インターハイ予選決勝リーグ
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「美桜ちゃん!!」
桃井と別れた美桜は観客席の方に戻っていた。そんな彼女の姿を一目散に高尾は見つけると手を上げた。それに手を上げた返した美桜は彼の隣の席に腰を下ろした。
「よかった…
戻ってこないかと思ったぜ」
「ごめんね心配かけて」
ホッと安堵する高尾に申し訳ないと美桜は軽く笑うと、視線をコートへ向けた。
「…大丈夫、ちゃんと観るよ」
「無理すんなよ」
美桜の言葉に高尾は目尻を下げると、彼女に見習いコートへ視線を下ろすのだった。
「タチ悪いぜマジ、前座なんてよ」
ウチラ、まぁ…前座や
お手柔らかに頼むわ
桐皇の主将、今吉が発した言葉に日向はヤレヤレと肩を竦めた。
「嘘はついてへんよ
青峰が来たらわかるわ。
ウチラなんて可愛いもんやでホンマ」
その言葉に今吉は戻りながら口角を上げたのだった。
青峰大輝抜きでも桐皇は強かった。青峰が来る前に点を入れて差をつけようとした誠凛の目論見は崩れてしまったのだ。
「全員クセつよすぎだろ!!」」
全国から選手を集めているため、桐皇一人一人の選手はそれ相応の実力を持つ、我が強く癖があった。
自分でボールを取りに行って自分で決める。
彼らのプレーは完全個人プレー。
今の大輝にピッタリなチームね…
「連携重視の誠凛と、個人技重視の桐皇か…」
高尾が目を丸くする隣で美桜は淋し気に目を伏せた。
「ありゃ...また遅刻っすわ..しかもまた負けてるし」
既に始まっている誠凛対桐皇の試合を横目に1人の青年が歩いていた。そんな彼の目の前に見覚えのある人物が映りこんだ。
「緑間っち」
見間違えようのないその背に黄瀬は声を掛ける。その声に掛けられた当の本人は身体をビクッと硬直させた。
「黄瀬?!」
振り向いた緑間は目の前にいる黄瀬に動揺した。そんな彼はいつもの眼鏡をしていなく、代わりにサングラスをかけていた。
「何故気づいたのだよ」
変装していたつもりの緑間は見抜いた黄瀬に驚きの声を上げる。が、端から見ても変装できてない、いやむしろ目立っている、と黄瀬はげんなりとした表情で呆れかえっていた。
「アホすかサングラスって..恥ずかしいから速攻外してほしいっす」
「なに!?」
「しかもなんすかその箱」
「今日のラッキーアイテムに決まっているのだよ」
黄瀬が指摘したのは緑間が左手に持つ小さな箱。それを緑間は得意げに掲げて見せた。そんな彼の言葉に黄瀬は数回瞬きした。が、これ以上突っ込むのは時間の無駄だと思いとどまった。
「あれすか?周りには見たくないと言ったけど結局来ちゃった的な?
」
「適当なことを言うな!近くを通っただけなのだよ」
「...家、真逆じゃないすか...」
黄瀬は周囲に秀徳がいないのを確認すると、腰に手を当て目の前の彼に呆れかえる。その黄瀬の言葉に緑間は反論するが、黄瀬は即座に言い返した。その言い返しに緑間は何も言い返すことができず、固まってしまった。
「で?どうすか試合は?」
「どうもこうもない...話にならないのだよ
青峰がいないようだか、それでもついていくのがやっとだ」
先に来ていた緑間に行方を聞こうと黄瀬は尋ねると目線をコートへと落とす。その投げかけに緑間はようやく眼鏡を掛け直した。
「青峰っち...いないんすか?
まぁ今あの二人が決めたじゃないすか?これからっすよ..」
黄瀬は嬉しそうに口角を上げる。が、緑間は彼のように能天気にこの展開を眺めていなかった。
「忘れたのか、黄瀬?桐皇には桃井がいるのだよ。あいつはただのマネージャーではないだろ?中学時代何度も助けられたのだよ。
つまり、逆に敵になるとこの上なく厄介だ。」
「桃っちか。
そういや、青峰っちとみおっちと幼馴染みだったすね?」
緑間が鋭い眼差しで見つめる先。そこには桐皇のベンチにいる桃井の姿があった。その姿を確認した黄瀬は思い起こすように遠い目をした。
美桜ー!!
