インターハイ予選後
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
曇天雲が広がる空から、雨粒が降り注ぐ。
「神田、後は頼んだぞ」
試合を終え控室に戻った中谷と大坪達は、見当たらない1年コンビを美桜に任せ、早々に帰ってしまう。
何処行ったのよ、あの二人は…
降り注ぐ雨音を聞きながら美桜は、薄暗い通路を歩いていた。
あっ、彼処…
視界の端に映り込んだ影に美桜は気づく。
「高尾君...」
彼は誰にも見つからなそうな隅で蹲っていた。美桜は気配を消し彼に近づく。そして顔色を伺おうとそっと美桜は話しかけた。
「あ...美桜ちゃんか...
いいのか?真ちゃんとこいかなくて...」
普段ならすぐに気づく高尾は声を掛けられるまで美桜の存在を把握できなかった。高尾は目の前に突如現れた美桜に驚きながらも尋ねた。だがそれに美桜は静かに首を横に振った。
「彼奴は放っておいていいよ...
このくらいの傷が丁度いいから。」
この敗戦をきっかけに少しでも彼の考えが変わればと美桜は思っていたのだ。仮に緑間のとこに行ったとしても鬱陶しいと拒まれるだけだ。それよりも美桜は目の前の彼が心配だった。
「それよりも今の高尾君を放っておけないよ」
「はは...そんなに俺情けない顔してるか?」
冗談交じりに言おうとした高尾の声はいつもより元気がなかった。
「...ッ...オレ...」
気遣うようにさりげ無く寄り添ってくれる美桜の優しさに高尾は我慢しきれず感情が込み上げる。そして、今まで取り繕っていた仮面が剥がれ落ちる。その仮面の裏には悔しげな表情が隠れていた。
「最後のクォーター...
アイツを止められなかった..
すげぇー悔しいよ」
「高尾君は頑張ったよ...
テツヤがその上をいっただけ。
それにあれは気づけなかった私の落ち度だよ。」
声を詰まらせながら話す高尾。そんな彼に申し訳なさそうに美桜は返す。
黒子がやったのは逆ミスディレクション。普段は他に意識を逸らせ自分の影を更に薄くする黒子。だが今回コート全体を見渡せるホークアイを持つ高尾にはそれは通じない。そのため黒子はそれを逆さに取ったのだ。わざと彼にたくさんスティールをさせた。自分自身に意識が向くようにするために。その結果高尾の視野は狭くなってしまったのだ。
もっと注意深く考えればわかることなのに...
美桜はあの時のカラクリを述べ謝ろうとする。が、高尾は自分の落ち度だと大きく首を振った。
「..ッ...勝ちたかった..
勝って先輩達と皆でIH行きたかった..
美桜ちゃんを連れていきたかった...」
身体を震わせて嗚咽を漏らす高尾。そんな彼がいつもより数倍も小さく美桜は見えた。美桜は思わずそんな彼を腕の中に閉じ込め幼子を落ち着かせるように背中をさするのだった。
「これで人の目気にしなくて大丈夫だよ。
落ち着くまでこのままでいるからさ...」
フワリと全身を包む彼女の甘い匂い。ギグッと一瞬身体を硬直された高尾だが、安心しきったのかその身体を脱力させた。
「美桜ちゃん..かっこよすぎかよ」
高尾は自嘲気味な笑うと美桜に身を預けた。そして声が枯れるくらい泣き叫ぶ。その彼が流した涙は美桜の肩口を濡らすのだった。
「ごめん...もう大丈夫。ありがとな」
顔をあげた高尾はスッキリとした表情をしており、それを確認した美桜はホッとしたように目尻を下げた。
「良かった。
高尾君は落ち込んでる顔は似合わないよ」
「え...そうかな?」
美桜の率直な言葉に驚いた高尾は、ほんのりと顔を赤く染める。堪らず高尾は照れくさそうに目を逸らして頭をかいた。
「まぁ、次は勝つから...」
フゥーッと深呼吸をした高尾は瞼を開ける。瞼から覗かせたダークブルーの瞳は真っ直ぐに美桜に向けられた。
「勝ってウインターカップいって先輩達と真ちゃんと頂点に立つから...」
真剣な表情の高尾の醸すオーラに美桜は呑み込まれ、目を逸らすことが出来なかった。
「だからさ…楽しみに待っててくれよな!」
高尾は表情を崩し、満面の笑みで笑いかけた。
そんな高尾の言動・表情に、美桜は心が掴まれっぱなしなのを感じた。
普段は無邪気な青年が時折覗かす勝利を欲する獰猛な瞳。
たまに見せる凛々しく真剣な表情。
美桜は高鳴る胸の鼓動を覚え、思わず胸に手を添えた。
もし可能ならば...
一瞬過る光景。だが美桜を思い留まらせるかのように声が聞こえてくる。
やっぱり美桜とバスケするのが、
一番気分がいいな!
その声と共に美桜の脳裏に浮かぶのは、楽しそうにバスケをする一人の青年の姿だった。
「さぁさっさとメソメソしている真ちゃんとこ行こうぜ!」
固まって動かない美桜の手を掴み、高尾は歩き出す。
あの時もそして今も
彼は私の心を掴んで離してくれない...
でも私は...
