夏合宿
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合宿中、誠凛とは3回練習試合をした。結果は3戦3勝で秀徳が全試合に勝った。だが、楽々と勝てた試合は一度もなかった。
「やっぱあれじゃないすか?
予選のときはまぐれ的な?」
「負けた理由をまぐれで片付けるのは感心せんな。
高尾、走ってこい」
おちゃらけてみせる高尾。だが、その言葉を黙って聞き過ごすほど中谷は甘くなかった。その鶴の一声に、高尾は思い切り嫌そうな顔を浮かべた。
「それにやったお前らが一番わかっているはずだ…」
中谷はそう彼らに突きつけた。火神不在のままの誠凛に対し、前回の試合よりも苦戦を強いられた。木吉の存在も確かにデカいかもしれない。だが、それ以外の各々のメンバーも着実に実力をつけてきたと実感せずにはいられない練習試合だった。
*****
「くぅぅ!!」
暗くなった空の下で美桜は思い切り身体を伸ばした。
「あれ?美桜ちゃんじゃん」
そんな彼女を見つけ声を掛けるのは高尾。鼻歌をしながら歩いてきた高尾の手にはビニール袋が握られていた。
「コンビニ行ってきたの?」
「ちょっとな」
軽く笑いながら高尾はビニール袋の中身を漁りだした。そして、ほれっと取り出した缶を彼女の額に軽く当てて見せた。
「…つめたっ」
額に急に来るひんやりとした感触。思わず目を閉じた美桜の目の前で高尾が悪戯顔を浮かべていた。街灯で照らされて見える彼の表情が色っぽく見え美桜は顔が火照るのを覚えた。だが、差し出されたのは彼が先ほどコンビニで購入したであろう缶。美桜は困惑気味に見る。
「えっ??」
「合宿中、誰よりも頑張ってくれた美桜ちゃんへのささやかなプレゼント。って言っても缶1本だけどな」
「…嬉しい」
プレゼントと言えるものじゃねーよなっと思いつつ無意識の内に買っていた缶1本。だが申し訳なさそうな彼を他所に美桜は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ありがと、高尾君」
目を細め美桜は礼を述べる。その表情に高尾は照れ臭そうに目線を逸らした。が、逸らした途端目に留まったのは驚くべき光景。
「ちょっ、美桜ちゃん!!」
慌てて彼は彼女を引き寄せ、しゃがみこんだ。その途端、近くにあったバスケットリングが大きく揺れた。
「えっ、火神君??」
「つかリング余裕で超えてんじゃん」
茂みに隠れるようにしゃがみこんだ二人が目撃したのは跳ぶ火神。そしてありえないほど高く跳んでいるのを証明するかのようにバックボードには手形が2つには手形がくっきりと残っていた。
「疲れてるしまぁそんなもんね。
じゃ今度は逆で跳んでみて」
火神に指示を出していた相田がさらに指示を飛ばした。その言葉に高尾は顔を顰める。
「…逆?」
「あぁリコさん、遂に種明かししちゃうのかぁ」
「種明かし?」
「火神くんここ一番の跳躍をするときだいたい右足で踏み切ってんだよ」
「えってことは?」
対して答えがわかっている美桜は困ったように苦笑した。そして高尾の疑問に答えるように美桜は小声で喋り始めるのだが、高尾のズボンのポッケからチャリンと落ちる音がした。
「あっ小銭落ちたよ」
美桜の声に、二人揃ってゴールから目線を外す。その間に火神は逆足で踏み切った。
「あぁ!?!?」
「あぁバカ!!叩きすぎよ!!」
前の方で悲鳴が上がる。それに気づいた二人は目線を戻す。だが、彼らが見たのは自分たちの方へ倒れ込んでくるバスケットゴール。ギョッとした高尾はすかさず美桜の手を引いて下敷になるのを死にものぐるいで回避した。
「あっちゃー」
お陰で下敷きになるのを回避した美桜は這って移動し落ちてきたバスケットゴールに目を落とす。そしてバックボードを見て困ったように頬を掻いた。その隣では高尾がゲッと目を見開いた。バックボードに付けられたのは2つの手形。先ほどつけられた手形よりも更に上。右手は白い上枠付近に、左手はボードの上の端付近ギリギリのところに手形がつけられていたのだった。
