ある日のオフ
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「そういえば、高尾君なんでここにいるの?」
「真ちゃんとこに桃井さんから連絡が来たんだよ、連絡つかないから探してほしいって」
「...忘れてた」
「だろうな...」
慌てて美桜は画面を開く。すると履歴にずらっと並ぶのは桃井の名前だった。唖然とする美桜。そんな彼女の予想通りの反応に高尾は小さく息を零した。
美桜は、連絡しようかと思い立つ。が、彼女の脳裏では危険信号が点滅していた。やな予感がする。美桜はそっと携帯を閉じ仕舞い込んだ。
「え?いいのか?電話しなくて」
「....う...うん。家ついたら電話するよ」
「そっか...じゃ帰るか。もう暗いし送ってく」
連絡しない美桜を不思議に思った高尾だが、特に何も訳を聞くことはなかった。サッと立ち上がり、高尾は無造作に置かれた彼女の荷物を取りに行った。その背を美桜はただジッと追っていた。
「ほら...帰ろう」
高尾は彼女に手を伸ばす。だが、彼女は虚ろ気な瞳で見上げるだけで、その手を取ろうとしなかった。
「…美桜ちゃ」
「ねぇ...なんで、何も聞かないの?」
意を決して美桜は問いかけた。どうして何も聞かないのだろうと。複雑な表情で美桜は見上げる。そんな彼女に高尾はそっと言葉を掛けた。
「聞かれたくないんでしょ?だったら俺は何も聞かねぇーよ」
「じゃあもう一つ...なんでここまで優しくしてくれるの?」
「俺にとって、美桜ちゃんが大切だからだよ」
高尾は切なげに微笑んだ。
正直言うと青峰に勝てる気はしない。でも、彼女を想う気持ちだけは負けたくなかった。青峰の代わりでも構わない。彼女の側にいたい、支えたい。それほど高尾は美桜に対して本気の想いを抱いていた。
「ほら?」
雲が丁度切れ、月明かりが優しく彼らを包み込む。
月明かりに照らされた彼はいつも以上にかっこよく美桜には見えた。
『ほらよ』
手を伸ばしてくれる群青色の残像が消えていく。今目の前にいて手を差し伸べてくれるのは、ダークブルーの瞳を持つ高尾。何か心を見透かしてくるような瞳に美桜は吸い込まれる心地を覚えた。
美桜はゆっくりと下ろしていた手を上げた。その手を高尾は手に取ると彼女を立ち上がらせた。
「帰ろうぜ」
高尾はそのまま彼女の手を引いて歩き出す。
…ありがとう
美桜は彼の背に人知れず感謝の意を伝えるのだった。
*****
「美桜...何か私に隠してることあるでしょ?」
家に戻った美桜は意を決して桃井に電話を掛けていた。が、彼女は心配の言葉を掛けることなく、開口一番、問いただす言葉を投げかけた。その言葉に美桜はギクッと身体を強張らせた。
「え...と、なんの話しかな?」
「誤魔化しても無駄だよ?
...高尾君といい感じなんだって?みどりんから聞いちゃった。」
桃井は楽しそうに声を弾ませる。が、美桜はその声音に血の気が失せていくのを覚えていた。
「全部吐くまで電話切るの許さないからね」
あー、ヤバい
桃井が黒い笑みを浮かべているのが容易に想像できた美桜は身体を震わした。
「で?彼とはどこで会ったの?」
矢次に投げかけられる桃井の問いにげっそりとしながらも美桜はあの時に電話を掛けずによかったと心の底から思うのだった。