インターハイ予選前
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新緑が空に映えて見え、ジリジリと太陽の紫外線が突き刺さるこの季節。秀徳の練習はいつも以上に熱を増しハードになっていっていた。というのもスタメンが発表される時期なのだ。皆必死になって最後のアピールをしていた。だが、率先力として呼ばれたキセキの世代である緑間は確実。そして、3年主力メンバーの大坪・宮地・木村はほぼ確実だった。
その中で残るポジションはポイントガード。
近くでずっと彼の練習を見ていたからだろう。贔屓してはいけないことはわかっているが、美桜は思わず彼が選ばれてほしいと願わずにはいられなかった。
そんなある日、中谷が部員一同を集めて口を開く。
「スタメンを発表する。呼ばれたらユニホーム取りに来い。」
その一声に一同は背筋を伸ばす。固唾を呑んで、誰しもが自分の名前を呼ばれるのを待つ中、中谷はスタメンの名を発表した。
CF大坪泰介、背番号4
PF木村信介、背番号5
SF宮地清志、背番号8
SG緑間真太郎、背番号6
そしてPGは
高尾和成、背番号10
以上だ。
心の中で手を組んで祈っていた美桜は、パァッと目を輝かすと、高尾が整列している辺りを振り返る。が、高尾自身信じられないのか緑間等がユニフォームを取りに行く中、突っ立ったままだった。
え?空耳じゃないよな?
俺、呼ばれた??
高尾は己の耳を疑う。
今身を置いているのは、強豪校である秀徳高校バスケットボール部だ。確かにスタメンの獲得のために我武者羅に練習してきたつもりだ。それでも、自分が2年、3年を差し押さえてスタメンを得ることができるとは思っていなかったのだ。
「おい、高尾!」
呼ばれたと気づいた高尾はハッとする。その高尾の視界の先では、中谷が気だるそうにユニフォームを一着手に持っていた。
「高尾、いらないのか?」
唯一取りに来ない高尾に対し、痺れを切らした中谷はサッサととりにこいと催促する。
「...あ!すんません!!いります!」
ホントに選ばれたんだ…
夢見心地だった高尾は、慌てて顔を引き締めると急いで前へ。そして、高尾の手に、数字の10が刻まれたオレンジ色を基調としたユニフォームが手渡された。
手渡されたユニフォームを高尾は大事そうに抱える。
そんな彼の姿を見て美桜は目を細めた。
良かった、選ばれて
単純に美桜は嬉しかったのだ。高尾がスタメンを獲得できたことに。だから、先に起こることを完全に見落としていた。1年生がスタメンを取るということがどうなるのかを経験したことがあるにも関わらず。
「おめでと!高尾君」
解散した後、誰よりも先に美桜が近寄ってきた。よほど嬉しいのか、表情が明るい美桜に対して、高尾はほんのりと頬を赤らめた。
「…ッ!!ありがとな!」
高尾は思わず視線をずらした。
その表情は反則だろ?!
彼女の表情に高尾は不覚にもドキリとしてしまったのだ。そのため照れ臭く感じた高尾は彼女から視線を外したのだ。
「高尾君、顔赤くない?ヘイキ??」
「だっ…大丈夫!!」
不思議に思った美桜は覗き込もうとする。だが、今の顔を見られたくない高尾はそれを阻止するように別の方向を向く。そんな攻防を繰り広げる二人を緑間は呆れかえった表情で見下ろす。
「真ちゃん!!俺選ばれたぜ!」
緑間の気配を感じた高尾は表情を一変。興奮気味に高尾は緑間にユニフォームを広げて見せた。そんな彼に対し、緑間は鼻を鳴らし眼鏡を押し上げる。
「何を言ってるんだ?当たり前に決まってるだろ?
