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「おっ邪魔しまーす」
日曜日、高尾はたじろぎながらある家の玄関に足を踏み入れた。そんな彼を見て、誘った美桜は小さく笑った。
「荷物適当に置いといて..飲み物とってくるね」
美桜は自室に高尾を入れると、飲み物を取りに。一方で取り残された高尾は恐る恐る持ってきた荷物を部屋の隅に置いた。
部屋は綺麗に整頓してあって、全体は淡いピンクで統一されていた。ショーケースには過去にとったのであろう賞状やトロフィー・メダルが飾ってあった。その隣にある机の上には二つの写真立てが置いてあった。
これは…
ふと気になった高尾はその写真立てをマジマジと眺めた。
中学時代のであろうか...
その写真には制服姿の7人の青年少女の姿があった。そして、その中心には少しまだ幼い美桜の姿が写され、その周囲には緑間を始めキセキの世代がいた。
そしてもう一つの写真には、2人の少女と1人の少年が写っていた。ストバスコートをバックに、中央にはバスケットボールを両手に抱え満面の笑みを浮かべたショートヘアのマリーゴールド髪の少女、その両端には、桃色髪の少女と青髪の短髪の少年が立っていた。
2つの写真どちらの彼女も、高尾が今まで見たことがないくらいの弾ける笑顔を浮かべていた。特に2枚目の写真。そこに映る3人は太陽のように輝いていた。
一体彼女に何が…
高尾の抱く不信感は更に強まった。
どうして彼女はバスケをしなくなったのだろう?
時折見せる笑顔の裏に隠された憂いた表情。その哀愁が漂う表情をどうすれば無くせるだろう。
ただ心から笑ってほしい
高尾はこの写真に映る少女に心奪われていた。あどけない表情を浮かべ笑う彼女がとても綺麗に見えたから。
ガタンッ!!
物音に気づき高尾はハッと振り向く。するとそこには、血の気の失せた顔をする美桜がいた。
「なぁ...美桜ちゃんこの写真...」
高尾が尋ねようとする。が、美桜は慌てたようにグラスを置くと、写真立てに手をかけ見えないように倒すのだった。
「あはは...見ちゃったよね?」
「うん...」
引きつった顔で笑った美桜は、高尾の頷きに困ったように目尻を下げた。
「そっか...それ小学時代の写真だよ」
「...じゃあ、前言ってた腐れ縁ってやつって...」
「...そうだよ」
視界に入らないように、ずっと避けていた写真を美桜は手に取る。楽しかった日々の一部を切り取ったもの。それを見るだけでも胸が痛んだ。でも目に届かぬように置き場所を変えることをしなかったのは、望んでいるからだろう。あの頃のように皆で笑い会える日々を。
「すごく3人とも楽しげに笑ってるね」
「あの頃はね...何もかも新鮮で輝いて見えたんだ。」
懐かしむように美桜は遠い目をした。
小学校時代は毎日が楽しかった。
学校が終わってすぐストバスコートに向かい汗だくになるまで大人に混じって日が暮れるまでバスケをして...彼にあってからはその日々はもっと輝いた。あんなに楽しげにバスケをしている子を見た事がなかったのだ。自由奔放な彼のスタイルはいつも心を揺さぶる。それほど、彼のバスケは周囲を魅了した。美桜もそのうちの1人だった。見ていて飽きない彼のバスケに心奪われていた。
「なあ、美桜ちゃん?」
耳に入った声で美桜は一気に現実に引き戻された。美桜は伏せていた目を上げる。すると美桜の瞳に映ったのは自分を真っ直ぐに見つめるダークブルーの瞳。
「どうしたの?」
「俺にはその代わりできないのかな?」
真剣な表情の高尾が発した言葉に美桜は息を呑んだ。そんな驚く美桜に高尾は想いの丈をぶつけるのだった。
「絶対、俺が見せるから!そいつ以上に輝いた景色!!」
真っ直ぐな彼の言葉。その言葉はジワジワと美桜の心に水のように浸透した。美桜は思わずクスッと笑みを浮かべた。そんな美桜の反応に、高尾は不服そうに口を尖らせた。
「なんだよ」
「だって...今更だよ。」
美桜はここ最近のことを思い起こす。
毎日がモノクロだった世界。ある日を突然にその世界が色鮮やかに見えるようになった。
…高尾君のお陰なんだよ
美桜はそっと目尻を下げた。
もうバスケと関わりたくなかった。マネージャーも本当は引き受ける気がなかった。でもあの時体育館に入って真っ先に美桜の視界に映ったのは高尾だった。
もっと彼のバスケを見たい
気づけば美桜はバスケ部のマネージャーになっていたのだ。
「高尾君にはもう既に見せてもらってるよ...」
美桜は嬉しそうに微笑んだ。その表情に高尾は息を呑んだ。何故なら、今まで見たことないくらい晴れやかな笑顔だったからだ。
「ねぇ...バスケしようよ」
「え?」
固まる高尾に美桜は声を掛ける。そのお誘いに高尾は今度は別の意味で目を丸くし驚いた。
今まで事あるごとに理由をつけて美桜は避けてきたのだ。バスケをすることに。
「私...高尾君とバスケしたいんだ...
だめかな?」
照れくさそうに美桜は高尾を見上げた。ふと不思議と沸き起こったのだ、バスケをしたいと。
いい加減向き合わないといけないのかもしれない。でも彼となら乗り越えられそうな、そんな気がしたのだ。
「ダメじゃないって!やろうぜ!!」
驚いたものの、高尾は嬉しそうに目を輝かせるのだった。