インターハイ予選
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おーい二人共!!」
順当に勝ち上がっていったある日の放課後。たまたま見つけた高尾と緑間の姿に声を上げ、美桜は彼らを呼び止めた。
「何なのだよ?」
「どうしたんだ?」
呼ばれた高尾と緑間は振り向くと美桜に歩み寄ってきた。そんな彼らに美桜は得意げに手に持っているものをちらつかせた。
「DVD??」
「そうそう!
北の王者、正邦高校の試合が入ってるんだ...見るでしょ?」
美桜が持っていたものの正体は、正邦高校のデータが入ったDVD。これから部屋を借りて見ようと思った矢先に彼らに会ったのだ。当然巻き込まないという選択肢はなかった。
「お!?見る見る!」
「興味がないのだよ」
うん、予想通り
美桜はバッサリと言い捨てた緑間を呆れた眼差しで見上げた。その視線に緑間はウッと表情を強張らせる。その隣りでは高尾が肘で突く。
「黒子や火神がいないからってそういうこと言うなって」
「今日オフだし...この後暇でしょ?」
美桜は緑間の顔を覗き込む。遅れて見習うように高尾も覗き込んだ。そんな二人の眼差しに緑間は黙り込む。
沈黙は肯定。緑間がこの後予定がないことを察した二人は顔を見合わせるとニコッリと満面の笑みを浮かべた。
「決まりだな!」
「よし行こう!」
「おいッ!!」
意思疎通した二人は彼の行く手を遮るように緑間を挟んだ。ガシッと両肩を固められた緑間は二人によって強制的に連れて行かれるのだった。
「なるほどな、確かに...王者と名乗るだけはある。」
部室に入るとさすがの緑間も抵抗を諦めると腕を組み椅子にドカッと座る。その近くに高尾は椅子を持ってくると背もたれを前にし椅子に座り、その傍に同様に美桜も椅子を持ってきた。
「特にディフェンスは硬いな。だが、この動きは何なのだよ」
黙ってじっと試合を見ていた緑間が口を開いた。そのふと感じた緑間の違和感に同意だと二人は頷いた。
「忘れちまったけど..何かこの学校の練習は特別なんだと。どうやってるかわかんないけど、機動力がかなり高い。
ディフェンスは東京最強だとさ...」
「リズムが違う。
うーん...この動きなんかに似てるんだけど...思い出せないんだよね」
違和感を覚えながら試合を見ていく一同。その時画面にある人物が映り込み、美桜は思わず身を前のめりに。
どこかで…
丸刈りにされた頭。
異様にしつこいディフェンス。
そして何よりも目にとまるのは愉しそうに笑う彼の横顔。
「あッ!!」
「どうしたんだ??」
ジッと見ていた美桜は唐突に声を上げる。その声に緑間は不思議げに美桜を横目に見る。
「このものすごくしつこくディフェンスをする彼...」
美桜はリモコンを手に取ると、逆再生して動画を巻き戻すとある場面で停止ボタンを押した。
「彼、見覚えない?」
投げかけられたことで緑間は彼を注視する。最初は真顔だった緑間。だが、徐々にその表情は崩れていった。
「見覚えがあるのだよ。確か中学時代対戦したことがある...」
珍しく緑間はこの選手のことを覚えていた。
「確か涼太がマークについてたんだけどあまりのディフェンスで涼太が抜かせかったんだよね。
だからよく覚えてるよ。名前は確か、津川智紀だったかな。」
美桜は記憶の限りのことを思い起こす。
あれは確か…
涼太がレギュラー入りしてそんなに日が経っていない頃…
たまたま女バスがオフだった美桜は面白半分、男バスの練習試合についていっていたのだ。
「24秒、オーバータイム」
響き渡る審判の声に、足を止めた黄瀬はキョトンとする。
「え?あれ?」
「黄瀬!!持ちすぎだ!バカ!」
「きせちーん。勘弁してよ。」
「だからお前はだめなのだよ」
「黄瀬くん...ちゃんとボール回してください」
そんな黄瀬に、一同は野次を飛ばした。
「え?黒子っちも怒ってる」
「黄瀬だけだぞ。ノルマの20点とってないのわ」
「すんませんっす!でも、黒子っちだって」
「黒子は別だろ?」
正論を突きつけられた黄瀬はムッとすると相手を睨みつけた。
「名前は?あんたのせいで俺だけ今日焼き入れられるっすよ。もう...」
「津川智紀だ。そっか...焼き入れられるのか...楽しいな。
人が嫌がる顔はホントに楽しいー」
「何この人...誰かマーク変わってほしいんすけど」
あからさまにションボリと落ち込む黄瀬。そんな彼を見て、津川は愉しげに口角をあげる。ニヤリと笑う津川に黄瀬は一気に疲れ、げんなりとした表情で助けを求めるように黒子たちを見渡すのだった。
その時はまだ黄瀬はバスケを始めたばっかりだった。だが、それでもマークについた津川は凄く愉しげにディフェンスにつき黄瀬を苦しめていたのであった。
「正直...俺もあまりやりたくないな...彼と」
「けど相手するとしたら緑間だぞ...
ディフェンスだけなら全国クラス...ってかお前も止められかねねぇ」
思い出した緑間は珍しく苦虫を浮かべていた。
「終わったな...誠凛じゃこの鉄壁は崩せねえよ。
残念だけど決勝はやっぱこっちだな…ちゃんと考えとけよ?」
「わかっているのだよ」
試合を見終えた高尾と緑間は正邦高校が勝ち進んでくると考えた。
確かに普通は正邦が勝つと考えるのが妥当だろう...
だが美桜は二人と違う考えだった。
今までの試合を見てきたからだろうか?
目を伏せた美桜の脳裏に浮かびあがる光景。
それはコート上に整列する誠凛高校の姿だった。