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「あれ?」
部室に入った高尾はふと目についたものを手に取ると、ペラペラとページを捲る。そしてその手はとあるページで留まった。それは誠凛の記事。その記事はとある選手の特集が組まれていた。
「こんな人いたっけ?」
高尾は首を捻って記憶を辿る。だが、写真に映る7番の選手が試合に出ていた記憶はなかった。パタンッと雑誌を閉じ高尾は立ち上がる。
「大坪さんに聞いてみっか?」
雑誌を脇に抱え部室を出る。そして高尾は薄暗い通路を抜け皆がいる体育館へと戻るのだった。
「大坪さん、あの...
誠凛の7番って誰なんすか?」
戻った高尾はその足で大坪の元へ。そして疑問をぶつけ持ってきた雑誌を開いてみせた。
「なになに??」
一つの雑誌を囲む大坪と高尾を目に留めた美桜が近づく。そして美桜も話題となっている雑誌を覗き見る。
「!?」
記事を見ようとした美桜の肩が高尾の肩に軽く触れる。その途端、ビクッと身体を震わした高尾は目を見開くと慌てて視線を逸す。
鼻孔を擽る彼女特有の甘い花の香り。瞬時に縮まった彼女との距離に高尾は心拍数が上昇するのを感じた。
「あいつか...」
その隣では雑誌に目を通した大坪が遠い目をしていた。ボソッと呟かかれた言葉。その言葉にハッと正気を取り戻した高尾は不思議そうに見上げた。
「あいつって...」
「去年誠凛のセンターだったやつだ。以前あそこは4番の日向とそいつの外、中...2枚看板のチームだった。
何故か決勝リーグにはいなかったが、もしいたらトリプルスコアの大敗などなかっただろう...いや、うちの負けもあったかもしれん」
眼光を鋭くする大坪。だが高尾の頭の中は不思議でいっぱいだった。
え?
待てよ去年って黒子と火神がいなくてできたばっかじゃねぇーの!?
去年できた誠凛に対し、東の王者の秀徳が負ける可能性があったのかと驚く高尾は、パッと美桜を見る。すると彼女は険しい表情で雑誌を見ていた。
「私この人見たことあります。
確かに…この人居たら更に厳しかったかもしれないですね」
「またまたぁ!どんだけ買ってんですか?
なぁ、真ちゃん?」
そんな二人の様子にヘラッとぎこちない笑みを浮かべた高尾は、最後の望みだと黙々とシュート練習する緑間に話を振った。だが思い出す。緑間は印象に残った選手しか覚えていないことを。
「知るわけねぇーか」
「知っているのだよ」
肩を落とす高尾。しかし、彼の予想に反して緑間はシュートの手を止めた。
「中学時代一度だけ対戦しただけだが覚えている。黒子はベンチ入り前で知らないと思うが」
「で?どんなやつ?」
「この間の桐皇戦の時と似ている。圧倒的な差を前にしても黒子と同じように最後まであきらめなかった。」
緑間はあの頃の彼の眼差しを思い出しながら答える。それに真剣に耳を傾ける高尾。が、徐々に高尾の表情は崩れていった。
「ちょっと待てよ...
それおかしくねぇーか?」
緑間を制する高尾はキョトンとした表情で彼を見た。対して途中で話を区切られた緑間は機嫌を損ねていた。すっかり緑間は失態をしたことに気づいていなかったのだ。話の矛盾に気づいた高尾はそんな緑間の前で盛大に噴き出した。
「結局見に行ってたんじゃねぇーか!!決勝リーグ!!
何が『見たくないのだよ』だ!」
「家が近かっただけなのだよ」
「遠いだろ!ってか逆だろ!知ってんだぞ!!」
ギクッと身体を強張らせた緑間はなんとか誤魔化そうとする。が、当然チャリアカーで何度も緑間の家に言っている高尾に通じるわけがなかった。ゲラゲラと爆笑しながら高尾は言葉を畳み掛ける。それに言い返す言葉無く緑間は固く口を噤む。その珍しく言い負かされている緑間に、美桜は黙ってみていられず。気づいたら笑いが止まらなくなっていた。
「アッアハハハ!!」
「美桜、笑い過ぎなのだよ」
笑い声を上げる美桜に対し、不機嫌そうに緑間はムッとする。そんな面白くなさそうな彼に美桜は爆弾を叩き込む。
「いや...だって真太郎が見え透いたウソついてなんとか誤魔化そうとしてるのが面白くて...
それに私居るの気づいてたし」
「え?そうなのかよ美桜ちゃん」
「たまたま視界に入っちゃって...」
「いい加減笑い止むのだよ!」
「ごめん無理...」
「だよな〜」
緑間は顔を真っ赤にし声を荒げる。一方で、笑いすぎて涙目な美桜と高尾は伝る涙を拭うものの笑いを引っ込められなかった。