お出かけ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「神田さん、ちょっといいかな?」
椛と喋っていた美桜は顔を上げる。するとそこには緊張気味に顔を強張らせるクラスメートがいた。美桜はキョトンとしながらも立ち上がる。それを合図に二人は教室を出ていく。その2人仲良く歩く後ろ姿をたまたま広い視野で目撃してしまった青年は不機嫌さを滲ませ露骨に顔を歪ますのだった。
「あの...
もしよかったら付き合ってください!」
連れて行かれた場所は人気がない校舎裏。そして彼女を呼び出した彼は一世一代の告白をする。が、美桜は躊躇することなく即座に頭を下げた。
「すみません、貴方とはお付き合いできません」
美桜は踵を返し、来た道を戻る。そしてそのままの勢いで美桜は机に打っ潰しになった。
「モテモテだね」
「疲れたよー、椛!なんでこんなに声かけられるんだろ」
戻ってきた美桜を椛が労うわけがない。愉しげにニヤニヤと椛は見下ろす。そんな椛に美桜は鬱憤を吐き出すかのように声を上げた。そして不思議そうに椛に顔を上げる。が、無自覚な美桜に椛は呆れ返っていた。
「はぁ…あんた人気なんだよ?
ファンクラブあるくらいだし」
椛はガクッと肩を落とす。が、美桜にとって衝撃的な事実。思わず美桜は目を丸くし勢いよく身体を起こした。
「嘘!?」
「それに最近美桜のまとってるオーラが変わったからじゃないの?」
椛はそのまま畳み掛けるように言葉を連ねる。
「前は高嶺の華って感じで声かけづらかったのに、
今は親しみやすいって周囲は思ってるのよ」
「...そんなつもりはなかったんだけど
ってか高嶺の華は椛でしょ」
美桜はげんなりとした顔で椛を見る。
暇さえあれば本を開くほど本の虫である、椛は近づきがたい空気を醸し出していた。よって基本、椛に話しかけるのは美桜くらいだったのだ。
だが椛は気にする素振りがない。
彼女は端正な顔を歪ませるとグッと顔を近寄せる。が、美桜はポカンとしていた。
入学日とはまるで別人。一匹狼で周囲を警戒していた。そのため、皆、声を掛けたくても掛けづらかったのだ。だが、気づいたらその仮面は剥がれていた。時折見せるようになった人懐っこい笑み。気づけば美桜はクラスの輪の中心に溶け込んでいたのだった。
「美桜がそうでも周りはそう思ってたのよ...
まぁ、変なのにまとわりつかれないように気をつけなさいよ」
「...どういうこと?」
「...ホントに美桜ってそこらへん疎いよね」
「えへへ...バスケ一筋だったもので」
「褒めてないから」
椛が懸念するのは警戒心が薄れた美桜。無邪気な笑みに引き寄せられる男が増えたのだ。が、美桜は全く気づく気配はない。椛はそんな彼女を見て大きくため息を吐き出すのだった。
そんな彼女たちの教室にバタバタと大きな足音が近づいてきた。その音に何事かと顔を見合わせる美桜と椛。だが、その音の持ち主は二人の目の前でハァハァと息を整えるのだった。
「…高尾君?」
突然現われた高尾を美桜は不思議そうに見上げた。ポカンとする美桜。が、それと対照的に慌てふためいて来た高尾は切羽詰まった表情を浮かべていた。
「美桜ちゃん!
今度の日曜日空いてない?」
高尾は必死だったのだ。
先程見た光景が脳裏にチラつく。見知らぬ男と肩を並べる美桜の姿。中学時代の仲間である緑間と話しているときでさえ抑えきれない感情を押し止めることができるわけがなかった。そしてその光景を見たのは一度だけではないことに高尾自身、焦燥感をつのらせていたのだ。
「...誘ったらどうだ?」
「え?真ちゃんなんて言った?」
「美桜をどこかに誘ったらどうだ?と言っているのだよ...
二人揃ってげんなりしてるとこちらも気分が悪いのだよ」
目の前でため息を漏らす高尾に耐えきれず、痺れをきかせた緑間はふと提案した。その言葉に心ここにあらずだった高尾はビクッと身体を起こし聞き返す。そんな彼に念押しし直した緑間は不機嫌なオーラを隠すことなく醸し出していた。が、そんな彼に反して高尾はその言葉の意味を呑み込むと目を輝かせた。
「真ちゃん!ナイスアイデア!」
悩む前に即実行と高尾は意気揚々と教室を出てきたのだ。
「え?空いてるけど」
「ホントに?」
唐突な彼の訪れを未だに呑み込めない美桜。高尾はというと、よっしゃと内心ガッツポーズをする。しかしゾクッと背筋を凍る視線を感じ高尾は固まる。そんな彼に殺意を向けるのは椛だった。
「ねぇ?高尾君...私もいること忘れてない?」
恐る恐る高尾は振り向く。すると、敵意をもって睨む椛がいた。
ヤベ...気づかなかった。
内心青褪める高尾。だが今彼女に構っている場合ではない。高尾はヘラッと愛想笑いを浮かべた。
「あ?早川いたのか...わりいわりい」
軽く平謝りした高尾は、視線を感じつつも美桜に向き直る。
「だったらさ俺の買い物付き合ってくんない?」
「いいよ」
「おっ?マジで!
じゃぁ、今週の日曜日9時に駅前集合な」
「わかった」
考えることなく美桜は頷いた。それに内心ドキドキしていた高尾は呆気にとられる。
というか上手く行き過ぎて逆に怖い...
もしかして今日のおは朝一位とか?
トントン拍子の展開に不安がよぎるものの高尾は上機嫌だった。
さっさっとくっついちゃえばいいのに..
そうすれば美桜に変な虫つかなくて済むのに
楽しそうに会話を進める美桜と高尾。そんな二人をすでに蚊帳の外に置かれていた椛は微笑まし気に眺めていた。
*****
「...何だ?もう約束をとりつけてきたのか?」
「...そんなに顔に出てるか俺?」
「ダダ漏れなのだよ」
「マジかよ!?」
鼻歌でも歌いだしそうなくらい上機嫌に戻ってきた高尾を指摘する緑間。その彼の言葉に高尾はゲラゲラと笑い出す。が、その彼の表情は緩んでいて秘かに緑間は口元を緩めていた。
一方、美桜はというと話の内容をほぼ覚えていなかった。
「...ねぇ?さっき私高尾君とどう話してた?」
「...え?覚えてないないの?」
「...そこだけすっぽりと記憶がない...」
「マジか...」
蒼褪めて愕然とする美桜。そんな美桜に一部始終を見ていた椛は唖然としてしまうのだった。