美桜は内なる想いに戸惑いを覚える。だが、自分は彼を忘れることができない。
勘違いだ。美桜は言い聞かせながら、寂しげに目を伏せた。
「神田、後は頼んだぞ」
試合を終え控室に戻った中谷と大坪達は、見当たらない1年コンビを美桜に任せ、早々に帰ってしまう。
何処行ったのよ、あの二人は…
降り注ぐ雨音を聞きながら美桜は、薄暗い通路を歩いていた。
あっ、彼処…
視界の端に映り込んだ影に美桜は気づく。
「高尾君...」
彼は誰にも見つからなそうな隅で蹲っていた。美桜は気配を消し彼に近づく。そして顔色を伺おうとそっと美桜は話しかけた。
「あ...美桜ちゃんか...
いいのか?真ちゃんとこいかなくて...」
普段ならすぐに気づく高尾は声を掛けられるまで美桜の存在を把握できなかった。高尾は目の前に突如現れた美桜に驚きながらも尋ねた。だがそれに美桜は静かに首を横に振った。
「彼奴は放っておいていいよ...
このくらいの傷が丁度いいから。」
この敗戦をきっかけに少しでも彼の考えが変わればと美桜は思っていたのだ。仮に緑間のとこに行ったとしても鬱陶しいと拒まれるだけだ。それよりも美桜は目の前の彼が心配だった。
「それよりも今の高尾君を放っておけないよ」
「はは...そんなに俺情けない顔してるか?」
冗談交じりに言おうとした高尾の声はいつもより元気がなかった。
「...ッ...オレ...」
気遣うようにさりげ無く寄り添ってくれる美桜の優しさに高尾は我慢しきれず感情が込み上げる。そして、今まで取り繕っていた仮面が剥がれ落ちる。その仮面の裏には悔しげな表情が隠れていた。
「最後のクォーター...
アイツを止められなかった..
すげぇー悔しいよ」
「高尾君は頑張ったよ...
テツヤがその上をいっただけ。
それにあれは気づけなかった私の落ち度だよ。」
声を詰まらせながら話す高尾。そんな彼に申し訳なさそうに美桜は返す。
黒子がやったのは逆ミスディレクション。普段は他に意識を逸らせ自分の影を更に薄くする黒子。だが今回コート全体を見渡せるホークアイを持つ高尾にはそれは通じない。そのため黒子はそれを逆さに取ったのだ。わざと彼にたくさんスティールをさせた。自分自身に意識が向くようにするために。その結果高尾の視野は狭くなってしまったのだ。
もっと注意深く考えればわかることなのに...
美桜はあの時のカラクリを述べ謝ろうとする。が、高尾は自分の落ち度だと大きく首を振った。
「..ッ...勝ちたかった..
勝って先輩達と皆でIH行きたかった..
美桜ちゃんを連れていきたかった...」
身体を震わせて嗚咽を漏らす高尾。そんな彼がいつもより数倍も小さく美桜は見えた。美桜は思わずそんな彼を腕の中に閉じ込め幼子を落ち着かせるように背中をさするのだった。
「これで人の目気にしなくて大丈夫だよ。
落ち着くまでこのままでいるからさ...」
フワリと全身を包む彼女の甘い匂い。ギグッと一瞬身体を硬直された高尾だが、安心しきったのかその身体を脱力させた。
「美桜ちゃん..かっこよすぎかよ」
高尾は自嘲気味な笑うと美桜に身を預けた。そして声が枯れるくらい泣き叫ぶ。その彼が流した涙は美桜の肩口を濡らすのだった。
「ごめん...もう大丈夫。ありがとな」
顔をあげた高尾はスッキリとした表情をしており、それを確認した美桜はホッとしたように目尻を下げた。
「良かった。
高尾君は落ち込んでる顔は似合わないよ」
「え...そうかな?」
美桜の率直な言葉に驚いた高尾は、ほんのりと顔を赤く染める。堪らず高尾は照れくさそうに目を逸らして頭をかいた。
「まぁ、次は勝つから...」
フゥーッと深呼吸をした高尾は瞼を開ける。瞼から覗かせたダークブルーの瞳は真っ直ぐに美桜に向けられた。
「勝ってウインターカップいって先輩達と真ちゃんと頂点に立つから...」
真剣な表情の高尾の醸すオーラに美桜は呑み込まれ、目を逸らすことが出来なかった。
「だからさ…楽しみに待っててくれよな!」
高尾は表情を崩し、満面の笑みで笑いかけた。
そんな高尾の言動・表情に、美桜は心が掴まれっぱなしなのを感じた。
普段は無邪気な青年が時折覗かす勝利を欲する獰猛な瞳。
たまに見せる凛々しく真剣な表情。
美桜は高鳴る胸の鼓動を覚え、思わず胸に手を添えた。
もし可能ならば...
一瞬過る光景。だが美桜を思い留まらせるかのように声が聞こえてくる。
やっぱり美桜とバスケするのが、
一番気分がいいな!
その声と共に美桜の脳裏に浮かぶのは、楽しそうにバスケをする一人の青年の姿だった。
「さぁさっさとメソメソしている真ちゃんとこ行こうぜ!」
固まって動かない美桜の手を掴み、高尾は歩き出す。
あの時もそして今も
彼は私の心を掴んで離してくれない...
でも私は...
美桜は内なる想いに戸惑いを覚える。だが、自分は彼を忘れることができない。
勘違いだ。美桜は言い聞かせながら、寂しげに目を伏せた。