誠凛高校へ
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「よっと..と」
5分後、サインを終えた黄瀬は壇上から降りると両手をポケットに突っこみ黒子の元へ。
「な..なんでここに?」
一同が抱いた疑問を尋ねようと口火を切ったのは誠凛の主将である日向だった。
「いやー黒子っちに会いたくてこの子に案内してもらったんすよ
黒子っちとは中学の時一番仲良かったしね...」
その問いに対し、黄瀬は笑みを浮かべながら、まだ壇上にいる美桜を指さし、黒子に相槌を求めた。だが…
「こっちはとんだ迷惑...」
「普通でしたけど..」
「二人共ひどーい!」
いつもどおりの塩対応。黄瀬は溢れる涙を腕で拭った。
そんな中、誠凛の2年生である小金井がたまたま持っていた雑誌の記事に書いてあった黄瀬の経歴を読み上げた。
「中2から!?」
「いやー..あのー大げさなんすよその記事」
驚く一同に黄瀬は事実を告げる。
「キセキの世代と呼ばれるは嬉しいけどその中で俺は一番下っ端っていうだけですから...だから黒子っちと俺はだいぶいびられたよな?」
「僕は別になかったです..」
「あれ〜!オレだけ??」
「アハハ!!」
「みおっち〜〜」
すぐに否定する黒子の発言に、ショックを受ける黄瀬。そんな不憫な黄瀬にたまらず美桜は高笑いをした。思わず黄瀬は笑う美桜の方を振り返ろうとする。が振り向こうとしたその時、黄瀬の視界の端に動くものが映り込む。それに黄瀬の身体は、反射的に反応した。
「いたっー、ちょいなに〜??」
真横から飛んできたボールを黄瀬は片手で止める。流石に勢いよくきただけあって、完全に威力を押し殺すことはできず、黄瀬は若干顔を歪めた。
いったい誰だ…
黄瀬は視線をボールが投げられた方向にやる。するとそこにはギラギラと目をギラつかせる赤髪の青年がいた。
「せっかくの再会中悪いけど、わざわざ来て挨拶だけはないだろ?ちょっと相手してくれよ?イケメン君?」
鋭い目つきで好戦的な彼は、火神大我。誠凛高校1年のアメリカ帰りの青年だ。そんな彼は、先程話題に上がっていたキセキの世代の一人が目の前にいる、このチャンスに気持ちが高ぶっていた。
「え〜?そんな急に言われても..
あ~でもさっき...」
黄瀬は記憶の片隅を思い出す。
「涼太…あれ…」
サインをしていた黄瀬に美桜がわざわざ彼に見るように促したのは、火神がダンクをしている場面だった。
あの場面を詳細に思い起こしながら、黄瀬は了承の返事をする。
「うし..やろっか。いいもん見せてくれたお礼」
黄瀬はボールを彼に向かって放り投げる。そして動くのに邪魔なブレザーを脱いだ。
「…みおっち」
「ん??」
「これ持ってて…」
「わかった…」
壇上で行末を見守っていた美桜は黄瀬のお願いに素直に頷き、黄瀬のブレザーを受け取った。
唐突に始まった1on1
もちろん軍配は黄瀬にあがった。
黄瀬は目線のフェイクを使いタイミングを見計らってあっけなく火神をかわす。そして、先程火神がやっていたダンクを決めたのだ。挑戦状を叩きつけた火神はそのダンクを防きれず、床に座り込み黄瀬を驚きの表情で見上げていた。
え?なんで?
黒子以外の誠凛部員は驚いた表情をしていた。
これは黄瀬の一つの才能だ。
『模倣』といって一度見た相手の技を即座に再現できるのだ。
「ウーン..これはちょっとな..」
あっけなさ過ぎる結末に黄瀬は座り込んだ彼を見て頭をかいた。
「こんな拍子ぬけじゃやっぱ挨拶だけじゃ帰れないっすわ」
そう唐突に言い捨てると黒子の方へ歩き出す。
なにかやらかしそうなやな予感がする
そう感じ取った美桜のその予感はドンピシャに当たった。
「やっぱ..黒子っち下さい..うちにおいでよ..また一緒にバスケやろ?」
黄瀬は黒子に誘うように手を差しのべたのだった。
言い出すとは思ってたけどホントにやるとは...
「マジな話..黒子っちの事は尊敬してるんすよ?こんなとこじゃ宝の持ち腐れだって..ね?どうすか?」
黄瀬はそう言うと黒子の反応を待った。だが、もちろん黒子が頷くことはなかった。
「そんなふうに言ってもらえるのは光栄です..丁重にお断りさせていただきます。」
そう言うと黒子は黄瀬に対し頭を下げるのだった。
「文脈おかしくねぇ?そもそもらしくないっすよ!勝つことが全てだったじゃん!なんでもっと強いとこ行かないんすか!」
わけがわからない!!
黄瀬は必死に声を上げて訴えた。
だよね...わかるはずがないよ。今の涼太には理解できないよね、テツヤが感じた違和感を。
そんな黄瀬を美桜は寂しそうに見つめていた。
いつからだろうか?彼がこうなってしまったのは...
昔はバスケ!バスケ!とがむしゃらにボールを追いかけていたのに。いつも楽しげに1on1をアイツとやってたのに。
太陽のように輝いていた彼はもう居ないのだ。
「あの時から考えが変わったんです...
何より火神君と約束しました..君たちを...キセキの世代を倒すと...」
「やっぱらしくないっすよ..そんな冗談言うなんて」
「冗談苦手なのは変わっていません..本気です。」
黒子が言い放った宣戦布告。
その言葉に黄瀬は目をスッと細めて挑戦的な笑みを浮かべていた。
テツヤは感じた疑問に対し間違ってると気づき立ち向かおうとしている。
では私はどうなのだろう…
そんなのはもうわかりきっている。
私は逃げてしかいない
だってまだ私は彼に真正面から向き合う覚悟ができていないのだから。
美桜は現実から目を背けるように目を伏せるのだった。