*****
「…どうも」
「あっ、テツヤ」
「よぉなにしてるの?」
相田が去った後、この場からひっそりと去ることができず茂みに隠れていた彼らの目にふと留まったのは黒子。目線が交わった彼らはキョトンとした。
「もうすぐ夕食なんで火神くんを」
「もうそんな時間か、じゃウチらもそろそろ…」
立ち上がろうとする高尾。だが、再び高尾の目にある者が留まる。咄嗟に高尾は黒子の頭に手を伸ばした。
「ッ!!頭下げろ!!」
そして強引に屈ませた黒子の口を高尾は手で塞いだ。
「静かにしろよ、面白くなりそうだ」
「何も言ってないですけど」
「そーだよ、高尾君の方が静かに出来なそうだよ」
困惑する黒子に同情し、美桜は口を尖らせる。が、すぐに彼女の興味は目の前に向けられた。
「んだよ?」
「用などなにもない。
飲み物を買いに出ただけなのだよ」
地面に倒れ込んでいた火神をたまたま通りかかった緑間が見下ろす。互いに存在を確認し合った二人は嫌そうに露骨に顔を顰めた。
「飲み物って…
よく夏にそんなもん飲めるな...」
「つめた~い...に決まってるだろ?バカめ」
火神が目に留めたのは緑間が手に持つ缶のお汁粉。
「クスクス」
「ほら言った傍から…」
緑間が無意識の内に口にした言葉。それに高尾が反応をする。抑えきれていない笑い声に美桜は呆れた眼差しを向けた。
「全くお前には、失望したのだよ。俺に負ける前に青峰にボロカスに負けただろ」
「次は勝つ!!いつまでもあの時と同じじゃねぇーよ!」
言い争う二人。ふと、緑間は上を見る。そこには手形がついているバスケットゴールがあった。それを見て緑間はふっと含んだ笑い声を作った。
「まさか空中戦なら勝てる...
などと思ってないだろうな?」
「飛ぶことしか頭にないのかバカめ。
高くなっただけでは結果は変わらないのだよ...
その答えではまだ半分。
そんなものは武器とは呼ばん。」
図星を突かれてギクッと驚く火神を見て緑間は眼鏡を押し上げる。
彼は落ちてるボールへ歩き出す。そして、地面に缶を置くとそのボールを手に取った。
「来い、その安直な結論を正してやる。」
ただ喧嘩を売っているつーよりその前…
答えはまだ半分
あの半端ねぇージャンプ力にはまだ先があんのかよ
目の前で繰り広げられるやり取りに目を見開く高尾。その両隣では真剣な眼差しでジッと行方を見守る黒子と美桜の姿があった。
唐突に始まった緑間と火神による1on1。ディフェンスが緑間、オフェンスが火神。10本でそのうち一本火神が入れたら勝ち。
舐められたものだと火神は苛立ちを露わにする。だが、ことごとく火神のシュートは緑間の手により弾かれていく。地上戦では互角、空中戦では明らかに火神の跳躍力が上回っている。それなのに何故だと悔しそうに火神はボールを拾う。
「さぁもう一本だ」
「やめだ、このままでは何本やっても同じなのだよ。」
緑間はこれ以上は無駄だと判断し火神に背を向け、切り上げようとする。そんな彼に火神は声を荒げる。
「てめぇ!!」
「いい加減気づけ、馬鹿め!」
緑間は語気を強めた。
「どれだけ高く跳ぼうが止めることなど容易い。
何故なら、必ずダンクが来るとわかっているのだから」
火神の利き手は右。だが、右脚で跳ぶとどうしてもボールを持つ手は左手になってしまう。空中戦で戦うためにはダンクだけでは通用しない。ボールを扱う左手のハンドリングを強化しない限り。
図星を突かれた火神はボールを持ったまま俯いた。そんな彼を放置して緑間は茂みの方へ。咄嗟に頭を隠す高尾を緑間は見下ろした。
「行くぞ、高尾。」
「あれ?バレてた?」
「ウインターカップ予選でがっかりさせるなよ」
高尾の隣にいる黒子に緑間は吐き捨てると、美桜に目を向けた。
「美桜、この馬鹿にアドバイスしてやれ」
「え、なんでわたし?」
「任せたぞ」
そう言い捨てると緑間は高尾を連れて背を向ける。対して取り残された美桜は唯我独尊な緑間に大きくため息を溢したのだった。
「やっぱあれじゃないすか?