人事を尽くしているお前が選ばれないわけがないのだよ」
少なからず緑間は高尾の日々の努力を認めていた。だからこそ、この結果は当然のことだと思っていたのだ。
驚いた…
出会ってまだ日が経ってないのに…
そう言い切った緑間に高尾だけでなく美桜も目を丸くした。一見すると顔色が変わっていないように見える緑間。だが、よくよく見てみると仏頂面な緑間の表情は少し柔らかかったのだ。
「高尾ちゃん嬉しー!!」
「うるさい!黙れ!!」
「あはは!!」
そんな緑間に高尾は勢いよく抱きつく。対して緑間はべったりとくっついてきた高尾が鬱陶しく、サッサと離れろと表情を一変させ彼を引きはがしにかかる。そのやり取りに、美桜は微笑まし気に見つめながら笑い声を上げた。
そんな彼ら3人に密かに妬ましい視線が向けられていることに誰も気づくことはなかった。
「高尾。ちょっといいか??」
数日後、教室に姿を現した先輩たちは高尾を呼びつける。
「あっ先輩!いいっすよ」
そんな彼らに違和感を覚えることなく高尾は彼らに付いていった。その先は人目に付かない体育館の一角だった。
「…先輩??」
「なぁ?高尾…」
「なんすか?」
「お前最近調子乗りすぎじゃねーか??」
流石に不審に思った高尾が立ち止まる。それを見計らうように、彼らは振り返る。振り向いた彼らは間髪入れずに高尾の腹めがけて拳を振りかざした。
グッ…ガハッ!!
もちろん身構えていなかった高尾は呻き声をあげ、地面に蹲った。そんな高尾を彼らは囲む。
「な…なんで…」
ダークブルーの瞳を高尾は辛うじて開ける。薄っすらと開けた瞳に映るのは厭らしいほど悪い顔をする先輩だった。
「なんでって…決まってるだろ?」
「腹いせだよ腹いせ!!」
ガッ!!
囲んだ彼らは蹲る高尾を気が済むまま蹴り殴り続けた。
ハァッ…ハァッ…
「こんなことしてッ…平気なんすか?
バレたら退部どころじゃすまないですよ?」
痛む肺で呼吸をしながら高尾は鋭い目線を彼らに向ける。だが、それで暴力の手を止めるような彼らではなかった。
「ハッ!
お前が言わなければバレねーさ!!」
「俺がこんな仕打ちを喰らって言わないとでも??」
「あぁ言わないさ!」
確信を持った満面の笑みを浮かべた彼らの内の1人が地面に這いつくばる高尾の前で屈む。そして虫の息である高尾の胸倉を掴むと、彼の耳元で呟くのだった。
緑間や神田に手を出されたくなかったら言う通りにするんだな
その言葉に高尾は目を瞬かせると目の色を変える。
「…ざけんな!!かんけーねぇーだろ!!」
「関係大ありだろ?
お前にとってアイツラは大切な奴らだろ?」
豹変した高尾に彼らはしてやったりの表情で彼を見下ろす。そんな彼らを、高尾はなすすべなくただ睨みつけることしかできなかった。
その中で残るポジションはポイントガード。
近くでずっと彼の練習を見ていたからだろう。贔屓してはいけないことはわかっているが、美桜は思わず彼が選ばれてほしいと願わずにはいられなかった。
そんなある日、中谷が部員一同を集めて口を開く。
「スタメンを発表する。呼ばれたらユニホーム取りに来い。」
その一声に一同は背筋を伸ばす。固唾を呑んで、誰しもが自分の名前を呼ばれるのを待つ中、中谷はスタメンの名を発表した。
CF大坪泰介、背番号4
PF木村信介、背番号5
SF宮地清志、背番号8
SG緑間真太郎、背番号6
そしてPGは
高尾和成、背番号10
以上だ。
心の中で手を組んで祈っていた美桜は、パァッと目を輝かすと、高尾が整列している辺りを振り返る。が、高尾自身信じられないのか緑間等がユニフォームを取りに行く中、突っ立ったままだった。
え?空耳じゃないよな?
俺、呼ばれた??
高尾は己の耳を疑う。
今身を置いているのは、強豪校である秀徳高校バスケットボール部だ。確かにスタメンの獲得のために我武者羅に練習してきたつもりだ。それでも、自分が2年、3年を差し押さえてスタメンを得ることができるとは思っていなかったのだ。
「おい、高尾!」
呼ばれたと気づいた高尾はハッとする。その高尾の視界の先では、中谷が気だるそうにユニフォームを一着手に持っていた。
「高尾、いらないのか?」
唯一取りに来ない高尾に対し、痺れを切らした中谷はサッサととりにこいと催促する。
「...あ!すんません!!いります!」
ホントに選ばれたんだ…
夢見心地だった高尾は、慌てて顔を引き締めると急いで前へ。そして、高尾の手に、数字の10が刻まれたオレンジ色を基調としたユニフォームが手渡された。
手渡されたユニフォームを高尾は大事そうに抱える。
そんな彼の姿を見て美桜は目を細めた。
良かった、選ばれて
単純に美桜は嬉しかったのだ。高尾がスタメンを獲得できたことに。だから、先に起こることを完全に見落としていた。1年生がスタメンを取るということがどうなるのかを経験したことがあるにも関わらず。
「おめでと!高尾君」
解散した後、誰よりも先に美桜が近寄ってきた。よほど嬉しいのか、表情が明るい美桜に対して、高尾はほんのりと頬を赤らめた。
「…ッ!!ありがとな!」
高尾は思わず視線をずらした。
その表情は反則だろ?!
