中間テスト
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「はぁぁぁ~」
身体を脱力させ机にうっ潰す高尾。そんな彼のだらしなさに緑間は大きくため息を吐きだした。
「何だらしない格好をしているのだよ、高尾」
「だってよ〜真ちゃん、バスケできないんだよ!
ため息つきたくなるじゃん!」
IH出場が途絶えた秀徳高校。彼らの次なる目標は冬に行われるウィンターカップ。その試合に向けて再スタートを切りたいところだが、その前に1つ大きな壁が立ち塞がっていた。それは学校のテスト。秀徳高校は進学校のため、試合が終わってすぐテストが終わるまで部活は原則禁止になっていたのだ。
「高尾君、テスト余裕?」
「いや..まったく。つうかやばいんだけど!!」
彼らの教室に来ていた美桜が尋ねる。その投げかけに対し、高尾は無邪気にエヘヘと笑った。そんな彼を見て、美桜と緑間は顔を合わせヤレヤレと肩を竦めた。その反応に高尾は目を丸くする。
「え!なんだよ!お前らもだろ?真ちゃんは?」
「俺は何にでも人事を尽くしているのだよ..」
ガバッ!!と身体を起こし高尾は振り返る。だが、緑間は当然だろと真顔で眼鏡を押し上げて答える。そんな緑間の予想を裏切らない反応に高尾はげんなりとした表情を浮かべた。
「...ですよね、さすが真ちゃんだわ..で?美桜ちゃんはどうなの?」
早々に高尾は緑間を攻めることを諦めた高尾は矛先を美桜へと浮かべた。その投げかけに美桜は身体をギクッと強張らせた。
「いやぁ...自信無いんだよね..正直焦ってるよ..あはは..」
美桜は愛想笑いを浮かべる。それに高尾は目を瞬かせる。がそんな高尾に緑間は忠告をする。
「真に受けてはダメなのだよ...高尾」
「なんでだよ?真ちゃん?」
「美桜は一見馬鹿そうに見えるが...
頭はいいのだよ...伊達にPGを努めていただけはある」
「ちょっと!!馬鹿そうに見えるってなによ!!」
「なんなのだよ...俺はただホントのことを言ったまでなのだよ」
不思議そうな高尾に緑間は鼻を鳴らして答える。が、緑間のその言葉は貶されているような気がした美桜は思わず異を唱えた。睨みつけられた緑間はそれを睨み返す。
あーだこーだと言い争いを始める美桜と緑間。その誰も介入できない二人の息の合ったやり取りに見ていた高尾は胸の奥にモヤッと黒い感情が渦巻くのを感じた。
なんで相手が俺ではないのだろう?
緑間のポジションに秘かに嫉妬してしまった高尾は、自嘲気味に笑みを浮かべていた。
一触即発の雰囲気の中、突如として薄い笑い声が響く。その笑い声に美桜と緑間は口を噤みその方向に目をやる。すると、高尾が腹を抱え笑っていたのだった。
「これコントじゃないよな?二人息ピッタリすぎだろ?
いや、あいすぎて嫉いちゃうぜ」
2人の視線が向けられたことが分かった高尾は、感情のままダークブルーの瞳を細めたのだった。
「どうしたのだよ?高尾」
「高尾君??」
普段と違う高尾を二人は覗き込む。その二人のキョトンとしている顔に高尾はハッと我に返った。
「あ...え??
...あ...ごめんごめん考え込みすぎたわ」
「あはは、らしくないね...」
正気に戻った高尾は殺気を抑え込むと、おちゃらけた笑みを浮かべた。そんな彼に美桜はあることを提示した。
「ねぇ?
もし良かったら私と勉強しない??」
「えっ!?」
予想外の彼女の言葉にビックリした高尾は思わず空耳を疑い聞き返す。
「え...いいの??真ちゃんじゃなくて?」
頭いいのならいい人同士やればいいのではないか?
ホントは今すぐに飛びつきたい話なのに高尾は無意識の内に緑間の名を口に出していた。
あ、やっちまった...
高尾は己の過ちに顔を蒼褪める。そして窺うように恐る恐る美桜を見るのだが、当の本人はキョトンとしていた。
「え...真太郎と?」
今まで考えた事すらない選択肢に美桜はふと緑間を見る。いつの間にか読書に戻っていた緑間は視線を感じ、一瞬本から視線を上げる。がすぐに本の世界へと戻ってく。
そんな緑間から視線を高尾に戻した美桜は暫し硬直する。が直ぐに首を大きく横に振って否定した。
「...ムリムリ!だって質問したら必ず
『なんでこれきしのことができないのだよ?』
って言われて終わるよ!!」
訴えかけるように美桜は目の前の高尾に詰め寄った。その珍しく切羽詰まらせる美桜に思わず高尾は後ずさりをしてしまった。
「それとも私と勉強したくないの?」
しょんぼり美桜は肩を落とす。その寂しそうな美桜の顔に高尾は慌てて全力で弁解を述べる。
「いや!別にそうじゃなくてさ!!