見つけた途端勢いよく桃井は美桜に抱きついていた。そして同じくらい彼女は誰かを見つけると嬉しそうに飛びついていた。
ここで黄瀬はハッとあることに気づいた。
「...って!!あの子確か黒子っちのこと好きじゃなかったっすか!?むしろ本気なんて出せないんじゃ...」
「そうだったのか?」
「はぁ!?気づいてなかったんすか!バレバレ..っか..毎日アタックしまくりだったじゃないすか!あれ見て気づかないとか...猿っすか!?」
「なに!?猿とはなんだ!猿とは!!」
真顔で聞き返してきた緑間に黄瀬は愕然とする。その黄瀬が口にした言葉に緑間はムキになり言い返した。
「まぁいい...だったらなおさらなのだよ。黒子が試合で手を抜かれる事を望むはずがないのだよ。そもそも形が違えどあいつのバスケに対する姿勢は選手と遜色は無い。試合でわざと負けるようなそんな玉ではないだろ?」
大きく息を吐きだし落ち着きを取り戻した緑間は、眼鏡を押し上げると投げかけるように黄瀬に問いかけたのだった。
*****
「あっちゃー...誠凛、すごく研究されてるじゃん。」
高尾は目の前で繰り広げられる光景に舌を巻いた。
誠凛も桐皇どちらも超攻撃型のチーム。だが、ことごとく誠凛の攻撃は見透かされているかのように対応されてしまっているのだ。
「なんであんなに対応出来てんだ?
日向さんってドリブル今までしてなかったのにあっさりとられちゃったぜ!?」
「あれはね、桐皇のマネージャーの仕業...」
驚く高尾の隣で美桜は冷静に見つめていた。
桃井さつきは情報収集のスペシャリスト。それだけでなく分析能力も高い。集めた情報を分析し、そこから相手の成長を読めるのだ。そのため、短所を克服しようと対処してきたとしても桃井はそれを考慮した上で対策を組んでくるのだ。
以前美桜は桃井に尋ねたことがあった。どうしてそのような分析ができるのかを。その時、桃井は微笑したのだった。
『体格とか身長とか色々必要だけど...最後は女の勘よ』
美桜もできるよと言われたが、美桜自身サッパリわからなかった。
「でも、彼女にも読めないものもある」
「あぁ…」
美桜の言葉にピンッと来たのか高尾は口角を上げた。
「黒子か」
「ビンゴ」
誠凛が打開策を見いだせるとしたらあの二人だろう。予測困難な黒子と、発展途上の火神だ。2年生の彼らより圧倒的にデータ不足だからだ。
だが、美桜には懸念材料があった。
「おい...あいつ足治ってないんじゃないか?」
「...そうだね。もしかしたら下げるかも...」
その懸念は不運にも的中する。高尾も気づいたのか、コートを見つめるダークブルーの瞳を細めた。その視線の先にいるのは火神だ。火神は着地をする度に顔を歪めていたのだ。この前の試合で痛めた足がまだ完治していなかったのだ。
それに気づいた相田は即座に火神をベンチへと下げた。
「っーことは、暫く火神抜きか...大丈夫かよ、誠凛」
「テツヤがいるとはいえ厳しいね」
ブザーとともに湧くのは火神を下げたことに対するブーイングの嵐。その雑音を聞き流しながら彼らはジッと試合の行方を見守っていた。
予想通り火神の抜けた穴は大きかった。
動きを読まれることが無い黒子がいるお陰でなんとか繋ぎ止めているものの、他の2年4人は桃井の策略により思う存分力を発揮できなかったのだ。
「ヤベえーな...差が開き始めたぜ」
コートを見ているダークブルーの瞳が鋭くなる。
ジリジリと少しずつ桐皇との点差が開きはじめたのだ。そしてそのまま10点差に広がり第2クォーター残り51秒に。その頃再びブザーが鳴る。テーピングし終えた火神を相田はコートへと戻したのだ。
「そうそう張り切ってくれよ」
張り切る火神に黒いジャージを羽織った青年が近づき肩を組んだ。
「少しでも俺を楽しませるようになぁ」
「テメェ!!青峰!!」
ハッとした火神は彼を振り払う。
その彼の登場にピリッとコート上に緊張感が走る。その中で、美桜は1人密かに息を呑んだ。久々に見る彼の姿に。
ポジションPF
キセキの世代のエース、青峰大輝。
美桜にとって、彼は中学時代の仲間であるとと同時に幼少期からの幼馴染だ。