彼女の表情に高尾は不覚にもドキリとしてしまったのだ。そのため照れ臭く感じた高尾は彼女から視線を外したのだ。
「高尾君、顔赤くない?ヘイキ??」
「だっ…大丈夫!!」
不思議に思った美桜は覗き込もうとする。だが、今の顔を見られたくない高尾はそれを阻止するように別の方向を向く。そんな攻防を繰り広げる二人を緑間は呆れかえった表情で見下ろす。
「真ちゃん!!俺選ばれたぜ!」
緑間の気配を感じた高尾は表情を一変。興奮気味に高尾は緑間にユニフォームを広げて見せた。そんな彼に対し、緑間は鼻を鳴らし眼鏡を押し上げる。
「何を言ってるんだ?当たり前に決まってるだろ?
人事を尽くしているお前が選ばれないわけがないのだよ」
少なからず緑間は高尾の日々の努力を認めていた。だからこそ、この結果は当然のことだと思っていたのだ。
驚いた…
出会ってまだ日が経ってないのに…
そう言い切った緑間に高尾だけでなく美桜も目を丸くした。一見すると顔色が変わっていないように見える緑間。だが、よくよく見てみると仏頂面な緑間の表情は少し柔らかかったのだ。
「高尾ちゃん嬉しー!!」
「うるさい!黙れ!!」
「あはは!!」
そんな緑間に高尾は勢いよく抱きつく。対して緑間はべったりとくっついてきた高尾が鬱陶しく、サッサと離れろと表情を一変させ彼を引きはがしにかかる。そのやり取りに、美桜は微笑まし気に見つめながら笑い声を上げた。
そんな彼ら3人に密かに妬ましい視線が向けられていることに誰も気づくことはなかった。
「高尾。ちょっといいか??」
数日後、教室に姿を現した先輩たちは高尾を呼びつける。
「あっ先輩!いいっすよ」
そんな彼らに違和感を覚えることなく高尾は彼らに付いていった。その先は人目に付かない体育館の一角だった。
「…先輩??」
「なぁ?高尾…」
「なんすか?」
「お前最近調子乗りすぎじゃねーか??」
流石に不審に思った高尾が立ち止まる。それを見計らうように、彼らは振り返る。振り向いた彼らは間髪入れずに高尾の腹めがけて拳を振りかざした。
グッ…ガハッ!!
もちろん身構えていなかった高尾は呻き声をあげ、地面に蹲った。そんな高尾を彼らは囲む。
「な…なんで…」
ダークブルーの瞳を高尾は辛うじて開ける。薄っすらと開けた瞳に映るのは厭らしいほど悪い顔をする先輩だった。
「なんでって…決まってるだろ?」
「腹いせだよ腹いせ!!」
ガッ!!
囲んだ彼らは蹲る高尾を気が済むまま蹴り殴り続けた。
ハァッ…ハァッ…
「こんなことしてッ…平気なんすか?
バレたら退部どころじゃすまないですよ?」
痛む肺で呼吸をしながら高尾は鋭い目線を彼らに向ける。だが、それで暴力の手を止めるような彼らではなかった。
「ハッ!
お前が言わなければバレねーさ!!」
「俺がこんな仕打ちを喰らって言わないとでも??」
「あぁ言わないさ!」
確信を持った満面の笑みを浮かべた彼らの内の1人が地面に這いつくばる高尾の前で屈む。そして虫の息である高尾の胸倉を掴むと、彼の耳元で呟くのだった。
緑間や神田に手を出されたくなかったら言う通りにするんだな
その言葉に高尾は目を瞬かせると目の色を変える。
「…ざけんな!!かんけーねぇーだろ!!」
「関係大ありだろ?
お前にとってアイツラは大切な奴らだろ?」
豹変した高尾に彼らはしてやったりの表情で彼を見下ろす。そんな彼らを、高尾はなすすべなくただ睨みつけることしかできなかった。