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バスケは1人でやるものじゃないでしょ!
1人で勝っても何の意味もないだろ!!
試合終了した時どんなに相手より点を取っていても…
嬉しくなければそれは勝利じゃない
1人よがりの火神のプレーに見かねた黒子の言葉が熱くなりすぎた火神の頭を冷やす。そして、火神を落ち着かせた黒子はある決意を持って、第4クォーター最後の10分、コートへと戻った。
「出てきたところで前半同様、いやそれ以上に見えてるぜ!」
出てきた黒子に策があると思われた。だが、先ほど以上に彼を見ることができ、高尾はひたすら黒子から離れず付き纏った。
黒子には回せない。状況を把握した日向は火神に送る。すかさず緑間がプレッシャーを掛ける。その火神の前には大坪が待ち構えていた。先程までは1人で突っ走っていた火神。だが、冷静になった今は周りが見えるようになっていた。火神はフリーの伊月を見つけ、パスを送り点に繋げた。
この状況に驚きながらもすかさず緑間は大坪に合図を送った。それを見た大坪は直ぐにリスタートを切る。
もう彼は体力の限界で跳べないはず...
シュート体勢の緑間を見て火神が飛び込む。だが、火神の体力はもう残っていない。緑間のシュートが止められるはずがない。そう美桜も含め、秀徳サイドは誰もがそう思っていた。
しかし、緑間の3Pシュートは火神に阻止された。
まだ跳べたのか
だが体力がほぼカラなのは確かだ
最後まで持たせる気がないのか?
驚く緑間の近くで、バウンドしたボールを日向が取った。そして彼からゴールしたにいた伊月へ。そのまま誠凛の点に繋がった。
51対61
誠凛は秀徳との差を10点に縮めた。
「随分と期待されてるみたいじゃん。
でも、なんかしようとしてもさせねぇーけどな...
逃げられねぇーぜ俺のホークアイからは!!」
あれ?近い...
しかし、高尾はとある違和感に陥る。なぜか黒子がすごく近くにいるように感じたのだ。そして、黒子以外の周囲が見えなくなっていた。
視界が急激に狭くなり虚無感に苛まれ、見えるのは目の前にいる黒子だけ...。体からは冷や汗がジワジワと吹き出てきた。そして、今のこの状況に混乱しているうちに突然黒子が視界から消えたのだ。
見失った!!うそだろ!?
この最悪な状況...このまま闇雲に駆け回っても意味はないはず...
落ち着け...
黒子を見失っても火神の位置はわかる。ボールと火神の間に飛び込めば...
一旦自分を落ち着かせ、高尾は冷静に状況を分析すると行動に移した。
よし、イケる。
高尾は無我夢中で飛び込む。しかしここで黒子は新たな技を繰り出すのだった。
「今度は取られません。これまでは来たパスの向きを変えるだけでしたが、このパスは加速する!!」
黒子はボールを手の平で勢い良く押し出したのだ。
イグナイトバス?!
この状況に美桜は目を丸くした。
火神君はもうこれがとれるの?!
イグナイトパスは、キセキの世代しか取ることができなかったボール。というのも、あのパスは異常なスピードで放たれる一種の力技なのだ。仮にパスルートを読まれても並大抵の選手には防がれないパス。だがその反面、受け取る側には尋常ではないほどの衝撃が伝わる。そのためそのパスを出せる相手は限られていたのだ。
凄まじいスピードで横を通り過ぎ、重たい音が鳴るのを高尾は耳にした。それは火神がボールをとった音だった。
ボールをぶん殴る!?
あの球を取る方も取る方だ。ホントまじかよ!!
「絶対にいかせん!!」
火神を阻止しようと緑間が立ち塞がる。だが、気迫に満ちた火神は緑間のガードを退けダンクシュートを入れたのだった。点が入り、ハッと美桜は慌てたようにボードを振り返った。
まさか危惧してた事が現実化してしまうとは...
78対76、ついに誠凛にワンゴール差に詰められてしまったのだ。
*****
「残り2分すべて緑間で行く。」
「でも、まだ火神は跳べます。」
「いや、それはないね。あれは誠凛の監督が三味線を引いてただけ...
向こうの10番は完全にガス欠だ。」
タイムアウトをとった中谷が鋭い一声を放つ。それに大坪が意義を唱えるがそれを中谷は一度横目で誠凛のベンチを確認し否定した。
「スリーでねじ伏せろ..いけ!」
そして力強い言葉で彼らを送り出した。
「美桜...」
ふと声をかけられ美桜は顔を上げる。するとそこには緑間がいた。
「なんて顔をしてる...
