秘めた想い
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「美桜ちゃんは本当にバスケが上手ね」
「バスケが本当に好きなんだな」
その言葉に大きなボールを抱えた少女は嬉しそうに頬を緩ました。物心ついた時には既に彼女はバスケットボールを手に持っていた。ドリブルの音が、リングを潜る音が、心地よくて、気づけば彼女はバスケに熱中していた。大人と混じり美桜は時間を忘れるほどバスケットボールを追いかけ回っていた。
そんなとき、美桜はたまたま通りかかった場所で少年に出会う。楽しそうに縦横無尽にコートを駆け回る彼のプレーに、美桜は喰いつくように目で追っていた。気づけば彼女はジッとしていられず、勝手にコートに入っていた。そして、彼の手にあるボールを弾いていた。
「なぁッ!?」
驚く少年の前で、美桜はボールを拾うと彼の前に突き出していた。
「キミ凄いね!!」
「それ、コッチのセリフだっつーの!」
呆けていた少年は、目を輝かせる美桜を見て嬉しそうに笑みを浮かべた。互いに初めてであったのだ。同い年くらいの子供で、自分と同等にプレーをする者を。
「お前、バスケうめぇーな。
1on1してくれよ!」
「お前って酷くない?私、神田美桜って名前があるんだけど」
「わりいわりい...俺は青峰大輝っていうんだ。やろうぜ、美桜」
「………うん!!」
無邪気な笑顔を浮かべ青峰はコートへ走り出す。もちろんそれに誘われるように美桜も駆け出した。
それからというものの、青峰と美桜は1on1を毎日するようになった。大人と混じりバスケをした後に。彼らは飽きることなくボールを暗くなるまで追いかけ続けた。
「今日は私の勝ちだね」
「あーくそッ!美桜、もう一回だ!」
「えへへ...今回は俺の勝ちだな」
「大輝、もう一回やろ!」
両者は互いに勝ち負けを繰り返した。その度に彼らはもう一回と縋んだ。
「はじめまして、大ちゃんの幼馴染の桃井さつきです。
いつも大ちゃんがお世話になってます。」
「神田美桜です。ねぇ、さつきって呼んでもいい?」
「もちろんよ!美桜!」
青峰に付きそうように来たのは桃井。初対面ですぐに桃井と美桜は意気投合した。それから3人セットでいることが増えた。もちろん彼らを繋ぐのはバスケ。互いに切磋琢磨をする青峰と美桜は時にぶつかり合った。その度に桃井が仲を取り持ってくれた。
上手いことバランスが取れた3人はすれ違うことなく、同じ中学へと進学した。
「今日から私達同じ学校だね、美桜」
「たく、さつき。
美桜を見つけた途端に飛びつくのやめろ」
「あぁー、大ちゃんもしかして拗ねてるの?」
「んなわけあるかよ」
美桜に抱きついたまま桃井は青峰を見上げる。その視線に耐え切れず青峰はそっぽを向き答える。その青峰の様子に桃井はクスッと笑った。その中、美桜はゆっくりと桃井から離れると、青峰に抱きついた。
「なぁっ?!」
「どんな人がいるんだろうね!
