インターハイ予選後
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「負けて悔しいのはわかるっすけど...
まぁ昨日の敵はなんとやらっす」
ジッと腕を組み鉄板で焼かれたお好み焼きに手を出さず仏頂面な緑間。そんな彼を見かねて黄瀬は口を開いた。
「昨日の敵は今日の友ね」
「負かされたのはついさっきなのだよ...
むしろお前がヘラヘラ同席しているほうが理解に苦しむのだよ」
しっかりと言えてない黄瀬の言葉に美桜は目の前に焼かれたお好み焼きを突っつきながら、緑間は表情を変えることなく、呆れた眼差しで黄瀬を見た。そして、緑間は黄瀬を見据え問いかけた。
「一度負けた相手だろ?」
「そりゃあ...」
問いかけられた黄瀬は一拍置くと、ニヤリと目を光らせた。
「とーぜんリベンジするっすよ。
インターハイの舞台でね...次は負けねぇーすよ」
持っているヘラで黒子を指した黄瀬は挑戦的な目をしていた。
みおっち!!1on1するっすよ!!
キラキラと輝く黄金色の瞳。その奥には、メラメラと燃える闘志が感じられた。そんな彼を見て美桜は懐かし気に目を細めた。昔の黄瀬涼太が戻ってきてくれた気がしたのだ。
「望むところだ」
お好み焼きを頬張っていた火神が愉しげにニヤリと笑った。
「黄瀬...前と少し変わったな。
目が...変なのだよ」
「変!?」
黄瀬の様子に異変を感じた緑間は鋭い眼差しを向ける。その言葉に困惑したものの、黄瀬は頬杖しながら最近のことを思い浮かべた。
「まぁ...黒子っちとやってから前より練習するようになったっすかね。あと最近思うのは…
海常の皆とバスケするのがちょっと楽しいっす」
「どうも勘違いだったようだ。」
ふっと柔らかい表情を浮かべる黄瀬に、緑間は小さく息をつくと目の前のお好み焼きに手をようやく伸ばす。
「やはり変わってなどいない。
戻っただけだ...三連覇する少し前にな」
「けど...あの頃は皆そうだったじゃないですか」
眼光を尖らす緑間。それに対しうつむき気味に黒子が口を開いた。そんな黒子、嬉しげに頬を緩ます黄瀬を見た緑間は強い口調で言い切った。
「お前らがどう変わろうが勝手だが俺は楽しい楽しくないでバスケはしていないのだよ」
「真太郎はそうなの?」
そんな彼に対し、美桜は寂し気に緑間に問いかけた。
「私は...その考え間違ってると思う。確かに勝ち負けは大切かもしれないけど...一人で勝つのがバスケじゃないと思う。
皆で掴んだ勝利じゃないと勝っても嬉しくないよ。
バスケは一人プレーじゃないんだよ...」
膝の上で握り拳を作った美桜は俯きながらもポツリポツリと思いの丈を口にした。その初めて本音を零した美桜に黄瀬は驚いた表情で、緑間は表情を変えることなく、彼女を見た。
シーンと静寂な空気が漂う。そんな重たい雰囲気の中、不思議そうに火神が口を開いた。
「お前ら...マジごちゃごちゃ考えすぎなんじゃねぇの?
楽しいからやってるに決まってるだろ?バスケ」
「なんだと!?何も知らんくせに知ったような事を言わ...」
当然だろ?と言わんばかりの顔をする火神に、緑間が反論しようとする。その時、突如どこからか1枚のお好み焼きが緑間の頭にクリーンヒット。
ベチャ
「ヤベッ…」
緑間の頭に落ちたお好み焼き。それを放り投げた本人は顔面蒼白。
「とりあえずその話は後だ...」
苛立ちを露わに緑間は音を立てて立ち上がる。
「高尾、ちょっとこい!!」
犯人はわかっている。立ち上がり振り返った緑間はヘラを両手に持ち、立ち尽くす高尾の首根っこを掴む。
「わりぃわりぃ...」
オイオイ大丈夫なのか?
先程笠松に言われた言葉が胸に突き刺さる。座敷側ではお好み焼きをどのくらい上げられるかと、互いの机にある鉄板で、放り投げあいをしていたのだ。そして、笠松の静止を聞かずに高尾は投げる高さをドンドン上げていっていたのだ。
その結果、調子に乗りすぎた高尾は緑間の怒りを買ってしまい、外に引きずり出されてしまった。
「ちょ...ごめんごめん...あだ〜!!」
「火神君の言うとおりです。試合をして思いました。
つまらなかったらあんなに上手くなりません。」
引き戸が閉じられ、高尾の悲鳴が聞こえる。がもちろんのこと高尾が悪いので誰も緑間を引き止めることはなかった。緑間が消えた場で黒子はこの話に区切りをつけるのだった。
「火神、一つ忠告しておくのだよ。」
高尾をシバキ終えた緑間が店内へ。そして戻ってくるなり開口一番、緑間はある者の名を口にする。
「東京にいるキセキの世代は二人...俺と青峰大輝という男だ。
決勝リーグで当たるだろう。そして奴はお前と同種のブレーヤーだ。」
「はぁ?よくわかんないけどそいつも相当強いんだろうな?」
訝しげに荷物を持った緑間を火神は見上げる。が、その火神の問いに答えたのは黒子だった。
「強いです。ただあの人のバスケは好きじゃないです。」
青峰大輝
その名が出た瞬間、場の空気が重くなった。その原因は、黒子と黙り込んだままの美桜だった。
「まぁ、せいぜい頑張るのだよ。
行くぞ美桜」
そんな二人を一瞥した緑間は息を吐き出すと、美桜に一声掛け出入り口へと向かう。その声に、表情に影を落としていた美桜はハッとしたように顔を上げる。そして、慌てて美桜は荷物を持ち席を立った。
「緑間くん...またやりましょう」
「当たり前だ..次は勝つ」
緑間の背に席を立った黒子が話しかける。その言葉に緑間は立ち止まる。
テツヤと意味合いが違うかもしれない…
それでも美桜は嬉しかった。緑間が黒子に対して返した言葉が。