ!」
順風満帆な学生生活を送っていたある日、彼らにある出会いが訪れる。それはたまたま偶然。青峰のとある一声がきっかけだった。言いながら青峰は蒼褪めた表情を浮かべる。その言葉に美桜は若干顔を引き攣らせながら言い返していた。
「はぁ?そんなことあるわけないじゃん」
「いいから今日行くぞ!」
「1人で見に行けばいいでしょ?」
「なんだ美桜、お前ビビってるのか?」
「なっ、なわけないでしょ!!」
美桜は見事に青峰の口車に乗っていた。喧嘩口調で言い返した美桜に、青峰は意地悪い笑みを浮かべる。
そんな彼らは部活帰りに、噂の体育館に足を踏み入れた。だが、そこには幽霊などいなかった。
「わぁぁぁぁ!!」
青峰が絶叫する横で美桜は、不思議気に彼を見た。水色髪の青年を。
「どちらさまですか?
…青峰君に神田さん?」
絶叫声で気づいた彼は練習の手を止め振り返った。そして一方的に彼らを知っていた彼は不思議そうに彼らの名を呼んだ。
「えっと何してるの?」
「…居残り練です。」
幽霊だと勘違いした青峰は人だと気づきようやく顔を上げる。その横で美桜は顔を引き攣らせながら尋ねる。
水色髪の青年、黒子テツヤは3軍に所属しているバスケ部員の一人だった。彼は自主的に先生に頼み込んでここで練習していたのだ。
「よし、決めた!これからここで居残り練習する。で、いつか一緒にコートに立とうぜ!美桜もやるだろ?」
「んもう...しょうがないな」
「いいんですか?」
「バカ。いいも悪いもあるかよ。バスケ好きには悪いやつはいねーんだよ」
「そうそう、一緒にがんばろ!」
青峰と美桜は小さく笑うと拳を突き出す。それに重ねるように黒子は嬉しそうに拳を突き出した。
だが暫く経ち、黒子は先生より退部を勧められてしまった。
「えっ?!」
「はぁ?なんでだよ!」
「バスケは好きです。
けど僕はとてもチームの役に立てそうにありません。」
「テツヤ。
チームに必要ない選手なんていないよ?」
「美桜の言う通りだ。
たとえ試合に出られなくても、誰よりも遅くまで練習している奴が全く持って無力だなんて話があってたまるかよ。
諦めなければ必ずできるとはいわねぇ。
けど、諦めたらなんも残んねぇ。」
黒子から事情を聞いた美桜と青峰は必死に彼を引き止めようと言葉を掛けた。その言葉に黒子は俯いていた顔を上げた。
そんな中、彼らの名を誰かが呼ぶ。3人はその声の方向を向く。するとそこには制服に着替えた赤司と緑間と紫原がいた。
「青峰、神田。
暫く見ないと思ったらここにいたのか」
「あぁ、向こうの体育館は人が多いから。
美桜を誘っていつも3人で練習してたんだ。」
「3人??」
青峰の言葉に引っかかりを覚えた赤司はようやく黒子の存在に気づく。言われないと気づかれないほど影が薄い人物。赤司は面白そうに目を瞬かせた。
「彼に少し興味がある。
悪いが少し俺に付き合ってくれないか?」
あまりにも存在感がない。
でもそれは短所でなくキミの長所だ。
活かすことができればチームにとって必ず大きな武器になる。
黒子と少しやった赤司はとある言葉を彼に残した。それを胸に抱えた黒子は帰りの道中、二人に投げかけた。
「チームの為になにができるか?
赤司とそんな話をしてたのか?」
「僕はシュートも下手だし、あとはパスかアシストかと…」
「ま、赤司だって万能じゃねーし。お前にしかできないこともあるんじゃね?」
「例えばなんですか?」
「なんかすげぇー曲がるパスとか?
ギュワってよ!!ギュワ!!」
「…もういいです」
青峰に聞いたのが間違いだったと黒子が話を切り上げる。その中、美桜はすっかりと試合の時のように考えふけ込んでいた。
「いや、あながちいけるかも…」
「何がだ?」
「何がですか?」
「その曲がるパス…」
一体何をと不思議そうに青峰と黒子は美桜を見る。美桜はゆっくりと顔を上げて二人を見て答えた。
「…美桜さんまでなにを」
「テツヤの影の薄さを利用すれば、相手側から見たら曲がるパスに見えるかも…」
呆ける彼らに美桜は頭の中で描いたことを伝える。が、二人揃って見当がついてないのかポカンとしていた。
「つまり、中継地点としての機能をテツヤが果たせば…」
美桜は理解してもらえるように鞄から取り出した紙とペンを用いて説明していく。
「じゃつまりどうすればいいんだ?」
「そこまでは…」
青峰は核心を突く疑問を投げかける。が、それは美桜自身もわからなく、愛想笑いを浮かべた。
「なんだよ、なんも解決策になってねぇーじゃん」
「大輝よりはいいアドバイスできてるでしょ?」
「俺のギュワで閃いたじゃねーか!」
「大輝はギュワしか言ってないでしょ」
また始まったと遠い目で見る黒子の目の前で痴話げんかが始まる。そんな二人と別れた黒子はとある書籍を見つけ、これだと手に取った。そしてミスディレクションを身につけた黒子は幻のシックスマンとして一軍に迎入れられた。
そして黒子が正式にスタメンに選ばれた翌日、1軍に新たなメンバーが加わった。入部して僅か2週間という驚異的なスピードで一軍に上がってきた金髪の青年、黄瀬涼太だった。
彼らはいつしかキセキの世代と呼ばれるようになり、美桜は「絢爛豪華な疾風のドリブラー」と呼ばれるようになった。
そんな彼らと共にずっとバスケをするもんだと美桜は思っていた。主にふざけ合うのは美桜と青峰と黄瀬、それに黒子が巻き込まれ、紫原は呑気にお菓子を頬張り、緑間は呆れ顔を、赤司は涼しい顔を浮かべて側にいて。こんな毎日が続くと思っていた。
たがその均衡はある日突然崩れた。
青峰が突然才能を開花させサボり気味に。そして遂に部活に顔を出さなくなった。その後、次々と他の人達も才能を見出していった。紫原は青峰と同じく部活に顔を出さなくなり、黄瀬はモデルの仕事に専念するようになり、赤司は人格が変わったかのように別人になった。チームプレーをすることがなくなり、各々が個人技をするようになった。皆で帰ることもなくなった。
怖かった...
自分も彼らと同じになるのではないかと、
でもそれ以上にバスケを続ける事でもっと大切な何かを失ってしまうかもしれないと美桜は思ってしまった。
だから逃げた。
彼らに向き合うこともせず美桜は中3に上がる前にバスケをやめた。それを境に彼らと会うことはなくなった。