予選のときはまぐれ的な?」
「負けた理由をまぐれで片付けるのは感心せんな。
高尾、走ってこい」
おちゃらけてみせる高尾。だが、その言葉を黙って聞き過ごすほど中谷は甘くなかった。その鶴の一声に、高尾は思い切り嫌そうな顔を浮かべた。
「それにやったお前らが一番わかっているはずだ…」
中谷はそう彼らに突きつけた。火神不在のままの誠凛に対し、前回の試合よりも苦戦を強いられた。木吉の存在も確かにデカいかもしれない。だが、それ以外の各々のメンバーも着実に実力をつけてきたと実感せずにはいられない練習試合だった。
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「くぅぅ!!」
暗くなった空の下で美桜は思い切り身体を伸ばした。
「あれ?美桜ちゃんじゃん」
そんな彼女を見つけ声を掛けるのは高尾。鼻歌をしながら歩いてきた高尾の手にはビニール袋が握られていた。
「コンビニ行ってきたの?」
「ちょっとな」
軽く笑いながら高尾はビニール袋の中身を漁りだした。そして、ほれっと取り出した缶を彼女の額に軽く当てて見せた。
「…つめたっ」
額に急に来るひんやりとした感触。思わず目を閉じた美桜の目の前で高尾が悪戯顔を浮かべていた。街灯で照らされて見える彼の表情が色っぽく見え美桜は顔が火照るのを覚えた。だが、差し出されたのは彼が先ほどコンビニで購入したであろう缶。美桜は困惑気味に見る。
「えっ??」
「合宿中、誰よりも頑張ってくれた美桜ちゃんへのささやかなプレゼント。って言っても缶1本だけどな」
「…嬉しい」
プレゼントと言えるものじゃねーよなっと思いつつ無意識の内に買っていた缶1本。だが申し訳なさそうな彼を他所に美桜は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ありがと、高尾君」
目を細め美桜は礼を述べる。その表情に高尾は照れ臭そうに目線を逸らした。が、逸らした途端目に留まったのは驚くべき光景。
「ちょっ、美桜ちゃん!!」
慌てて彼は彼女を引き寄せ、しゃがみこんだ。その途端、近くにあったバスケットリングが大きく揺れた。
「えっ、火神君??」
「つかリング余裕で超えてんじゃん」
茂みに隠れるようにしゃがみこんだ二人が目撃したのは跳ぶ火神。そしてありえないほど高く跳んでいるのを証明するかのようにバックボードには手形が2つには手形がくっきりと残っていた。
「疲れてるしまぁそんなもんね。
じゃ今度は逆で跳んでみて」
火神に指示を出していた相田がさらに指示を飛ばした。その言葉に高尾は顔を顰める。
「…逆?」
「あぁリコさん、遂に種明かししちゃうのかぁ」
「種明かし?」
「火神くんここ一番の跳躍をするときだいたい右足で踏み切ってんだよ」
「えってことは?」
対して答えがわかっている美桜は困ったように苦笑した。そして高尾の疑問に答えるように美桜は小声で喋り始めるのだが、高尾のズボンのポッケからチャリンと落ちる音がした。
「あっ小銭落ちたよ」
美桜の声に、二人揃ってゴールから目線を外す。その間に火神は逆足で踏み切った。
「あぁ!?!?」
「あぁバカ!!叩きすぎよ!!」
前の方で悲鳴が上がる。それに気づいた二人は目線を戻す。だが、彼らが見たのは自分たちの方へ倒れ込んでくるバスケットゴール。ギョッとした高尾はすかさず美桜の手を引いて下敷になるのを死にものぐるいで回避した。
「あっちゃー」
お陰で下敷きになるのを回避した美桜は這って移動し落ちてきたバスケットゴールに目を落とす。そしてバックボードを見て困ったように頬を掻いた。その隣では高尾がゲッと目を見開いた。バックボードに付けられたのは2つの手形。先ほどつけられた手形よりも更に上。右手は白い上枠付近に、左手はボードの上の端付近ギリギリのところに手形がつけられていたのだった。
*****
「…どうも」
「あっ、テツヤ」
