インターハイ予選後
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あれ〜?」
急に声を上げた高尾を不思議に思う緑間と美桜の目の前で、彼は目に留まった人物に声を掛ける。
「もしかして...海常の笠松さん!?」
「なんで知ってんだ?」
呼ばれた当の本人は驚いた顔を浮かべた。そんな笠松に高尾は嬉しそうに近づいた。
「ぁはは..月バスで見たんで!全国でも高PGとして有名人じゃないっすか!」
そして驚く本人を置き去りに高尾は話を進めていく。
「同じポジションとして話し聞きたいな!
ちょっと混ざっていいっすか?
あ、こっちの席で話しましょうよ!」
視界の端に捉えた座れそうな席を見つけた高尾は笠松を連れて、座敷の方へ。そして嵐のように高尾と笠松はテーブルから居なくなった。
「とりあえず緑間っちここ座ったらどうすか?」
取り残され唖然とする美桜と緑間。見かねた黄瀬が声を掛けた。そこは先程まで笠松が座ってた席。高尾がいってしまった以上、ここに留まる他はない。渋々と緑間はその席に腰を下ろした。
「お嬢ちゃんごめんね、相席頼むよ...」
「あ...ありがとうございます」
立ち尽くす美桜に、店主が申し訳無さそうに椅子を持ってくる。美桜は苦笑いを浮かべながらそこに腰掛けるのだった。
テーブルを囲むのは帝光中学メンバーである黄瀬・黒子・美桜・緑間+火神。勝者と敗者が対戦日に同じテーブルを囲むこのカオスな状況。おかげでか空気が張り詰め緊迫したムードがここだけに流れていた。
「お前..あれ狙ってたろ?」
「え〜?まさか~」
遠目から見てわかる不穏な空気。思わず笠松はこれを作り出した元凶を呆れた眼差しで見る。それに対し、高尾は小さく笑みを浮かべた。
まあそうなんだけど…
意図的にこの状況を作り出した高尾。ただし、唯一後悔していることがあった。
あ〜あ、美桜ちゃんも引っ張ってくれば良かった
黒子の隣に腰を下ろす美桜を高尾は密かに盗み見るのだった。
「とりあえずなにか頼みませんか?お腹減りました」
「テツヤに賛成。お腹すいた。」
口火を切った黒子がメニューを開く。その彼に乗るように、美桜は身を乗り出し広げてくれたメニューに目を通した。
「俺もう結構いっぱいだから今食べてるもんじゃだけでいいっすわ..」
「……よくそんなものが食えるのだよ」
「なんでそんなこと言うんすか!」
「お願いしまーす」
黄瀬の目の前の鉄板に広がるもんじゃ。それをゲテモノを見るような眼差しで緑間はチラ見する。そんな彼に黄瀬は解せないと声を荒げた。その隣では、火神が注文をしようとお店の人を呼ぶ。
「いか玉ブタ玉ミックス玉たこ玉ブタキムチ玉……」
「どんだけ食べるの!?」
「なんの呪文すか?」
「頼みすぎなのだよ」
メンバーである黒子以外の3人が思わずツッコミをいれる。そんな彼らに黒子は淡々ととんでもない事実を述べるのだった。
「大丈夫です。火神君一人で食べますから」
「え、うそ…」
「ホントに人間すか...」
黒子がもたらした事実に、美桜と黄瀬は愕然とした表情で火神を見るのだった。
「お前のとこのマネージャー、神田…だっけ?
アイツなんでバスケ辞めたんだ?」
ふと笠松が隣の高尾に話を振る。その問いに高尾はポカンッとした表情で食べる手を止めた。
「え、どういうことですか?」
「だってアイツ中学の頃散々騒がれてたんだろ?
そんだけ上手いのになんでやってないんだろ?って思ってな...」
「…そんなに騒がれてたんですか?」
驚いて思わず高尾は身を乗り出した。彼女がバスケが上手いのは重々承知だ。だが、騒がれるほど彼女は有名な選手とまでは思っていなかったのだ。
「え、なに?高尾君知らないの??」
高尾と笠松の話に、口を挟むように相田が加わった。その相田からの投げかけに高尾は表情に影を落とした。
「...実は知らないんですよ。
...あはは、彼女…過去の話したがらないもんで」
彼女と触れ合う度に思うのだ。もっと彼女のことを知りたいと。
だが彼女自身頑なに中学の頃の話題を拒んでいた。
無理に愛想笑いする高尾を横目に相田はあるものを取り出した。それはキセキの世代を特集した過去の月バスの雑誌だった。
「彼女は帝光中学校のPG...司令塔として活躍するだけではなくて自ら先陣をきって突破口を開いた。そんな彼女の華麗な身のこなし、ドリブルでコートを駆け巡ることからつけられた異名は『絢爛豪華な疾風のドリブラー』」
雑誌を捲り相田はあるページを彼に見えるように見せた。そのページにはスポットライトを浴びる少女がいた。それに高尾は喰い付くように目を通した。
「でもホントにそうよね…
なんでマネージャーになったのか不思議だわ」
雑誌を読み始める高尾を横目に、相田は手を顎に当て考え込むのだった。
「で??なんで笠松さん知ってたんですか?
女バス興味なさそうですよね」
「お前な...」
雑誌を読み改めて彼女の凄さを実感した高尾は、話題を振った笠松を見る。その高尾の疑問に笠松は小さくため息をつくと、遠い目をした。
「黄瀬だよ...
試合見てるときになぎゃあぎゃあ自分の事のように自慢気に話してたんだよ」
誠凛と秀徳の試合中、黄瀬は事あるごとに美桜のことを笠松に紹介していたのだった。
「先輩!あの子!!秀徳のマネージャー、神田美桜って言うんすけど...彼女も帝光で一緒にバスケしてたんっすよ」
興奮気味に黄瀬が指さした先に居たのは小柄な子だった。笠松は思わず聞き返していた。
「マネージャーとしてか??」
「何言ってるんすか先輩!」
そんな笠松に黄瀬は呆れた眼差しを向けた。
「マネージャーじゃないっすよ!みおっちは凄いバスケプレーヤーなんすよ!俺一回も1on1で勝ったことないんすよ」
自分の事のように連連と黄瀬は神田美桜について語りだした。
帝光中学の女子バスケ部で初期からレギュラー入り。数々の栄光を掻っ攫っい、異名まで付けられた彼女。
黄瀬が彼女がいかに凄いか語り倒すお陰で少なからず笠松にも彼女のバスケ選手としての優秀さを把握できた。ただここで笠松の頭に疑問が浮かび上がった。
「で?なんでマネージャーになってるんだ?」
それだけ凄い選手ならば高校でも活躍できたはずだ。だが彼女は今マネージャーとなりコートの外にいた。
そのことを指摘された黄瀬は饒舌だった口を噤み黙り込んだ。
暫くの静寂の後、黄瀬は重い口を開く。
「それが...わかんないんすよ...中3になる前にひょっこり姿消しちゃって...
次こそ勝ってやる!と思ってた矢先っすよ...
で、姿を現したと思ったらマネージャーになってて...」
「黄瀬....」
思いの丈を口にする黄瀬。その表情は笠松が見たことないものだった。マリーゴールド色の髪を束ねた少女を黄瀬は柔らかい眼差しで見る黄瀬は、ファッションモデルでもバスケプレイヤーでもなく、ただの黄瀬涼太に笠松は見えた。
「お前...アイツのことどう思ってるんだ?」
「そりゃあ...」
黄瀬は奥底の思いをゆっくりと語りだしたのだった。その間彼はずっと彼女の事を愛しむような表情で見ていたのだった。