夏合宿
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「しっかしボロいね...ホントにここに泊まるのかよ?
なんか出そうな感じー」
「うるさいのだよ、高尾」
あっという間に月日は過ぎ去り、夏休みに突入。一同は、例年同様同じ宿屋にお世話になることになっていた。その宿屋に到着した高尾はげんなりとした表情を浮かべていた。
「って...あれ??」
「どうも...お久しぶりです。」
廊下を歩いていた美桜と高尾は視界の端に一瞬映った姿に思わず足を止める。見覚えのある水色の髪。キョトンと顔を見合わせた二人はおずおずと背後を振り返った。だが、見間違いではなかった。振り返った先には寝起きの火神と黒子がいた。
「なぜここにいるのだよ!?」
「そりゃこっちのセリフだよ!!」
目線がかち合った途端に緑間と火神はいがみ合い始める。その二人の毎度のやり取りに高尾と美桜は呆れた眼差しを向けるのだった。
「秀徳は昔からここで一軍の調整合宿をするのが伝統なんだと」
「それがお前らはバカンスとはいい身分なのだよ。その日焼けはなんだ!?」
「バカンスじゃねぇーよ」
緑間は火神を指差す。が、緑間の言葉に火神は言い返した。誠凛は昨日から合宿を開始していたのだ。カンカンと照りつける太陽の下、彼らは砂浜の上で練習をしていたのだ。
「え?違うの?」
「はい。砂浜で練習をしまして…」
すぐさま否定した火神の言葉に、美桜は不思議そうに黒子を見る。そして黒子から事情を聞くのだった。だが、彼ら5人の姿を目撃した者が苛立ち混じりに声を掛ける。
「ちょっと...もう皆食堂で待ってるんですけど...」
その声に一同は振り向く。すると、そこには左手に包丁を持ちエプロンと三角巾をする相田。だが、ところどころに赤いものが飛び散っており、包丁の先端は赤くなっていた。
その相田の姿に5人は愕然とする。
「お前の学校は何なのだよ!?黒子!」
「誠凛高校です」
「そういうことではないのだよ!」
「あれ?秀徳さん?」
彼らの悲鳴に近い絶叫が廊下一帯に響き渡る。唯一、相田はこの場にいる緑間らを見つけ、キョトンとするのだった。
「えっと相田さん...どうすればこんな格好に...」
「普通に朝食作ってただけだけど?」
恐る恐る美桜は話しかける。それに対し、相田は真顔で返答する。が、その返答内容に美桜は呆気にとられてしまった。
「そちらは美桜さんが作るんですか?」
「...うん。そうだよ。」
ここの宿屋はご飯付きではないので、毎回自炊。毎度部員が交代でやっていたが、今回はマネージャーの美桜が基本作ることになっている。
「...羨ましいです」
「そんなに壊滅的なの?」
「桃井さんと互角です...」
「それはお気の毒なのだよ。黒子」
ボソッと呟いた黒子の言葉に、桃井の料理を知る帝光中学出身の2人は黒子らを憐れみの眼差しで見る。
「真ちゃんがそこまで言うってことは相当やばいってことだよな!!まじかよ!いやー美桜ちゃんがいてくれてよかったわ」
「あんたら...本人がいる前でディスるな!バ火神と黒子君はさっさと食堂へ行け!!」
緑間のガラリと変わった表情を見て、高尾は腹を抱えて笑い始める。その笑い声を横に相田は怒りを爆発させる。その鶴の一声で黒子と火神は慌てて飛び出したのだった。
「秀徳さんも合宿?」
「はい!今日からです。でもビックリしました。
誠凛さんも来てるなんて」
「ホントね〜...あ...ちょっと頼みたいことがあるんだけど」
驚く美桜に対し、相田はとあることを思いつく。ニヤリと黒い笑みを浮かべた相田は美桜を手招きする。その手招きに美桜は不思議そうに相田に近寄った。
「秀徳さんと合同練習したいんだけど...
監督さんに言っといてくれないかな?」
「あ...いいですよ」
あっさりと了承してくれた美桜に相田は目を見開く。が、美桜自身からしたらその提案は願ったり叶ったり。きっと、監督も了解してくれるはず。
「おい、美桜。
良からぬことを考えてないだろうな」
「さぁ?どうだろうね?」
戻ってきた美桜を緑間は睨みつける。が、美桜は含みを持たせ、しらばっくれた。彼がこの事実を知ったら不機嫌になることは容易に想定できたから。
「ところで...
いつまで高尾君は笑っているのかしら?」
相田の目がスゥッと細まる。その相田の目線の先では未だに笑いが収まらない高尾。相田の言葉でピタっと笑いが止まった彼の顔は少しずつ青ざめていった。助けを懇願するような目を向けてきたが、とばっちりを受けたくない美桜と緑間は無視を決め込んだ。
「あ...いや...その...すんませんした!!」
「あ、待てーこらー!」
慌てて逃げる高尾を追いかける相田。その手には包丁が握られたままだった。
「ったく...逆鱗に触れている相手をさらに怒らすとは...全く馬鹿なのだよ」
「ホント高尾君、ご愁傷さま」
「ぎゃあ----!!」
宿屋には高尾の悲鳴が木霊するのだった。