誠凛vs海常
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「はは...まぁそう言うっすよね...」
風が吹いたことで長くなったマリーゴールドの髪を靡かせた美桜は強い眼差しを黄瀬に向ける。そのエメラルドグリーン色の瞳は力強く輝いていた。
誰だって自分のチームメイトを勝たせたいに決まってるのだから彼女がそういうのは当然だ。
黄瀬はしっかりと見届けようと思った。
「まぁどうなるかはちゃんと見させてもらうっすよ」
「楽しみにしてて!!じゃあ、帰るよ」
黄瀬に向けて手を振った美桜は後ろ髪を引かれることもなく、そそくさとハァー疲れたと自転車のハンドルに前のめりになりげんなりしている高尾の所に駆け寄っていった。
「大丈夫??」
美桜は心配そうな顔で、高尾を覗き込んだ。たったそれだけなのに、高尾は舞い上がっていた。慌てて高尾は体勢を戻すと、ケラケラと笑いながら答える。
「大丈夫、大丈夫!たく、酷いんだぜ?緑間の野郎...」
高尾は身振り手振りを加えながら一部始終を美桜に説明した。その話を美桜は、時折相槌を打ち、時折笑みを浮かべながら、聞くのだった。
そして高尾から聞いた話は美桜が思っていた通りの結末。
「やっぱりね...想像してたまんまだったよ」
美桜は困り顔を浮かべていた。そんな彼女に高尾はそういえばと尋ねる。
「試合はどうだった?」
「…それがね!!」
高尾の投げかけに美桜は待ってましたとばかりに目を輝かせた。そんな美桜に高尾を嬉し気に眺めた。
そんな話に花を咲かせる彼らを見た黄瀬は不満げに緑間に尋ねた。
「誰っすか?アイツ?」
「チームメイトの高尾なのだよ」
「へぇー...チームメイトねぇ
みおっちと仲良さそうっすね...」
高尾に向けられる黄瀬の視線が鋭くなる。
正直羨ましいっす、彼が
黄瀬は秘かに焼きもちを焼いていたのだ。今高尾に向けられている表情を黄瀬は見たことがなかったのだ。それをたった一ヶ月弱で美桜が気を許せる存在に彼はなっていたのだ。
「じゃあな黄瀬」
黄瀬が物思いにふけっている間に緑間は踵を返す。そしてそのまま美桜達の元に歩いていくのだった。
「お前ら...帰るぞ」
「あれ?もういいの?」
「これ以上話すことなど何もないのだよ」
緑間はそう言いながら荷台に足を掛けた。
「お前こそいいのか、美桜?
黄瀬や黒子と話さなくて?」
そして緑間は返すように美桜に尋ねる。その投げかけに美桜は一瞬表情を曇らせるものの直ぐに晴れやかな笑みを向けた。
「うん!!今はいいや!」
今が時期ではない…
テツヤとも涼太とも敵チーム同士なのだ…
しっかりと気を引き締めなければ…
美桜はゆっくりと空を見上げた。
そんな彼女を横目に高尾は俺の定位置だといわんばかりに乗り込んだ緑間に声を上げる。
「おい!!まだジャンケンしてねぇーぞ!!」
「しなくてもお前が漕ぐ運命は変わらないのだよ」
「なに!?」
じゃんけん…ポン!!
もう何度目かわからないじゃんけん。もちろん軍配は緑間に上がった。フンッと鼻を鳴らす緑間に対して、高尾は悔し気に拳を握りしめていた。
なんで勝てねーんだよ!!
高尾にとって踏んだり蹴ったりの1日。緑間に待たされ、ジャンケンに勝てずひたすらチャリアカーを漕ぎ、渋滞に巻き込まれて置いてけぼりにされ、挙句の果てに肝心の試合を観ることすらできず、チャリアカーを漕いで帰宅だ。
だが、美桜の満足げな表情を見れただけで高尾は、ここまで漕いできたかいがあると思うのだった。