「よぉなにしてるの?」
相田が去った後、この場からひっそりと去ることができず茂みに隠れていた彼らの目にふと留まったのは黒子。目線が交わった彼らはキョトンとした。
「もうすぐ夕食なんで火神くんを」
「もうそんな時間か、じゃウチらもそろそろ…」
立ち上がろうとする高尾。だが、再び高尾の目にある者が留まる。咄嗟に高尾は黒子の頭に手を伸ばした。
「ッ!!頭下げろ!!」
そして強引に屈ませた黒子の口を高尾は手で塞いだ。
「静かにしろよ、面白くなりそうだ」
「何も言ってないですけど」
「そーだよ、高尾君の方が静かに出来なそうだよ」
困惑する黒子に同情し、美桜は口を尖らせる。が、すぐに彼女の興味は目の前に向けられた。
「んだよ?」
「用などなにもない。
飲み物を買いに出ただけなのだよ」
地面に倒れ込んでいた火神をたまたま通りかかった緑間が見下ろす。互いに存在を確認し合った二人は嫌そうに露骨に顔を顰めた。
「飲み物って…
よく夏にそんなもん飲めるな...」
「つめた~い...に決まってるだろ?バカめ」
火神が目に留めたのは緑間が手に持つ缶のお汁粉。
「クスクス」
「ほら言った傍から…」
緑間が無意識の内に口にした言葉。それに高尾が反応をする。抑えきれていない笑い声に美桜は呆れた眼差しを向けた。
「全くお前には、失望したのだよ。俺に負ける前に青峰にボロカスに負けただろ」
「次は勝つ!!いつまでもあの時と同じじゃねぇーよ!」
言い争う二人。ふと、緑間は上を見る。そこには手形がついているバスケットゴールがあった。それを見て緑間はふっと含んだ笑い声を作った。
「まさか空中戦なら勝てる...
などと思ってないだろうな?」
「飛ぶことしか頭にないのかバカめ。
高くなっただけでは結果は変わらないのだよ...
その答えではまだ半分。
そんなものは武器とは呼ばん。」
図星を突かれてギクッと驚く火神を見て緑間は眼鏡を押し上げる。
彼は落ちてるボールへ歩き出す。そして、地面に缶を置くとそのボールを手に取った。
「来い、その安直な結論を正してやる。」
ただ喧嘩を売っているつーよりその前…
答えはまだ半分
あの半端ねぇージャンプ力にはまだ先があんのかよ
目の前で繰り広げられるやり取りに目を見開く高尾。その両隣では真剣な眼差しでジッと行方を見守る黒子と美桜の姿があった。
唐突に始まった緑間と火神による1on1。ディフェンスが緑間、オフェンスが火神。10本でそのうち一本火神が入れたら勝ち。
舐められたものだと火神は苛立ちを露わにする。だが、ことごとく火神のシュートは緑間の手により弾かれていく。地上戦では互角、空中戦では明らかに火神の跳躍力が上回っている。それなのに何故だと悔しそうに火神はボールを拾う。
「さぁもう一本だ」
「やめだ、このままでは何本やっても同じなのだよ。」
緑間はこれ以上は無駄だと判断し火神に背を向け、切り上げようとする。そんな彼に火神は声を荒げる。
「てめぇ!!」
「いい加減気づけ、馬鹿め!」
緑間は語気を強めた。
「どれだけ高く跳ぼうが止めることなど容易い。
何故なら、必ずダンクが来るとわかっているのだから」
火神の利き手は右。だが、右脚で跳ぶとどうしてもボールを持つ手は左手になってしまう。空中戦で戦うためにはダンクだけでは通用しない。ボールを扱う左手のハンドリングを強化しない限り。
図星を突かれた火神はボールを持ったまま俯いた。そんな彼を放置して緑間は茂みの方へ。咄嗟に頭を隠す高尾を緑間は見下ろした。
「行くぞ、高尾。」
「あれ?バレてた?」
「ウインターカップ予選でがっかりさせるなよ」
高尾の隣にいる黒子に緑間は吐き捨てると、美桜に目を向けた。
「美桜、この馬鹿にアドバイスしてやれ」
「え、なんでわたし?」
「任せたぞ」
そう言い捨てると緑間は高尾を連れて背を向ける。対して取り残された美桜は唯我独尊な緑間に大きくため息を溢したのだった。