インターハイ予選
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先制ボールは誠凛に渡る。が、既に各自秀徳側はマークについていた。
「!?」
火神が弾いたボールを受け取った伊月は思わず踏み込んだ足を止め、辺りを見渡した。
さすがはぇ〜
まずは速攻で一本とるつもりだったんだけど…
そんな彼を見て、美桜は密かに笑みを浮かべていた。
甘いね…
秀徳は、先制点を簡単に易易と許すようなやわなチームではない。誠凛サイドが先制点を取ろうと速攻を仕掛けてくるのは容易に想定し、それ相応の対処が可能だからだ。
こっちだって勝つためにハードな練習積んできてるんだから…
万が一、もしこの状況下を出し抜くとしたら…
誠凛が次にとる策。それは黒子と火神の連携プレーだろう。そう読み取った美桜の予想は的中する。
木村がマークしてた黒子が動く。
影の薄さを利用してマークを外れた黒子はパスを受けられるとこに走りこんだ。すかさず伊月から送られてきたボールを黒子はゴールの上付近に弾いた。その宙に浮いたボールを受け取ったのはもちろん火神君。そしてアリュープに持ち込んでボールを叩き込もうとする。
まぁ、それは決まんないね...
だってこっちには真太郎がいる
ここまで読んでいた美桜は驚くことなくジッと行方を見つめる。そんな彼女の耳に聞こえてくるのはもちろん、ボールがリングをくぐる音ではなかった。
バシッ!!
ボールが弾かれる音が響いた。
「さっすが真ちゃん!」
待っていたと、弾かれたボールを受け取った高尾はゴールリングへ難なくボールを運んだ。
「心外なのだよ...その程度で出しついたつもりか?」
対して、点を阻止して着地した緑間は決めることができず悔しげに顔を歪ます火神を睨みつけた。
点が決まると思っていた誠凛は呆気にとられる。その隙に高尾は一気に切り込むと持っていたボールを背面パスで木村先輩へ渡す。木村はマークがついてない状態でレイアップする。が、阻止しようとした日向の指先にボールが当たりリングに弾かれてしまった。
それ以降、両者一歩も譲らず無得点のまま2分経とうとしていた。
バスケは1クォーター10分の計4クォーター。つまり、3回流れが変わるポイントがあるのだが、一度流れを持っていかれるとそれを戻すのはなかなか困難なのだ。
第1クォーター、均衡状態のまま残り時間8分。
先に先制点をとったほうが流れを勝ち取り制する!!
この場にいる選手・ベンチ・観衆、誰もがそう思っていた。そんな中、均衡が崩れかけるチャンスが訪れた。
「速攻だ!!」
誠凛側が外したリバウンドを大坪が取る。それを一目散に気づいた高尾が伊月を振り切り走り出した。コートを瞬時に見渡した大坪がすぐさま高尾へとボールを投げる。受け取った高尾はドライブで切り込もうとするが、日向がプレッシャーを掛けたことで足止めを喰らう。その高尾の何メートルか背後に緑間が立つ。緑間の存在を確認した高尾は、彼の位置を目で直接確認することなく背後へパスを送った。
バウンドしたボールが勢いよくはねあがる。はねたボールはブレることなく緑間の手に収まった。ボールを受け取った緑間はシュート体勢を取ると綺麗な弾道を放ち3シュートを決めたのだった。
よし、先制点!!これで均衡は崩せた!!
点が決まったと緑間は最後までボールの行方を見ることなく悠然とした態度で背を向け、美桜は内心ホッとし胸を撫で下ろしていた。が、視界の端で動いた1人に美桜は妙な胸騒ぎを覚えていた。
一体何を企んでいるの、テツヤ??
黒子が火神に一声掛け走り出していたのだ。
「走っててください」
呆然と高く上がったボールを見上げていた火神は黒子の一声にハッとすると、黒子が駆け出した向きと反対方向へダッシュしたのだ。
「おー!!きた!!3!!
なんつうシュートだ!?
先制点は秀徳だ!!」
観客席がようやく入った先制点に盛り上がる。その中、1人美桜だけは不安そうに胸に手を置いていた。
嫌な予感が当たらないといいんだけど…
そう願う美桜。だがその願いは見事に崩された。
黒子は落ちてきたボールを拾ろうとすぐボールを持ち勢いよく身体を回転させ弾丸ボールを放った。遠心力によってスピードが増したボールはコートを突っ切り戻ろうとする緑間達の横を凄まじい速度ですり抜けた。そのまま勢いが落ちぬまま反対のコート端へ行ったボールは黒子の一言で戻っていた火神の手に渡ったのだった。
「おー!?一瞬でやり返したぞ!!すげーー」
フリーな火神は易易とダンクシュートを決めた。均衡を崩したはずの秀徳が瞬時に点を返されてしまった。この状況に観覧席側にどよめきがはしった。
なにあれ、あのボール!?
あんなカウンター方法があるの!!
もちろん美桜自身も想定できず愕然としていた。
「黒子...」
「すみません。そう簡単に第一クォーターを取られると...
困ります。」
苛立ちを抱きつつ緑間は視線の先の元凶である黒子を睨みつけた。
「…あんなパスもあるのかよ」
衝撃的なレーザービームのような弾丸パスを目の当たりにした高尾は黒子を密かに伺い見る。
お陰で流れが戻されたじゃねーか…
無意識で高尾はベンチをチラ見する。すると表情をあからさまに崩す美桜が見えた。
美桜ちゃんですら想定外のパスか
彼女の予想範囲外ならば致し方ない。高尾は気持ちを切り替え、前へ走り出した。
「また打つのか!?高段スリー!!」
宮地からボールを受け取った緑間が、シュート体勢に入る。が、緑間の視界にゴール前に走り込む黒子の姿が目に止まった。緑間の脳裏に先程の奇襲が過ぎる。
なんで??
シュートモーションをフェイクとして用い緑間はボールを戻したのだ。いつもならシュートを自分で決める緑間の珍しいパスに、美桜は不思議げに目を向ける。
なるほど...そういうことか
「うーん...」
美桜が気づいたと同時に、中谷が感嘆の声を漏らす。
「ヘェ~
見失うほど影が薄いだけでもびっくりなのに、あんなパスもあるのか彼...あんな緑間封じがあるんだねー。
うーん...どうしようかな?」
緑間のシュートは、ボールが長く滞空する時間が長いためディフェンスに戻り速攻を防ぐこともできる。だが、その滞空時間の間に火神も走って戻れる。黒子の回転式長距離パスはコートの端から端まで速攻のカウンターができる。つまり、シュートをすると鋭いカウンター返しが来るのだ。それを警戒し緑間はシュートを打てない状況下にあった。
さすがテツヤだね
でもこっちには奥の手がある
感心しながらも美桜は黒子封じに取り掛かる。
「監督、木村先輩と高尾君をマークチェンジしましょう」
「うーん...そうしようか。」
考え込んでいた中谷は美桜の意見に賛同すると指示を飛ばした。
「おい、高尾、木村、マークチェンジ。
高尾…11番につけ」
なんたってこっちにはテツヤの天敵がいるんだから
この指示を聞いた誠凛側にはどよめきが走る。見失うほど影が薄い黒子に敢えてのマーク。本来なら、誰がマークをしても見失ってしまうだけと考えるのが普通だ。だが、黒子のマークをする高尾は特殊な目を持っている。空間認知能力に長けているホークアイを。
本番はこっからだよ、テツヤ
彼に対してどう対応する?
美桜は愉しげに目を細めたのだった。