インターハイ予選決勝リーグ
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夕焼け色に染まる空の下、美桜達はとある場所に向かっていた。
「あれ?緑間は?」
宮地はこの場に見当たらない一人の行方を尋ねる。それに高尾が反応する。ポケットから携帯を取り出しある画面を開く。そして皆に見えるように見せるのだった。
『イヤなのだよ』
たった一言。緑間からの返信内容。それを確認した途端、宮地の顔は引きつった笑みを浮かべていた。
「えへへ...木村!パイナップル」
「あるぜ!青々としたやつ」
今日は、6月23日。IH予選大会決勝リーグの初戦。IH出場をかけ、各ブロックを勝ち上がった4校による総当たり戦が始まろうとしていた。この中の4チーム中、3チームがIH本戦へと進めるのだ。
「泉真館対鳴成はまず間違いなく泉真館だろ...
決勝リーグの行方を左右するのは..誠凛対桐皇学園」
貼られてあるリーグ表を見て大坪が言い切った。
西の王者である泉真館は本戦出場は間違いない。このリーグ、やはり行方を左右するのはダークホースである2校、誠凛と桐皇であるのは確実だった。
『美桜さん約束します。
青峰くんに勝つと』
今朝唐突に送られてきた内容が美桜の脳裏をよぎる。
…テツヤ
祈るように美桜は目を伏せた。
「神田、桐皇に入ったキセキの世代ってどんなやつなんだ?」
試合会場は観覧席は埋まり、まだ始まっていないのに熱気が溢れていた。なんとか席を確保した秀徳メンバーは、試合の開始を待っていた。その中、ふと宮地が疑問をぶつけた。
「...そうですね
彼はバスケが大好きで
中学時代から飛び抜けて上手くて
誰よりも一番早く能力が開花しました...」
美桜は悲しそうに表情に影を落とした。
なぁ美桜、なんでだろうな?
頑張ったら頑張った分だけバスケがつまんなくなってるんだよ
俺の欲しいものはもう手に入らないのかもな
俺に勝てるのは俺だけだ
「強さは異次元ですね...
まぁ見ればわかりますよ..」
美桜は答えながらおもむろに席を立ち上がった。
「…美桜ちゃ」
「少し席外しますね」
気づいた高尾が声を掛けようとする。が今はこれ以上これ以上詮索されたくないし、思い出したくない。美桜は高尾の気遣いに感謝しつつも、今だけは一人になりたかった。
まぁ、アイツの実力はプレーを見ないと伝わんない
立ち上がった美桜はとりあえず頭を冷やそうと廊下をあてもなく歩く。そんな美桜の後ろ姿を一人の少女が捉えた。彼女は嬉しそうに桃色の瞳を細めると、彼女に向かって駆け出すのだった。
「美桜〜〜」
馴染みのある声に呼ばれた美桜は足を止める。その途端、美桜の背後に桃色の髪を揺らし少女が抱きつくのだった。
「…さつき」
美桜はエメラルドグリーンの瞳を瞬かせた。
「何してるの??試合前でしょ」
桃色の髪の少女の名は桃井さつき。美桜にとって、帝光時代の仲間であるとともに、幼少期からの幼馴染だ。彼女は帝光中学ではバスケ部のマネージャーを務め、今は桐皇学園のマネージャーをしている。
桐皇は直ぐに試合を控えている。マネージャーの桃井がここにいるのが不思議だと美桜は驚く。その美桜の問いに、桃井は顔色を暗くした。
「それがねぇ..青峰君が来てないの!
電話したら寝坊したって言って...」
控室に見当たらない姿に桃井が慌てて電話したところ、青峰はいつもどおり寝ていたのだ。それに桃井は苛立ちを露わにする。
「そ..そっか...」
やはり高校に行っても変わらないらしい。
昔はそんなことなかったのに。
桃井からの話しに美桜は寂し気に目尻を下げた。そんな美桜を見て、桃井も同じ表情を浮かべていた。
「そういえば見たよ...テツくんとの試合。
すっごくいい試合だったよ」
動画で見た誠凛と秀徳との試合。桃井は久々に心躍るのを感じたのだ。嬉しそうに微笑する桃井。その彼女の言葉で美桜も一月前の試合を思い起こしていた。
「…いい試合だったよ」
今振り返ると負けはしたがいい試合だったと、美桜は心の底から感じたのだった。
「火神君って昔のあいつにそっくりだね...テツ君と彼のプレー見てたら思い出しちゃったよ。
青峰君のテツ君と一緒にやってた頃のプレーの方が好きだったんだけどな。」
「...私もね、昔の大輝の事思い出しちゃったよ」
嘆いた桃井は淋しげな表情を浮かべる。桃井も美桜と同様感じたのだ。火神のプレーに。そして重なって見えた。バスケを心の底から楽しむ昔の彼に。
「...そういえば、テツヤと同じとこ行かなかったんだね?さつき」
美桜はふと投げかけた。桃井はあることがきっかけで黒子に好意を抱いていたのだ。だからこそ美桜は彼女は黒子に付いていくと思っていたのだ。その問いに桃井は目をそっと伏せた。
「ホントは行きたかったんだけど...アイツのことほっとけなくてさ。
肝心の美桜はいなくなっちゃうし」
「...ゴメン」
美桜は桃井の返答に謝ることしかできなかった。あのときは自分の事で頭が一杯。桃井の存在をすっかり忘れていたのだ。
申し訳無さそうに小さく頭を下げる美桜。そんな美桜に桃井は目を細めた。
バスケから一時期離れていた美桜。
長くなった髪を揺らす美桜を暫く見慣れることはできないだろう。それでも、桃井は再びバスケの場で会えて嬉しかった。
「大変だったんだよ!...でも、いいや...
美桜がなんかしらの形でバスケに関わっているのが私は嬉しいよ」
「...さつき」
思わぬ桃井のセリフに目を見張った。彼女には泣きつかれると思っていた。でも怒鳴ることも泣きつくこともせず彼女は笑ってくれた。
「もう行かなきゃ...
バイバイ、美桜」
驚き固まる美桜。そんな彼女ともっと居たいと思う桃井。だが、試合が控えているためもう戻らないと行けない時間になっていた。桃井は後ろ髪引かれる思いで美桜に背を向けるのだった。