インターハイ予選後
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あれ?美桜ちゃんは??」
店の前までチャリアカーを引いてきて待機していた高尾は、緑間にそう尋ねていた。その問いかけに緑間は一瞬背後を振り返る。だが、緑間は呼びに行くことをせず荷台に乗り込んだ。
「すぐ来るはずなのだよ」
「置いてきたのかよ」
荷台に腰を下ろす緑間を高尾は呆れた眼差しを向ける。だが、ふと神妙な面持ちを浮かべる。
「なあ...美桜ちゃんのことなんだけど...」
「俺に聞いていいのか?」
高尾が尋ね終わる前に緑間は逆に聞き返していた。その緑間の鋭い眼光に高尾は返答に困惑した。そんな高尾に確かめるかのように緑間は再び投げかける。
「いいのならば話すが...
お前はそれでいいのか、高尾?」
「真ちゃん...」
「本人の口から言葉から聞きたいんじゃないのか?」
核心を突く緑間の言葉。その言葉に高尾はハッとした表情を浮かべた。
ただの好奇心で彼女の過去を知りたいのではない..
知った所で後で俺は後悔することになる...
だって俺は...
「はは..そうだな..俺..
はやとちりしすぎたわ..」
「たく...世話のかかるやつなのだよ...」
空を仰ぎ目を手で覆い隠し、軽く笑った高尾は己の抱く感情に気づく。そんな高尾を見て緑間は呆れたと、盛大にため息をつくのだった。
*****
「美桜さん...」
緑間を追いかけようとした美桜は黒子に呼び止められ足を止めた。ゆっくりと振り返る美桜。そんな彼女に黒子は柔らかく微笑んだ。
「今日は楽しかったです。今度やりましょう...バスケ」
「テツヤ...」
「あなたはキセキの世代のようにはなりません...
だって美桜さんはバスケが誰よりも好きなのを僕は知ってますから...
だから気をはらないでください...
僕は美桜さんにバスケ続けてほしいんです。
だってあなたのバスケをしてる姿が好きですから...」
時折不安そうに揺れ動くエメラルドグリーンの瞳。だが、その瞳を受け止めた空色の瞳はどこまでもまっすぐだった。
「...あ...ありがと...」
言い切った黒子の言葉に美桜は少しだけ頬を緩ませた。
正直な気持ちこれからどうしたいのか美桜自身わからなかった。でも彼の言葉で少し心のわだかまりが消えたような気がしたのだった。
「それじゃあ行くね。
次あたったら秀徳が勝つからねテツヤ...」
「僕たちも負けませんよ」
「涼太もまたね」
「みおっち!バイバイっす」
晴れやかに笑う黒子。対して、もう少し一緒に居たかったと内心思いながらも黄瀬は彼女を見送ったのだった。
「遅いのだよ」
「遅かったじゃん!早く乗んなよ!」
お店の外に出ると既にチャリアカーに乗った二人がいた。ゴメンゴメンと美桜は慌ててそれに乗り込むと、心配そうに高尾を見た。
「高尾君..疲れてない?平気?」
「平気平気!!いいトレーニングだぜ」
正直疲れ切っていたが、高尾は美桜の手前見えを張った。そして、高尾はよいしょッ!と漕ぎ始めたのだった。
「そういえば...何か良いことあった?」
「え?なんで?」
「だってさ、美桜ちゃん...
いつもよりなんかスッキリした表情してるぜ」
前を見ながら高尾は尋ねた。
高尾から見て、店から出てきた彼女はいつものどこか張り詰めた様子はなくスッキリとした表情をしていたのだ。
何が彼女を変えたのだろうか?
そんな表情をさせたのが自分でなかったのが高尾は歯がゆかったのだ。
その高尾の問いに美桜は少し考え込む。
今日の試合、確かに負けたが楽しかった。
火神君の生き生きとバスケをしている姿を見て思わず彼を思い出し懐かしんだ。
店ではテツヤに背中を押してもらった。
涼太の変化が見れた。
「んー..そうだね...良いことあったかな?」
思い返した美桜は嬉しそうに柔らかい表情を浮かべた。
何か吹っ切れたらしく笑顔を見せる美桜。その笑顔に高尾はほんのりと頬を染めた。月明かりに照らされているせいか?それとも気持ちに気づいてしまったせいか?いつも以上に美桜が綺麗に高尾は見えたのだった。
「今日はじゃんけんなしでもいいぜ...
その代わりお前のそのラッキーアイテム...」
気を利かせて漕ぐ高尾は荷台に置いてある信楽焼に目線を送る。漕いで気づいたのだ、信楽焼の存在を忘れていたと。重いから捨てていきたい。そう思う高尾。だが、緑間は違う解釈していた。
「次からはぬからないのだよ..今度はもっと大きい信楽焼を...」
「そこなんだ..」
「サイズの話じゃねぇーよ!」
的はずれなことを言う緑間。そんな彼に美桜と高尾は呆れた眼差しを向けた。
「ねぇ?...次は勝とうね」
「当然なのだよ」
「ぜってぇー勝とうな!!」
そう投げかける美桜に、緑間は眼鏡を押し上げて答え、高尾は屈託のない笑みで返した。
先ほどの雨はいつの間にか上がっており、雲ひとつなく星が見える空の下。月明かりに照らされながら彼らは再起を誓ったのであった。