誠凛vs海常
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「よっしゃ~!!」
火神が声を上げる。その一声を皮切りに誠凛は喜びを露わにした。
「負け…たんすか」
生まれて初めて…
信じられないと黄瀬は茫然としていた。そんな彼の目には一粒の涙が浮かんでいた。そしてとめどなく涙が溢れてくる。その涙を黄瀬は拭った。するとそんな見かねた笠松さんが彼をどついた。
「メソメソしてんじゃねぇーよ..つか今まで負けたことがねぇーてほうが舐めてんだよ..しばくぞ!そのスッカスカの辞書にちゃんとリベンジって単語追加しとけ!!」
そんな光景を美桜が微笑ましげに見ていた。その背後には、ひっそりと長身の青年が立っていた。カエルの玩具を載せていない右手で彼はメガネを押し上げた。
「たく...何なのだよこの試合は
そう思わないか、美桜?」
そう彼女に投げかけるように青年…緑間真太郎は尋ねた。その聞き慣れた声に美桜は振り返った。だが、美桜の背後に立っていたのは緑間ただ一人。
いつからいたのだろう??
そう思いながら美桜は尋ねる。
「あれ来てたんだ?っーか...高尾君は?」
「渋滞に巻き込まれたのだよ...だから置いてきた」
美桜の問いに緑間は平然と答える。だが、その答えに美桜は首を捻る。
「どういうこと?」
「予想以上に道路が混んでてな...
間に合わなくなると思ったから置いてきたのだよ」
「どうせおは朝占い見てたりして出る時間遅かったんじゃないの?」
顔色何一つ変えない緑間に、美桜は核心をつく言葉を吐き捨てる。その言葉は的を射ていたらしく、緑間の表情は若干強張った。第三者側からしたら緑間は変わらず涼し気な表情に見えただろう。だが、相手は3年間苦楽を共にした美桜。些細な表情の変化を見逃すはずがなかった。
「少しは高尾君の事考えてあげなよ...」
図星か…
...少しはこっちの身も考えてほしいものだ
美桜は恨めしげに緑間を見上げるのだった。
一方その頃...
「たく!なんなんだよアイツは...」
渋滞している車の列にチャリアカーが紛れ込んでいた。そしてそれを漕いでいるのは制服を着た青年...高尾和成。周囲から奇異な視線を向けられている中、彼は先程まで荷台に悠々と乗っていた自分勝手な青年のことを思い起こし憤っていたのだった。
*****
「ねえ二人共...明日海常と誠凛の練習試合あるんだけど行かない??」
部活が終わりいつも通り自主練の時間帯、美桜はそう緑間と高尾を誘っていた。
海常って確かIHに毎年出場している強豪だったよな。
「青の精鋭」って呼ばれてるんだったっけ?
でも誠凛って...去年IH予選決勝リーグで先輩達が当たったとこだっけ?
高尾はどうして美桜がその2つの高校の練習試合を観に行こうとしているのだろうと不思議に思っていると、緑間が口を開いた。
「海常と誠凛...
確か海常は黄瀬が、誠凛には黒子が行ってたな」
「そうそう!!涼太とテツヤが対決するんだよ!それに...誠凛は地区予選で当たるから見ときたいしね」
ノルマのシュート練習の手を止めることなく緑間は確認するように尋ねる。それに対して美桜はいつになくテンションが高かった。そんな久々に見る彼女に、緑間は手を止めるとマジマジと美桜を見た。
「すっかりマネージャーの顔だな」
「そりゃあね...やるからには全力で取り組ませてもらいますよ...
で?どうするの?」
「行くのだよ。高尾...明日チャリアカー引いてこい」
「はぁ!?行くのかよ?」
美桜と緑間の会話に蚊帳の外だった高尾は目を丸くした。緑間のことだ、そんな容易く了承の返事をするとは思えなかったのだ。そんな驚く高尾に対し、緑間はシュート練習を再開しながら答えた。
「一応地区予選で当たるからな。偵察なのだよ。」
「へいへーい...わかったよ」
渋々といった返事を返すものの高尾は、この二人がわざわざ出向く試合を観ることに密かに心が踊っていた。
そして迎えた翌日...
高尾は待ちぼうけを喰らっていた。何故かというと、迎えに来させた当の本人が一向に出てこないのだ。
「おは朝占い見終わるまでは家を出ん!」
そう言い捨てると緑間は勢いよく玄関の扉を閉めたのだ。
そして、ようやく出てきたと思ったら緑間はカエルの玩具を左手に持ち登場。そのまま、当然といった素振りで荷台に乗ったのだった。そんな彼を高尾は荷台の方へ振り向くとジト目で睨んだ。
「おい、まだジャンケンしてねぇーぞ」
「バカめ...
人事を尽くしている俺がたかがジャンケンで負けるわけがないのだよ」
「やってみねぇとわかんねぇーだろうが!いっくぞー!ジャンケン...」
・・・・・・
「くっそ...
信号待ちでジャンケンなのに、お前一回もこいでなくねぇ!?」
信号で停止するたんびにジャンケンして漕ぐ奴を決めるルール。
だが、高尾は一度も何故か勝てなかった。ゼェゼェと息を切らしながら高尾は愚痴をこぼす。
「そんなの当然なのだよ。なぜなら今日のおは朝の星座占い...
俺の蟹座は1位だったのだから。」
高尾と対照的に緑間は悠々と荷台に座り大好物のお汁粉を飲んでいた。
「それ関係あるの!?それ!!」
占いで運気が上がるなら苦労しねぇーぞ!?
高尾は声を上げながら、必死にチャリアカーを漕ぐ。
「つーかわざわざ練習試合なんか見るくらいなんだから相当でけーんだろうなぁ?お前の同中!」
「マネッコと 影薄い子だな」
「それ強いの!?強そうに見えないんだけど...」
「それより早く。試合が終わってしまう」
「お前が占いなんか見てたからだろ!?」
詫び一つない上に、遅いと急かす緑間に高尾は言い返しながらも、必死に漕ぎ続けた。だが、暫く進んできたチャリアカーの目の前には長い長い車の渋滞。歩道と通れないチャリアカーは見事に足止めを喰らってしまったのだ。それを見かねた緑間は荷台から降りた。
「おい!どこ行くんだよ」
「このままだと練習試合に間に合わそうだからな...歩いていくのだよ」
ギシッと音がしたことに気づいた高尾は慌てて、チャリアカーの脇を通り抜ける緑間に声を掛ける。
乗り物として扱っていたチャリアカーを乗り捨てた緑間は、慌てふためく高尾を置き去りにし、先を急ぐように歩を早めるのだった。