寧ろ誘ってくれると思ってなくて、パニクったんだよ」
「...ホント?」
「ホントだって!オレこそ一緒にやろうってお願いしたいよ」
聞き返す美桜に高尾は前のめりになって答える。その答えを聞いた美桜の表情は明るくなった。
「ヤッタ!じゃあ場所は私の家ね!」
「あぁ、いいぜ」
...え?美桜ちゃん家行けるのめちゃ嬉しいんだけど
美桜により決められた開催場所に高尾は思わず頬が緩みそうになる。がそれを乗り切り高尾は平然と答えていた。
やべぇ...
バスケ出来なくてつまんねえと思ってたけど意外と楽しくなりそう...
突如決まったことに高尾は有頂天になっていたのだった。
*****
「はぁ〜〜〜」
教室に戻った美桜は自席に勢い良く座りこむと、盛大にため息をつきながら机にうっ潰した。
もし良かったら私と勉強しない??
それとも私と勉強したくないの?
じゃあ場所は私の家ね!
先程口にしてしまった言葉が頭の中でグルグルと回る。
なんてことを口走ってしまったのだろう…
美桜は顔面蒼白気味に頭を抱え込んでいた。そんな彼女の様子が気になり、本を読んでいた椛が振り向く。
「そんなため息ついてどうしたの?」
その声に美桜は顔を上げる。すると訝しげに見つめる椛がいた。そんな椛は美桜を見ながら頭を回転させる。そしてある仮説に辿り着いた椛はニヤニヤと愉しげに目を細めた。
「なによ!」
「いや〜...
どうせ高尾君絡みなんだろうなって思ってさ」
ガタッ!!
ニヤつき始めた椛に言い返そうとする美桜。だが、その後に椛の口から告げられた言葉に美桜は固まった。そして動揺した美桜は大きく音を出してしまう。その反応に椛は身を乗り出した。
「ほら、図星でしょ?
で?今度は何があったの??」
「そんな何も無いって」
「この前高尾君が呼び出されているのを見て落ち込んでいたのはどこの誰?」
「.....私です」
ホントに彼女には敵わない...
はぐらかそうとした美桜に、椛は畳み掛けた。その言葉に美桜はギクッと顔を強張らせると肩を落とした。度々耳にすることはあった。高尾の名前が飛び交うことを。だが最近それだけでなく、目撃することも多くなってきていた。
椛が指摘したのは、女子生徒が緊張気味に顔を染めて彼に声を掛けていた場面。そして声を掛けられた高尾は気さくに受け答えすると、そのまま二人は並んで何処かへと歩いていったのだ。
その光景を目撃し美桜は勝手に1人で落ち込んでいたのだ。そしてその度に美桜は現実を突きつけられていた、この想いの正体を。だがそれとともに気付かされるのは女子からの人気を集める高尾自身のハイスペックさだった。
強豪バスケットボール部のスタメン選手
端正な顔つき
周囲に目が届き、凄く気が利く
コミュニケーション能力が高く社交的
「何?また呼び出されてるとこ目撃しちゃったわけ?」
落ち込む美桜に椛は問いかけた。だが、その言葉に美桜は拗ねるように口を尖らせた。
「...違うけど」
「じゃあ何?」
このままじゃ埒が明かない
椛は焦らす美桜に少しドスが効いた口調で尋ねる。その声に圧倒された美桜は思わず小さい声で言ってしまうのだった。
「...テスト勉強しようって家に誘っちゃった」
珍しい美桜のか細い声。だが、近くに居た椛にの耳にはしっかりと届いていた。えっ…と椛は美桜の言葉に呆けてしまう。
あれ?
彼女からの反応がないのを不審に思った美桜は恐る恐る顔を上げた。すると目を点にして固まる椛がいた。
「…ほんとに誘ったの?」
「うん…」
念の為ともう一度と椛は確認をとる。がそれに美桜は小さく頷いた。
いやー驚いた...
まさか彼女から誘うとは
驚きの表情を浮かべる椛。そんな彼女の前では、美桜は頭を抱え机に打っ潰していた。
「...どうしよ」
悩みに悩みまくる美桜に、椛は人知れずため息を漏らした。
椛から見て二人は両思いに見えたのだ。だが互いに鈍感のようで気づいていない。
「で?返事は?」
「オッケーもらったよ」
「オー...やるじゃん。進展するといいね」
「...しないよ」
うつ伏せのまま美桜は答える。
進展させてはいけないんだ…
生半可な気持ちのままで…
必死に否定する美桜。だがその耳は赤く染まっていた。
まぁ、くっつくのも時間の問題かな…
そんな彼女の様子に椛はクスッと笑みを零すのだった。