お前が不安そうな顔を出してどうするのだよ」
「...だって」
2点差のこの状況...逆転されてもおかしくない。もし万が一が起こったら、美桜は不安感に襲われていたのだった。そんな彼女の様子を見て、緑間は小さく息を吐き出す。
「...らしくないのだよ。お前が信じなくてどうする?
いいからさっさとその顔はやめろ」
「なに?私にはこんな顔似合わないって言いたいの!」
予期してなかった発言に美桜は思わず突っかかる。だが、当の本人は珍しく慈顔のこもった顔つきをしていた。
「やはりお前には浮かない顔は似合わないのだよ」
普段の調子が戻った美桜を確認した緑間はコートへ。思わぬ緑間の言葉に呆気に取られた美桜はその背を見送るしかできなかった。だが、彼の不器用なりの優しさがわかり、美桜に自然に笑みがこぼれた。
泣いても笑っても後2分...
どんな結果になろうと最後まで全力で信じないと...
彼のおかげで美桜の不安は吹き飛んだのだった。
攻撃を緑間一点に集中させた秀徳のペースは落ち、スコアが凍りついたようにあまり変動せず79対81の2点差のまま残り時間15秒を迎えていた。
「お前のことは認めている。だからこそ全力で止める!!」
3Pシュートを決められたら秀徳は逆転されてしまう。大坪は日向の前に立ち塞がった。
「これ以上借りはいんねぇーんすよ。さっきもやたら思いのこもったブロックもらいましたしね」
ぶつけたい思いがあるのはこっちの方だ
大坪を見据えていた日向は踵を返し後ろへ走る。それを追おうとした大坪を火神が阻んだ。
スクリーン...でも大坪先輩なら間に合うはず
大丈夫だと心に聞かせていた美桜。だが、日向の取った行動に美桜は唖然としてしまう。
まさか...あそこから打つの!?
日向はスリーゾーンで止まることなく、その範囲を遥かに超えセンター付近まで駆けたのだ。そこで日向はボールを貰うとシュートを放った。彼が放ったボールは綺麗な弾道をとり無残にもゴールを揺らすした。
ピー!!
点が入ったことを知らせる笛が鳴る。そして人一倍大きな歓声が鳴り響いた。残り時間僅か3秒。負けの2文字が美桜の頭の中を過ぎる。が、その文字はすぐに払拭された。
「まだ勝ってねぇーよ」
高尾の殺気立った低い声が響き渡る。彼の冷徹な一声は一気に歓声が湧き上がる場を凍りつかせ、美桜の心を揺さぶった。
いや、まだだ!私が信じなくてどうする!
残り3秒で決められるやつがまだいるじゃないか。
美桜は正気を取り戻すと、その彼へ視線を送る。それと同時に高尾から彼へとボールが送られた。
「なぜ俺が遠くから決めることにこだわるのか教えてやろう。」
それは緑間だった。
待っていたとボールを貰った緑間はシュート体勢に移る。
「3点だからというだけのはずが無いのだよ。バスケットにおいて僅差の接戦の中残り数秒での逆転劇は珍しくない。が、場合によっては苦し紛れのシュートでそれが起きる場合もある。そんな紛れも俺は許さない。だから必ずブザービータでとどめを刺す。
それが人事をつくすということだ!」
火神の目の前で緑間がシュートをしようとする。それを見ることしかできないのかと悔しげに火神は動かない足に力を入れると、最後の力を振り絞って超人的な跳躍を見せた。
大きな声を出し飛び上がる火神。だが、その目の前に緑間の姿はなかった。
「信じていたのだよ。
たとえ限界でもお前はそれを越えて跳ぶと」
誰も跳べないと思う中、緑間は火神を信じたのだ。だからこそフェイクを仕掛けた。シュートを阻止されないように。
だがもう1人、火神が跳ぶのを信じた者がいた。
「僕は信じてました。火神君なら跳べると、
そしてそれを信じた緑間君がもう一度ボールを下げると」
それは火神の相棒である黒子だった。
緑間の手にあったボールは小さなパウンド音を響かせる。シュート体勢の緑間から黒子はボールをスティールしたのだ。
そして残り時間はゼロとなり、無情にも終了のホイッスルが鳴り響く。
その音が美桜には遥か遠くから鳴っているように感じて仕方がなかった。