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「こうなると思ったんだわ。
ま!真ちゃんふうに言うなら
『運命なのだよ...俺とお前がやりあうのは』」
木村と交代し、黒子のマークについた高尾は開口一番調子よく目の前の彼に話しかけた。だが、目の前の黒子は表情を変えることはなかった。そんな彼に高尾は小さく息を吐き出した。
「しかしまさかこんな早く対決できるとはねぇ」
今日の鍵は高尾君だからね!
頼んだよ!!
試合直前に美桜に言われた言葉が脳裏に過ぎる。正直言って頼られていることは嬉しい。だがそれ以上に感じるのは彼に対する敵対心だ。
「初めてあったときから思ってたんだよ、俺とお前は同じ人種だって。
同じ1年だし?
パスをさばくのが生業の選手としてさ?
だからね...
ぶっちゃけなんつーの...
あれ..
同族嫌悪。」
人当たり良さそうな笑みを崩し、高尾はダークブルーの瞳を細め目の前の彼を睨んだ。
「お前には負けたくないんだわ、なんか」
共通点の多い黒子には負けらんねぇ
嬉しそうに話す美桜、表情にはでないが真剣味を帯びた顔を浮かべる緑間。あの二人が認める黒子に、秘かに高尾は闘争心を燃やしていた。
バシッ
黒子に送られたはずのボールを高尾が手を伸ばす。パスを阻止した高尾は何食わぬ顔で木村へボールを回す。呆気にとられる誠凛を置き去りにして、宮地が点を入れる。
「ってか今までこんな感覚になったことねぇーんだけどな。
お前が多分、どっか他と違うからじゃねぇ?」
「すみません。そういう事言われたの初めてで...
困ります。」
「え!?」
再び黒子に向き直った高尾が彼を見据える。が黒子自身も初体験のことで少し困惑していた。その黒子の率直な気持ちに高尾は思わず目を点にして拍子抜けしてしまう。
「でも、僕にも似た感覚はちょっとあります」
「いいねぇーやる気満々じゃんッ...なぁ!?」
黒子の言葉に口角をあげる高尾。だが、いつの間にか視界から黒子が消えていたのであった。たまらず高尾は声を上げた。
「ちょと待てー!?
いきなり姿くらますなんてどんだけ礼儀知らずだ、おい!!」
苛立ちを露わにする高尾。だが、予想範疇内の彼は動揺などしていなかった。
「…なぁーんてな」
ニヤリとほくそ笑み高尾には黒子の位置は筒抜け。フリーの日向へと送ろうとした黒子のパスを高尾はカットした。そのことに流石の黒子も驚き目を見開いていた。
滅多にない黒子のミスに驚く誠凛サイド。だが、先ほどまでマッチアップしていた伊月は薄々と感じていた違和感の正体に気づいていた。高尾が自分と同じイーグルアイ…いや、視野がそれ以上に広いホークアイを持っていることに。
黒子のミスディレクションは己の影の薄さを利用し、自身を見ようとする視線を逸らすもの。だが、全体を見ることができるホークアイは黒子だけを見ているわけではないのだ。だから視線を逸らそうとするミスディレクションは高尾には効かない。
この事実に気づいた誠凛サイドはタイムアウトをとった。
「あーらら、誠凛困っちゃったね〜」
高尾はドリンクで水分を取りつつ横目で誠凛側を見る。その余裕そうな彼を、美桜と緑間は釘を刺す。
「高尾君、テツヤを侮んないほうがいいよ」
「気を抜くな。黒子はこれで終わるようなやつじゃない」
帝光時代の黒子を知っている美桜と緑間はこのまま彼が終わるとは到底思えなかったのだ。
「大丈夫だって!!影の薄さとったらただの雑魚だろ?」
そう思うのは当然だ。影が薄いのを除いたら身体能力が皆無なのだから。
「俺がなぜあいつのことを気に食わんかわかるか?
それは黒子のことを認めているからだ。」
問いかけるように緑間は言葉を続ける。
「身体能力で優れてる所はなにもない。一人では何もできない。にも関わらず、帝光で俺たちと同じユニホームを着てチームを勝利へと導いた。あいつの強さは俺たちと全く違う。異質の強さなのだよ。だから気に食わん。俺の認めた男が力を活かしきれないチームで望んで埋もれようとしてるのだからな」
真太郎の言うとおりだ
テツヤには誰にも持っていない才能がある
珍しく率直に言葉にする緑間を横目に、美桜は遠い目をしていた。
*****
「よぉ!なにか対策考えてきた?」
「…まだ考え中です」
「なにそれ?!」
負けず嫌いである黒子。やられっぱなしは嫌だとは思うが、攻略方法はまだ考え中だった。
黒子が秀徳サイドの攻撃をスティール。だが、すかさず高尾がスティール返し。まだ黒子は糸口を見いだせずにいた。
「何をボーとしているのだよ!こちらは本気なのだ...
もっと必死に守れ!」
苛立ちのまま語気を強めた緑間はボールを受け取ると、マッチアップする火神を睨む。緑間がいるのはセンターライン。だが彼はシュートの体勢に移っていた。
「俺のシュート範囲はそんなに手前ではないのだよ。」
3Pシュートを警戒していた火神は愕然とする。何故なら緑間はそのままシュートを放ったのだ。周囲が驚いている中、シュートはきれいな弧を描き決まった。一方で緑間はボールの滞空時間を使ってゴール下まで戻っていた。
「ここまで戻れば、黒子のパスで後ろを取るのは不可能なのだよ...
だが、そもそも関係ないのだよ。
オレのシュートは3点、
お前達のカウンターは2点
何もしなかったとしても差は開いていく」
持論を展開する緑間、それに対し火神は口角を上げた。
「おもしれーものもってるじゃないか!だが!!」
なんと緑間の目の前で火神はシュート体勢に入ったのだ。
え?アウトサイドから打てるの!?
火神の3Pを想定していなかった秀徳サイドは驚きを見せる。そんな中、火神は放ったシュートを目で追うことなくゴール下へ駆け出した。
そのまま入ればそれでいいし
外したら…そのままぶちこむ!!
ジャンプした火神はリングに跳ね返されたボールをリング内へ叩き込んだのだ。
「なにあれ?無茶苦茶すぎる…」
火神はアリウープを1人でやってみせたのだ。
どうだ、美桜!!
1人でアリウープできたぜ!!
火神のプレーは本当に驚かされてばかりだ。火神に重なるように懐かしい残像が浮かぶ。美桜はその誰も見えない残像を寂し気にジッと見ていた。
「君らなりのいいシュートなのだよ。だが…」
安堵する誠凛に対し、緑間は自陣のゴールしたでシュート体勢を取っていた。
「そんな手前ではないと言ったはずなのだよ。
俺のシュートレンジはコート全てだ。」
愕然とする誠凛の目の前で緑間は3Pシュートを決めたのだった。
以前の緑間のシュート範囲はハーフコートまでだった。だが、3Pシュートにこだわりを持ち続けた緑間のシュート範囲は全コートまでに広がっていた。つまり、 彼はフリーの限り、どこからでもシュートを決めることができるのだ。
緑間のシュートで観客席が湧く中、第一クウォーター終了を知らせる合図が無情にも鳴り響いたのだった。