楽しみだね、大輝!!」
あたふたする青峰に対し、美桜は嬉しそうに破顔する。その笑みに拍子抜けしてしまった青峰は美桜と同じように嬉しそうに口角を上げた。
「…そうだな!楽しみだぜ!」
「ほら二人とも、写真撮ろう!!」
いつの間にか蚊帳の外に置かれてしまった桃井は不貞腐れながらも彼ら二人の手を引っ張った。そして彼らは校門の前で、真新しい制服を身に付けた3人は期待を胸に抱え写真を撮った。
帝光中学校のバスケットボール部は部員数は100人を超え全中3連覇を誇る超強豪校。美桜と青峰は部員として、桃井は男子バスケットボール部のマネージャーとして各々入部した。そして3軍まで分かれている中、彼らは最初から1軍の座を獲得した。同時期に1軍に入った1年生は、男子では4人、女子では1人だった。
美桜は純粋に嬉しかった、実力が強豪校において認められたことが。活動場所が違う青峰と桃井に頻繁に会えないことは少し寂しくもあったが、美桜はただひたむきにバスケに打ち込んでいった。そんな矢先、美桜は人気のない場所に呼び出されるようになった。
「アンタむかつくのよ!!」
「1年の癖に生意気!」
スタメン入りを果たした美桜を快く思わなかった彼女達から美桜はイジメを受けるようになっていた。でも、美桜は黙ってそれを受け入れていた。余計な心配を周囲にされたくなかった。我慢を少しだけすれば、大好きなバスケをできる。言葉責めされようが、水をかけられようが、美桜は黙々とバスケに向き合った。
「何やってんだ馬鹿野郎!!」
そんなある日、青峰が現れた。勢いよく錆びついた扉を開け放った青峰は目の前の光景を目の当たりにして感情を爆発させた。
「あんたらこんなことしか出来ねぇーのかよ。こいつは自分の実力で勝ち取ったんだ。何か不服があるならバスケで勝負しやがれ!」
割って入ってきた青峰は。ドスの利いた声で一喝。それに怖気づいた彼女らはそそくさと逃げていった。嵐が過ぎ去ったように静寂化する体育館で、美桜はポカンと呆けていた。そんな美桜に向き直った青峰は彼女を見下ろした。
「なんで言わなかったんだ?」
「だって...迷惑かけたくなくて」
いつも異常に低いトーン、苛立ちを込められた表情に、美桜は立ち竦んだ。何か悪いことをしたのだろうか?さっぱり彼がなんでそんな顔をするか美桜にはわからなかったのだ。
「心配するじゃねぇーか。最近元気なさそうに見えたから。」
ヤレヤレと大きく息を吐きだすと、青峰は彼女の前に屈んだ。そして、彼女を力強く抱き寄せた。
「もっと人に頼りやがれ、バカ。
俺とさつきは美桜の味方なんだからよ」
「...うっ...ご...ごめん」
我慢していた分、美桜の目からは涙が溢れでる。彼の不器用なりの優しさが染みたのだ。
「…しゃーねーな、ちょっとだけ俺の胸貸してやる」
子どものように泣き出した美桜に、青峰は困った顔をする。だが、彼は彼女が泣き止むまでずっと傍に居続けたのだった。
*****
「ねぇ、美桜?」
ようやく部活に慣れ始めた頃、美桜は桃井に連れられて男子バスケットボール部の1軍が練習している体育館を訪れていた。覗き込んだ美桜は目の前の光景に呆気に取られてしまう。
スリーを綺麗に決める緑髪の青年
体格を生かしてどんなシュートも跳ね除けシュートを決める紫髪の青年
正確にパスを回す赤髪の青年
「皆、すごいでしょ?」
その場に立ち尽くし、喰いいるように見る美桜の顔を桃井は得意げに覗き込んだ。その投げかけに美桜は小さく頷いた。
「お、美桜来てたか!やろうぜ!」
ゴールを決めた青峰は遠くにマリーゴールドを見つけると嬉しそうにはにかんだ。呼ばれた美桜はハッとし、彼の元に行こうとする。が、その目の前に手が差し伸べられる。
「やぁ...僕達と同じ1年の女バススタメンの神田美桜さんだね?
僕は赤司征十郎だ。よろしく」
「なんで、私の名前を?」
「だって僕達と同じ1年でスタメンだ。知ってないわけがないだろ?」
「そっかー。
よろしく、赤司くん。」
美桜はその手をとり、握手を交わした。
「…美桜!」
「いまいくー!!」
急かされた美桜は慌てて青峰の元へ。そして二人は挨拶をそこそこに1on1を始めていた。そのコートの脇では興味津々に彼らの1on1を3人が眺めていた。
「赤ちん、お菓子食べていい?」
「ここは飲食禁止なのだよ」
「外で食べてきな、紫原」
だがすぐに紫色髪の青年はどこからかうまい棒を取り出す。そのことを緑髪の青年は眼光を鋭くし注意する。そんな二人の仲を取り持つように美桜と握手を交わした赤司が優しく指摘した。
緑間真太郎
紫原敦
赤司征十郎
美桜にとって、後に『キセキの世代』と言われる彼らとの初コンタクトだった。
「…俺ともやるのだよ」
「おい割り込んでくんなよ、緑間
久々の美桜との1on1、邪魔すんじゃねーよ!」
「みおちーん、お菓子持ってない~?」
「だからここは飲食禁止なのだよ、紫原」
「まぁまぁ、そうカッカするな緑間。
すみません神田さん、順番に僕らとやってもらえるかな?」
個性あふれる彼らの話に置いてけぼりを喰らっていた美桜はもちろんと大きく頷いた。それ以降、美桜は度々訪れると彼らとバスケをした。そして、夏の全国大会で男女共に優勝を成し遂げた。