誠凛高校へ
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「みおっち...今日はありがとうっす。」
黒子に振られた挙句宣戦布告された黄瀬は美桜と共に誠凛高校から出る。すると随分と時間が経過していたらしく、空がオレンジ色に染まる夕暮れ時だった。
その空を仰ぎ歩いていた黄瀬は足をふと止めると、並んで歩いていた美桜に微笑む。そんな黄瀬に美桜は一瞬彼を見上げるがすぐに空に視線を戻した。
「どういたしまして
まぁ、有力な情報得られたから良かったかな」
誠凛高校とは同じ地区だ。
火神大我…
まだまだ粗削りだが、今後の成長次第では脅威になりえるかもしれない。
まぁ、真太郎に伝えても『ありえないのだよ』と一蹴されておしまいなのは目に見えているが…
「そういえば、秀徳高校いったんすね ...
ということは緑間っちと一緒すか?」
頭に手を組み空を見上げる美桜の服装はセーラー服。そして刺繍された校章は東京の強豪校である秀徳高校。黄瀬は同校に進学した緑髪の青年を脳裏に思い浮かべていた。
「あぁ…」
黄瀬の投げかけに美桜は足を止め、声を漏らした。
本来ならキセキの世代誰もいないとこに進学したかったのに
完全に抜けていた自分に嫌気がさしながら美桜は嘆くように吐き出した。
「...う、うん。そうだよ..
あ~あもうバスケと関わる気はなかったんだけどな...」
黄瀬に目線を向けずに美桜は漏らす。そんな彼女の表情に黄瀬は胸元を握りしめた。
一体何を抱えてるんすか
夕日に照らされた彼女の横顔は息を呑むほど綺麗なのに、どこか苦しそうで黄瀬は端正な顔を歪ませた。
悔しかった
苦しんでいる美桜の傍にいるのが自分ではなく緑間であることが
一時期バスケを離れた彼女を引き戻したのが恐らく緑間であろうことが
どうして彼女が進学した先が海常ではないのだろう?
考えだしたら埒が明かない
それでも黄瀬はもしかしたらあったかもしれないもしもの可能性を考えずにはいられなかった。
「みおっち...」
黄瀬は無意識の内に彼女の名を口にする。
その彼の声は、いつものテンションが高い明るい声ではなく、焦燥を滲みだしている声色で、思わず美桜は彼の方を向こうとする。が、それよりも前に彼女の視界は真っ暗になった。
どうしてこうなった??
美桜はこの状況下に困惑した。
何故なら振り向こうとした途端、彼女は抱き寄せられたのだ。直ぐ目の前には黄瀬のしっかりと鍛えられている胸板で、背中は回された彼の掌の体温が伝わってきた。
こんなに人の温もりを感じるのはいつぶりだろう…
状況を把握した美桜は、彼に抱きしめられながらも他人事のようにぼんやりと素直に彼の腕の中におさまった。
「みおっち...」
今にも泣きそうなすぐにかき消されてしまいそうな震えた声で黄瀬は美桜の名を呼ぶ。それと同時に黄瀬はギュッと彼女を抱く力を強くする。
そんな彼に美桜はそっと彼の背に手を回した。
「どうしたの、涼太??」
「..なんでそんな顔するんすか、みおっち」
優しい声で語り掛ける美桜。そんな彼女の声に、思わず黄瀬は言葉を吐きだしていた。その言葉に美桜はギクッと身体を強張らせる。
「もしかしてバスケ部辞めたのと関係があるんすか?
ごめん...ホントは聞くつもり無かったんすけど..
あまりにもみおっちが苦しそうに見えて」
「........!?」
「俺はなにかできないんすか!
こんなみおっち見たくないっす!!
もし良かったら話してほしいっす...」
勢いのままに黄瀬は本音を彼女にぶつける。そして、黄瀬は抱きしめる力を弱めると、大人しく収まっている美桜を覗き込む。
そんな覗き込まれた美桜が見たのはいつにもまして真剣な眼差し。だが、その黄瀬の瞳の奥はわずかに揺れ動いていた。
言ってしまってもいいだろうか…
黄瀬のまっすぐな言葉に美桜は口を開きかける。が、美桜は慌てたように口を閉じると、瞳から逃げるように彼から視線を逸らした。
「...ごめん、言えないや」
「...そうすか」
変わってしまった今の彼に言ってもわかってもらえないだろう…
私やテツヤが感じた絶望を
申し訳なさそうに視線を下に向けた美桜に、黄瀬は肩を落としたものの、これ以上追及する気はなかった。
黄瀬は淋し気に俯き加減な美桜に優しく声をかける。
「いつか……教えてほしいっす」
「そうだね..話せるときが来たら」
美桜はゆっくりと顔を上げる。それにつられるように黄瀬も空を見上げた。
そんな彼らの瞳に映るのはオレンジと紫色が入り交じる空。
皆がホントにバスケの楽しさを思い出し笑え会える日が来たら...
そんな日が来ることを美桜は切望せずにはいられない。美桜は、願うように空へと心を馳せた。
*****
誠凛高校のバスケ部の部室に置かれた雑誌がペラッと捲れ始める。
ペラペラッ
そしてとあるページで止まる。
『バスケコートを華麗に舞い、変幻自在・自由自在に動き回る
「絢爛豪華な疾風のドリブラー」
神田美桜』
キセキの世代の次のページは女子バスケ部の特集。そのトップには、写真と共に大々的に美桜の特集が組まれていたのだった。